製造業

CADデータの管理にはPDMが効く、その課題と改善項目について

製造業では、製品製造を効率化するためにCADを活用する現場が増えています。しかし、適切なデータ管理をしていないと、設計データ損失のリスクや部品選択ミスなどのエラーが起こり得ます。そこで本記事では、CADが抱えるシステム上の課題・CADの課題を解決可能なPDMの概要・PDMによって何がどう改善できるのか、を解説していきましょう。

CADデータの管理にはPDMが効く、その課題と改善項目について

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CADデータ管理の課題とは

3D CADの普及に伴い、データ管理における課題が浮上しています。まずは、その課題について詳しく見ていきましょう。

共同設計中のデータ損失リスクがある

3D CADでは、チームで1つのデータを編集して作業効率を上げることが可能です。しかし、このような作業では保存のタイミングが重なると、片方のデータが失われることがあります。もし、このようなトラブルが発生した場合、失われた側の業務は無駄になってしまうでしょう。

そして、こうした無駄が重なると、設計全体に余計な時間がかかってしまい、作業者の負担も大きくなります。そうなると作業者の生産性低下の要因となり、運用コストの増加へつながります。あるデータでは、1MBのデータ損失につき約10,000ドルの損害があると試算されているのです。

上記のデータはあくまで目安ですが、最悪の場合、トラブルが発端となって納期に間に合わなくなってしまうこともあるでしょう。納期の遅れは、企業の信頼問題にもかかわるため、なるべく避けなければなりません。

意図しないデータ更新の発生

CADを利用している現場では、データ更新やアクセス権の設定が適切にできていないことがあります。こうした管理が不足すると、トラブルの要因となるため注意が必要です。

例えば、アクセス権の管理がされておらず、誰でもデータ編集ができる状態だと、想定外のところで編集や削除が起きてしまうこともあります。そうなると、ミスがあることにすら気がつかず作業を進めてしまったり、削除によってデータ損失が発生してしまったりするのです。

また、データの更新状況が適切に管理できていないと、各々のローカル上にさまざまなバージョンのデータファイルが存在することになります。もし、誰かがこれらに古いデータを上書きしてしまった場合、上記と同様にデータ損失が発生してしまいます。

前述しているようにデータ損失は損害となり、生産性の低下や大きなトラブルの要因にもなります。そのため、こうした問題はできる限り避けたい問題と言えるでしょう。

誤った部品ファイルを使用するリスク

複数の製品で同じ部品を使用している場合に起こり得る問題として、部品更新の反映忘れがあります。「1つの製品では、更新された新しい部品を使用しているのに、違う製品では古い部品のまま設計が進んでしまう」というケースです。

設計段階でこのミスに気づけばよいのですが、万一このまま製品化してしまうと問題が発生します。例えば、誤った製品が世に出回ったということが認知されてしまうと、企業イメージが悪化してしまいます。さらに商品の回収となれば、損失が大きくなることは想像に難くありません。

そのため、部品データは一括で管理して、最新のデータをしっかりと共有できるようにしなければいけません。

PDMとは

「PDM」は「Product Data Management」の略で、製品データを一括管理するシステムのことです。生産情報や設計・企画データを一元的に管理し、生産性の向上や管理不足によるミスを防ぐことができます。

CADでは、3D CADの普及に伴って、データ管理の重要性が指摘されるようになりました。現在は、業務に合わせてCAD・CAE・CAMといった複数のデータが使用されることもあり、管理はより複雑になっています。このような背景から、前述したようなミスが多く起こっているのも事実です。

そこでCADデータを一括管理するシステムとして、進化したPDMサービスが注目を集めています。これまでは紙媒体での保管だったのが、3D CAD向けのシステムとしてデータ管理を主に扱えるようになったのです。

また、このようなPDMシステムは製造関係の業種で利用されており、工業からアパレルなどの服飾製品の製造にも活用されています。幅広い業種で利用されていることから、現代の業務においてデータ管理がとても重要であることがわかります。

「Celb」や「Base-Right」といったさまざまなサービスが提供されていて、中にはクラウドで提供しているベンダーも存在します。クラウドサービスは手軽に利用できるため、PDMの普及にも一役買っていると言えるでしょう。

PDM導入でCADの課題改善

PDMを導入すれば、製品データの一元管理が可能です。これを利用して、前述したCADの課題を改善していきましょう。

製品情報の一元管理

PDMでは設計情報のステータスを監視し、ユーザーのアクセスやバージョン情報を常に管理します。例えば、ユーザーがデータにアクセスするときは、チェックアウトすることでほかのユーザーに使用を知らせます。

そして、1人がデータ編集するときは、ほかのユーザーが編集をできなくすることで、同時保存によるミスを防ぎます。作業終了後はチェックインされて、自動でデータのバージョンアップが行われます。更新されたバージョンは、新旧含めてすべてのデータを検索できるため、万一ミスしても前のバージョンに戻すことが可能です。

また、ユーザーによってアクセス権限を管理することで、書き込みができるユーザーと読み込みだけしかできないユーザーに分けられます。複数の設計データを1つのパッケージにして一斉送付することで、読み込みしか行わないユーザーへ情報をシェアすることも可能です。このようにPDMは、データを複数人で利用してもミスが起きないように、全体で管理できるシステムを提供します。

製造の業務フローの標準化

PDMでは、作業時の進捗をすぐに確認できるようになっています。遅延が起きた場合のタイマー設定など、条件による分岐設定もできるため、プロセスを鮮明にして設計の管理をより円滑化します。

さらに設計変更では、リリース前に承認・却下の確認を行えるようにできます。変更者とは別の第三者が確認を行うことで、変更ミスを事前に発見できるのです。そして、承認された場合は、変更情報をメンバーに通知してバージョン情報の周知可能。このような工程があることで、変更に伴うミスの防止や承認業務の効率化へつながります。

生産性の向上

ここまで上げてきたメリットによって、生産性の向上が期待できます。例えば、ワークフローの標準化や適切な管理によって、作業がスムーズに行えるようになります。煩雑な作業に費やす時間は少なくなり、リソース削減・作業員のストレス軽減などが可能です。

作業員のストレスが解消されれば、モチベーションが上がり、作業効率もおのずと高まるでしょう。こうしたワークバランスの改善は、従業員のみならず企業イメージの改善へつながります。

またミスを減らせれば、損失も減らすことが可能です。前述したように、1MBの損失で10,000ドルの損害が出るということを考えれば、ミスの減少はコスト削減に大きく寄与します。不要なミスによる不必要な作業がなくなれば、進捗の遅れや無駄な残業をなくすこともできるでしょう。

PDM導入により、納期の遅れやミスによる不良品の生産といった重大な問題も起こりづらくなり、安定した企業活動が期待できるのです。

まとめ

PDMの導入は、CADデータの管理不足によるデータ損失や重大なミスを防ぐ効果があります。また、ワークフロー標準化やスムーズな作業を実現できるため、生産性の向上も期待されるでしょう。CADデータを多く扱っていて管理が問題となっている企業は、PDMを活用することで多くの問題点を解決し、企業活動の安定化を図りましょう。

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