小売業のキャッシュレス化は急務!今考えるべきこととは

 2019.10.30  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

海外と比べキャッシュレス決済への対応に遅れをとっている日本ですが、政府の打ち出した「未来投資戦略2017」や「キャッシュレス・ポイント還元事業」といった政策を機に、ようやく国内でも広まりつつあります。小売業・消費者にとってキャッシュレス決済は、どのようなメリットがあるのか、あらためて整理しておきましょう。

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小売業キャッシュレス化の現状

2019年10月より、消費税が従来の8%から10%へと増税されました。この増税や技術発展などを機に、国内では一層キャッシュレス化を推進する声が強まっています。

日本と諸外国とのキャッシュレス比率

しかし、日本の小売業でキャッシュレス化を実現している割合はわずか20%ほどとされています。

キャッシュレス化が浸透している海外諸国は40%から60%台であることを考えると、日本は依然としてキャッシュレス決済において発展途上の段階と言わざるを得ません。日本はなぜ世界諸国と比較してキャッシュレスの波に大きく乗り遅れてしまったのでしょうか。

治安の良さがキャッシュレスを遅らせる?

その背景にある要因のうち、日本特有の理由としてまず挙げられるのが、治安の良さです。その治安の良さゆえにATMが至るところに設置され、簡単に現金を引き出して安全に持ち歩くことができます。日本の硬貨や紙幣の偽造防止技術は世界トップクラスと言えるほどで、偽造通貨がほとんど出回っていないことも要因の一つといえるでしょう。このように、現金を利用することに対する安全性や信頼性の高さが、逆にキャッシュレス化を遅らせてしまっていると言えます。

コスト負担増がキャッシュレスを遅らせる?

また、店舗側に端末設置やネットワーク接続料、加盟店手数料といったコスト面での負担が多く、なかなかキャッシュレス決済対応に踏み切れないといった理由も挙げられます。

このように、消費者側は現金崇拝の傾向が強く、店舗側は導入コストの重さに及び腰になっているという現状が、日本のキャッシュレス化の遅れを招いているのです。

政府のキャッシュレス推進

こうした状況に対して、政府は2017年に「未来投資戦略2017」を公表し、今後10年のあいだにキャッシュレス比率を40%にまで引き上げることを目標に定めました。この比率を上げるための政策の一環として、2019年10月に行われる増税に伴う形で「キャッシュレス・ポイント還元事業」が始まりました。加盟店でキャッシュレス決済を行うと購入額の数パーセントを国が還元するという政策で、増税が始まる2019年10月から9ヶ月間実施されるものです。増税やこうした政策を機に、店舗側でも対応する徐々に動きが増えてきています。

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キャッシュレス決済の種類

キャッシュレス決済はいくつかの種類に分けられます。
それぞれ店舗側が導入するコストやメリットが異なるため、キャッシュレス決済対応店といっても、すべての決済方法が備えられているとは限りません。

クレジットカード決済

クレジットカード決済は昔から存在するキャッシュレス決済です。日本でもコンビニエンスストアやスーパー、百貨店などはもちろん、店舗のあいだでも普及しています。利用するためにはクレジットカード会社ごとに加盟店として登録する必要があり、特定のカード会社は登録していないため使えない、といった場合もあります。

また、カードリーダーを設置する必要もあるため、店舗側にとって導入コストは比較的重いと言えるでしょう。

利用方法は、クレジットカードを提出してリーダーで読み取ってもらいサインをするだけです。また、カード会社によってポイントが付与される、後払いなので現在の手持ちがなくても買い物ができる、購入内容によっては分割払いなど支払い方法が選べる、などとメリットも多く、消費者にとっては利用しやすい決済方法です。

タッチ決済

タッチ決済とは、磁気カードやスマートフォンのアプリをリーダーにタッチさせて電子マネーで支払う方法です。磁気カードは事前に決められた額を購入したりチャージしたりするプリペイド型が主流で、交通系電子マネーとして日本でも広く普及している「Suica」「PASMO」「SUGOCA」などが代表的です。

