小売業の事業運営を効率化させるためのヒント

 2019.10.28  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

様々な要因から、小売業界では事業運営の効率化やコスト削減が課題となっています。とはいえ、在庫管理や情報システム、店舗での販売業務や商品の物流に至るまで、企業のビジネスにおける局面は様々です。そこでこの記事では改善に必要となるECRSという考え方や、実際の作業やサービスへの導入事例などを紹介します。

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小売業界「業務効率化」の課題

小売業界で業務効率化が叫ばれているのには理由があります。例えば、最近各所で問題になっているのが「人を採用しようとしても、思うように集まらない」という問題です。これにはいくつもの原因があります。 例えば少子高齢化による労働人口の減少です。働く現役世代が減っているため、多くの業界で人手不足の状況です。その結果、集まる人材のレベルもこれまでに比べて落ちることが多くなり、経験やスキルの低下が問題になっています。

さらに小売業などのサービス業では長時間労働や職場環境も問題です。働き方改革が進む中、従業員の満足度なども重視していく必要があります。 こうした中で、もはや単にコストや人件費を削減するだけの経営方針では乗り切れません。業務の効率化は労働環境の改善をはじめ、スキルアップなどの人材育成や、前向きに働けるためのマインド作りにまで及ぶ、根本的な課題になっているのです。

業務効率を改善するECRSの原則

実際に業務効率の改善を目指す場合、闇雲に目の前の問題をどうにかしようとしても埒があきません。そもそも事業に伴う業務には、店頭の他にも仕入れや流通、人事や総務、経費の精算や支払いなど、無数の種類があります。それに対して共通の考え方が出来れば、業務改善自体を効率的に進められるでしょう。そこで役に立つのが「ECRS(イクルス)の原則」と呼ばれるものです。

ECRSは、業務改善を行うに当たり、行うべき順番とその方法を明らかにしたものです。この考え方を導入することで、安定的な改善効果が得られます。無駄な行動も避けられるので、改善にともなうトラブルや反作用を抑える事も可能になります。 ECRSは、もともと工場などを抱える製造業で生産性を高めるために考案されたものです。しかしその考えは、事務や営業、販売など、あらゆる場面で役に立つことが知られています。それではさっそく具体的な内容について見ていきましょう。

Eliminate(排除)

ECRSの最初の一手が「Eliminate」です。Eliminateは「排除」という意味。すなわち「それは無くすことが出来ないのか?」という視点で進める改善です。業務改善においては、まっ先に取り上げるべきとされています。問題とされた業務を丸ごと無くしてしまうことができれば、それが最も効果の大きなやり方です。 Eliminateの具体例としてよくあるのは、日報や報告書などの書類を排除するというものです。これらの書類を作成しても、上司が殆ど見ていなければ無駄になってしまうでしょう。

小売の現場であれば、過剰なサービスの排除も検討材料になるはずです。 顧客に対するおもてなしとして、あるいは他社に対する差別化として、時間や経費をかけて行っていたサービスがあったとします。しかし調査の結果、顧客が殆どそれに価値を感じず、売上に影響していないことが分かったとしたらどうでしょうか。そんなサービスはやめてしまった方がスタッフの負担が軽くなり、その分、より意味のあるサービスに振り向けられる可能性があります。

このように、業務の見直しにおいては、それをどのように改善するかという視点以前に「そもそも辞めてしまう選択肢はないのか?」という視点が必要なのです。

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Combine(結合と分離)

次に取るべき視点が「Combine」です。Combineは「結合と分離」という意味。似たような作業を結合させたり、異なる作業が絡み合っているのを分離して、効率を高めることを指しています。Combineは、はじめにEliminateを検討した後、それがどうしても排除できない場合に考えてみるべき視点です。 Combineによって似たような作業を結合させると、そこで必要だった道具や作業環境が集約され、全体的なコストが削減されます。

また、作業を行う人も一部に集約されるため、その人材のスキルも上がります。覚えるべき作業も減っていくので、そうした負担も軽くなるでしょう。 Combineは個人のレベルでも有効です。小刻みに色々な作業を行うよりも、時間帯をまとめて同じ作業を行う方が集中できます。さらに準備や片付けの時間も1回で済むので、時間当たりの生産性は、確実に高くなるでしょう。

もう一つのポイント、「分離」の考え方を活かすなら、混在している作業を分解してみる視点を持つことです。例えば、接客やレジをしながら顧客情報を打ち込むと、会計待ちが出たり、人によって処理時間が変わることもあり得ます。そこで入力作業を分離させ、打ち込みが最も早い人にまとめてお願いすると、全体での作業時間が減って、レジの行列も短くなります。

Rearrange(入替えと代替)

