日本版MaaS普及に向けた課題とは?

 2020.05.25  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

フィンランド発の「Whim(ウィム)」や米国の「Uber(ウーバー)」など、移動をサービスとしてパッケージ化する「MaaS」の導入が世界的に進められていますが、日本は開発と運用の両面で後れをとっているのが現状です。この記事ではMaaSの内容と日本での普及に向けて克服すべき課題について詳しく解説します。

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MaaS(Mobility as a Service)とは

MaaS(マース、Mobility as a Service)の語を直訳すると「サービスとしての移動」という意味で、移動全般をサービスとしてとらえる概念を指しています。MaaSでは電車やバス、タクシーなどの公共交通機関からシェアサイクルなど車や自転車の共有サービスまであらゆる交通手段をシームレスに結び快適に使えることを目的にしています。

例えば、自宅から目的地までの移動に利用する手段がバス・電車・タクシー・レンタカー・レンタサイクルだった場合、従来は、移動手段ごとに予約したり、運賃や料金を支払う必要がありました。それに対し、MaaSを利用すれば、目的の場所までの最適なルートの提案を受けた上で、提案された複数の交通手段をパッケージ化してスマホアプリから予約したり一括決済を行うことができるようになるのです。通勤、通学など日常的に移動する場所であれば「定期券」のような月額決済を設定することももちろん可能です。

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MaaSのレベルと定義とは?

MaaSはまだ発展途上のサービスであり、その定義についても解釈が分かれる部分はありますが、2015年のITS(高度道路交通システム)世界会議で設立された「MaaS Alliance」ではMaaSを「いろいろな種類の交通サービスを、需要に応じて利用できる一つの移動サービスに統合することである」と定義しています。また、スウェーデンのチャルマース工科大の研究者はMaaSをサービス統合の程度に応じて5段階に分けています。統合が全くなされていない状態がレベル0とすると、レベル1~4で表される各段階は次のような状態です。

レベル1:情報の統合

「さまざまな交通手段の利用料金や経路などの情報が一元化されている状態」がレベル1です。ジョルダンの「乗換案内」や「NAVITIME」など出発地から目的地までの移動手段を網羅して経路を表示できる乗換案内サービスやGoogleマップなどの経路案内サービスがレベル1のサービスに相当します。

レベル2:予約と決済の統合

レベル2は「さまざまな交通手段の予約・発券・決済がまとめて行える状態」と定義されています。SuicaやPASMOなど交通系ICカードでは、鉄道各社やバスなど複数の移動手段の支払いをカード1枚で行うことができます。これらの交通系ICカードは決済機能の部分ではMaaSレベル2を実現しているとも言えるでしょう。

レベル3:事業の統合

レベル3は「さまざまな移動手段がパッケージとして統合され提供される状態」です。例えば都営地下鉄など都営交通機関、東京メトロ全線、23区内のJR各線を自由に乗車できる一日乗車券の「東京フリーきっぷ」は、MaaSレベル3の一部が実現されているという見方もできます。

レベル4:政策の統合

「MaaSを活用して都市計画やインフラ整備などの交通政策が推進されている状態」がレベル4です。具体的には走行ルートの需給データをAIで分析し最適なルートで運行するオンデマンドバスや、未使用の自家用車や駐車場などの遊休リソースを活用したシェアリングサービスの提供などが考えられます。この段階では地域住民が最低限必要な交通サービスを、より低コスト、かつ持続可能な形で提供できる在り方が求められています。

参照:国土交通省「政策研究所報第69号2018年夏季 MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)について」

MaaS普及に向けた日本の課題

では、日本でMaaSを普及させるために克服しなければならない課題はどういったものでしょうか。

大都市での課題

日本でまずMaaS普及の壁となるのが各種の法律です。米企業のUberは一般のドライバーが自家用車で有償で乗客を運ぶライドシェアサービスですが、日本では他人を有料で自家用車に乗せることは、道路運送法第78条で禁止されている「白タク」行為に該当します。加えて、道路運送法第4条にはタクシー事業には国道交通大臣の認可が必要であるとの定めがあり、許可を得ずにタクシー事業を行ったとみなされればこちらも罰則が科されることになります。このようにUberを始めとするライドシェア事業が日本で実現していないのは法律の壁に阻まれていることが大きな理由です。

また、現行の道路運送法では、バスは場合任意のルートやダイヤで走ることができず、タクシーは乗り合いができないため、オンデマンドバスやタクシーのシェアリングサービスの運行も不可能です。

さらに、運賃及び料金の設定と変更には国土交通大臣の認可と届出が必要であるため、サービスと料金とのバランスを確認するために任意の料金を設定して実証実験を行うことが事実上不可能となっています。

こういった問題に加え、道路の混雑やドライバー不足への対処も大きな課題です。

地方都市での課題

地方都市においては市街地の衰退と郊外化などもあり自家用車の利用率が高く、鉄道や路線バスの運行数減少や路線廃止など地域の公共交通機関が衰退している場合もあります。一般的に公共交通機関の利用が多いのは未成年やシニア層で、地元の社会や生活を支えている“現役世代”は自家用車の利用が多いなど、さまざまな立場の人々の利害が一致しないために、思い切った政策を取りづらく現状維持に傾きやすいという面もあります。

MaaS普及に向けた日本企業の戦略

もちろん、MaaSの普及に向けて日本の企業もさまざまな戦略を練っています。JR東日本は移動に必要な情報の収集・乗車券の購入・決済をオールインワンで提供する「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」の開発を進めています。このサービスではSuicaのID番号とクレジットカード情報を登録した都市型MaaSアプリ「Ringo Pass」でタクシー配車サービスやシェアサイクルを利用することができます。決済はSuicaを使って一括で行えるため、タクシーの降車時にドライバーと金銭のやり取りをする必要がありません。またシェアサイクルの利用ではポートに駐輪された自転車にアプリをタッチすれば貸し出しの手続きが完了するのです。2020年に入ってスマートフォンのアプリが一般に公開され、実証実験が続けられています。

小田急電鉄も、自社開発の「小田急MaaS」の実現に向けて様々な試みを進めています。「駅すぱあと」の開発で知られる「ヴァル研究所」、タイムズパーキングなどの駐車場を運営する「タイムズ24」、NTTドコモ傘下の「ドコモ・バイクシェア」、次世代型電動車椅子を開発する「WHILL」の4社とともに統合MaaSアプリ「EMot(エモット)」を共同開発しています。このアプリを利用すれば、小田急グループの鉄道やバスなどの公共交通手段のほか、タイムズ24が展開するカーシェアリングサービスやドコモ・バイクシェアのサイクルポートのデータを統合的に利用して、サービスの予約から決済を一括で行うことができる仕組みです。本格的な導入に向け、2020年現在はエリアを限定して実証実験を実施中です。

まとめ

日本でMaaSを普及させるためには、法の整備と、各事業者間の意思統一や情報の整理・統合に取り組む必要があります。各事業者が独自に展開していたサービスを統合しより効率的な運用を行うことで、新たな需要が生まれ地域経済が活性化することも期待されています。日本になじむ形でのMaaSの発展が強く望まれています。

Factory of the Future製造現場が抱える課題。解決の鍵は「デジタル化」です。

事例:ノルウェー地下鉄が車両稼働率を向上
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