交通系カードは各交通機関はもちろんのこと、コンビニエンスストアやスーパーや百貨店、駅ビル内などで利用が可能です。交通系以外では「楽天Edy」「WAON」「nanaco」などがあります。また、近年はスマートフォンへSONYが開発した非接触型ICカード技術「FeliCa」が標準実装されていることも増えており、スマホでのタッチ決済も普及しはじめています。
スマートフォンのタッチ決済といえば、ドコモが提供する「おサイフケータイ」やAppleが提供する「Apple Pay」が有名です。また、「QUICPay」や「iD」といったクレジットカードのタッチ決済サービスも存在しています。これらは「Apple Pay」で対応したこともあり、近年利用者が急増しています。
これらのタッチ決済サービスもコンビニエンスストアを始めとするさまざまなチェーン店で利用できますが、小売店舗においてはクレジットカードほど普及はしていないのが現状です。

QR決済

QR決済とは、近年増え始めてきている新しい形のキャッシュレス決済です。
大きく分けて2種類の決済方法が存在しており、店舗側が設置したQRコードを消費者側がスマートフォンなどで読み取る方法と、消費者側がスマートフォンの画面に提示したバーコードを店舗側がリーダーで読み取る方法に別れます。

QR決済が人気を集めている大きな理由は、店舗側の導入が容易だという点です。
店舗側が行うのはQRコードの設置だけなので、高価なカードリーダーを導入するよりも遥かに初期コストを抑えることができます。

また、クレジットカードのように加盟店に加入する必要はありません。ただし、決済手数料は支払う必要があります。

店舗側にとってはメリットの厚いQR決済ですが、消費者側はアプリを立ち上げQRコードを読み取り金額を入力する動作が必要で、他のキャッシュレス決済と比較して支払いに少し手間がかかってしまいます。

操作に慣れていない利用者がいる可能性もあるので、店舗側は支払い方法もしっかり理解して消費者側に使い方を説明できるようにしておく必要があるでしょう。

キャッシュレス決済のメリット

日本は出遅れてしまっているキャッシュレス決済ですが、そのメリットは多く存在します。
例としては前述したように、消費税の増税に伴い2019年10月から9ヵ月のあいだ、キャッシュレス決済を行えば購入額の数パーセントが還元される「キャッシュレス・ポイント還元事業」が実施されるという点です。

この事業では国が政策として期間限定でポイント還元を行っていますが、国による政策に留まらず、キャッシュレス決済はサービス提供側によって還元が行われる場合が多々あるのです。
他にも、現金支払いにはないメリットがキャッシュレス決済にはたくさんあります。その具体的な内容を、消費者側、店舗側に分けて見ていきましょう。

小売業界側のメリット

キャッシュレス決済を導入することでまず挙げられるメリットが、会計作業の効率化です。
現金支払いと比較するとどの種類の場合でも消費者側とのやり取りが少なくなるため、会計がよりスムーズになり、作業を行う店員の負担は軽減されるでしょう。
それに伴い店員の雇用数を抑えることができれば、コスト減にもつながります。

もう一つのメリットは、顧客のデータを集めやすいという点です。キャッシュレス決済を行うと支払った消費者の情報をデータとして蓄積することができます。集めた顧客のデータベースは、経営戦略を立てる際に役立つ貴重な判断材料となるはずです。さらに、消費者の購買行動を促進し、購買の接点を現金支払いよりも増やせるメリットもあります。

クレジットカード決済は後払いなので、「今手持ちはないけどほしい」という消費者の望みを叶えることが可能となります。他にも「現金はないけど電子マネーならある」「一括は悩ましいけど分割払いなら払える」といったニーズにも対応できます。また、キャッシュレス決済限定のクーポン配信や割引キャンペーンの実施などを行い、販売促進につなげることも可能です。

以上のように、キャッシュレス決済を導入すると消費者のさまざまなニーズに応えることができるようになるのです。購入してもらえる機会を増やすことで、結果として売り上げの増加につながります。

消費者側のメリット

消費者側のメリットは、まず何より手軽に決済が行えるという点です。
ほとんどのキャッシュレス決済サービスはカードやアプリを差し出すだけで完結し、決済までのプロセスがやや煩雑なQR決済も現金のやりとりと比べればスムーズに行えます。

そして、前述したようにポイントが貯まるという点も見逃せないメリットです。還元率は決済方法や提供会社によってさまざまですが、少なくとも2019年10月から9ヵ月の間は2%~5%の還元を受けることができます。これに提供会社側のポイント還元も加えれば、さらにお得に買い物ができます。このようなキャンペーンは現金支払いではあまり見られないので、少しでも節約したい場合はぜひ活用しておきたい特典です。

