建設業界の3Dプリンター活用とは?理由や事例も解説

 2021.12.27  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

建築業界に山積する多くの課題を解決する手段として、3Dプリンターの活用が注目されています。この記事では、建築業界においてなぜ3Dプリンターが注目されているか、活用するメリットは何かについて解説します。その上で日本と世界の活用事例も紹介するので参考にしてください。

建設業界の3Dプリンター活用とは?理由や事例も解説

New call-to-action

建設業界で3Dプリンターが活用される理由

3Dプリンターは、建設業界に山積みとなっている様々な課題を解決するためのツールとして期待されています。

3K(きつい・汚い・危険)のイメージが根強い建設業界には、一筋縄では解決できない課題が数多く存在しています。特に少子高齢化が進む昨今、慢性的な人材不足や職人の長時間労働、縮めにくい施工期間などの課題があります。3Dプリンターは職人の負担を軽減しつつ、これらの課題を解決するために活用されているのです。

建設業界で3Dプリンターを活用するメリット

建設業界では、さまざまな課題の解決方法として3Dプリンターの活用に注目が集まっています。では3Dプリンターを活用することで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。1つずつみていきましょう。

人材不足解消につながる

3Dプリンターは、これまで人力に頼ってきた作業を自動化できることから、建設業界の人材不足解消に役立つと期待されています。建設業界では、少子高齢化に伴い人材不足が深刻化している状況です。現在、建設業界を支える人材の多くは50代から60代ですが、これらの人材が今後連鎖的に引退していくと想定されています。その結果、近い将来に建設業界の人材は、大幅に減少するとみられているのです。

建設業界では人材不足の課題を解決するため、新しい技術によって効率化を進めることが急務となっています。そのような中、随所で導入されているのが3Dプリンターです。3Dプリンターには現場に設置して部材をプリントする方法と、工場でプリントした部材を現場に運び活用する方法があります。いずれの方法でも、部材のプリントがほぼ自動で行われることから、大幅な省人化を実現できるのです。

さらに3Dプリンターを使うことにより、これまで熟練の職人が担ってきた型枠づくりなども自動化できます。これによって高齢化した職人の作業を3Dプリンターによってカバーでき、属人化が防げるわけです。また、これまで厳しい環境で行う危険な作業も、3Dプリンターが代わりに行ってくれます。その結果、省人化に加えて職人の負担も大きく軽減できるわけです。

工期短縮につながる

3Dプリンターを使うことで、これまでの施工プロセスを大幅に短くできることから、工期短縮にもつながります。例えば、鉄筋コンクリートの一般的な施工では、型枠にコンクリートを流し込んだ後、固まるまで待つ期間が生じます。さらに型枠を解体し破棄するといった作業も必要です。

一方、3Dプリンターなら型枠なしで自由な造形が行えます。3Dプリンターを作動させるだけで、造形作業が完了するのです。従来のようにコンクリートが固まるまで待つなどの工程がなくなるので、工期を大幅に縮められます。

材料費を削減できる

従来の建築では、施工の際に使う型枠をはじめ大量の端材が発生していました。その他、余ったコンクリートなども全て廃棄されていたのです。

一方、3Dプリンターを使えば、そもそも型枠が必要ありません。また、あらかじめ必要な量のコンクリートを計算できるため、無駄の発生を防ぐことができます。このような点から、3Dプリンターを使うことによって、材料費の削減が可能なのです。

廃棄物の削減によって、環境に与える負荷も軽減できます。建設業界全体で排出される廃棄物の量は膨大であり、それに伴うCO2の排出量をどう削減するかは、社会全体においても大きな課題です。3Dプリンターは材料費の削減だけでなく、環境面で課題解決の手段としても期待されています。

建設業界における3Dプリンター活用への課題

世界各国で3Dプリンターを使った建築が進んでいる一方、現在の日本は普及が遅れていると言わざるを得ません。日本では、3Dプリンターを活用するにあたり、複数の課題をクリアしなければならないからです。

まず大きな課題として、3Dプリンターの活用は建築基準法における耐震基準をクリアできない点が挙げられます。地震大国と呼ばれる日本では、世界に比べ耐震基準が非常に厳しく設定されています。法律上、耐震性を確保するためコンクリートに鉄筋を組み込まないといけません。

