AIによる需要予測のメリットや活用事例を解説

 2022.09.29  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

AIは、データに基づきコンピューターが学習し、物事の分類や識別、予測などを行う技術です。将来のニーズを予測する需要予測にも活用されており、製造業や小売業をはじめ、多様な業種・業界で注目されています。本記事では、AIによる需要予測にはどのようなメリットがあるのか、具体的な取り組み事例と併せてご紹介します。

AIによる需要予測のメリットや活用事例を解説

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AIによる需要予測とは?

過去の販売履歴や各種データを用いて、「需要に対して影響を及ぼす原因」と「予測したい需要」との関係性を学習したのち、将来の需要がどれくらいあるのかを予測することを「需要予測」といいます。

メーカーが需要予測を行うことで、製造する商品の数を調整し、廃棄や余剰在庫を削減できます。また人員配置においても、繁忙期が予測されるタイミングで事前に増員を手配できるようになります。

かつてはベテランスタッフが経験や勘に基づき判断する人的予測が主流でしたが、現在はAI(人工知能)を活用して高い精度で予測する、統計的な手法を導入する企業が増加しています。

AIによる需要予測の主な手法について

AIとは、人間のように物事を分類・判断・予測できるコンピューターを開発する技術です。なかでも大量のデータからルールや規則性を学習する機械学習は、ビジネスにおける活用が著しく、需要予測の分野でも広がっています。

AIが需要予測を行う際の計算方法には、主に以下の3つがあります。

移動平均法

「移動平均法」とは、過去の実績データから一定範囲内の平均値を計算して、将来の予測を行う方法です。平均値を算出する範囲が移動していくのが特徴で、それが名前の由来でもあります。後述する加重移動平均法と区別して「単純移動平均法」とも呼ばれます。

シンプルなロジックである反面、計算範囲が移動する都度再計算を行う必要があります。また、常に範囲は一定であるため、膨大なデータを蓄積したとしても精度向上にはつながりません。

回帰分析

「回帰分析」とは、ある事象に関して因果関係があると考えられる変数との関係性を直線で導き出す手法です。原因となる説明変数(独立変数/予測変数)を「X」、求めたい結果(目的変数/従属変数)を「Y」とし、XがYにどの程度影響を及ぼすのかを分析します。

ひとつの目的変数に対し、用いられる説明変数が単一か複数かによって、「単回帰分析」と「重回帰分析」に分類できます。たとえば、単回帰分析を式で表すと「Y=aX+b」となります。なお「a」は傾き、「b」は切片をそれぞれ表し、これらを求めるにあたっては最小二乗法が用いられます。

加重移動平均法

「加重移動平均法」とは、データの重みづけを行うことで平均値を算出する方法です。平均値を求める際、データの時期がさかのぼるにしたがって、重みづけを減らしていくのが特徴です。直近のデータを重視した平均値が算出できます。

AIを利用した需要予測を行うメリット

AIを利用した需要予測は、大企業だけでなく人手不足に悩む中小企業にとっても大きな効果が得られる手法です。具体的には、以下の3つのようなメリットが期待できます。

生産計画に根拠が持てる

AIは過去の膨大なデータに基づき予測するため、勘や経験に頼らずに、規則性に基づく一定の精度を持った予測ができます。そのため、メーカーが製品の生産計画を立案する際も、属人的な根拠に頼らずシミュレーションによる客観的な判断が行えます。

理論上最適な在庫量を把握できる

製造する製品が多すぎれば過剰在庫になり、少なすぎると販売機会の損失になります。そのため、在庫の最適化は重要です。AIを需要予測に用いることで、さまざまなデータを自動で分析し、その結果に基づき在庫量を最適に近づけることが可能です。

在庫を最適化することで、在庫管理業務や返品作業の効率化・負担軽減ができます。それにより捻出できた時間を使って、担当者は企画業務などより付加価値が高い作業に注力できるようになります。