次に検討するのは「Rearrange」です。Rearrangeは「入替えと代替」という意味です。ここまでの改善によって、行われている作業自体はどれも個々には必要だという認識になっています。既に不要な作業は無くなっており、必要な作業も仕分けられたり結合されたりして、大きな改善は終わっています。それを踏まえて、ここから先はより細かい視点で改善を進める工程です。

Rearrangeで行う「入替えと代替」とは、作業の順番を変えてみるという視点です。例えば前の段落で「入力作業をまとめて行う」という例をあげました。その入力方法のプロセスを再考しようということです。これまで、来店してきた順に顧客情報を入力し、それから顧客のタイプ(新規客か既存客か)で書類を仕分けていたとしましょう。しかし、もしかすると先に顧客のタイプで仕分けてから、タイプごとにまとめて入力を行う方が、より早く作業を終えられるかもしれません。

他にも、上司のチェックのタイミングを変えることも有効です。企画案を作ってから上司に承認を得るのではなく、先にアイデアの時点で相談をすれば、後から上司の修正指示が大きく入ることを抑えられます。

Simplify(簡素化)

ECRSで最後に行うものが「Simplify」、つまり「簡素化や単純化」です。同じ作業を行うならば、できるだけ簡素にした方が無駄な時間や手間が減るでしょう。労働時間だけでなく経費も減りますし、肉体的な負担や精神的な負担も軽くなります。 小売業で言えば、例えば過剰な包装を簡素なものに変えてみるという方法が考えられます。包装自体は、全く無くすことや、他の作業と合わせることは出来ないかもしれません。包むタイミングも、買った直後というのは基本的に変えることは困難です。しかし簡素化するのであれば、十分、可能と言えるでしょう。

ここでのポイントは、簡素化を行っても既存の状態は悪化しないということです。包装をチープにして売上が下がったのでは意味がありません。どの程度のレベルであればマイナスにならないのかの見極めが重要です。あるいは発想を変え、「環境にために過剰包装はやめました」とアピールすれば、逆に好感度を上げることができるかもしれません。 このように、単に「改善=コスト削減」ではなく、それによって従業員や顧客の満足度や支持が増えれば、一石二鳥、三鳥です。

小売業の業務を効率化するには

ECRSを活用すると、的確に業務改善を進めることができます。ここでは更に「店舗業務」「システム」「スマホ活用」という3つの切り口で、小売業の業務効率化のヒントをお伝えします。

店舗業務の効率化

店舗における日常業務の改善では、業務に使う機器の見直しを外すことは出来ません。ECRSでは人の動きや業務のやり方について主に見て来ましたが、小売業の業務は多くの機器にも支えられているからです。

例えば使っているラベルプリンターが古いと、打ち出せるサイズやデザイン、機能が限定されてしまうかもしれません。ラベルに使うデータについても、手作業で登録するより本部に回線を繋いで一気に行う方が効率的です。

それ以外の機器についても、時間が無駄にかかっていないか、使いやすいか、サイズが大きくて邪魔になっていないか、などの視点で見直しましょう。

システムの導入による効率化

スタッフを支える各種のシステムも重要です。これまで個人の能力に頼っていた部分も、システムの支援を受けることで、誰でも上乗せできるようになります。

例えば、顧客情報を個人の経験や記憶に頼らずデータとして活用できれば、誰が接客しても一定のレベルを提供できます。最近の技術を使えば、これまで来店したことのない新規客でさえも、ビッグデータやAIの支援で適切な対応を提案してもらえます。もちろん在庫確認や売上予測、商品情報なども、端末を通じて瞬時に確認可能です。

従来、こうした先進的なシステムを扱うには、社内で大きな開発費を掛ける必要がありました。しかしマイクロソフトなどが提供するクラウドサービスにより、多くの企業に導入できる時代になっているのです。

スマホを活用した業務効率化

近年、特に注目されているのがスマホを活用した効率化です。人手不足が課題となっている中、小売業ではパートやアルバイトの活躍が必須です。大きく普及しているスマホを取り入れることで、誰でも扱いやすいシステムを提供できるというわけです。

例えば会社がスマホを支給し、そこにLINEと連携しているビジネス用のSNSを載せ、会社とスタッフが連絡を取れるようにした会社があります。LINEのスタンプを使うことで普段思っていることが伝えやすくなり、離職率が低下。業務改善のアイデアも集まるようになりました。更にスマホを通じてオンラインの研修を施すことで、上司や先輩による教え方の差が無くなるなど、多くのメリットがあります。 店長やスーパーバイザーにとっても、営業中はパソコンの前に座っている時間が取れません。スマホから発注や報告を行うことで負担を減らし、対応時間も早められます。

まとめ

小売業の事業運営を効率化させるには、ECRSの視点や、店舗で使う機器やシステムの見直し、スマホの導入などが重要であることを紹介しました。効率化と言うと、どうしても目の前の小さな事を改善しようと思ってしまいますが、もっと大きな視点でスタートし、新しい技術を導入することも重視するようにしてください。

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