ものづくり白書2020で見る製造業の環境変化!2021年にすべきこと

 2021.02.25  デジタルトランスフォーメーションチャンネル編集部

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、社会全体が先行き不透明な不確実性に見舞われる中、日本の製造業は今どのような状況に置かれ、そして2021年をどのように生き抜けばよいのでしょうか。本記事では、2020年版「ものづくり白書」の概要を辿りながら、製造業の現状と今後の方向性について解説します。

ものづくり白書2020で見る製造業の環境変化!2021年にすべきこと

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2020年版 ものづくり白書に見る製造業の今

新型コロナウイルスの流行を受け、2020年1月以来、世界全体が先行きの見えない困難な状況に直面しています。そんな社会情勢にある中、日本の製造業は今どのような状況に置かれているのでしょうか。2020年度に発行された最新の「ものづくり白書」に基づいて解説します。

ものづくり白書とは?

「ものづくり白書」とは、「ものづくり基盤技術振興基本法」に基づいて発行される発行法定白書です。「ものづくり白書」においては、ものづくり企業や技術の動向について分析がなされており、別名「製造基盤白書」とも呼ばれます。2020年版のものづくり白書は、2001年の発行から数えてちょうど20回目の、節目の回となりました。

「ものづくり白書」は、経済産業省・厚生労働省・文部科学省の3省で共同執筆されており、製造業界の分析を行ううえで基盤となる資料です。現在、経済産業省のHPにおいては、2011年度版から2020年度版まで、過去10年分のデータが誰でも閲覧できます。300ページにわたる本文のほか、要点を押さえた概要書も用意されていますので、ご興味のある方はぜひ目を通してみてはいかがでしょうか。
(参照先:https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/index_mono.html

世界的に不確実性が高まっている

2020年度版「ものづくり白書」においては、とりわけ製造業が現在直面している、世界の「不確実性の高まり」について焦点を当てた分析が行われています。その分析によれば、1980年代半ば以降から続いていたグローバル・サプライチェーンが、今や寸断のリスクに晒されていることが指摘されているのです。

この「不確実性」の内実としては、米中貿易摩擦などに象徴される自国優先の保護主義的動向や、地政学的なリスク、急激な気候変動や自然災害なども含まれます。しかし、ここで何よりも喫緊の課題として強調されているのは、2020年1月以降の新型コロナウイルス感染拡大による急激な社会環境の変化です。

大規模かつ予測困難な環境変化に伴い、製造業界においても先行き不透明な情勢が続いています。しかも、この不確実性はもはや一過性のものでなく、新しい常態(ニュー・ノーマル)と見る向きもあります。日本の製造業は今、高い適応力と変革力が求められる厳しい状況に置かれています。

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製造業における環境変化の要因

上記のように、製造業は今、さまざまな要因に端を発する「不確実性」に見舞われています。ここからは、それぞれの要因について詳しく解説していきます。

地政学的リスクの高まり

世界の不確実性を高める要因のひとつとして挙げられるのは、テロや戦争、軍事的緊張などの影響に伴う「経済の先行き不透明性の度合い」、すなわち地政学的リスクです。
2020年度版「ものづくり白書」では2020 年1月以降、イラン情勢の緊迫化に伴い、地政学的リスクの指数が2001年に勃発したイラク戦争以来の高水準にまで増大することを示しています。
(参照元:
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2020/honbun_pdf/pdf/all.pdf P33 図121-15)

地政学的リスクの高まりと並行して、まさに製造業が担っている「技術」の優位性を確保することが、安全保障上の課題となります。産業界全体においても、自国優先主義の内向きな動きが世界で広がっています。こうした各国の動きは、グローバル・サプライチェーンを寸断したり、他国との相互互恵的な関係における技術革新・経済成長を阻害したりする可能性が憂慮されます。

実際、米中貿易摩擦などの影響を受け、近年回復傾向にあった設備投資も2019年以降は再度横ばいになっていることが、「ものづくり白書」において報告されています。とはいえ、日本も軍事転用可能な技術の流出を許すわけにはいかず、「安全保障と一体となった経済対策」が求められる難しい状況に置かれています。

急激な気候変動や自然災害

地政学的リスクは国家間、いわば人間同士の関係性の内で生じるリスクです。他方、製造業に環境変化をもたらす要因としては、人間の力の及ばない、急激な気候変動や自然災害も挙げられます。たとえば2011 年に発生した東日本大震災では、被災した企業の中に自動車の重要部素材を供給する企業が数多く存在したことにより、全国的な生産停止や減産につながった過去があります。

日本では2011年以降も、熊本地震をはじめ数多くの自然災害が発生してきましたが、諸外国における自然災害の発生回数や被害総額もまた拡大傾向にあります。サプライチェーンを国内外に張り巡らす製造業にとって、自然災害に対する危機対応能力は欠かせないものといえるでしょう。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響

上記の地政学的リスクや自然災害に加え、2020年には新型コロナウイルス感染症が各国に大きな課題を突き付けました。

2021年2月現在に至るまで、日本政府は2回にわたって緊急事態宣言を発令し、社会全体に外出自粛を呼びかけるなど、感染対策に奔走させられています。新型コロナウイルスは日本社会、あるいは国際社会全体の在り方を一変させたのです。

