本格化する自治体のDX推進|今後の取り組み

 2021.01.29  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

新型コロナウイルス感染拡大を一つのきっかけとして、各自治体におけるDXデジタルトランスフォーメーション)の推進が本格化しています。本記事では、自治体DXの概要や自治体DXを浸透させるための国の施策、各自治体のDXへの取り組み事例などを解説します。

本格化する自治体のDX推進|今後の取り組み

自治体・行政におけるDX(デジタルトランスフォーメンション)とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用し、組織内部はもちろん組織外や社会全体で情報を共有し、ネットワーク化することで、人々の生活をより良いものに変革していくことを指す用語です。

経済産業省は、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

つまり、DXは単なるデジタル化ではなく、企業のビジネスモデルや社会のあり方をデジタル技術で変革していく取り組みといえるでしょう。

自治体や行政におけるDXとは、データ化された情報を公開し、官民が連携してそれらを活用しながら、社会の課題解決に役立てていくことを指します。例えば、住民の通勤や通学に関する情報を基に、公共交通機関の運行ルートやダイヤをシミュレーションしたり、民間企業と行政が連携して保育サービスの需要を予測し、必要な地域に必要な育児支援サービスを提供したりといった取り組みが自治体DXの一例です。

自治体でDX化が必要な理由

新型コロナウイルス感染拡大を背景に、自治体や行政においてもDXの必要性が高まっています。民間企業でペーパーレス化が浸透する中、行政内部においては依然として紙文化が色濃く残っています。しかし、コロナ禍の状況下では感染防止のため、社会全体で書面の受け渡しや対面による説明をできるだけ避け、リモートワークやオンライン会議の導入が求められています。それは行政においても例外ではありません。

実際、20207月に閣議決定されたコロナ禍における「経済財政運営と改革の基本方針2020」においては、デジタル化への集中投資・実装、環境整備を進める方針「デジタルニューディティール」が打ち出されました。

その中では、行政手続きの抜本的なオンライン化やワンストップ化、手続きの簡素化、書面・押印・対面主義からの脱却、国・地方を通じたデジタル基盤の標準化、分野間でのデータ連携基盤の構築、オープンデータ化の推進などが実現すべき目標として挙げられています。

自治体がDXを推進すべきもう一つの理由としては、生産年齢人口の減少による税収減と、それに伴う人件費の削減により、自治体の職員が担うべき業務負担が増加していることがあります。

待機児童対策や空き家対策、介護予防、鳥獣被害対策など、ライフスタイルの変化や人口構造の変化により、自治体が請け負わなければならない新たな課題が生じている一方、それに対応する職員の数が減っているため、当然ながら一人当たりの業務量は増加傾向にあります。

限られた人員で業務を回していこうとすれば、従来の業務を効率化することが欠かせません。そのためには紙媒体中心の業務プロセスを見直し、デジタル化を推し進めていくことが何より重要なのです。

総務省の推進により自治体DXが本格化へ

DXの推進に対して政府が本気であることは、2021年度の予算からも読み取れます。総務省は2021年度予算の概算要求で、地方自治体のDXに向けた予算に20年度の約5倍となる38億円を計上すると発表しました。

予算の用途は行政手続きのオンライン化や情報システムの統一、セキュリティ対策などが中心です。行政手続きのオンライン化には1億円を投じ、オンラインシステムと既存の業務システムを連携させる実証実験を行うほか、AIを活用した業務効率化には14,000万円をあて、住民基本台帳などの基幹業務に関し、人口規模ごとに複数の自治体でグループをつくり実証を行います。

ほかにも自治体ごとに異なるシステムの標準化に41,000万円、自治体業務のクラウド化に伴うセキュリティ強化に32億円を投じる予定です。

また、政府は自治体DXを加速させるべく、20211月から263月までを「自治体DX推進計画」の対象期間とし、情報システムの標準化や行政手続きのオンライン化、マイナンバーカードの普及促進、AIRPAの利用促進、テレワークの推進、セキュリティ対策の徹底などに重点的に取り組むとしています。

さらに情報システムの標準化では、全国規模のシステム基盤である共通クラウド「Gov-Cloud(仮称)」を25年度までに構築し、法人住民税や固定資産税など基幹業務のシステムを国の標準仕様に統一することを目指しています。これらの計画が軌道に乗れば、今後自治体DXの浸透はスピード感を増していくでしょう。

