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デジタルガバメント実行計画とは?実現に向けた6つの施策を解説

近年、「デジタル・ガバメント実行計画」に従い、行政サービスの改革やその基盤の整備、様々な行政上の手続のデジタル化などが進められています。当記事では、デジタル・ガバメント実行計画とは何なのか、そしてその実現に向けた6つの施策について解説していきます。

デジタルガバメント実行計画とは?実現に向けた6つの施策を解説

デジタル・ガバメント実行計画の概要

「デジタル・ガバメント実行計画」とは、データ環境の整備や行政手続のオンライン化などを実現するために制定された施策です。

同計画の制定に至るまでには、いくつかの段階を経ています。2016年には「官民データ活用推進基本法」が成立し、データの流通環境を整備すること、手続のオンライン利用を原則化すること、といった各施策を取り組みとして義務付けました。

次いで2017年には、同法およびこれに関連する法律に基づく取り組みを具体化するため、「デジタル宣言・官民データ計画」が策定されています。特に重点分野とされていたのがデジタル・ガバメント分野で、同分野における取り組みに関して「デジタル・ガバメント推進方針」が策定されました。この方針では、国民や事業者の利便性を向上することに重点を置いています。デジタル化の導入ではなく、デジタルを前提とした行政の見直しという、より広い視点で進められています。

そして、ここで示された方向性を具体化するための計画が、デジタル・ガバメント実行計画です。安全・安心かつ公正・公平で豊かな社会の実現を目指す計画として、2018年に策定されました。国や地方公共団体のためだけの計画ではなく、国民や民間の事業者など、考慮の対象となる幅は広く、社会全体に影響を及ぼすものとして機能します。

デジタル・ガバメント実行計画の6つの施策

デジタル・ガバメント実行計画では、以下の6つの重要な施策が打ち出されています。

行政サービス改革

行政サービス改革に関して、政府はプロジェクトを成功させるため、「サービス設計12 箇条」を掲げています。それぞれについて簡潔にご紹介します。

1.利用者の視点に立つ

サービスの提供者視点ではなく、利用する者のニーズから出発し、何が必要なのか考えることを重要視しています。

2.事実を詳細に把握

現場で起きていることを細かく把握し、課題を可視化します。因果関係の整理などを行い、サービスに反映させます。

3.エンドツーエンドで考える

各手続を個別に検討するのではなく、利用者の行動を一連の流れとして考えます。

4.関係者への配慮

利用者のみならず、すべての関係者に関して生じる影響を分析し、Win-Winとなる状態を目指します。

5.シンプルさの実現

デジタルに詳しくない人や初めて利用する人でも複雑なマニュアルを要することなく、自身の力のみで完結できる状態を目指します。

6.デジタル技術の活用でサービスの価値を高める

一貫したデジタル技術の利用と、これに伴う便益の向上を目指します。今後も技術は進展していくため、これに対応できるようAIやIoT、そのほか新しい技術に関しても積極的な導入を検討します。

7.利用者の日常に溶け込む

多様な場面で利用できるよう、既存の民間サービスに融合する形で提供を行います。

8.一から作りすぎない

すべてのサービスを一から作ったのでは非効率です。そのため、自分で作りすぎないようにし、必要に応じて既存システムの再利用も検討します。

9.サービスはオープンに作る

質の向上のため、設計時には利用者から関係者までも巻き込み、意見を取り入れていきます。

10.繰り返し改善を図る

サービスを提供し始めてからも利用者の意見は継続的に収集し、改善を図ります。

11.一貫性を持って取り組む

一遍に取り組むのではなく、軌道修正を繰り返しつつ一貫性をもって取り組みます。

12.情報システムではなくサービスを作る

実現手段としての情報システム化にこだわらず、サービスによる利用者の便益を第一に考えます。

重要視されているのは、行政を中心に考えるのではなく、利用者の視点を中心に展開していくという点です。そのため、単なるシステムの整備や手続のオンライン化によって、コスト削減を図るための計画ではありません。本来の「国民に価値を提供する」という目的に立ち返り、一連のサービスが簡単かつ便利で、すぐに使える状態を実現することが重要なのです。

基盤の整備

基盤を整備するための施策では、「グランドデザインの策定」「インフラの整備」「クラウドサービス利用」などが特に重要と考えられています。

大きな構想であるグランドデザインは、政府情報システムの将来的な在り方やデジタル・ガバメント実現のために策定されます。中長期的に実現すべきサービス像や、それを実現するための既存業務・情報システムの移行、システム間の互換性や連携、セキュリティ対策などに関する方針を明確にします。

