小売事業者がおさえておきたいECの技術トレンド10選

 2020.04.20  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

インターネット上でモノやサービスを売買するEC(electronic commerce)ですが、技術の進歩により、ECというビジネスモデル自体が変化しつつあります。EC業界で注目されている10の最新のトレンド技術を、事例を交えつつ紹介します。

小売事業者がおさえておきたいECの技術トレンド10選

「AI」により顧客の購買行動を促進

多くの消費者が、AIの技術を活用したサービスや端末を利用しているとされる現在。

消費者がすでに購入する気持ちになっているのか、検討段階なのかといった、購入に対する状態をトレンド技術であるAIで探ることも可能になっています。

これは、消費者の購入意識を探るための設問を条件分岐ロジックに従ってデザインしておき、回答内容を分析することで実現されました。

まだ購入する意思を固めていない消費者だとAIが判断した場合は、キャンペーンなどを通じて商品・サービスに関する情報を提供するなど、購買意欲を高めていくための行動を、購入に至るまでの段階に応じてとることができます。

ここで注目したいのは、顧客の購入段階をデータ化できるということは、サービスの解約や会員の退会をしようとしている顧客をいち早く見つけられるということです。

取得したデータを使うことで、このような顧客に対しても顧客獲得の際と同様、購買意欲を高める、サービスの見直しをするなど先手を打つことができるでしょう。

「ダイナミックプライシング」で需要と供給の適正化

市場の需要に合わせて商品の価格を決定する「ダイナミックプライシング」は、航空業界やホテル業界などではすでに導入されているプライジングです。

もっとも身近な例として、夕方のスーパーなど食料品売り場で貼られる、割引シールや値下げシールの貼付が挙げられるでしょう。

ですが、実店舗を持つECサイトなどでは、価格が変わるたびに値札を張り替えることは効率も悪く、なかなかできることではありません。

ECサイトと実店鋪での販売価格を合わせることも難しくなるため、このような業態ではダイナミックプライシングがなかなか浸透しませんでした。

そもそも、適正価格の決定も困難な場合が多く、結果、利益を上げられなかったり、顧客を獲得できなかったりする状況にも陥るケースも多く見られたのです。

今日では、ダイナミックプライシング導入へのハードルを下げる技術が次々に生まれています。

たとえば、AIの技術を活用することで、月別や季節ごとの販売・在庫状況や他店の価格などを反映して適正価格が導き出せます。

また、電子棚札を利用すれば、端末で操作をするだけで価格が変えられるので、値札の頻繁な貼り替え作業は不要です。

「AR」や「VR」でよりリアルな購買体験

現実世界で人が感知できる情報に別の情報を加え、現実を拡張表現する技術である「AR(Augmented Reality:拡張現実)」。

ARをさらに発展させて、仮想世界を含めたあらゆるものを、まるで現実世界のように表現する技術「VR(Virtual Reality:バーチャルリアリティ)」。これら2つのトレンド技術は、EC業界でも活用が進んでいます。

たとえば、家具販売大手のIKEAでは、AR技術で家具の設置シミュレーションができるアプリ「IKEA Place」を提供しています。

スマートフォンで自宅内の様子をスキャンしてから、購入を検討中の家具を選択すると、自宅内に家具を設置した後のイメージがリアルに確認可能です。また、海外ではVR技術を活用して、家に居ながらにして世界各国を旅行しつつ各地の商品を購入できるサービスも生まれています。

このように、仮想空間で行えることはまだまだ広がりを見せており、今後、洋服のフィッティングや、材質の感触を確認できるシステムなど、さまざまな活用が期待されています。

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「スマートミラー」でバーチャルフィッティング

顧客一人ひとりに合わせた商品提案ができる技術「スマートミラー」が、アパレル販売の分野で注目されています。

一世代前のスマートミラーといえばネット接続や録画ができる、今でいうタブレット端末のようなものでしたが、現在では顔認証技術を組み合わせスマートミラーと顧客IDがひも付けることで、接客による属人的な商品提案ではなく、顧客データに基づいた客観的な提案が行えます。

人間による接客に煩わしさを感じる顧客にとっては、嬉しいサービスでしょう。

メガネを販売するJINSでは、JR上野駅構内に「JINS BRAIN Lab.(ジンズ・ブレイン・ラボ)エキュート上野店」という新型店舗を展開しています。

JINS オリジナル人工知能「JINS BRAIN」を搭載したスマートミラー「ブレインミラー」を導入しました。顧客が興味のあるメガネをかけるだけで、瞬時にそのメガネがどれだけ似合っているかを男性目線と女性目線でそれぞれに数値化して表示します。

このように、人ではなくAIなどの技術が、身につけるものがどれだけその人に似合っているか判断する時代が到来しているのです。

「パーソナライゼーション」による顧客満足度の向上

顧客ごとに欲しいものや好みが違うのは当たり前ですが、実は購入に至るまでのその購買体験にも好みがあります。

これに対応できるよう、個々の顧客に向けてカスタマイズされた購買体験「パーソナライゼーション」の提供が実現しています。

顧客ごとに異なるおすすめ商品などを表示するレコメンデーションは、多くの業態ですでに浸透している情報提供のサービスです。

また、ECサイトだけではなく、今後は実店鋪においても、購入に至るまでのプロセスのバリエーションがますます広がっていくと予想されています。顧客が入店すると同時に、その顧客が気になっていた商品のセール情報やクーポンがスマートフォンに通知され、顧客の行動データが店舗スタッフ全員に共有されることで常に適切な接客を提供できるといったことが可能になるでしょう。

