自動車業界にとってのHPC利用は何が良いのか?その概要やメリットを解説

 2021.01.15  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

大規模なデータを高速で処理できる「HPC」は、自動車業界に携わる企業にとって欠かせない存在となりつつあります。自動車の開発や製造においては、CADやCAEなどの高機能システムの利用が必要不可欠だからです。本記事では、HPCを利用するメリットのほか、近年注目を集めているクラウドHPCについても解説します。

自動車業界にとってのHPC利用は何が良いのか

HPCとは

「High Performance Computing」の頭文字をとり、略して「HPC」と呼んでいます。文字から想像できるように、ハイパフォーマンスを発揮できるコンピューターのことを指し、高度な計算処理能力を有していることが特徴です。

すでにHPCはさまざまな分野で活用されており、宇宙空間の探査や大規模なゲノム解析の処理、電力エネルギーの最適化などに用いられています。自動車業界においては、主にCAEで流体解析や非線形構造解析、衝突解析などを行うためにHPCが用いられています。

CAEは、多彩なシーンを想定したシミュレーションを、モニター上で行えるシステムです。入力したデータに基づき、部品の耐久検証や車の衝突シミュレーションなどが可能です。しかしながら、CAEは優れたシミュレーションシステムではあるものの、ストレスなく作動させるには高性能なコンピューターが欠かせません。膨大な計算量が必要となるため、高速で処理できるコンピューターでないとCAEを活用しきれないのです。

こうした理由から、自動車業界ではHPCの導入が始まりました。では、HPCの利用により、自動車産業に関わる企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。次から詳しく見ていきましょう。

自動車業界におけるHPC利用のメリット

大きなメリットとして、低コスト化の実現や研究開発における生産性の向上、設計・テストの迅速化などが挙げられます。具体的なメリットをそれぞれ解説します。

低コスト化の実現

車体や部品の設計や開発、製造などトータルでの低コスト化を実現できるのは、大きなメリットです。ハイパフォーマンスが期待できるHPCでCAEを運用すれば、設計プロセスであらゆるシミュレーションが可能となり、実機を用いる必要性がなくなるのです。

CAEでは衝突解析や流体解析、非線形構造解析などができますが、これらはどれも膨大な計算量が必要です。高速処理を実現できるHPCなら、問題なくCAEを運用でき、あらゆるシーンを想定したシミュレーションが可能となります。

たとえば衝突実験ひとつとっても、企業が抱える金銭的負担は相当なものです。実験のために必要な試作機を製造しますが、1台ではもちろん足りません。データを抽出しながら、幾度にもわたり検証と改善を繰り返すため、複数台の試作機が必要です。HPCでCAEを運用すれば、モニター上でシミュレーションができるため、こうしたコストを大幅に削減できます。

またHPCやCAE、CADを導入すれば、物理的スペースの削減も実現します。膨大な数の図面はデジタル化でき、保管スペースを別途用意する必要がありません。モニター上でシミュレーションができるため、試作機の製造や保管専用のスペースも不要となり、トータルでのコストカットが実現します。

研究開発の生産性が向上

複雑かつ膨大な計算量を短時間でこなせるHPCは、研究開発における生産性の向上効果も期待できます。研究開発の段階では、さまざまなデータを用いて実験や検証が行われます。仮に、処理能力の乏しいコンピューターで実行するとなれば、設計やテストにもいたずらに時間がかかり、スムーズな製品化を阻害しかねません。

高度な処理能力を有するHPCなら、設計やテストの迅速化を図れます。自動車や関連部品の設計、テストは幾度にもわたって繰り返されるケースが多いため、コンピューターの処理能力が乏しいと生産性が低下する恐れがあります。HPCを活用すればこうした事態を回避できるのです。

設計やテストの迅速化を図る

設計やテストに時間がかかりすぎると、いつまで経っても製造プロセスに移行できません。製造プロセスへ移行できなければ当然、製品の販売にも漕ぎつけられません。しかし、製品の性能や安全性をたしかなものとするためにも、設計やテストには相当な時間を費やすのが一般的です。

設計やテストのプロセスは、できるだけスピーディにクリアしたいのが現場の想いですが、そう簡単なことではありません。たとえば、CAEを用いたシミュレーションだけでも、数十~数百エクサバイトのデータが発生するため、コンピューター処理に相当な時間を費やしてしまいます。

多くの自動車メーカーがHPCを導入しているのは、こうした事態を回避し、設計やテストの迅速化を図るためです。高度な処理能力を誇るHPCなら、膨大な計算量になるシミュレーションでも、時間を大幅に短縮できるのです。

また、シミュレーションによって生成されたデータをスピーディに呼び出せるため、業務効率が向上します。トータルでの業務効率化が図れ、コスト削減にもつながるでしょう。

シミュレーションの迅速化

自動車の開発において、シミュレーションは欠かせないプロセスです。かつては実機を用いたシミュレーションの頻度が多かったのですが、現在ではコンピューターをメインに行っています。

製品のスムーズな開発と製造を実現するには、シミュレーションに時間をかけすぎるわけにはいきません。しかし、計算能力の低いコンピューターやシステムでは、どうしても時間がかかってしまうものです。

HPCなら、複雑で膨大な計算量を必要とするシミュレーションを、スムーズにクリアできる環境を構築できます。これにより設計から開発、製造、販売にいたるプロセスをスピードアップでき、コストダウンにもつながります。

クラウドHPCの利用で自動車業界のデジタル化

誰もがインターネットを利用する時代となった昨今では、さまざまなクラウドサービスが台頭し始めました。自動車業界で近年注目を集めているのは、「クラウドHPC」と呼ばれるサービスです。

通常、自社にHPCを整備するとなると、大掛かりなシステムを構築しなくてはなりません。しかし、適切に運用できるHPCインフラを整備するためには、当然ながら相当な費用がかかります。そのうえ専用スペースはもちろん、高度なスキルを有するスタッフも常駐させなければならないのです。

一方、クラウドHPCなら、インターネットに接続できる環境さえ整っていればサービスを利用できます。わざわざ自社に大掛かりなシステムを構築する必要もありません。専門スキルを有するスタッフを高給で採用しなくてもよく、必要に応じてサービスを利用できるのはメリットです。HPCインフラを整備し、専門のスタッフを採用することも考えると、大幅な費用削減が期待できます。

クラウドHPCのメリット

HPCインフラを整備しなくてもよいため、導入における初期費用を大幅に削減できます。基本的には使用した分だけ課金されるシステム(従量課金制)であるため、必要なコストを把握しやすいのもメリットといえるでしょう。

また、クラウドなら常に最新の環境でサービスを利用できるメリットもあります。サービス提供者側は随時アップデートを行っているため、最新の環境でシミュレーションやモデリングが可能です。自社HPCでは、バージョンアップごとに増設費用がかさみますが、その心配もありません。

また、自社HPCではセキュリティや災害時のデータ保全に不安が残りますが、クラウドならそうした問題も解決できます。堅牢なセキュリティとデータ保全の体制を整えているため、安心して利用できるのもメリットです。

まとめ

HPCなら、最小限のコストでさまざまなことができ、生産性向上や業務効率化なども実現可能です。メリットの多いHPCの導入を、ぜひこの機会に検討してみましょう。また、自動車業界ではクラウドHPCに移行する動きも目立ち始めています。クラウドHPCも、併せて検討してみてはいかがでしょうか。


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