人手不足の小売業におけるこれからの人事と人材の育成について

 2019.12.02  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

飲食業界は慢性的な人手不足だといわれていますが、それは小売業界でも同様です。人手不足を解消するためのさまざまな取り組みを行い、人材の育成にも注力しているものの、改善の兆しが見えないという小売店も少なくないでしょう。では、今後小売店は人事や人材の育成をどのように考え進めていけばよいのでしょうか。

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小売業の人事部が抱える課題

多くの小売店が頭を悩ませるのは、人材が集まらないということではないでしょうか。また、せっかく採用した人材がすぐに辞めていなくなってしまう、といった声もよく耳にします。さらに、人事の業務が多岐にわたりすぎるのも課題の一つといえるでしょう。

人材が集まらない

人材不足に悩まされている業界はたくさんあります。医療や福祉業界、飲食業界などもそうですが、小売業界も同じく慢性的な人手不足といわれています。そのため、営業時間を縮小して、提供するサービスを少なくするといった対策をする企業も出てきました。

人材の確保は企業にとって非常に重要です。どんなに素晴らしい商品、サービスを扱っている会社であっても、人がいないことにはそれを消費者に届けることができません。小売店だと、スタッフの数が足りなければお客様を待たせることにもなり、サービス品質の低下にもつながります。

人材不足は売上の低下に直結し、お店の評判すら下げてしまう恐れがあります。そのため、人事は人材を採用するだけでなく、質の高い人材の確保や育成に力を入れなくてはなりません。

すぐに離職してしまう

「せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまう」というのは人事の担当者に共通する悩みの一つでしょう。企業としては、採用するのに時間やコストもかけているため、すぐに辞められてしまうのはどうしても避けたいところです。しかし、そんな企業の思いとは裏腹に、短期間ですぐ職場を去ってしまうケースは少なくありません。

離職率の高い業界はたくさんありますが、実は小売業界もそうです。平成26年における厚生労働省のデータによると、小売業の離職率は38.6%となっています。

採用した人材がすぐに辞めてしまうと、それまでに費やしたコストや時間がすべてムダになってしまいます。またすぐに新たな人材を探す必要があり、しかもまた同じように教育をしなくてはなりません。企業の人事はもちろんですが、現場の人間としても頭の痛い問題といえるでしょう。

業務が多すぎる

そもそも、企業の人事部門が担当する業務は多岐にわたります。これも、人事の頭を悩ませる大きな課題ではないでしょうか。人事と聞くと、人材の採用や異動、解雇に携わる部署とイメージする方が多いのかもしれませんが、実際にはさまざまな業務を担当しています。

人材の育成もその一つです。スタッフを採用しただけでは現場で使いものにならないため、一人前になれるよう教育をしなくてはなりません。現段階でどの程度教育が進んでいるのか、新しいことを任せられるかどうかといった判断もする必要があります。

人材の評価も人事の重要な業務です。目標管理や業績評価、行動評価などを行い、それがスタッフの給料などにも反映されます。ここでの評価や考課制度次第で、スタッフのモチベーションが上下する可能性もあるため非常に重要な業務といえるでしょう。「正当な評価をしてくれない」と思われると即離職につながってしまう恐れもあります。

しかも、小売業の場合だと複数の店舗を展開していることも多いため、人事の負担はさらに大きくなります。多岐にわたる業務を、すべての店舗で働いている正社員やパート、アルバイト従業員にも展開しなくてはならないのです。明らかに、ほかの業界と比べて人事の負担は大きいといえるでしょう。

深刻な人材不足と非正規労働者への依存

小売店で働いている従業員はパートやアルバイトが多い、というイメージがあるのではないでしょうか。これは実際その通りで、小売業界はかねてより非正規労働者への依存が強い業界なのです。人材不足が深刻で、パートやアルバイトに頼らなくてはならない状況だけに、パート・アルバイトの戦力化は必須といえるでしょう。

人材不足の背景

そもそも、どうして小売業界はそこまで酷い人材不足に陥っているのでしょうか。理由はいろいろと挙げられますが、もっとも大きいのは労働条件があまりよくないからでしょう。

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まず、小売店は長時間労働になることが多い傾向にあります。そのため、体力的にきついからやりたくない、という人は決して少なくありません。多くの場合は立ち仕事となるため、長時間立ったまま接客などの業務に携わっていると、足腰に負担もかかります。

また、土日祝日などに休めないのも人材が集まりにくい大きな理由といえるでしょう。土日や祝日は多くの集客が期待できるため、営業するお店は少なくありません。土日や祝日などに休めないとなると、友人や家族との予定も合わせにくくなり、プライベートを充実させることも難しくなります。これも、小売業界が人材不足になる背景の一つと考えられます。

