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自動運転実現のために必要な4つの技術

近年、自動運転技術の開発は着実に進歩を遂げています。いよいよ現実味を帯びてきた自動運転技術ですが、完全な実現を果たすには、さらなる技術の向上はもちろんのこと、安全性を高めるべく入念なテストを重ねる必要があります。

自動運転実現のために必要な4つの技術
モビリティの未来を推進する自動車業界

自動運転に必要な技術

近年、自動運転に関する技術が発展を続けています。2019年にはBMWジャパンが自社の体験型販売拠点である「BMW Tokyo Bay」にて、開発中であるレベル4の自動運転車両の体験試乗ができるイベントを開催しました。

自動運転技術には、その段階に応じてレベルが0から5まで設定されています。

  • レベル0:完全に手動で操作する
  • レベル1:ハンドル操作か速度の加減速のいずれかをシステムがサポート
  • レベル2:ハンドル操作と速度の加減速のどちらもシステムがサポート
  • レベル3:特定の場所で自動運転が可能だが、緊急時はドライバーが操作
  • レベル4:特定の場所で自動運転が可能
  • レベル5:場所の限定なくすべての場所で自動運転が可能

現時点では、「レベル2」相当とされている技術がBMWや日産などの一部の車両に搭載されています。

例えば日産新型スカイラインに搭載されている技術「プロパイロット2.0」は、ナビに登録されたルート上の高速道路の運転をサポートしてくれるというものです。

運転者が常に注意を払っていなければならないという前提はあるものの、高速道路上でこのシステムを起動させているあいだはハンズオフも可能とされています。

このように段階的に一般車両にも搭載されつつある自動運転システムですが、当然それを実現するにあたって様々な技術が求められます。

自動運転が成り立つために具体的にどういった技術が必要なのか、項目ごとに見ていきましょう。

認知・判断技術

これは、車の周囲の環境を適切に把握するための、いわば人間でいう「目」や「脳」にあたる役割を果たすための技術です。

私たちが車を運転するときと同じように、車を動かすには、まず「目視で確認した周囲の状況から、どういった対応をすべきか判断する」といったプロセスが欠かせません。

認知を行うには、まずは「目」となるカメラが必要です。カメラは車両や歩行者、標識、白線といった基本的な道路情報を検知しますが、人間の目と同じように悪天候では視界が悪くなってしまうという欠点があります。

そのため、赤外線などを活用したセンサーも一緒に搭載し、カメラだけでは把握しにくい障害物の有無や距離感などを認知させます。このように、カメラとセンサーの二段構えで認知を行うのです。

認知で得た情報を判断するために用いられるのが、人工知能いわゆるAIです。AIを適切に機能させるには、その判断材料として、時間帯や天候、季節など、想定されるあらゆるシーンを実際に走行してデータを集める必要があります。

そして、そのデータから構築されたデータベースをもとにシミュレーションを行い、AIにあらゆるパターンを学習させるのです。

このように集約されるデータは、環境だけでなく歩行者や地形や構造物、それに交通事故に関する情報など、非常に多岐にわたります。

AI・操作技術

認知・判断技術で運転に関する適切なデータを入手できたら、いよいよ運転の段階に入ります。

車の運転そのものは、ハンドルを傾ける、アクセルやブレーキを踏む、そして各種ランプを明滅させる、といったような単純なものです。

しかしながら、こうした操作をあらゆる状況に応じて適切に行うには、やはりAIの高い判断力が欠かせません。車の運転は常に状況判断の連続になるため、操作に関しても当然AIによる判断能力が深く関わってきます。

例えば、「目の前に障害物が飛び込んできたら停止させる」という命令をあらかじめプログラムしていた場合、AIの精度が未熟だとビニール袋など無視できるレベルのゴミに対しても反応し、停車してしまいます。運転中には多々起こりえる各種状況判断をすべて適格に行うためにAIの高い判断能力が必要となるのです。

また、車の操作はこれまではワイヤーや油圧などアナログ中心の仕組みで動かしていましたが、近年の自動車はこうしたパーツはすべて電動で動くようになりつつあります。

あらゆる操作を電気系統で制御できるようになったため、AIとの連動もスムーズに行うことが可能なのです。

安全設計技術

車の運転において、安全性というのはもっとも重要であると言えるでしょう。

年間の交通事故による死者数は4,000人を超えており、人間の運転技術をもってしても悲しい事故が起きてしまっているというのが現状です。

そのため、自動運転においては運転手の負担軽減だけでなく、人間による操作以上の安全性が求められています。

また、自動化や機械化といった技術には、故障などといったトラブルの可能性も見越しておく必要があります。不具合が起きてしまった緊急時でも安全性を保障できる技術が安全設計技術と呼ばれるものです。

その一例として挙げられるのが、フェールオペレーショナル設計です。これは故障してしまった際にすべての機能が停止してしまうのでなく、故障時でも最低限の機能は動かせるようにするという技術です。

他にも、頻発しやすい性能限界、ミスユースや誤操作が起きたときの対処など、機械ゆえのトラブルはたくさん考えられます。

こうしたあらゆるトラブル発生時でも安全性が守られる設計を目指して、開発が進められているのです。

セキュリティ技術

セキュリティ技術というのは、現代の自動車業界ではあまり耳慣れないかもしれません。しかし、自動車における電子化やIoTが進むにつれて、このセキュリティの信頼性は見過ごせないものとなっています。

現在でもカーナビゲーションシステムは広く普及していますが、それに加えて自動運転はあらゆる交通情報を受信して走行の制御を行います。

そのため、ここでハッキングなどされて誤った情報が行き交ってしまうと、恐ろしい事故やトラブルにつながりかねません。

実際、広島市立大学大学院の実験によると、停車中の車をハッキングし、窓を開けたり速度メーターを動かしたりと遠隔操作することが可能だという結果が報告されています。

もし自動運転技術を取り入れた車がハッキングされてしまうと、運転そのものが悪意ある第三者によって遠隔操作されてしまう可能性もあります。

こうした事態に備え、自動車業界においてもセキュリティ対策が重要視されているのです。

自動運転技術の開発状況

現時点における自動運転技術は、レベル1に相当するものが市販車に搭載されはじめ、最新のものにはレベル2に近い技術も取り入れられているといった段階です。

国土交通省が示したロードマップによると、2020年にはエリア限定でレベル4の段階に達することを目標としています。

前述したように、BMWは自動運転レベル4の技術を搭載した車の体験試乗を開催しており、その技術はそう遠くないところまで来ていることが分かります。

また、国内自動車メーカーの1つであるホンダは、2019年の時点で「レベル3に相当する高速道路の渋滞時の自動運転技術を2020年までに確立する」と公表しています。これは特定の状況ではハンズオフも可能といった運転サポート技術よりもさらに進歩した技術です。

このように従来よりもレベルを上げた自動車の開発が次々と進められている一方、搭載が現実的になった技術に関しては、これまで以上に積極的に普及させる動きを見せています。

例えばレベル1に該当する自動ブレーキの技術に関しては、近年高齢者の誤操作による事故が多発している現状を踏まえ、2020年には新乗用車搭載率90%とすることを国土交通省が目標に掲げています。

まとめ

安全性の高い自動運転を行うにはさまざまな技術が求められます。現在、いよいよ実装に向けて現実的な段階に差し掛かってきています。

2020年は自動運転技術において節目の年になるだろうと世界的に期待が高まっており、各自動車メーカーの動向にも注目していきたいところです。

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