AR技術が製造業・自動車産業にもたらす3つメリットと活用事例

 2020.12.07  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

世界的に、製造業の分野においてIT技術を導入しようという機運が高まっています。AIやIoTなどさまざまなIT技術が導入を検討されていますが、中でも「AR(拡張現実)」は、製造業の人手不足解消などに役立つ可能性があるとして注目されている技術。そこで、ARが製造業にどんなメリットをもたらすのか、わかりやすく解説します。

AR技術が製造業にもたらす3つメリットと活用事例

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AR(拡張現実)とは

「AR」とは、「Augmented Reality」の略称で、日本語では「拡張現実」と表現されます。スマートフォンやタブレットなどの端末を利用し、現実世界の映像にデジタルな情報を重ねることで、現実世界をバーチャルに拡張する技術です。

AR技術は日々進化を遂げており、スマートフォンのアプリなど、エンターテイメントの分野では日常的に使用されています。

そんなARと混同されやすいのが「VR」です。VRとは「Virtual Reality」の略称で、専用のゴーグルなどを使用することで、仮想世界をリアルに体験できる技術を指します。日本語では「バーチャルリアリティ」や「仮想現実」と呼ばれています。

ARは現実の世界に対してバーチャルな情報を付与する技術ですが、VRはバーチャルな世界をリアルに体感させる技術です。ARは現実世界に主軸を置き、VRは仮想世界に主軸を置く技術だと言い換えることもできるでしょう。

さまざまな業種で活用されるAR技術

AR技術はさまざまな分野で応用され、とくにエンターテインメントの世界で広く普及しています。2016年に大流行した「Pokémon GO(ポケモンGO)」もその1つです。

ポケモンGOはAR技術を利用することで、現実世界で実際にポケモンを集めているような体験ができるゲームで、一時期は社会現象になるほどの大ヒットを記録しました。

また、2025年に開催が決定している大阪万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」をメインテーマとして、AR技術を盛り込んだ最新テクノロジーの公表が予定されています。

ほかにも、ハウステンボスではARを利用したアトラクションがオープンしたり、JRではAR技術でスタンプラリーを行ったりするなど、ARは身近な場所で広く活用されているのです。

AR技術はこうした一般消費者向けのエンターテインメント分野以外でも注目を集めており、近年ではさまざまな分野の企業に向けてサービスも提供されはじめています。

例えば建築・土木業界ではARを用いて作業前に危険な状況を疑似体験することで、現場で起こりうる事故を想定し、未然に防ぐといった活用がされています。

またAR技術は工場のような製造業においても普及が進んでおり、ある企業では製造現場における技術者のトレーニングにAR技術が導入されました。

製造業はさまざまな機械設備を利用して生産活動を行っています。そうした設備の生産性を最大化するためには、優れた技術者の存在が必要不可欠です。

AR技術を用いれば、拡張現実世界で実際に業務を行うのと同等の環境を作り出すことができるため、技術者の教育に大きく貢献してくれます。

また、これまで設備の保守・点検といった業務は、マニュアルを片手に作業を進めるのが一般的でした。しかし、AR技術を用いたスマートグラスを利用することで紙媒体が必要なくなり、業務の効率化を図ることができます。

今日における製造業の課題

日本の製造業においてもARは普及しつつあり、さまざまな業務の効率化が期待されています。しかし、そうした背景には、日本の製造業が抱えている課題も潜んでいます。

例えば、深刻な人手不足や、IT技術によって複雑化する生産システムなどです。

製造業にはほかにも多くの問題が山積しています。AR技術の導入は、こうした問題を克服する一助となるのでしょうか。ここでは今日における製造業の課題について見ていきます。

工場の深刻な人手不足

製造業では、多くの企業において人手不足が課題となっています。経済産業省が発表した「製造業における人手不足の現状、および外国人材の活用について」によると、94%以上の大企業・中小企業が人手不足に悩まされているという調査結果が出ています。

また、32%以上の企業はすでに経営に影響が出ていると回答しており、人手不足が深刻な状況であるのは明らかです。

少子高齢化と人口の減少が進む日本は、今後さらに深刻な人手不足に陥っていくと予測されます。こうした現状を打破すべく導入が進んでいるものが、AR技術です。多くの企業がARやVR、IoTやAIといった次世代のデジタル技術を活用して生産性の最大化を図っています。

製品の複雑化

製造業は今日、時代の転換期に差しかかっています。人類史上4回目の産業革命となる「インダストリー4.0」が提唱され、工場のスマート化が進んでいます。

あらゆる機器や設備がITシステムと連携され、工場自体の生産性は高まっています。しかし反面、システムはどんどん複雑化していき、管理・保守をする技術者の負担は増加するばかりです。深刻な人手不足と相まって、技術者1人に求められる知識やスキルのレベルは高まっています。

優れた企業には優れた人材が必要であり、優秀な人材を育てることは企業にとって至上命題です。こうした教育問題に関しても、AR技術を応用することで従業員の教育コンテンツを制作したり、教育にかかるコストそのものを大幅に短縮・削減したりできると期待され、導入が進められています。