各自治体におけるDXの取り組み事例

自治体が抱えるDXの課題は様々です。各自治体が行なっている実際のDXの取り組み事例をご紹介します。

スマート改革に取り組む三重県

三重県は2019年度に「スマート改革」を開始し、2020年度からはそれを「Smart Government(県庁改革)」「Smart Workstyle(官民で実現する新しい働き方)」「Smart Solutions(テクノロジー活用による社会課題解決を加速)」という3項目に整理して推し進めています。

Smart Governmentは、住民や民間団体などにとって便利な県庁を実現し、ICTを活用して業務の生産性を向上することを目指します。県庁が主催する会議はオンラインへ移行するほか、RPAなどの自動化ツールを活用して生産性を高め、各種手続きはオンライン化によって利便性の向上を図っています。

Smart Workstyleとは、在宅勤務などの柔軟な働き方を実現し、勤務時間を固定することのないワーケーションのような働き方も念頭に職員の働き方を変えていくことです。

最後のSmart Solutionsでは、最新技術を駆使してこれまで解決できなかった課題にアプローチすることを目指しています。

三重県のスマート改革は、単にデジタル技術を活用していくだけでなく、前提となる組織的な課題を把握し、職員の意識を変えていくこと、職員がデジタルに関する知識を身につけていること、デジタルによって行政サービスが便利になることを住民に実感してもらうことをプロジェクト成功のポイントと位置づけています。

DX推進プラットフォーム」の構築を推進する愛媛県

愛媛県は2018年度、デジタルマーケティングの専門部署「プロモーション戦略室」を新設しています。自治体がこのような取り組みをするのは稀です。同県はこの戦略室を設置後、インバウンド誘客、サイクリスト誘致、県産品販売促進を重点分野とし、販促動画の作成や配信、視聴データの分析などでデジタルマーケティングを推進してきました。

さらに同県は20206月、新型コロナウイルス感染拡大の影響で厳しい経営を強いられている県内事業者の支援を目的に、ネット通販サイト「楽天市場」に開設した県産品の販売サイト「愛媛百貨店」で販促キャンペーンを実施し、前年同期の3.6倍となる1億円を売り上げることに成功しています。

この成果は偶然ではなく、プロモーション戦略室を立ち上げ、2年前から力を入れてきたデジタルマーケティングの知見が生きた好事例です。蓄積してきた販売履歴などのデータを分析して出品内容を工夫し、顧客の属性と情報配信の中身をマッチさせる施策が奏功した結果といえるでしょう。

また、インバウンド誘客については外国人向け動画やWebマガジンの作成などに取り組み、動画視聴回数4,000万回以上を達成したほか、Webサイトの滞在時間延長にも成果を上げています。

自治体がDXに取り組むうえで必要なポイント

三重県の事例でも触れたように、自治体がDXを推進する際、ただ既存の業務をデジタル化するという意識では思うような成果が出ない可能性があります。抑えておくべきは、DXを「組織の方針として落とし込むこと」「自治体の施策として横断的な体制をつくること」「職員のITリテラシー向上」の3点です。

まずDXを組織の方針として落とし込むためには、どの課題を解決したいのかを明確にしておくことが大切です。自治体によって抱えている課題は異なり、それによって取るべき施策も変わってきます。正しい課題を設定するためにも、住民の視点を持ちつつ、行政全体も俯瞰するという2つの見方を持っておくべきです。

設定した課題を組織の方針に落としこんでいく際には、部門横断的な組織づくりが欠かせません。しかしながら、チームを組織しただけでは現場は動かず、広く一般の職員にもDXを推進する意義を理解してもらわない限り、反発を招いてDXが進まない可能性があります。そのためには、DXを念頭に置いたリテラシー教育を実施し、組織の風土から変えていく地道な努力も求められてくるでしょう。

まとめ

自治体DXの推進に向けた国の予算が前年の約5倍に拡充されたことからも予想できるように、2021年以降、自治体DXへの取り組みは加速していくはずです。生産人口の減少によって職員の数が削減され、一人ひとりの業務負担が増加する中、DXの推進は自治体を存続させていく上でも必須の選択といえるでしょう。

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