当然、その経済的打撃は大きく、新型コロナウイルスがもたらした経済的損失はGDP(国内総生産)の2割に達するといわれています。供給面においても、製造業において多くの取引がある中国から、部品等の供給が途絶・減少するという事態が発生するなど、有事におけるグローバル・サプライチェーンの脆弱性が露呈されることとなりました。

また、欧州や米国のロックダウンの影響を受け、海外需要が急激に減少しているのも大きな問題です。このように新型コロナウイルスは、世界の不確実性を急激に加速させるに至っています。

新型コロナウイルスが製造業にもたらした変化

製造業の今後に不確実性をもたらすものとして、ここまで「地政学的リスク」「自然災害」「新型コロナウイルス感染症」の3つを挙げてきました。この中で、2021年に入ってなお喫緊の課題であり続けているのが、新型コロナウイルス感染症であることは明らかでしょう。

先述のように、新型コロナウイルスは私達の生活様式をさまざまな面で一変させました。とはいえ、その変化の中には、必ずしも不幸なものではない、むしろプラスに捉えるべき変化も含まれています。

その一例として挙げられるのが、テレワークによる在宅勤務や大学のオンライン授業など、インターネットを介した社会活動やコミュニケーション方法の促進です。とりわけテレワークによる在宅勤務は、さまざまな問題を含みつつも、業務のデジタル化を一挙に進め、出勤やハンコなど従来当たり前に行われていた仕事の抜本的見直しをもたらしています。

労働者にとっても、毎朝の満員電車や煩わしい人間関係などを回避できるテレワークは、ストレス軽減につながります。また、出勤を要さないというテレワークの特質は、育児や介護などの都合により、従来の勤務形態では働けなかった人にも就労機会をもたらしました。テレワークの普及によって柔軟な働き方が可能になることは、今後さらなる働き手不足が懸念される日本にとって、人的資源の有効活用という点で大きな意義をもちます。

今や、こうした働き方、ひいては生活様式の変化に合わせて、これまでになかったビジネスや新しい価値観が形成されつつあります。たとえばテレワークの普及は、企業や個人を家賃の高い都心部から、地方や郊外に移動することを促しています。すなわち、新型コロナウイルスの流行は、都市一極集中型の社会から分散化社会への移行という、社会構造のモデルチェンジすら引き起こしつつあるのです。

今後も新型コロナウイルスの影響は長期化することが予想されています。そして、製造業においては今こそ、新しい経済モデル・生活様式・価値観への対応や変化が求められているのです。

2021年 製造業の成功の鍵はデジタル化

上記のように、新型コロナウイルスは甚大な経済的打撃とともに、新たな社会像や社会的価値観を生み出しました。この流れを受けて、製造業においても高度な「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)」が求められています。

ダイナミック・ケイパビリティとは、脅威の「感知」、機会の「捕捉」、組織全体の「変容」の3つを柱とする、組織の環境適応能力を意味します。平時の環境下において利益の最大化をもたらす能力「オーディナリー・ケイパビリティ」とは対照的に、ダイナミック・ケイパビリティはまさに不確実性が常態化した、ニュー・ノーマルの時代に必要とされる能力です。

しかし、この能力を企業が高めるには、何をどのように取り組めばよいのでしょうか。その鍵として、2020年版「ものづくり白書」において強調されているのが、「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」の推進です。

「ものづくり白書」では、ダイナミック・ケイパビリティの強化において、デジタル化が果たす役割として「データの収集・連携」「AIによる予測・予知」「3D設計やシミュレーションによる製品開発の高速化」「変種変量」「柔軟な工程変更」などを挙げています。
(参照元:
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2020/honbun_pdf/pdf/all.pdf 第1章第2節)

デジタル化によってもたらされるこれらの恩恵は、ダイナミック・ケイパビリティにおいて柱とされる、「脅威を敏感に感知する能力」「機会を逃さない即応能力」「高い競争能力を維持するための組織全体の変容」に対応するものです。

「ものづくり白書」でも指摘されているように、日本の製造業においては、製造工程の面でもマーケティングの面でも、デジタル化やデータ活用は十分に進んでいません。しかし、たとえばデータの利活用や3Dデータでの設計などは、設計・製造・サービスのスムーズな連携力を高め、企業全体の競争力を底上げする源泉と見られています。

こうしたデジタル化への移行を可能にするには、IT人材や数学的知識に長けた人材の確保が必要です。日本の製造業の強みである「匠の技」というアナログな要素を、どのようにデジタル化していくか、あるいは共存させていくのかを、日本の製造業は今こそ真剣に考える必要があるでしょう。

まとめ

2020年版「ものづくり白書」においては、新型コロナウイルスをはじめとする各種要因による、世界の不確実性の高まりが分析されています。そして、こうした先行き不透明な情勢下において日本の製造業では、デジタル化を積極的に取り入れることによるダイナミック・ケイパビリティの強化が求められているのです。


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