製造業でAR技術を導入する3つのメリット

製造業にAR技術を導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。AR技術に限らず、あらゆる設備や機器はコスト削減・生産性向上を目的として導入されます。ここではAR技術が製造業にどんな恩恵もたらすのかを見ていきましょう。

コストの削減

AR技術を製造業に導入することで最も期待される効果はコストの削減です。前述したように、製造業は高度なIT機器の導入によって業務は複雑化していく一方でありながら、深刻な人手不足に悩まされています。

こうした現状を打破するために、AR専用「HMD(ヘッドマウントディスプレイ)」を利用した技術トレーニングの導入が検討されています。

例えば、AR技術によって実際の現場で作業に取り組むのと同等の環境を作り出すことで、より実践的なトレーニングを積めます。また、手順や指示をディスプレイに表示すれば、トレーナー(育成者)がマンツーマンで作業を教えなくても正しい方法を学べるでしょう。

このように、従業員教育にかかるさまざまなコストを削減しながらも、技術者のレベル向上が叶います。

生産性の向上

AR技術の導入によって従来の作業形態も大きく変わり、生産性向上が期待されています。従来であれば、紙媒体のマニュアルを片手に作業進捗を確認しながら、保守・管理などの業務に取り組んでいました。

しかし、AR技術を導入することで、デバイスを通じた拡張現実に作業マニュアルを表示できるので、紙媒体は不要です。これにより、ハンズフリーで作業に取り組め、技術者一人あたりの労働生産性の最大化につながります。

また、AR技術では設備のメンテナンス業務の効率化も可能です。従来であれば設備のメンテナンスは技術者が、長年の経験と目視によって行っていました。しかし、AR技術と生産設備を連携させれば、メンテナンスに必要な情報を可視化でき、より効率的にメンテナンス業務を進められます。

遠隔地での作業指示やサポート

遠隔地から作業指示を出したり、業務をサポートしたりすることも、AR技術であれば可能です。スマートグラスなどのAR搭載デバイスを使えば、遠くにいる技術者とバーチャルな拡張空間を通してつながれます。熟練の技術者1人が、複数の作業現場に立ち会うということも可能です。

人件費削減や、トラブルシューティングの精度向上、生産性の劇的な改善など、さまざまな恩恵を享受できます。

製造業でAR技術を活用した事例

ここまでは、AR技術が製造業にどのようなメリットをもたらすかを見てきました。コストの削減や生産性の向上、技術者のスキルアップなどさまざまな効果が期待されるAR技術。実際に導入された企業では、どんな成果を挙げているのでしょうか。

AR技術の導入によって高い成果を生んだ、代表的な企業が、イギリスの航空宇宙関連企業「BAEシステムズ」と、日本の大手輸送機器メーカーの「本田技技研工業株式会社」です。
では、これら2社でのAR活用事例を見ていきましょう。

生産性向上の取り組み|BAEシステムズ(BAE)

まずは航空宇宙システムの開発・製造を行う企業「BAEシステムズ」のAR技術活用事例です。
BAEシステムズは、Microsoftが提供するHMD「HoloLens」を使い、3Dモデルを使用した作業マニュアルを、現実の映像と重ねて見られる技術を導入しています。このAR技術によって技術者は紙媒体のマニュアルなしに、円滑に作業を進めることが可能になりました。

BAEシステムズはこの方法で技術者のトレーニング効率を飛躍的に高め、教育にかかる時間を従来の30~40%短縮させています。また、技術者のトレーニング効率を高めることで、教育にかかる諸経費の削減につながり、必要コストを従来の1/10に減少するなど、大幅なコスト削減を実現しています。

工場の技術教育に導入|本田技技研工業株式会社(ホンダ)

次に日本を代表する企業のひとつ、「本田技技研工業株式会社(ホンダ)」の事例を見てみましょう。大手輸送機器メーカーであるホンダは、自動車やオートバイの生産・販売事業において世界トップクラスの業績を誇る世界的企業です。

このホンダでは、車体を組み立てる際のトレーニングに、ARを応用しています。従来はテスト用実車で組み立てトレーニングを行っていましたが、AR技術を用いて実車を必要としないトレーニングに変更しました。

ARデバイスを使った拡張空間で組み立て作業のトレーニングを行うことで、光の当たり方や、工場ライン上での動きなど、実車トレーニング以上に実践的な環境で訓練を行えるようになったといいます。

こうしたAR技術を活用した取り組みは、今後製造業のスタンダードになっていくでしょう。

まとめ

ARは製造業の未来を大きく変える革新的な技術でもあります。製造業界が抱える人材不足や業務の複雑化といった問題を解決へと導き、かつ、生産性を飛躍的に高めるなど、さまざまなメリットをもたらします。刻々と変化していく社会に適応し、多様化する顧客ニーズに応え続けるためにも、ARの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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