今日から始めるクラウドHPC|CAD/CAEの課題を解決

 2020.01.23  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

製品の設計やシミュレーションに使われるCADやCAEという技術がありますが、これは製造業では欠かすことのできない技術で、高性能コンピューター(HPC)を駆使して運用されています。最近ではこのCADやCAEをクラウド上のHPCで利用する企業が増加傾向にあります。

cloud-hpc

これまでのHPC

HPC(High-Performance Computing)とはその名の通り高速で処理ができる高性能のコンピューターと、高性能コンピューターを使って行う処理のことを指す言葉です。あらゆる業種においてHPCの利用は浸透しており、金融や建築設計、教育事業はもちろん、製造業界でもHPCは欠かせない存在になっています。

製造業でHPCが最も活用されるシーンは、製品の作成やシミュレーションに関連するCAD(Computer Aided Design)やCAE(Computer Aided Engineering)の分野です。CADはコンピューターによる設計支援ツールで、CAEはコンピューターによる演算や解析を活用したより正確な製品シミュレーションを行うためのツールです。

製造業では、市場に流通させられるクオリティーに製品を仕上げたり、製品の安全性や性能をチェックしたりするために、CADやCAEを使って精密なシミュレーションを行うことが欠かせません。このシミュレーションの最終的段階では、実際の試作品を投入して耐久テストなどが行われるのが普通です。しかし、試作品を作るには材料費も手間もかかります。また、試作品でのシミュレーションで性能が基準に満たなかったり、安全性に問題があったりするなどの不具合が判明するケースも珍しくありません。このような場合、修正を加えた試作品で再び検証を行う必要があることから、その分コストがかさみます。また、超大型の製品や建築物など、試作品を作ること自体が難しい場合もあるでしょう。

こうしたシミュレーションの効率を飛躍的に上昇させたのがHPCを利用したCADやCAEの登場でした。HPCの優れた演算性能によって、より高度なシミュレーションが可能になり、試作品を作る回数を減らすことができるようになったのです。HPCの普及は工程期間の大幅な短縮とコスト削減を実現しました。

これからはクラウドHPCの時代

このように、現代の製造業においてはHPCの導入が欠かせない要素となっています。しかし、同時にHPCの抱えるさまざまな課題も目立つようになっているのも事実です。

製造業におけるMixed Realityの活用

まずはコスト面の問題が挙げられます。HPCを自社運用(オンプレミス)で行うには相応のコストと手間が発生します。必要な機器の購入、データセンターを設置するためのスペースの調達や、十分な電力を確保するための設備など初期費用がかかるのです。また、サーバーなどを新規で導入し、自社の運用に合わせてカスタマイズした上で安定稼働させるまでには相応の期間もかかります。設置した後もハードウェアの定期的なメンテナンスが必要ですし、アプリケーションのバージョン管理などの保守運用もすべて自社内で行わなければなりませんから、その費用も必要です。

また、HPCの演算能力には一定の上限があるため、クライアントから突発的に大量の発注を受けたときに手持ちのHPCでは対応できず、その結果ビジネスチャンスを逃すといった問題も起こります。

こうした問題を解決する方法として、クラウド上でHPCの能力を利用できるクラウドHPCのサービスが注目を浴びています。クラウドHPCを利用すれば最新のHPCをいつでも必要なときに必要なだけ利用することが可能です。さらに、ハードウェアやインフラを自社保有して管理するコストも節約できるのです。マイクロソフトのAzureなど世界規模のクラウドサービスが次々とHPCの分野に参入しています。マイクロソフトが提供するAzure HPCではCADやCAEに関する分野を「Big Compute」と呼び特に力を入れており、CAD用途に特化した機器の導入も行っています。

クラウドHPCを導入するメリット

あらゆる分野の企業がクラウドHPCへ移行しつつある理由としては、コストパフォーマンスの良さに加え、システムの自由度の高さ、セキュリティ面の堅牢さなども挙げられます。

自由度が高まる

企業によってはHPC環境を常時必要としない場合もあります。こういったケースで、一時的な利用のためにHPCインフラを一から構築し、必要ないときにも保守運用し続けなければならないとなると余計なコストがかかります。