さらなるメリットとしては、お金の使い道を明確化しやすいという点です。毎月の支出をメモするのは意外と大変な作業で、「レシートも受け取ったはいいけど結局そのまま放置している」という人も多いのではないでしょうか。その点、キャッシュレス決済は利用明細が残るので、現金よりもお金のフローを把握しやすいのです。電子マネーアプリを通じて購入した場合はスマートフォンからいつでも利用明細をチェックすることができます。クレジットカードや磁気カードの場合も、オンラインサービスに登録していれば同じようにWeb上で明細の確認が可能です。

キャッシュレス決済の課題

小売業界側と消費者側、双方にメリットの多いキャッシュレス決済ですが、もちろん課題もいくつか残されています。

続いて、双方の立場からキャッシュレス決済におけるデメリットを確認していきましょう。

小売業界側の課題

店舗側にとっての最大の問題点は、やはり導入にかかる工数です。前述したように、カードリーダーは設置コストが非常に重く、また加盟店に登録すれば手数料もかかってしまいます。
QR決済の場合は手軽にQRコードを設置できるので取り扱いも増えてきていますが、支払いにおける決済手数料は提供会社に支払わなければならないので、それを理由に導入に至らない店舗も依然多く残っています。

また、コスト面の他にも、単に必要性を感じていないという声も少なからずあります。
「客側からの要望がない」「店舗の雰囲気にそぐわない」「導入によるメリットを感じられない」など、費用以外の理由は多岐にわたります。

こうした問題点を解決するためには、消費者の立場も含めてキャッシュレス決済のメリットをより周知していく必要があります。

消費者側の課題

一方、キャッシュレス決済に否定的な消費者の声は「浪費してしまいそうだから」「お金を使う感覚が麻痺しそうだから」「お金のありがたみが薄れるから」という感情的な意見が大変を占めます。

キャッシュレス決済はその手軽さゆえに、お金を失うという実感を伴わないままポンポンと買い物をしてしまいそう、といったイメージを抱かれがちです。

しかし、むしろお金の使い道はキャッシュレス決済の方が明確に把握することができるのです。前述したように、キャッシュレス決済の多くはスマートフォンやパソコンから手軽にかつリアルタイムに利用明細を確認することが可能です。例えば、コンビニエンスストアで何気なく無駄遣いしてしまった缶コーヒーや菓子類なども、しっかりと記録されます。

そういった現金支払いだとすぐに忘れてしまうような些細な買い物も、電子マネーでの決済なら逐一明細に残るので、逆に無駄遣いをなくそうという意識にもつながりやすくなります。
「財布の中身は何となくこれくらいだろう」というざっくりとした金銭感覚よりも、1円単位できっちりと残高が把握できる方が、お金のありがたみもより身近に感じられるのではないでしょうか。

小売業者が「今」考えるべきこと

これまで日本ではキャッシュレス化がなかなか進まなかったため、消費者側も現金ありきの買い物をしていましたが、ここ最近は購入の手軽さやポイント還元などを理由にキャッシュレス決済を利用する消費者も増えています。

キャッシュレス・ポイント還元事業を機に、キャッシュレス決済のニーズは今後さらに増えてくると考えていいでしょう。

小売業者側にとって、こうしたキャッシュレスの波に乗り遅れることは、消費者側の購入方法の選択肢を狭めてしまうことにつながります。

もし今までの顧客がキャッシュレス決済を取り入れていた場合、「この店は現金しか使えないからもう行くのをやめよう」と判断してしまう可能性もないとは言い切れないのです。
一方、消費者側が抱えるキャッシュレス決済への抵抗感は、ほとんどの場合感情面での問題に由来するものです。

不都合や不便を感じているわけではないので、キャッシュレス決済への理解が深まれば利用するという人も多いかもしれません。

政府は、今後10年のあいだにキャッシュレス対応店舗を大幅に増やす方針を打ち出しました。
今はまさに現金支払いからキャッシュレス化への過渡期といえる時期なのです。

今後は消費者のニーズを捉え、自社に合ったキャッシュレス決済へ対応していく柔軟さが求められます。

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