運輸・物流

配送ルート最適化とは?アルゴリズムシステムの導入の重要性

新型コロナウイルスの影響により、配送の需要が増加しています。このような状況は、配送業界にとってチャンスであると同時に、課題も生み出しています。そこで、配送業界における現状とその課題を解説します。また、課題解決のための「配送ルート最適化」について、導入メリットや課題、具体例なども併せてご紹介します。

配送ルート最適化とは?アルゴリズムシステムの導入の重要性

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配送ルート最適化とは

そもそも「配送ルート最適化」とは、複数の配送先への配送業務において、効率のよいルートを計算し、最適なルートを作り出すことです。

物流や食品をはじめとした配送業務では、複数のドライバーが、膨大な数の配送先へと荷物を運んでいます。そのため、配送元が時間をかけて、どのドライバーがどの順番でどの配送先を回るべきかについてルート作成をします。ドライバー個人単位であれば、最適な配送ルートを立てやすいかもしれませんが、多くのドライバーと配送先のスケジュールなども加味すると、最適なルートを算出するのは至難の業です。

2020年に発生した新型コロナウイルスの影響で、従来よりも配送需要が大幅に増加しました。その一方、需要に対して配送スタッフの増員が追いついているとは必ずしもいえない状況です。エリアによって配送業務の量が異なり、特定のスタッフに負担が集中しているようなケースもあるでしょう。このように、少ない人員で増加し続けている配送需要に応えていくには、配送ルートの最適化を通じて業務改善を行い、配送スタッフの負担を減らすことが重要です。

配送業界の現状と課題

配送業界の現状と課題について2つの観点から解説します。

ネットショッピングの需要増による小口発送の増加

まず近年では、ネットショッピングの需要増加により、小口発送が増加しています。コロナ禍以前からオンラインでの購買行動が増加していましたが、コロナ禍の影響で、この傾向に一層拍車がかかりました。

配送側の傾向としては、1回の運送で運ばれる貨物の重量は減少から横ばいですが、近年は0.1トン未満の貨物輸送量が割合・件数ともに大幅に増加しています。重量の変化に比べて、0.1トン未満の輸送量が非常に増えており、小口発送の増加が顕著です。

小口発送の増加は、配送業務全体に影響を及ぼします。具体的には、小口発送が大幅に増加すると、トラック積載効率が低下し、物流効率も低下します。配送需要が増えているなか、積載効率が低下すると、それだけ配送の回数が増加してしまいます。しかし、ドライバーの数は、コロナ禍以前より大きく増えたわけではありません。物流効率の低下し配送回数が増えているにも関わらず、ドライバーの人数が十分に増えていないため、配送業界への負荷が高くなっています。

運輸業における人手不足

運輸業における人手不足も大きな課題となっています。そもそも、日本は少子高齢化に伴う労働人口減少の時代に入っていて、物流業界においてもこの傾向が表れています。

国土交通省の調査によると、平成30年におけるトラックドライバーの有効求人倍率は2.68倍を推移しています。同年の全職業では1.35倍を推移しており、運送業における求人の割合が全職業の約2倍に上ることがわかります。

また厚生労働省の調査によれば、平成30年の運輸業・郵便業における未充足求人は61%にも上っています。つまり、運送業では人手不足だと感じている事業者の割合高いことが分かります。

これらの調査結果から、物流業界への需要増加に反して働き手が足らず、現場のドライバーや事業者への負担が深刻化していることがうかがえます。人手不足の状態が離職につながるケースもあり、さらなる人手不足に陥るという負のスパイラルに入ってしまうリスクも懸念されます。

配送ルート最適化のメリット

では、配送ルートを最適化することで、一体どのようなメリットが得られるのでしょうか。

空車時間の短縮

配送ルートを最適化することで、まず空車時間を短縮できます。「空車時間」とは、積載した荷物を配送し終えたトラックが、移動している時間を指します。

配送では、配送先のタイミングに合わせる必要もあるため、配送ルートに無駄があると空車時間が長くなりがちです。配送ルートを最適化すれば、配送を終えた後に仕入先の荷物の引き取ってから拠点に戻ることも可能です。このように、空車時間を短縮しトラックの稼働率が向上します。

ドライバーや関係者としても無駄に働いている感覚がなくなり、モチベーション向上につながります。また、トラックの稼働率が高まることで、物流業界の労働人口不足の解消に繋がります。

走行時間の短縮

トラックの空車時間だけでなく、走行時間そのものの短縮も可能です。配送ルートの最適化では、配送スケジュールだけでなく、道路状況などの情報も踏まえたルート作りも可能なので、1配送単位での走行時間短縮にもつながります。走行時間が短縮できれば、人件費や燃料といったコストの削減ができます。1つの配送だけでは、大きなインパクトにはならないかもしれませんが、各拠点の各配送ルートで走行時間が短縮されることで、大きなコスト抑制にもつながるでしょう。