しかしこの問題は、必要に応じて使うことができるクラウドサービスの利用で解決します。例えば、特定のクライアントからまとまった発注があった場合のみHPCを使いたい場合は、そのときだけサービスを使用し、HPCが必要なくなればサービスの利用を停止できるといった具合です。その間、HPCの管理やメンテナンスを自社で行う必要はありません。

また、クラウド運用の場合は、ユーザーエンドで使う端末やデバイスを自由に設定できる場合が多くあります。大半のサービスではVPN(仮想専用線)など専用線に近いセキュリティを確保するネットワークも同時に提供されます。そのため、インターネット環境さえ整っていれば、事務所以外の場所でシステムを利用することが可能です。つまり、遠隔地からリアルタイムで製造工程の状況を確認したり、遠隔地に全く同じ開発環境を再現し構築したりするといった運用も、自社運用に比べ実現しやすくなるのです。このような自由度が高く柔軟な使い方ができるのがクラウドHPCの大きな魅力です。

高度なセキュリティ

インターネットが普及した現代でネットワークに接続したシステムを利用する場合、セキュリティ対策には細心の注意を払うことが求められます。設計段階や試作段階の製品情報など機密情報が外部に漏れると、莫大な損失につながるだけではなく企業の社会的な信頼を失うことにもなりかねません。現代の社内ネットワークの多くはインターネットに接続していますが、この場合、情報の流出や、ウイルスや各種のサーバー攻撃などの脅威にさらされるリスクが一段と高まると考えられます。こうしたトラブルを避けるための高度なセキュリティ対策を施すにはそれなりのコストがかかりますし、継続した管理と運用を行う手間が必要です。

その点、クラウドHPCを利用すれば、世界的に展開するサービスに実装された堅牢なセキュリティシステムを使うことができます。もちろん、クラウドサービスのサーバーやデータセンターは離れた場所に複数設置されており、データ保全にも万全の対策がとられています。ですから、不意の災害などに見舞われた場合でも、データ逸失のリスクが低く安心して運用を続けられるメリットがあります。

コストが明確に

クラウドHPC導入のメリットは、コストを明確にした上でコスト削減が望めることにもあります。まずは、サーバーやデータセンターなどを自社で用意する必要がなく、最小限の投資でHPCを導入できるのは大きな魅力です。

また、使用したデータ量などに応じて課金される仕組みとなっており、いつ、どこで、どれくらいの費用が発生したかのか、外部からの請求書などの形で明確に文書化されます。これまでの自社運用では、HPCを利用した場合のランニングコストやハードウェアの減価償却費などの計算は複雑になりがちでした。クラウド運用ならプロジェクトや部署ごとに利用した分ごとの費用を明確にしやすいため、経理の合理化につながる可能性もあります。

費用面でのメリットに加え、使用開始までの期間が比較的短くて済むのも魅力的な点です。自社ですべてのリソースを用意する場合、ハードウェアのセッティングからネットワークの設定、ソフトウェアの設定、データベースの整備などを一から構築し、それらに必要な人員配置を行う必要もあるため、実際に運用が軌道に乗るまでには時間がかかります。対してクラウドHPCの場合は、契約して初期設定さえ終えれば利用を開始できる手軽さが魅力です。

使用環境は常に最新

HPC環境を自社で整えていたとしても、クライアントなどの要望に応じて環境を新しくする必要性は随時発生します。機械やOSにも耐用年数がありますから、導入当初と同じ設備のままで運用し続けることは不可能です。しかし、常に最新の環境で使い続けるとなるとメンテナンスの手間と費用がかかります。買い替えの費用も発生しますし、担当者が常に最新の知識を備えておく必要も出てきます。また、システムを最新の状態に入れ替える間にタイムラグが生じ、ビジネスの機会損失につながる可能性もあります。

その点、クラウド運用なら常に自動更新で最新の状態が保たれるので、保守の手間とコストがかかりません。システムの規模が大きくなればなるほどメンテナンスには手間と時間がかかりますから、特に大規模システムを運用する場合にはクラウドHPCに置き換えることで、人件費などコストの大幅な削減が見込めます。これもクラウドサービスならではの大きなメリットです。

まとめ

HPC環境を自社運用で行っている企業がクラウドHPCに移行した場合、コスト面や機能面で有利になる可能性が大いにあります。クラウドHPCを使ったシステムは基本設計の自由度や汎用性が高く、自社運用以上に柔軟な運用体制が取れる場合があるのも魅力です。

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