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建設業のi-constructionとは? 概要や重要な点を解説

建設業界の課題解決に役立つi-Constructionに注目が集まっています。一方で、実際にどのような取り組みが求められているのか、その詳しい内容を把握できていない方も少なくないようです。本記事では、i-Constructionの概要や軸となる考え、活用される技術について解説します。

建設業のi-constructionとは? 概要や重要な点を解説

i-Construction(アイ・コンストラクション)とは

i-Constructionとは、建設土木工事におけるさまざまなプロセスにICTや3Dデータを活用し、労働生産性の向上を目指していく取り組みです。国土交通省では、2025年までに建設現場の生産性を2割程度向上させるという目標を掲げ、i-Constructionの推進を打ち出すとともに、取り組みを普及させるためにi-Construction推進コンソーシアムを設立して参加者を募っています。

ICTとは、Information and Communication Technologyの略であり、日本語では情報通信技術を意味します。人と人、人とモノのコミュニケーションをサポートする技術・システムを指し、チャットやメール、SNSなどの身近なやり取りに使う技術もICTです。3Dデータを活用すると、2Dでは分かりにくかった問題を発見しやすくなり、早期の解決が望めるでしょう。

高齢化の進む建設業界では、今後10年間ほどで多くの人材が離職すると予測されています。また、他の産業と比べて建設現場の生産性は低迷しているといったデータもあるため、これまで自動化が困難であった建設業においても、積極的にIoTを導入するなどして現状を打破する動きが広まっているのです。i-Constructionでは、最先端の技術を活用した魅力ある建設現場をつくり上げるために、業務フロー全体を管理して最適化を図るサプライチェーンマネジメントの視点も重要とされています。

i-Construction導入の背景

少子高齢化に伴う人手不足は、さまざまな業界で深刻化しています。建設業界も例外ではなく、限られた人員で現場を回す企業も少なくありません。建設業界における人手不足は今に始まったことではなく、従来の「きつい」「きたない」「危険」といった3Kのイメージが新たな人材の獲得を難しくしています。若い人材が確保できないまま、ベテラン技能労働者が次々と引退してしまっては、技術伝承をうまく進めていけません。

日本建設業連合会が2015年にまとめた資料によると、2014年度の技能労働者153万人のうち、7割以上の109万人が2025年度までに離職すると報告されています。また、生産年齢層の中核となる15歳~49歳までの若年・中堅層については、入職や離職が激しく今後の予測は困難であるものの、単純に総人口の減少から予測すると、2014年度に192万人であった技能労働者が2025年には19万人減少するといわれています。

このような人手不足の課題解決に有用な取り組みがi-Constructionです。ICT技術を建設現場へ積極的に投入し、働きやすい労働環境を実現させたうえで、新たな人材の確保やひとりあたりの生産性を高く維持できる現場へと変革する動きが求められています。

引用元:一般社団法人日本建設業連合会 再生と進化に向けて 建設業の長期ビジョン

i-Constructionの3本の柱

i-Constructionは、3つの大きな取り組みに分かれています。建設作業の品質向上と高速化、手間を省くことによる効率化、業務の集中をできるだけなくして従業員にかかる負荷を軽減する取り組みが、実際どのように実現されていくのでしょうか。

ICT技術の全面的な活用(ICT土工)

従来の土木工事では、マンパワーで押し切るケースが珍しくありませんでした。しかし、人材不足が進む中でマンパワーばかりに頼っていては、すぐに限界が訪れるはずです。働き方改革の流れもあり、今後は建設業においても長時間労働や残業をなくし、より生産性を上げていく必要があります。ICT土工では、測量・設計・計画・施行・検査の広い範囲にICTを取り入れ、生産性の向上を目指します。

たとえば、ICT建設機器では3Dデータを用いた自動制御が可能です。作業中に建設機器の3D座標をリアルタイムに取得することで、人の手を介さずに掘削や解体作業ができれば、施工効率は大幅にアップするでしょう。また、測量作業におけるドローンの活用もICT土工の取り組みに含まれます。ドローンの測量で取得した地形データを用いれば、3Dモデルの作成も容易に行えます。

規格の標準化

建設現場で使用する資材や工法の規格を標準化すれば、建造物全体の構造を踏まえたコスト最適化や工期の短縮が可能です。従来、建設現場で用いられる資材や工法などは、現場ごとに生産されるのが一般的でした。コンクリート工における規格の標準化では、材料や建材、専門工事会社が早期の段階で情報を共有し、工事全体の効率化を図っていきます。建設における一連のプロセスを標準化すれば、品質の安定も実現するでしょう。

