生産設備のIoT化が製造現場にもたらすメリットとは?

 2020.12.04  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

IoTと呼ばれる仕組みを用いることで、これまで集められなかったデータを収集できるようになり、得られたデータを解析することで新たな価値や仕組みが生まれます。では、このIoTを製造現場に導入するとどのようなことが可能となるのでしょうか。

生産設備のIoT化が製造現場にもたらすメリットとは?

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そもそもIoTとは?

IoT(Internet of Things)は「モノのインターネット」と訳されます。これまでは人がインターネットを利用して情報を送受信することが重視されてきました。IoTとは、モノをインターネットに接続し情報を送受信することで、新たな価値やサービスを生み出すための仕組みのことをいいます。

例えばスマートフォンの位置情報を収集・分析して店舗の混雑状況の「見える化」を実現。インターネットに接続されている自動車ワイパーの稼働状況と気象データを組み合わせて、より確度の高い天気予報を提供する「コネクテッドカー」の試みなども行われています。このように、IoTによるモノからの情報は様々な価値を生み出す可能性を秘めており、今後急成長する分野として注目されています。

製造現場のIoT化が求められる理由

製造現場のIoTは「IIoT」(Industrial Internet of Thingsの略)と呼ばれることもあります。産業機械や運搬装置、人の動きなどのモノやコトの状態がネットワークを通して集約され、製造現場の「見える化」が行われます。また集約・見える化されたデータを分析することで生産設備の不具合を予測して予防保守し、生産管理や在庫管理も踏まえた製造工程のコントロールも的確に行うことができるようになります。

日本の製造業は人口減少・少子高齢化の時代を迎え、より効率的な働き方が求められます。製造業では人手不足による生産性低下が特に顕著で、早急な対策が求められています。また、大量生産・大量消費経済とは異なり、必要な時に必要なものを適切なタイミングで作り出す柔軟性も合わせて求められます。

しかし一方で、収集したデータを活用し、顧客とのやり取りやマーケティングの効率化につなげている企業の割合は全体のわずか3.9%にとどまっており、製造業のほとんどがデータを有効活用できていないという事実があります。効率的で、より柔軟性のある製造現場を考えたとき、IoTの導入はデータの有効活用も含めて大きな効果を与えてくれるでしょう。

データの「見える化」

製造現場にIoTを導入することにより、生産工程の「見える化」が実現できます。生産ラインへの投入、加工、出荷の流れをデータで把握、分析することで無理、無駄を明確に判断できます。さらに、特定の「人」の感覚に頼って判断されてきた原料や材料の投入タイミングを自動化するなど、データの「見える化」によって様々なメリットが生まれます。

生産性の向上

生産ラインの様々な機器から、どの作業にどれだけの時間を要し、完成品はいくつできたかという生産現場の状況を、データとして収集することができます。このデータを分析することで生産性が低い工程をボトルネックとして洗い出し、生産性の向上を図れます。また熟練技術者のノウハウを暗黙知や形式知として継承し、データとして残すこともできます。このように、長期的視点で生産性や品質を保ったまま継続的に生産ラインを稼働させられるのは大きなメリットです。

また、データだけでなく生産工程も「見える化」されるため、あらゆる業務の自動化・効率化が可能です。さらには、ペーパーレス化の実現や設備の稼働状況をコントロールすることで現場作業の改善に繋がり、生産性の向上が期待できます。

迅速なシステム異常の検知

生産機器の異常や故障を予測するのは熟練技術者でなければ難しいことです。しかし、24時間稼働している生産ラインを熟練技術者が常に監視することは不可能です。これもIoTによるデータ収集と分析により、異常や故障などのトラブルを24時間自動で検知することで解決できます。温度や振動数といったデータから判断することで、人間が監視するよりも高精度の監視も可能です。また、そういった高精度の監視を行うことで完成品の品質向上、安定化も期待できます。

データを元にした新たなシステム開発

製造現場で人の手により整理され、ERPシステムなどに登録される情報は製造現場全体の情報のほんのわずかだと言われています。製造現場のさらなる改善、生産性向上のためにはIoT機器からのデータをより効率的に収集し、簡単に分析・可視化できるシステム開発も不可欠です。さらには生産現場からのデータをERPシステムやCRMシステムと連携することで、経営判断の材料としてより積極的に活用していけるようになり、データ活用の可能性は広範囲に及びます。

