小売業のためのビッグデータ講座

 2019.11.18  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

ITの進歩で集めることが可能になった巨大なデータ群が「ビッグデータ」です。このビッグデータを解析して得られる情報は、的確な販売戦略の重要な手がかりとして小売業の現場でも大いに利用されています。今後もビッグデータの解析と活用がさらに進めば、マーケティングも大きく進歩することが予想されます。

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ビッグデータに関する基礎知識

インターネットが発展し普及するにつれて、これまでには想像もしていなかったような革命的な技術や考え方が次々と登場しています。「ビッグデータ」もそのひとつです。

ビッグデータとは

ビッグデータとは「インターネットなど情報通信ネットワーク上で生み出され集められたり保管されたりしている膨大な情報、データ群」のことを指しています。

例えば、オンラインショッピングを目的としたECサイトでは購買者の「住所」「購買履歴」「ポイント利用履歴」のデータが都度発生していますが、これもビッグデータのひとつです。
他にもビッグデータを構成するものとして、ICカードに記録された位置や乗車履歴、購買履歴などのセンサーデータ、SNSで参加者が書き込むソーシャルメディアデータ、Webサーバーなどが自動生成するアクセスログ、会員カードのデータ、Web検索エンジンの検索順位などWeb情報の閲覧データなどがあり、その種類と内容は多岐にわたります。もちろん、小売業での販売管理で発生するPOSデータもビッグデータのひとつです。

これらビッグデータは、業務データ、企業のデータベースなど既に分類されて構造化されたデータだけではなく、雑多な文字情報、音声、画像、映像、数値などいろいろな形式の構造化されていないデータを大量に含んでいるのが大きな特徴です。

ビッグデータの歴史

「ビッグデータ」という用語自体はデータ解析の分野でそれまでも使われていましたが、2010年代に入ってある種の「トレンド」を表すキーワードとして、新聞や雑誌、書籍などでも広く取り上げられるようになりました。

ビッグデータの概念自体が普及したきっかけのひとつは、2000年代初めにIT関連の調査会社のアナリスト、ダグ・レイニー(Doug Laney)氏が、データ成長の定義と概念について量(volume)、速度(velocity)、多様性(variety)の3つのVを使って表現したことに遡ります。
つまり、今まで困難だった大量のデータを保管することが新技術で可能になり(量、volume)、その大量のデータをインターネットの高速化やCPUの性能向上などで、リアルタイムで処理を行い(速度、velocity)、従来型のデータベースに格納されているような構造化されたデータに加えてあらゆる形の非構造化データを取り扱うことができる(多様性、variety)のが「ビッグデータ」ということです。

ビッグデータの可能性

ビッグデータは「IoT」、インターネットを介してコンピューターを利用する「クラウドコンピューティング」「AI(人工知能)」などと併せて言及される言葉でもあります。

IoT(モノのインターネット、Internet of Things)とはPCやスマホやテレビだけではなくエアコンや冷蔵庫などの白物家電や自動車や工場の工作機械などあらゆるものがインターネットに繋がってデータや情報をやりとりしている状態のことです。家電製品などこれらの稼働状況がリアルタイムで集められ、インターネットを通してサーバーへ送信、蓄積されます。このIoTの登場で今までとは比べものにならないほど大量のデータを収集することが可能になりました。
そして、クラウドコンピューティング上にあるデータ蓄積サーバーを利用することで、大量のデータを低コストで保管することが可能になりました。

そしてAIにデータ処理を任せることで大量のデータを解析することが可能になり、その結果を現場で活用することができるようになったのです。

このように「IoT」「クラウドコンピューティング」「AI」の最新テクノロジーの力を組み合わせることで、ビッグデータは新たな可能性を秘めた宝の山としていっそう注目を浴びることになりました。

今後もビッグデータの解析をもとに、資源や時間などのリソースを節約したり、新製品の開発に役立てたり、市場に投入するタイミングを計ったり、意思決定をスマート化させたりするなどの活用が期待されています。

現在も、売り上げ記録から気象衛星の情報、監視カメラの映像など、刻一刻と大量のビッグデータが収集され蓄積されていますが、解析され活用されているのはまだその一部に過ぎません。今後もビッグデータの解析と活用が進めば、様々な分野において、これまで実現不可能だった細密で正確な予測が可能になり、より効率的な運用ができるようになるかもしれません。ビッグデータはそういった大きな可能性を秘めたツールです。

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小売業界がビッグデータを活用するメリット

小売業界では商品の需給予測を正確にすることが重要です。季節による需要変動が大きいビールのような商品は「在庫切れによる機会損失」や「在庫の保有コスト」の影響が特に大きくなります。つまり、それだけ精度の高い発注が求められるのです。「気候変動」「イベントの有無」などのあらゆる要素を考慮すると担当者の経験則だけでは予測が難しいこともありますが、ここでビッグデータを活用すれば予測の精度が上がり、あらゆるパターンを想定した複数のプランを立てつつ、在庫切れを避けつつ在庫のだぶつきを避けて保有コストを抑えるなどより正確な対応が取りやすくなります。

こういった受注、発注、在庫、販売、物流などの情報を自社内や取引先などと共有して、原材料や商品の流通の最適化を測る「サプライチェーンマネジメント」は、ビッグデータの活用が特に威力を発揮する分野のひとつです。

