医療分野におけるビッグデータ活用の現状と具体例

 2020.08.13  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

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医療分野における「ビッグデータ」の活用が広がってきています。本記事では、ビッグデータそのものについて説明し、医療分野ではどんなデータがビッグデータとなるのか、またどのように活用できるか、現在あるいは今後の取り組みも含めてご紹介します。

医療分野におけるビッグデータ活用の現状と具体例

日本における医療の現状と課題

日本では、超高齢社会が到来しています。医療においては人材不足が著しく、一方で高齢者が増えるなか、健康寿命を延ばすための財政資源の増大が課題となっています。

このような社会的背景において、より少ない人数での医療体制でも高品質な医療サービスを効率良く提供していくことが求められています。しかし政府が「働き方改革」を掲げるなかでも、医療現場においては長時間労働がなかなか改善されていないのが現状です。そこで効率の良い医療サービスの提供に必要な取り組みのひとつとして注目されているのが、「医療ビッグデータ」の活用です。

では、医療における「ビッグデータ」とは、具体的になにを指すのでしょうか。

医療分野におけるビッグデータとは

まずはビッグデータそのものについて見ていきましょう。そもそもビッグデータとは、分野を問わず膨大な量のデータの集まりのことです。量が多く、かつ多様性のあるデータの集まりで、データの発生頻度や更新頻度が多いという特徴があります。

近年「ビッグデータ」が注目されているのは、IT技術の発展により大量のデータの管理や分析が可能になり、分析したデータを活用するメリットが世間的にも認知されてきているからです。たとえば、インターネットでの買い物や検索のデータが以前と比較して顕著に増加したため、それらをマーケティング活動に利用することが可能になりました。

いっぽうで医療分野におけるビッグデータは、具体的にいえば人の健康や病気、治療などに関する大量のデータを指します。これらのデータを活用することで、医療の質の向上や医療サービス提供の効率化、新しい分野の研究開発につながります。

データヘルス改革とは

次に、医療分野におけるビッグデータを活用した「データヘルス改革」について解説します。

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データヘルス改革とは、厚生労働省が推進する取り組みです。情報通信技術(ICT)を活用した健康管理や診療サービスの提供、それ以外にも健康・医療・介護などの領域におけるビッグデータを集積するプラットフォームを構築します。これらの取り組みを通して、人手不足といわれる医療現場でも国民が満足いく医療サービスを受けられるような、環境の構築を目指しています。

このデータヘルス改革において鍵になるのが、まさにビッグデータの活用です。データヘルス改革の最大の目的は、効率的な医療や介護サービスを提供することで、国民の健康寿命を引き延ばすことです。そのために必要なビッグデータを解析し、創薬などの周辺産業の育成などにもつなげます。

データ改革を推進することで、医療・介護・健康といったばらばらなデータを集約し、その分析を通して新たなサービスの創出や既存サービスの品質向上・効率化が容易になります。

たとえば、「がん」について考えてみると、現状では原因遺伝子を解明できないケースや、解明できても対処できる医薬品が存在しないケースもあります。ビッグデータを活用することで原因遺伝子の解明が進み、それをベースに新たな診療サービスや治療法の開発につながる可能性があります。あるいは、医療や介護などで独立したデータの集積になっているものが一元化されれば、民間企業や研究者がビッグデータ解析を通してイノベーション創出につなげられる可能性が高くなります。

今後の健康・医療・介護におけるビッグデータ活用の具体例

政府の後押しもあり、今後医療分野におけるビッグデータ活用が広がることが予想されます。その具体的な活用例について解説します。

PHRヘルス

特に注目されている活用方法のひとつが「PHRヘルス」です。"Personal Health Record"の略で、個人に関する健康診断のデータや医療情報などを一元的にサマリー化し、履歴情報として個人に提供することで自身の健康管理や予防行動に活かしてもらう取り組みです。

たとえば、私たちは生まれてから大人になるまで、さまざまな健康情報を保持しています。母子手帳から始まり、学校での健康診断結果、社会人になってからの定期健診結果、さらには薬局で作るお薬手帳の記録も情報のひとつです。これらをすべてデータ化し、自分たちの健康のために利用しようというものです。

また、保険の加入者と事業主向けの活用もできます。個人情報の保護を前提として、保険加入者の健康状態をスコアリングし、事業主に通知するものです。従業員の健康に関して問題を共有することで、事業主はそれを基に予防や健康増進のさまざまな取り組みを行うことができます。

データヘルス分析

もうひとつ注目されているものが「データヘルス分析」です。領域ごと、あるいは組織ごとに分断されていることの多い健康や医療、介護などの必要なビッグデータを、匿名化のうえ収集および個人単位で集約・解析できるようにします。これによって、各分野が抱える課題について科学的な分析が可能になり、保険者や研究者、民間企業などさまざまな関係者が医療分野において幅広く、かつ緻密な研究開発や実効性のある施策に活用しやすくなります。

データヘルス分析が広がることで、疾病や要介護状態を未然に回避するための予防施策や治験、治療法などの発見につながり、国民の健康寿命を延ばす目的に寄与するでしょう。

ビッグデータの活用を推進する具体的な取り組み

ビッグデータを活用するメリットは先述の通りたくさんありますが、ビッグデータの活用自体が滞っては意味がありません。最後に、ビッグデータ活用を推進する具体的な取り組みについてご紹介します。

保険医療データプラットフォームの構築

まずは、ビッグデータを集めるのに必要な「プラットフォーム」の構築についてです。ビッグデータの活用は、健康・医療・介護など複数の関連分野のデータの連結・プラットフォーム化が鍵になります。この取り組みを推進するために、既存のデータベースの活用を前提として、特定健診などの情報を扱う支払基金・国民健康保険中央会が横断的・統一的にデータベース間の連携や利用の基盤を支える役割を担います。ビッグデータの管理は、厚生労働省が「データヘルス改革推進本部」で決定する保険医療データプラットフォームに関する構想をもとに実行面を担います。

産学官へのデータ提供の充実

統一されたプラットフォームに集積したデータは、活用しなければ意味がありません。その活用においては、外部との連携もポイントになります。具体的には、匿名化の前提をもとに、産官学さまざまな関係者へデータを提供し、民間企業や研究機関がそれぞれの目的に対して活用できるようにします。単に提供するだけでなく、データ活用の目的も踏まえ、検索や抽出、加工のしやすい環境の整備やデータの質の担保など、充実したデータ提供を行う取り組みです。

万全なセキュリティ対策

ビッグデータの活用においては外部への開放もひとつのポイントになりますが、それは「セキュリティ」が十分に担保されていることが前提になります。医療情報は特にプライバシーへの対策が重要で、情報の匿名化などの既存の対策に加え、専門チームによるセキュリティの監視、情報漏えいを検知すると自動的にネットワークを遮断する仕組みなど、セキュリティ対策を徹底して行っています。AIも活用してコストも下げながら万全のセキュリティ対策を行い、ビッグデータの活用を支えています。

まとめ

「働き方改革」の推進が遅れている医療現場でも、長時間労働を抑制する取り組みが始まっています。そのうちのひとつがビッグデータの活用です。高品質の医療サービスを提供するために、データを一元集約するプラットフォーム構築、セキュリティ対策、データの加工環境等の整備をすることで、さらなるビッグデータの活用が期待されます。

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