なお、AIによる需要予測の精度は100%になることはありません。AIは完ぺきでないことを踏まえたうえで、運用しながら予測と実績値の検証を行い、適宜調整していくことが必要です。

担当者の負担を減らすことができる

手作業による需要予測では、作業できる人員が限られる、人によって精度にバラツキがあるなどの課題がありました。AIによる需要予測を導入することで、短時間で安定した精度の予測が可能となるうえ、担当者の作業負担も削減できます。

また、予測に基づき設備や人員の適正配置を行うことで、効率的に作業を行えるようになる点もメリットです。実際、ある企業ではAI需要予測システムを導入することで、10人以上の仕入れ担当者が手作業で行っていた仕入れ計画を自動化し、大幅な工数削減につなげています。

AIによる需要予測を活用した事例

AIを活用した需要予測は、すでに多様な業界・業種で導入されています。ここでは、先進的な取り組みを行っている3つの事例をご紹介します。

タクシー配車を最適化する

タクシー配車とは、自社の営業所以外で要望があった地点に車両を派遣することです。もともと電話で予約するのが主流でしたが、近年はタクシーアプリの登場により、スマホで車両を予約できるようになりました。それに伴い、アプリから乗客の利用状況などのデータを取得できるようになったことで、AI需要予測を活用した配車の最適化が進んでいます。

複数のタクシー会社では、過去の利用履歴などから利用者数をAIで予測し、高い需要が見込まれるエリアにあらかじめ多くの車両を向かわせるようにしています。これにより、利用客の待ち時間を削減できるほか、利用率の向上も期待できます。

あるタクシー配車アプリでは、車両の走行データや乗車数、周辺の乗車数といったデータを用いて、次の30分間にどれくらいの乗車数が見込めるかを予測しています。さらにAIが最適な走行ルートを提案することで、ドライバーが最短で目的地に到着でき、空車になる時間を短縮できるようになっています。

スポーツのチケットの価格を変動させる

商品・サービスの需要増減により販売価格が変動するシステムを「ダイナミックプライシング(変動料金制)」と呼びます。もともとホテル予約や飛行機のチケット販売などで導入されていましたが、近年ではコンサートやアミューズメントパークの入場料にも導入されています。

スポーツ試合の観戦チケット販売においても、このダイナミックプライシングが採用され始めています。AIがチケットの購入需要を予測し、需要が高い時期と低い時期で数%~数十%の価格差を設けることで、顧客のニーズにあわせた価格でチケットを販売できるようになっています。

一律価格で販売するのではなく、需要に基づき価格を増減させることで販売数をコントロールできるため、転売対策や売上の向上につなげることが可能です。主催者にとっても売上全体を上げられるメリットがあります。

回転ずしにおける需要予測

回転ずし業界にとって、商品の鮮度管理は非常に重要です。ある回転ずしチェーンでは、商品皿にICタグを取り付け、レーンを一定距離まわった商品を自動廃棄するシステムを導入し、常に新鮮な商品を提供しています。

回転ずしでは、顧客のニーズにあわない商品をレーンに載せると廃棄率が高くなるため、的確な需要予測を行うことが大きな課題です。しかし同社は、かねてから売れ筋や売れるタイミング、廃棄品などのデータを収集していたものの、膨大なデータ量を処理しきれずにいました。

そこでAI需要予測システムを導入し、事前に収集していたICタグのデータや、画像認識で得た注文状況データを活用できる体制を構築しました。これにより顧客ニーズの高精度な予測が実現し、適切なタイミングでの商品提供によって廃棄率を大幅に削減できたほか、待ち時間短縮による顧客満足度向上にもつながったとのことです。

まとめ

データに基づきニーズを把握できるAI需要予測は、企業の在庫や人員を最適化する手段として期待されています。しかし、AIも決して完ぺきではなく、すぐに満足できる結果が得られない点には注意が必要です。効果的に活用するためには、運用しながら調整を繰り返し、より精度を高めていくプロセスが必要です。

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