自動車における構造解析とは?その種類や事例について

 2021.01.18  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

自動車などの産業製品を開発・設計する際には、構造物の変形を定量的に分析し、適切な素材や寸法を設計することが極めて重要です。本記事では、構造解析の概要や目的、また構造解析ソフトウェアの機能について詳しく解説していきます。

自動車における構造解析とは?

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自動車における構造解析とは

構造解析とは、対象に荷重が作用した場合に、各構造部に生じる応力や変形の状態を、定量的に把握し分析することです。構造解析では、CADのようなソフトウェアを用いてプログラム上で解析対象をモデル化し、その対象に静的荷重や動的荷重を加えることで生じる変位や挙動を算出します。その解析結果を活用し、構造設計に必要な部材の板厚や補強材の形状の決定や、実験が不可能な地震などの自然現象や事故時における構造物の安全性評価の実施が可能です。

構造解析はコンピューター上でさまざまな状況を想定し、3次元構造物に関する力学性状をシミュレーションできるのが大きな特徴です。こうした特徴から、ものづくりに関わる製造業や建築業において広く普及しています。自動車産業をはじめとするさまざまな産業において、安全性と信頼性に関するニーズは年々高まるばかりです。車両運動、流体動作、強度剛性、振動騒音、衝突安全など、優れた技術開発が求められる自動車産業において、構造解析は不可欠な手法といえるでしょう。

自動車における構造解析の目的

自動車産業において安全性能の向上は最も重要な課題のひとつです。警察庁が令和3年1月に発表した「交通事故発生状況の推移」によると、交通事故発生件数と死者数は平成から令和にかけて減少傾向にあります。交通事故発生件数は平成元年には661,363件だったのに対して、令和元年は309,000件と半分以下に減少しています。

また、事故による死者数も平成元年が11,086人であるのに対して、令和元年は3,215人と3/1以下に減少しています。交通事故発生件数と死者数は単純に減少の一途をたどってきたわけではないため、その背景には、警察の取り締まり動向や社会の年齢構造など複雑なものがあると分析されています。しかし、交通事故による死者数が減少している理由のひとつと考えられているのが車体の安全性向上です。

各自動車メーカーの努力もさることながら、国土交通省と自動車事故対策機構は、安全な車が作られ選ばれることを目的として、「自動車アセスメント(JNCAP=Japan New Car Assessment Program)」を1995(平成7)年から実施しています。部材の力学性状を明らかにする構造解析は、安全性の向上に欠かせないシステムといえるでしょう。

部材の力学性状を詳細に把握できる構造解析は、主に工業製品や建築物の設計段階に使用されます。とくに自動車産業は、安全性向上と軽量化実現の両立が求められる業界です。車体の強度と剛性を高めつつ、軽量化を実現するには高度な技術が欠かせません。材料力学を踏まえた構造解析を用いたプログラム上でシミュレーションをすることで、衝突時の破損状況、車両構造の変形、干渉状況、荷重、ひずみといった物理量が明瞭に可視化されます。それにより、ボディの強度と剛性を高めつつ、軽量化へと至るための設計が可能になるでしょう。

その他にも、構造解析を用いることでプレス加工時の材料に加わる力と材料の変位についても解析できます。また、ゴム材の弾性衝撃の解析や、地震により倒壊する建物の応力や変形といった力学性状も明らかにできるでしょう。こうした解析の積み重ねで、適切な部材の選択や最適な設計が可能となります。このように、対象に生じる外力や内力による構造物状態を定量的に分析するという特徴から、構造解析はあらゆる産業における設計・製造に応用可能な解析法といえます。

自動車における構造解析の種類

構造解析の代表的な解析法は6つあります。それが「線形静解析」「非線形解析」「固有値解析」「座屈解析」「動解析」「熱伝導解析」です。

その中でも、最も一般的な構造解析が「線形静解析」です。求めたい構造物の変形度合いや、材料の挙動、支持条件や接触条件などによって解析の手法が異なりますが、これらの設計問題で多分に適用されています。線形静解析でカバーできない領域や事故時の安全評価などに用いられるのが「非線形解析」です。

構造物の固有振動数、振動モード、衝撃力などを検証する際は「固有値解析」が利用されます。「座屈解析」は、薄板や梁形状の圧縮力による現象や、構造物が不安定に崩壊するようなケースに使われる解析法です。加速度を伴う荷重や振動現象の検証には「動解析」が適用されます。「熱伝導解析」は熱条件を伴う温度分布や熱流束の検証に用いられる手法です。自動車の構造解析では、主にこの6つの解析法を用いて、さまざまな検証・分析が行われています。

自動車における構造解析の事例

自動車には安全性能・環境性能・快適性能の3要素が求められます。時代の変化と共に高度化・多様化するニーズに応えていくためには、フレキシブルな生産体制を確立しなければなりません。そのためには構造解析のような優れた分析手法が不可欠です。ここからは、自動車における構造解析の事例について解説します。

事例1: 変形と破壊の分析

自動車の性能において、何よりも最優先されるのは安全性の向上です。頑丈で壊れにくい自動車を設計するためには、「なぜ壊れるのか」を理解しなければなりません。どれほど頑丈な物体であっても、大きな力を加えれば変形や破壊といった現象が起こるでしょう。ところが、同じ大きさの力を加えても、破壊される物体とそうでない物体があります。その理由は、物体の破壊を決定するのは力の大きさだけではなく、応力が関係してるためです。「ものはなぜ壊れるのか」「どの程度の力で壊れるのか」など、変形と破壊の分析を用いることで、衝突時の衝撃からドライバーを保護するボディの設計・開発へとつながるでしょう。

事例2: 自動車足廻り部品の応力解析

構造解析は物体に力をかけ、応力や荷重といった力学性状を細かく状況ごとに切り分けて計算をシンプルにする手法です。構造解析を用いたプログラム上でシミュレーションを実行すると、高い負荷がかかる領域を予測・発見できます。たとえば、自動車の足廻りは高い重量負荷がかかり、特定の部分に応力が集中すると金属疲労が発生する領域です。応力の均等化や耐久性の向上の実現には、構造解析を用いた応力や荷重の可視化が欠かせません。足廻り部品の応力を解析することで、適正なフレーム強度の確保につながるでしょう。構造解析を用いることで材料や構造の違いによる応力が可視化され、問題の早期発見と早期対応につながります。その結果、業務の標準化、納期の短縮、解析結果の共有による品質向上、製造コストの削減といった効果が期待できます。

まとめ

これからの自動車産業は、従来の走る・曲がる・止まるといった基本性能だけでなく、洗練されたデザイン性や安全性の向上、そして環境性能など、さまざまなニーズに応えていく必要があります。つまり、安全性能・環境性能・快適性能の3要素の実現です。構造解析を用いて部材の力学性状を明らかにすることで、環境問題に配慮した、安全かつ快適な自動車の開発につながるでしょう。

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