産業界におけるIOT活用の実情

 2021.06.30  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

近年、産業界を中心として、「IoT」が大きな注目を集めています。しかし、具体的な導入手順や活用方法がわからず、IoTの導入に踏み込めない企業も少なくありません。そこで本記事では、産業界におけるIoTの現状について解説するとともに、実際の導入ステップや企業の活用事例をご紹介します。

産業界におけるIOT活用の実情

産業界におけるIoTの取り組みの現状

「IoT」とは「Internet of Things」の頭文字をとった略称で、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。IoTは、電子機器や駆動装置といった生産設備をネットワークに接続することで、データの収集や分析、生産管理や品質管理、業務の進捗管理など、あらゆる業務を効率化するためのシステムです。ドイツ政府主導のもとインダストリー4.0が提唱され、工場のスマート化が進んでいます。そして、工場のスマート化を実現するために不可欠なシステムとして、注目を集めているのがIoTです。

IoTが製造業や情報通信業といった産業界で注目を集めている理由のひとつに、人材不足が挙げられます。とくに製造業は、慢性的な人材不足が年々深刻化しています。経済産業省の調査によると、約94%以上の企業が「人材不足に陥っている」と回答しており、さらに約32%以上が「経営に悪影響を及ぼしている」と回答しています。そして、人口の減少や少子高齢化といった社会背景も相まって、製造業は今後さらに深刻な人材不足に陥っていくと予想されます。

このような現状を打破するためには、業務効率の改善と労働生産性の向上が不可欠です。つまり、最小限の人的資源で最大限の生産性を創出するシステムが求められます。IoTによって生産設備をネットワーク接続することで、故障感知や製品検査、あるいは進捗管理や在庫管理といった、さまざまな業務が自動化されます。製造工程における機械の稼働状況や業務状況が可視化され、人材不足という課題を補うことが可能になるのです。しかし現状、IoTの活用を経営ゴールへと結び付けるビジョンが見えず、導入に踏み込めないという企業も少なくありません。

産業IoTの導入ステップ

IoTやAIといったテクノロジーの誕生によって、産業界は大きな転換期を迎えています。少子高齢化や人口減少による人材不足を解消し、企業が新たな市場価値を創出するためには、これら最先端テクノロジーの活用が不可欠です。IDC Japanのレポートによれば、IoTの市場規模は2019年に7兆円を超え、2024年には12兆円を超えると予測されています。ここからは、今後さらに需要が拡大していくと予測されるIoTの導入ステップについて解説します。

監視(可視化)

IoT導入における最初のステップは、製造プロセスや生産データの可視化です。IoTは生産設備を常時ネットワーク接続することで、製造プロセスの業務進捗や膨大な生産データの統合的な管理が実現します。生産工場の稼働状況をデータとして可視化することで、定量的な分析に基づくワークフローを構築可能になるでしょう。

生産業務を可視化できるというメリットを最大限に享受するためには、監視する対象ごとに、何をどのように可視化するのかを明確にすることが求められます。

制御

生産における稼働データを可視化するだけであれば、従来のITシステムでも担うことは可能です。しかし、データを可視化するだけでは人の手が必要であり、作業の精密性や正確性を担保できません。

IoTは生産データを可視化し、なおかつ見える化したデータによって、設備や機器を自動制御できる点が大きな特徴です。従来は人の手で行っていた検品や故障検知などが自動化されるため、業務遂行における正確性と生産性の向上が実現し、余剰人員の削減につながります。

最適化

IoTは、生産工場全体における稼働データを可視化して自動制御し、最適化することで業務効率の改善と労働生産性の向上に寄与するシステムです。単体設備の稼働状態だけではなく、工場全域の膨大な生産データと、設備や機器の稼働状況を俯瞰的に捉え、最適化することで業務効率と生産性が劇的に向上します。局所的な部分最適ではなく、生産工場そのものを全体最適へと導くという点が、IoTの大きなメリットです。

自律化

IoTがもつ最大の特徴は、システムの自律化です。自律化とはすなわち、人が定義する最低限の目標をもとに、制御や最適化のアルゴリズムをシステムが自動的に作成するプロセスを指します。従来は人が決定したルールの範囲でしか行えなかったオペレーションが、機械学習によって最適化されたルールを自律的に設定することが可能です。ここまで見てきたデータの監視と制御、そしてシステムの全体最適という一連のプロセスを自律的に実行する点が、IoTの最も大きなメリットといえるでしょう。

産業IoTの利用例

ここからは、IoTの導入によって経営課題を解決した企業の事例をご紹介します。IoTを活用することで、どのような成果を創出したのかを見ていきましょう。

Henkel社

Henkel社は、ドイツのデュッセルドルフに本社を置く、世界的なブランドを展開するグローバル企業です。ランドリー&ホームケアやビューティーケアの部門で優れたテクノロジーを擁し、業界を牽引するリーダーとして世界中で事業を展開しています。

Henkel社は、世界中で猛威を奮った新型コロナウイルスの感染拡大により、工場施設間の移動が困難になるという経営課題を抱えていました。製造チームへの現場支援や知識の伝達が鈍化し、製造業務に大きな支障をきたしていたのです。

そこでHenkel社が取った選択は、AR技術による遠隔支援ソリューションの導入でした。「AR」とは「Augmented Reality」の頭文字をとった略称で、日本語では「拡張現実」と呼称される技術です。ARデバイスを利用することで、現実世界にバーチャルな視覚情報を重ねて表示し、目の前にある世界を仮想的に拡張することが可能です。AR製品の身近な例を挙げるなら、2016年に世界中でブームを巻き起こした「ポケモンGO」が代表的です。

Henkel社はAR技術を活用した遠隔支援を推進し、社内コラボレーションや知識伝達の向上、さらには出張コストの削減や時間の節約といった成果を実現しました。

Vestergaard社

Vestergaard社は、デンマークのコペンハーゲンに本社を置く、航空機用機器の製造を専門とする企業です。世界各地の航空会社や空港に飲料水供給装置や機体水洗装置、除氷装置や汚水装置といった専用機器を提供しています。

航空機用機器の製造には、一般的な工場機器とは比較にならないほどの精密性と正確性が求められます。そんな航空機用機器の製造を担うVestergaard社では、いかにしてワークフローを最適化しつつ、機器の精密性や正確性を向上するかが重要な経営課題となっていました。

そこでVestergaard社は、IoTソリューション「ThingWorx」を導入し、生産工場のスマート化を図ります。ThingWorxとは、設備や機器の稼働状況を可視化したり、異常検知や検査作業を最適化したりするなど、製造現場の生産性向上に寄与するシステムです。これを導入することで、同社は数百台の機器から得られるデータを統合的に管理し、工場全体における業務効率の改善と労働生産性の向上を実現しました。

また、IoTの活用によって、人間の目視とは比較にならないほど精密かつ正確な検品や感知が可能になり、最重要課題であった品質向上に大きく貢献したのです。

まとめ

産業界では、デジタル技術の活用によるDXの実現が経営課題となっています。IoTの活用はDX推進の一助となり、組織全体における労働生産性の向上や人件費削減につながるでしょう。産業界におけるIoTの現状をもっと詳しく知りたい方は、PTC社が提供しているレポート「産業IoTの目指すべき姿」をご覧ください。

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