また、労働人口不足の解消につながるのはもちろんのこと、荷物を受け取る側にも届くまでの時間が短縮されるメリットがあります。

配送ルート最適化が難しい理由

これだけのメリットがあるにもかかわらず、配送ルートの最適化は依然として浸透しているとはいえません。なぜ、配送ルート最適化が難しいのでしょうか。

計算が難しく時間がかかる

配送ルート最適化が難しいとされる大きな理由のひとつが、最適ルートの計算が難しく、時間がかかってしまうことにです。「ルート算出に時間がかかるくらいなら、綿密な計算をしている間に配送したほうがよい」という判断になりがちです。

ルートを最適化させるためには、ルートを最適化させるためには、配送先や配送量の全量を洗い出します。そのため、配送ルート最適化のための選択肢の候補だけでも膨大な情報量です。さらに、交通量という要素も含めると、とても人間だけでこなせる計算ではありません。効率的に計算できる体制がないと、毎日異なる配送先や配送量について都度計算を行うのは非効率でしょう。

結局、配送ルートの最適化に時間をかけず、配送そのものに着手したほうが、時間はかかったとしても業務を進められると判断されてしまい、配送ルート最適化に着手しないケースが多いのです。

配送タイミングも大事

配送は、配送業者だけでなく、配送先の都合も考慮する必要があります。配送先の営業時間といった、受け取り可能なタイミングも配慮した配送ルートをスケジューリングするのは、非常に労力がかかってしまいます。この点も、配送ルート最適化が進まない理由のひとつです。

物流業界で問題視されている再配達も、配送先の受け取り可能時間と配送時間を合わせられていないことが一要因とされています。そのため、配送においては配送タイミングが非常に重要なのです。

仕事量も平等にしなければならない

配送においては、事業者目線でのルート最適化や、配送タイミングだけでなく、ドライバーの業務量も踏まえたルートの決定が必要です。

各ドライバーの仕事量も考慮に入れた場合、計算がより複雑になります。ルートのみの効率化だけを考えていると、あるエリアに配送先が集まった際、特定のドライバーに業務が集中してしまいます。結果、ドライバーが不公平感を抱き、人手不足にもかかわらず習熟度の高いドライバーの離職につながるケースもあるでしょう。

仕事量を平均化するには、ドライバーの担当エリアなども考慮しながら柔軟な対応が必要となります。しかし、最短かつ仕事の割り振りも平等になるような最適ルートを算出するのは、非常にハードルが高い作業といえます。

配送ルート最適化に対する具体例

配送ルート最適化を実行するには、エクセルなどで行う方法もありますが、配送ルート最適化を推進してくれる便利なサービスも出てきています。最後に具体例として、配送ルート最適化に関するアプリをいくつかご紹介します。

Loogia(配達ルートアプリ)

まずは、配達ルートアプリ「Loogia(ルージア)」です。このアプリは、ラストワンマイル配送事業者向けの最適なルートを提案するクラウドサービスです。

組み合わせ最適化のアルゴリズムが組み込まれており、配送計画を手軽に立てられます。複数の配送先や車両を組み合わせ、一度にルートの計算が行えるため、配車にかかる時間が一気に短縮できます。また配送時間指定や、一方通行・Uターン禁止といった道路情報など、幅広い条件や制約を踏まえたルートも作成可能です。

さらに、シンプルでわかりやすいUIゆえ操作しやすく、誰でもルート作成ができます。新人でも扱いやすいアプリで、平均5分でルート作成が可能とされています。ベテランドライバーに属人的になることなく、配送ルート効率化を実現できるのが魅力です。人手不足で教育にかける十分な時間もないなか、非常に便利なサービスといえるでしょう。

Cariot(到着時間予測アプリ)

「Cariot」は、物流業界だけでなく営業活動などでも活用されている到着時間予測アプリです。車両に関する情報をリアルタイムで収集し、物流に関わる配送を待つ人・ドライバー・事業所といった関係者に、到着時間予測などの情報を共有して業務効率化します。単にデータを収集するだけでなく、リアルな走行データから配送業務の非効率な部分を見極め、課題の特定につなげることもできます。そのうえで、複数拠点を前提とした最適な配送ルートの設計や提案もしてくれます。

事業者目線では、手間をかけずに配送ルート最適化を行い、人件費や燃料などのコスト削減につなげることができ、リアルタイムにマップ上などで配送状況の確認可能です。

ドライバー目線でも、日々の業務がデータ化され、それが自動的に日報や月報に反映されます。事務作業にかかる時間が大幅に削減され、業務負担が軽くなるのもメリットです。

まとめ

従来よりオンラインでの購買行動が増加し、配送業への需要が高まっていました。コロナ禍でさらに配送業の需要と供給のバランスが変わり、配送ルートを最適化する重要性が増しています。一方、さまざまな課題があり、配送ルート最適化が普及していない現状もあります。便利なITサービスなども活用しながら、業務を効率化しましょう。

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