一方、一般的に3Dプリンターではコンクリートを積み上げて建築する方法が採用されており、鉄筋が使われていないのです。その結果、現状の日本では3Dプリンターを活用して建物の躯体部分を作れないのです。

また3Dプリンターによる建築が始まったばかりで、実績が多くない点も普及が進みにくい理由の一つです。3Dプリンターの建築は、理論上は安全だとしても現時点では実績がありません。それゆえ、建築施策関係を所管する国土交通省も3Dプリンターを使った建築を許可しづらいのです。

そのほか、開発コストの問題もあります。建築用の3Dプリンターは、多関節で動くロボットアーム型、XYZ軸で動くガントリー型の2種類に分類が可能です。このうち、ロボットアーム型は開発に非常に高いコストがかかってしまいます。一方、ガントリー型は開発コストが抑えられる反面、移動や設置に手間がかかり、使いやすさの面ではアーム型に劣るとされています。

日本でも3Dプリンターによる建築は少しずつ活用されてはいます。しかし、これらの理由から、3Dプリンターの活用に積極的な海外に比べ、普及が進んでいないのが現状です。

建設業界における3Dプリンターの活用事例

建設業界において3Dプリンターはどのように活用されているのでしょうか。ここでは日本におけるゼネコンの事例と、アメリカの事例をそれぞれ紹介します。

ゼネコンの活用事例

株式会社大林組では特殊なセメント系材料を利用し、型枠なしでさまざまな形状の部材を自動製造できる3Dプリンターを開発しました。この3Dプリンターでは、これまで製造に多くの時間・労力がかかっていた曲面・中空といった形状の部材を自動で製造できます。同社は、3Dプリンターを使用して中空・曲面形状のモルタルブロックを製造し、その部材でアーチ状のブリッジの製作に成功しました。そのほか、3Dプリンターにより、曲面型枠や鉄筋を使用せずにシェル型ベン(7m×5m×2.5m)の製作にも成功しています。

また、竹中工務店では慶応義塾大学と共同開発した樹脂を利用し、鉄筋コンクリート用の樹脂型枠を作成しました。3Dプリンターでは自由な形状で型枠を製作できることから、建築物の意匠性向上を期待しているとのことです。

加えて、前田建設では建設業界の人材不足を補う目的で、3Dプリンターによる作業の省力化・無人化を目指しています。2019年2月には、3Dプリンターで高さ2.8mある喫煙所の造形を実演しました。このデモンストレーションでは、わずか1時間で1m程度の高さを積層するのに成功しています。

アメリカの活用事例

アメリカのテキサス州では3Dプリンターによって、3800平方フィート(約167.22㎡)もの軍事兵舎が建設されました。建設にあたったのは3Dプリント建設企業のICON社で、本軍事兵舎には米軍と共同で開発した独自素材「LavaCrete(ラヴァクリート)」が使われています。この施設は今後、テキサス州陸軍国家警備隊の施設として、実際に活用される予定です。

その他、アメリカでは3Dプリンターを使い55〜75㎡の平家建て住宅を、1日足らずで建築することに成功しています。建設費用も45万円程度と低価格で、貧困地域での住宅問題を解決する手段として需要が高まっています。

まとめ

3Dプリンターによって建築を行うことで、従来と比べはるかに作業の効率化やスピードアップが可能です。また、3Dプリンターの活用は、建築業界で深刻化する人材不足を解決するための手段としても注目されています。日本では建築基準法などの課題がありますが、今後どのように活用が広がるかに注目です。


RELATED POST関連記事


RECENT POST「建設・ビル管理」の最新記事


建設・ビル管理

身近なDXの事例8選 DXを成功させる3つのポイントも紹介

建設・ビル管理

建設業界におけるドローン活用とは?特徴やメリット、注意点も解説

建設・ビル管理

スマートビルディングとは? 意味や定義を基礎から解説

建設・ビル管理

建築・建設業界のDXとは?取り組むメリットや推進のポイントを紹介

建設業界の3Dプリンター活用とは?理由や事例も解説
New call-to-action

RANKING人気資料ランキング

RECENT POST 最新記事

ブログ無料購読
クラウド実践チャンネル
BizApp チャンネル
New call-to-action

RANKING人気記事ランキング

関連サイト

サイト掲載へのお問い合わせ