野外での生産が基本となる建設現場では、気象による影響を受けやすいため計画的に施工を進めていくのは困難です。また、現場ごとに必要な材料が異なるため手間がかかるなど、さまざまな面で非効率を招いていました。目的や用途に応じて標準化された型部材を組み合わせて施工できるようになれば、パーツの大量生産が可能となり低コスト化も見込めるようになります。

施工時期の平準化

建設業界は、繁忙期と閑散期の差が激しい業界といわれており、繁忙期には過重労働や長時間労働が常態化することも珍しくありませんでした。このような問題を解決するために行われているのが、施行時期の年間標準化です。繁忙期と閑散期の差が大きいほど、労働時間と収入、休暇の安定化は困難になります。

特定の時期に大型工事を集中させるのではなく、年間の施工時期を平準化すれば、労働者は仕事が切れることなく安定して働けるようになるでしょう。休日や休憩がとれるようになれば、ライフワークバランスの推進も期待できます。企業にとっても、戦力となる人材を常に確保できていれば、効率的な人材配置がしやすくなります。

i-Constructionで用いられている技術

人手不足が叫ばれている一方で、近年インフラの老朽化などにより建設投資は拡大傾向にあるようです。建設ニーズが高まる中で、業界全体の人手不足を課題していくためには、ドローンやICT建機、CIMといったさまざまなテクノロジーの活用が不可欠といえるでしょう。

ドローン

無人飛行機のドローンは、ホビーや軍事など多様な領域で活躍しています。建設現場では、測量におけるi-Constructionにドローンが大きく貢献しています。人が実施すれば膨大な時間を要する作業であっても、ドローンを用いれば、わずか15分ほどで数百万地点もの測量データが取得できてしまうのです。また、高層ビルの壁面や戸建て住宅の屋根など、高所の確認作業にもドローンの活用は有用です。目視でチェックする必要がなくなれば、高所の点検作業における従業員の安全も担保されます。

ICT建機

ICT技術の搭載されたICT建機を導入すれば、オペレーターのスキルや経験に依存することなく安定した作業の品質・スピードが維持できます。これまで、熟練の職人と経験の浅い職人とでは作業の品質・スピードに大きな差が生じていました。ICT建機にあらかじめ必要なデータを入力して自動制御モードによる作業を実施できれば、属人性を排除できます。データに基づいて作業を効率よく進められるようになると、生産性アップだけでなく正確性による安全性の向上にもつながります。

CIM

CIMは、Construction Information Modeling/Managementの略称です。これまで建設業界では、建造物をコンピューター上の3D空間で構築するBIMが推進されてきました。このBIMの概念をさらに発展させたものがCIMです。3Dモデルの生成により、あらかじめ建築物の完成状態をよりリアルに可視化できれば、関係者間の情報共有もスムーズに行えます。着工してから課題が見つかるといった手戻りも防げるため、時間や労力のムダをなくして効率よく作業を進めていけます。

i-Construction活用の展望

労働生産性の改善に最良の手段といわれるi-Constructionの推進は、事業の拡大や利益の向上にどう結びついていくのでしょうか。インフラそのものを支える建設業界において今後注目されるテクノロジー、グローバル化を視野に入れた取り組みについても理解を深めておきましょう。

ICT工事の工数が増加し、新技術がさらに開発される

2020年より、国土交通省直轄の土木工事に新技術の活用が義務付けられています。今後ICT工事の実績が増えていけば、さらに新技術の開発は促進されるでしょう。AIを活用したインフラの点検では、老朽化した橋梁・道路・建造物・トンネルなどを対象に、これまでの目視からAIに置き換え、検査の省力化と自動化の実現を目指します。

人口減少と少子高齢化により点検技術のある人材が不足する中で、AIの高精度な画像認識技術は、人では見抜けない問題の発見に役立つと期待されています。また、素早く現場の状況を把握して的確な指示を行うために、Web会議ツールとウェアラブル端末を使った作業支援システムを導入する事例も増えているようです。

海外への進出を視野に入れた国際標準への対応

需要の強化と新たな市場の開拓に向けて、海外での展開を視野に入れた場合、ISOなどの国際標準化に向けた取り組みが重要になってきます。i-Constructionで構築したICT技術や3Dデータを活用する際の基準、発注方式、人材教育をひとつのパッケージにして、自社の技術やシステムを海外に売り出す際には、国際標準に対する意識が不可欠です。海外への進出が実現すれば、国内市場が縮小した際のリスクも低減できます。

まとめ

今後、建設業界においてICTを取り入れる動きは急速に広まってくると考えられます。労働人口の減少による影響は、この先も避けては通れない大きな課題です。従来のやり方や考えが通用しなくなった今、最先端テクノロジーを駆使して生産性向上を目指すi-Constructionは、建設業界全体を支える非常に重要な施策といえます。

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