そして、この方針に基づいてデジタルインフラの整備も進めていきます。ここで重要視されるのは、政府全体で共通的に利用できるということです。各府省の業務標準化、システムの共用化および標準化を進め、行政サービスの簡便かつ迅速な提供の実現を目指します。また、効率化により生み出される資源を活用し、サービスの質の向上も目指します。

クラウドサービスに関しては、従来のオンプレミスタイプに比べてリソースの迅速な配備・柔軟な増減が実現でき、運用も自動化できる部分が増えるため、その積極的な導入が進められています。この観点からも質の向上が期待でき、アップグレードなどシステム改善の必要性が生じた場合でも、迅速な更新が可能となります。

ただし導入には、セキュリティ面に十分配慮する必要があります。安全性の評価基準を設けるなど、評価の仕組みの導入に向けても検討が進められています。

行政手続のデジタル化

行政上の手続をデジタル化し、オンライン上での遂行が実現されれば、国民一人ひとりの負担に直接影響を及ぼします。例えば、役所などに出向く必要がなくなるなど、時間やコスト、手間などの面において効率化が図られます。

計画を進めるうえでは、3つの原則に従うことが大切です。1つは「デジタルファースト」です。これは部分的なデジタル化ではなく、ある手続に関する一連をすべてデジタルに置き換えることを意味します。

オンライン申請が部分的に実施されている例はあります。しかし、添付書類を提出するために別途作業を要してしまったり、手数料を納付するために出向かないといけなかったりするケースが少なくありません。そのため、同計画を進めるうえでは、当初からデジタル処理での完結を意識することが重要なのです。

2つ目は「ワンスオンリー」です。これは、一度提出した情報については、再提出の必要をなくすというものです。何度も同じ書類を発行する手間や費用の削減や、法人の設立に関する手続も簡素化につながります。行政機関同士の連携、情報システムの整備は必須となるでしょう。

3つ目が「コネクテッド・ワンストップ」です。これは、民間サービスも含めた複数の手続きをワンストップで完結させる仕組みです。今後は国・地方公共団体だけでなく、民間事業者も絡めた連携が重要になるとされています。そのため、行政内部でのみの連携では不十分で、民間との連携もできる体制が必要でしょう。

たとえば、電気や水道といったライフラインは誰しもが必要とするサービスです。転居の際に住民票の転入手続に伴い、これらの契約も移行されれば便利です。こうした利便性の高い環境構築が、主な目的です。

一元的なプロジェクト管理・強化

政府情報システムの改革を進めるため、一元的なプロジェクト管理の強化が求められます。そのための具体的取り組みとしては、たとえば情報システム関連の予算につき、一括要求・一括計上をすることが挙げられています。

プロジェクトの計画段階や具体化段階、そして詳細仕様を検討する段階は、それぞれ予算を要求する前後と予算執行前に分類できます。これら3つの段階に関して、ばらばらの管理を行うのではなく、一元的に管理することが求められています。

デジタルデバイド対策

デジタルデバイドは、インターネットなどデジタル技術に関して使える人・使えない人の格差を意味します。以前より、問題とされていましたが未だに解消されているとはいえません。

そして、このような格差があっては、サービスの改革が実現されたとしても、全国民が恩恵を受けられないため、格差改善の対策も同時に取り組む必要性があるのです。そこで、たとえばデジタル機器やサービスについての相談機会を提供し、支援するといった取り組みが実施されています。

広報等の実施

サービス自体の存在を多くの人に認知してもらうことも、実質的な改革のためには必要でしょう。行政サービスにはどのようなものが存在しているのか、その利用方法に関しても広報しなければなりません。

特に災害が発生した場合など、緊急時においては正確かつ迅速な情報提供が欠かせません。そのためにも、モバイル機器からのアクセス機会提供が重要であり、SNSの利用も効果的です。

まとめ

デジタル・ガバメント実行計画の概要と、その実現に向けた6つの施策を解説しました。行政が主体的に行っていますが、民間との連携は欠かせません。また、行政内部の問題解決だけを目指すものでもありません。デジタル・ガバメント計画の内容が実現されれば、現状の問題を解決しつつ、質の高いサービスが受けられるようになるでしょう。

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