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製造現場におけるIoT活用事例

ここからは製造現場向けのIoTソリューションや導入事例をご紹介します。

富士通株式会社

COLMINA(コルミナ)は富士通株式会社から提供される「ものづくりプロセス」を全体最適化するサービスです。製造現場のデータからデジタル空間に仮想工場を再現し、場所や時間にとらわれず予測・検証の結果を反映させるという考え方で提供されています。

サービスは大きく3階層に別れています。IoTデバイスからデータを収集するCOLMINA Edge、データを蓄積するCOLMINA Platform、データを分析活用するCOLMINA Serviceの3領域です。各領域に対して無線インフラやセンサー、データ分析アプリケーション、Aiアプリケーションなど他社製品とのデータ連携が検証済みであることを示す認定制度もあり、必要なサービスを組み合わせて使用できます。

データの見える化、分析、制御を可視化できる工場実践テンプレートとして、未来予測生産方式スイートや設備運用スイート、生産設備の改善サイクルを見える化するCOLMINAシナリオとして仕掛品モニタ、製造品質モニタ、企業間生産連携モニタといった直感的でわかりやすいビジュアライズも提供され、データを活用した工場のデジタルトランスフォーメーションを実現する様々な機能を備えています。

YKK AP株式会社

YKK AP株式会社の黒部荻生製造所(富山県黒部市)では、環境政策の一環としてモノづくり現場の省エネ推進の施策としてIoTを活用しています。工場周辺の風光・風速・温度・湿度を収集し、その数値を元にして計算された快適性と、消費電力をリアルタイムで表示する独自のシステムを構築しました。

黒部荻生製造所は富山湾から適度な風が吹く立地にあるため、社内で通風シミュレーションを実施しました。その有効性を確認した上で、前述のシステムで窓の開閉や空調設備を稼働させるタイミングを適切に予測。空調設備の運転時間を削減し、導入前に比べて空調エネルギーを17%削減することに成功しました。

IoTを工場内の生産設備だけに適用するのではなく、環境保全の観点で適用することでコスト削減にも結びついた事例と言えるでしょう。

メリットが多い一方で課題も

ここまで述べてきたように製造現場へのIoTの導入は様々なメリットが期待できますが、その反面課題も少なくありません。代表的なものとして、まずコストの問題があります。IoT導入の際はセンサーやネットワーク、データを分析するプラットフォームなどを準備するまとまったコストが必要になります。またIoTによるデータを解析することで具体的にどのような費用対効果を出せるのかイメージしにくく、経営者としてもなかなか予算を承認しにくいという現状があります。

次に人材と労力の問題があります。IoTの導入にあたり、まず自社独自の問題点などを踏まえた導入計画を立案し、導入後の運用計画立案、現場担当者への説明、システム運用マニュアルの作成、使用方法の説明など、IoT導入を企画する人材の労力も大変です。また製造現場の担当者としてもこれまでのオペレーションを変更する必要に迫られる可能性もあります。そのため、IoTの技術に不慣れだと、効率化を図るはずが現場の混乱を招き、生産性が下がってしまうことになりかねません。

また上記のような問題を乗り越えIoTにより製造現場のデータを収集できたとしても、データを正しく解析することでどのような課題が分かり、どのような対策が考えられるか、課題を解決することで何ができるのかといった対応ができなければデータを活用できたとは言えません。生産現場の全体最適化に向けてデータをどのように活用するか、ノウハウと知識が必要です。

まとめ

IoTを製造現場へ導入することは、これまで人の目や手を動かすことだけではわかりにくかった新しい知見を得られます。導入にあたり課題があることも事実です。しかし、IoTは変化が求められるこれからの時代において、製造現場が抱える課題を解決してくれ、さらには経営改善や付加価値の創出に強い武器になると言えるでしょう。

Factory of the Future製造現場が抱える課題。解決の鍵は「デジタル化」です。

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