このようなレコメンドは、実際に購入する商品はもちろん、購入までの体験も顧客一人ひとりに合わせられることで、顧客満足度の向上につながると期待されています。

「ショールーム特化型店舗」からECでの購買促進

ECサイトが浸透しはじめた頃、実際の商品を実店舗で確認したあと、割安なECサイトで購入するという「ショールーミング」を行う消費者が増加しました。現在では、そんなショールーミングを逆手に取った「ショールーム特化型店舗」が誕生しています。

「GU STYLE STUDIO原宿」は実店舗でありながら、ショールームとしての機能に特化した次世代型店舗です。

商品を手に取ったり試着したりすることはできても、商品を購入することはできません。購入はECサイトからのみできます。在庫スペースを売り場やバックヤードに設ける必要はなく、キャッシャースペースも不要です。

ショールーム特化型店舗により、企業側はレジ対応などにスタッフを割かずに済み、接客に注力できるようになります。過剰在庫の心配もないうえ、さまざまな業務を効率化できるでしょう。

同じくアパレルブランドのZARAも、ショールーム特化型店舗「ZARA ROPPONGI POP-UP SHOP ONLINE」を実験店舗として東京・六本木に展開しています。

試着後に商品をアプリやECサイトで購入する点は、「GU STYLE STUDIO」と同様ですが、「ZARA ROPPONGI POP-UP SHOP ONLINE」では、ZARAアプリから試着予約をして試着する点が特徴です。

試着にはアプリからの予約が必要ですが、1アイテム1サイズのみと展示アイテム数を減らすことでショールームとしての美観を維持しています。

「TIGコマース」で動画から直接購入

写真を見て購入するという行為の一歩先を行く「TIGコマース(ティグコマース)」というトレンド技術にも注目が向けられています。

顧客は動画を閲覧して購入したい商品があれば動画内の商品をタップします。そのまま商品をフリックするだけで動画内のカートに商品が保存されるので、動画を見つづけながら別の商品を検討したり、そのまま商品購入の手続きへ移行したりできます。

バレンタインの時期には、セブン&アイグループのネットショッピングサイト「オムニ7」が、TIGコマースを活用してバーチャルチョコレートショップをオープンしました。動画でより直感的に商品の魅力を伝え、スムーズな購入体験の実現につながっています。

「ボイスコマース」でハンズフリー購入

ECサイトでは、顧客がサイトでの手続きすることなく商品を購入できる技術も登場しました。「ボイスコマース」は、音声を活用した購入体験を顧客に提供しています。

この技術に欠かせないのが、天気予報の読み上げや照明のオンオフなど、パソコンやスマートフォンなどを一切操作することなく、AIを経由して音声での操作を実現する「スマートスピーカー」です。

Eコマースプラットフォーム「Dashero(ダシェロ)」は、ボイスコマースの代表例として最たるものでしょう。「Dashero」を車のダッシュボードに組み込むことで、ドライブスルー対応店舗から遠く離れた場所から、運転中に音声のみで注文できるようになります。

この間、注文のためにスマートフォンを操作したり電話をかけたりする必要もないので、危険運転の回避につながるほか、ドライブスルー店舗での混雑も緩和されると期待されています。

「顔認証決済」でカードもスマホも不要

一人ひとり違う顔から個人を特定する顔認証を利用して、決済を行う技術が「顔認証決済」です。

「アリペイ」を展開するアリババグループは、顔認証決済デバイス「トンボ」をリリースしました。

トンボは、デバイスに搭載したカメラで認識した顧客の顔とアリペイアカウントを紐づけて決済します。購入時に現金はおろか、クレジットカードやスマートフォンすら必要ありません。

また、中国では顔認証のみでくぐれる駅改札の導入も進められています。キャッシュレス化が進む中国では、このように顔認証決済が急速に広まりつつあるのです。

日本国内においても、NECが顔認証AIエンジン「NeoFace」とクレジットカードを連動させた顔認証決済サービスを開発するなど、顔認証決済の実用化に向け検討が進んでいます。

「クロスコマース」で体験と購買を融合

これまでは、商品を使って得られた感動や体験と購買活動は、全く関連性のない別ものとして扱われてきました。

スマートフォンが広まった現在においては、何かを体験したあとの楽しい・便利という気持ちや衝動を、そのまま購買活動につなげる「クロスコマース」というトレンドが重要視されています。

消費者は、オンラインとオフラインの垣根なく、常に情報を取得して行動するようになっているため、購買意欲が高まるのは店舗やECサイトをのぞいているときとは限りません。プロモーション動画を閲覧している視聴者が「便利な商品だ」と思ったその瞬間を逃さずそのまま購入できる動画、目の前でモデルが着ている洋服が「かわいい」と感じたその時に購入を促すファッションショーなど、さまざまな場面で「クロスコマース」を利用したマーケティングが行われるようになっています。

プラスの体験と購買活動とが垣根を超えてシームレスにつながろうとしています。

まとめ

実店鋪と融合したECビジネスや店舗やWebサイトを必要としない販売形態まで、EC業界で注目されている最新のトレンド技術を、事例を交えながら紹介していきました。

紹介したトレンド技術はすでに実用化されたものばかりです。

ECというビジネスモデル自体が変化しており、ますますこれらのトレンド技術には注目が集まりそうです。

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