放送業界はAIを活用するとどのようなメリットがあるのか?

 2020.07.03  デジタルトランスフォーメーションチャンネル編集部

いずれの業界にも深刻な問題はあります。放送業界においても深刻な問題がいくつか存在します。もっともよく聞くのが「人材不足問題」です。報道にしてもバラエティにしても、1つの映像を仕上げるためには多くの人材が関わります。その人材が不足しているというのですから、ことは深刻です。IT業界ならばICTツールでカバーできる面も大きいものの、放送業界では人手でなければ作業できない部分も多いでしょう。

しかし幸いにも、放送業界の課題を解決するための技術として「AI(Artificial Intelligence/人工知能)」が有効だとされています。放送業界とAIの結びつきはなかなかイメージし難いものでしょうが、実際に放送業界においてもAIは様々なシーンで実用段階に入っています。

本記事でご紹介するのは、放送業界においてAIを活用するとどのようなメリットがあるのか?です。これまでAIによる業界問題の解決について半ば都市伝説のように思っていた方も、この機会にAIによる新しいソリューション(問題解決方法)に触れてみましょう。

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AIを実際に活用した放送業界の取り組み

いきなり「放送業界の問題をAIで解決しよう」と言われてもピンとこないかもしれません。AIを使いこなすためにはその技術に精通した人材が必要ですし、何より問題を解決するためにどのようなアプローチを用いるか、つまりは豊富なアイディアが必要になります。そこでまずは、放送業界で実際にAIを活用した取り組みをご紹介します。

駅伝中継現場でのAI活用

駅伝中継においては、走行している選手の氏名や走行時間、所属チームごとの順位などリアルタイムに変化する情報をテロップで挿入していきます。これらのオペレーションをこなしているのはもちろん、全て人力です。具体的には選手と並走する中継車からの映像をスタッフが目視で確認し、情報を入力します。その作業に右往左往するスタッフの姿や決してミスはできないという精神的負担は、容易に想像できるでしょう。

AIは、このオペレーションを一手に担うことで、スタッフの負担を大きく軽減することに成功しています。AIはもともと「画面に映っているのは誰か?」という画像認識技術に長けているため、これを活用することで選手を自動的に判別してテロップを挿入することが可能になりました。さらに、中継車のカメラ映像からAIが自動的に選手間の距離を推定し、CGを自動的に作画することも可能にしています。

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報道現場でのAI活用

同じく画像認識技術に長けたAIを用いた事例が、報道現場におけるAI活用です。報道番組では画面に映った人物とそのメタデータ(氏名など)の取り違えが情報そのものの正確性を曲げ、社会的に大きな影響を与えることが少なくありません。「どの映像に誰が映っているか?」という情報は丁重に扱われ、人手によるメタデータの入力が当然のことに行われていました。

この分野はまで実用段階ではないものの、多方面で研究が進められています。今後はAIによる画像認識で映像に映っている人物を自動的に判別し、氏名などのメタデータをテロップとして挿入する技術が一般化していきます。

自動撮影カメラによる放送コスト削減

こちらもまだ実用段階ではありませんが、今後大注目の技術がAIによる自動撮影カメラです。この技術は特定のポイントに着目し、AIが自動的に映像を撮影するというもので、特にスポーツの撮影等に効果を発揮すると言われています。

例えばサッカーや野球ほどコートは広くなく、選手とボールを追いやすいバスケットボールの試合ではAIがズームすべきポイントなどを判断し、プロが撮影したものに近い映像を作り出すことができるようになっています。また、ゴルフなどにおいても、ゴルファーが打った球を追うのは人でした。これはなかなか難しいものですが、このようなことは今後AIが得意な領域として行うことも想像できます。同AIによってもたらされる大きなメリットが、放送コストの削減です。

放送業界では人材不足問題の他に、広告収入の減少による製作費のコストダウンなどの問題が挙げられています。その上で多様化した視聴者のニーズを満たすような映像を作らなければいけない状況なので、これまで100万円を投じて作成してきた映像も50万円、10万円となんとか製作費をダウンして同等のものを作らなければいけないわけです。この問題を解決するのは間違いなくAIだと言えるでしょう。

放送業界におけるAI活用の鉄則

放送業界に限らずAIはその裾野を大きく広げていますし、新しい技術も開発が進んでいます。今後は否が応でも、映像制作においてAIの存在を意識しなければならない日が来ると断言しても良いでしょう。ここでご紹介するのは、実際にAIを活用するにあたりどのようなポイントを意識すれば良いのか?という点です。いくらAIが優れていても、人が扱い方を熟知していなければ宝の持ち腐れになってしまいます。まずは放送業界におけるAI活用の鉄則を知りましょう。

AIは意外と原始的なものだと理解する

AIと聞くと人間の感情を理解したり、スラスラとコミュニケーションを取るロボットを想像する方も多いかもしれません。しかし、現代で活躍しているAIのほとんどはそうしたロボットとは程遠く、「何か1つの作業に特化したもの」が多いのです。

プログラミングの原点は1801年、フランスの発明家ジョゼフ・マリー・ジャカールが考案した「ジャカード織機」にあると言います。この機械は布を織るパターンの指示を何枚もの厚紙に穴を開けることで可能にし、パンチカードを変えることで異なる柄の布を折ることができるようになりました。

AIも突き詰めればこうした原始的な機械と変わらない部分が実は多く、「何か1つの作業に特化したもの」というのがほとんどなのです。そのため、AIを扱う人間としてまず心得ておきたいのが、全ての問題を一挙に解決する夢のようなAIは存在しないことです。それぞれの作業に特化したAIを駆使ながら、豊富なアイディアを用いて問題解決にあたれる技術こそがこれからの時代に必要になります。

学習すべきデータは正しく揃っているか

もう1つの鉄則は、AIに学習させるデータにあります。AIというのは膨大なデータを学習して初めて自動化を可能にするプログラムであり、AIにとってのデータは成長の糧のようなものです。人間でいうところの教養であり、食事でもあります。

人間は日々どういう教養を受けてどんな食事をするかで人間性が決まります。AIも同じく、どんなデータを学習させるかによって性能が大きく変化します。そのため、AIを使って解決したい問題とそのアプローチ方法が決まったら、その目的に向けて正しい学習データを用意し、AIを発展させていく必要があるわけです。

まとめ

今回は放送業界における一部の事例を紹介しましたが、AI活用はすでに多様な事例が存在しています。皆さんがAIを用いて何らかの問題を解決したり、画期的な映像制作方法などを考案した際は、ぜひこれらの鉄則を意識してAI活用に取り組んでいただきたいと思います。

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