また、来店する顧客とよりよい「Win-Win」の関係を築くことも小売業界の重要な課題です。顧客がどのような商品を求めていて、どういった接客を望んでいるかという情報は、これまでは個々の販売員や店舗の責任者個人の経験則や勘に任されてきた部分も多かったと言えます。
しかし、売り上げデータ、顧客データなどを統合したビッグデータを駆使することで、顧客をパターン別にこまかく分類する「セグメント化」を適切に行い、そのセグメントに応じた最適なマーケティングに繋げられる可能性があります。

また、他店舗が収集した情報を手に入れて解析することが格段にしやすくなったことで、これまでに自分の店舗で経験していない事柄への対策も可能になり、より正確に顧客の将来の動きを知ることが可能になります。

このように、小売業界でもビッグデータに有効な解析を加えて活用できるかどうかがビジネスの成否を分ける大きな鍵となりつつあるのが現代の情勢です。

小売業界でのビッグデータ活用事例

小売業界でビッグデータが活用されて効果を上げた事例も既に多数報告されています。ビッグデータを活用して需要を予測したり機会損失を回避したりするなど効率化に繋げている例や、これまでの常識を覆す販売戦略をとって成功した事例を紹介しましょう。

従業員の居場所を変えたら売り上げが15%アップ

小売業界では販売の機会損失を回避するためにビッグデータを大いに活用しています。
あるホームセンターでは売り上げデータ、従業員の行動データ、商品の陳列データを収集し分析することで、店内で顧客単価の高い場所を特定することに成功しました。その場所に従業員を重点的に配置したところ、売り上げが15%上昇したという事例があります。

スシロー 皿にICタグをつけて需要予測

ビッグデータの代表的な使い方のひとつに「正確な需要予測」があります。この正確な需要予測は「販売機会の獲得」や「無駄なコストの削減」に直結しており、ダイレクトに利益に反映されるため、小売業界においても力を入れるべきポイントです。
大手回転寿司チェーンのスシローでは、すべての寿司皿につけたICタグを通してレーンに流れる寿司の鮮度や売り上げを管理しています。結果、どこの店舗で、どういう種類のお寿司がどの時間帯にレーンに流されて、どのタイミングで顧客に選ばれたのか、あるいは廃棄されたのか、どのテーブルでいつ、どの商品が注文されたのかなどの詳細なデータが1年に10億件以上蓄積されています。そのICタグからのデータに加え、店舗の混み具合、顧客が来店してからの経過時間などのデータも加え、分刻みで需要を予測してレーンに流す商品の種類や量を決めているのです。

ヘビーユーザーが支えるローソン「ほろにがショコラブラン」

小売業界ではPOSシステムを利用していますが、POSシステムで得られる販売データをさらに詳しく解析して販売戦略に繋げる手法も普及しつつあります。
大手コンビニエンスストアのローソンはポイントサービス「Ponta」の導入で収集した顧客情報をPOSデータと組み合わせて、購買履歴データのビッグデータとして解析を行いました。
その結果、例えば菓子パンの「ほろにがショコラブラン」の売り上げの6割は、購入者全体の1割に当たるユーザーのヘビーローテーションで支えられていることが分かりました。菓子パン全体から見ればこの商品の売り上げ順位は決して高くありませんが、ローソンオリジナル商品でリピート率が極めて高いこの商品は顧客を失わないために重要であると判断されて販売が続いています。

ダイドー 「Zの法則」はなかった!?常識が覆ることも

小売業界で知られる人間の視線の動きとして知られているものに「Zの法則」があります。陳列棚などを見たときに人間の視線は上段の左側から右側へ移動し、上段を見終わってから下段左側へ移り、最後に下段右側に「Z」の字の形で視線が流れるというものです。この法則に従い、例えば自動販売機でも主力商品を左上に配置することが慣例になっていました。

自販機での売り上げが9割を占める飲料メーカーのダイドードリンコは、主力商品「ダイドーブレンド」のリニューアルに伴う販売戦略を立てるにあたり「アイトラッキング」(視線計測)の技術に着目しました。そこで、人間の視線を計測できる最新の機器を自販機に取り付けて、顧客の視点や視線のデータを収集分析したところ、自販機の場合は、上段ではなく下段に視線が集まることが判明したのです。この結果を踏まえ2013年から主力商品を自動販売機の下段に配置したところ、2013年上半期の売り上げが前年比で1.2%上昇したと言うのです。

ヤクルト データを統合 顧客の奪い合いを解消

有名飲料メーカー、ヤクルトの商品は数が多くひとつのカテゴリに150種類が存在しており、自社の商品同士でお互いに店頭で顧客を奪い合っている状況が長らく続いてきました。そして、それぞれの商品の担当社員が独自に作っていた表でバラバラに管理されていました。そこで、ビッグデータを収集して解析するシステムを採用し、担当者がバラバラに保持していたデータを統合して分析してみたところ、ヤクルトの15本パックと7本パックでは購入する顧客層が全く異なっており、並べて販売したときに両方とも売り上げが増加することが分かりました。

同社では、このシステムを使った売り上げの解析結果を小売店からも確認できるような仕組みにしています。これによって、小売店も得られた売り上げ分析をもとにして、独自の判断で店舗の棚配置を効果的に変更したりすることができるようになりました。また、棚の配置を変更した場合の効果を小売店に試してもらい、売り上げのシミュレーションを素早く行うこともできます。ヤクルトのケースはビッグデータを活用して臨機応変な販売戦略の構築にも役立てている事例と言えます。

まとめ

顧客の行動や好みを正確につかみ、サービスを効率的に提供するためのツールとしてビッグデータが様々な形で活用され始めています。そして今後もさらに活用が進むと予測されます。小売業界においてもビッグデータの活用が販売戦略の重要な鍵になるでしょう。

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