土日祝日が出勤な上に職場での拘束時間が長いとなると、それだけで敬遠されやすくなるでしょう。しかし、それでも給与が高ければまだ魅力は感じます。ネガティブな部分を補ってあまりあるほどの給与がもらえるのなら、人材も集まるでしょう。しかし、実際には小売業界はそこまで給与の高い業界とはいえません。

つまり、総合的に労働条件がよくないのが小売業界の実態です。誰もが少しでも条件のよいところで働きたいと考えているので、そういう意味ではこの業界は人気が低く、敬遠されやすいといえます。

パート・アルバイトの戦力化のメリット

多くの小売店は、パートやアルバイト従業員に依存しています。だからこそ、パートやアルバイトの戦力を強化することが売上のアップ、サービス品質の向上、そして生産性の改善にもつながります。

戦力化することで、新たなアイデアが生まれる可能性もあるでしょう。これまでになかった斬新なアイデアを提案してくれる、新たな発想をしてくれるといった効果が期待できます。そこから新商品や新サービスの開発につながる可能性もあり、売上アップにつながるかもしれません。

戦力化した従業員は仕事に対するモチベーションも高く保てるため、職場への定着率が高まる可能性が高くなります。定着率が上がれば新たな人材を採用するコストも軽減でき、人事の業務を縮小することも可能になるでしょう。

パートやアルバイトの能力をしっかりと把握することで、適材適所への配置が可能になります。ムダな人材の配置を避けることができ、ローコストでのオペレーションも実現するでしょう。これも大きなメリットです。

パート・アルバイト人材を戦力化するポイントとは

「戦力化するといっても、具体的にどうすればいいのか分からない」という経営者の方も少なくないでしょう。人材の戦力化にはいくつかのポイントがあるので、それを押さえた上で実践してください。

マニュアルの整備

業界や職場によっては、未だに「仕事は見て覚えろ」といった風潮が残るところもあります。しかし、これはまったくメリットがなく、かえってアルバイト従業員やパートの不信感を招く恐れもあるでしょう。業務効率も低下してしまい、いつまで経っても使えるようにならない可能性もあります。

早期に戦力化するためには、マニュアルを整備するのは必須と考えましょう。もちろん、現場で実際の業務を教え込むのは大切なことですが、それ以前に基本的なことをマスターさせる必要があります。マニュアルを整備しておけば、新たに人材を採用したときもトレーニングしやすくなるというメリットもあります。

おすすめなのは電子マニュアルの活用です。電子マニュアルなら、動画などのコンテンツも使えるため、伝えたいことが伝わりやすくなります。電子コンテンツにするとスマホなどのタブレット端末でも見ることができ、手が空いたときに仕事を覚えられるメリットもあります。

また、電子マニュアルなら常に最新の情報をスピーディに提供できます。すべての従業員に届けたい情報についても、一斉に届けられるので店舗側のメリットは大きいといえるでしょう。

オペレーションをシンプルに

業務が複雑だと、アルバイトやパートを戦力化するまでに時間もかかります。また、分からないことが出てきたときにはその都度ほかの従業員がサポートせねばならず、非効率になってしまいます。そのため、オペレーションはできるだけシンプルにしてあげたほうが、パートやアルバイトは早く仕事を覚えられるでしょう。

小売店だと、接客よりもレジの対応で戸惑うケースが少なくありません。そこで、スマホやタブレット端末で管理や会計ができる、POSレジの採用を検討してみてはいかがでしょうか。現代の若い世代はデジタルネイティブです。生まれたときからパソコンやスマホ、インターネットが存在していた世代なので、なじみのあるアイテムが使えるのなら仕事の覚えはより早くなると考えられます。

コミュニケーションを密に

コミュニケーションをスムーズにすることで、業務効率のアップにもつながります。また、小売店では店長やオーナーが従業員とコミュニケーションをとらなくてはならない機会がたくさんあるので、コミュニケーションツールの導入もおすすめです。

最近のコミュニケーションツールといえばLINEが主流です。実際、小売店でもLINEでグループを作り、そこで情報の発信をしているケースは少なくありません。一度にすべてのアルバイト・パートに情報を共有できるのは大きなメリットといえるでしょう。

ただ「個人的なアカウントで職場のグループに参加するのは抵抗がある」という人がいるのも事実です。そこでおすすめなのがビジネスチャットの導入。これなら、個人アカウントを使わずにグループでのやり取りが可能になります。

コミュニケーションツールを活用すれば、トラブルが起きたときの対策もスムーズにできるメリットがあります。グループ内でのやり取りは後から確認もできるため、共有した情報からトラブルを予見することも可能でしょう。いざトラブルが起きたときも、店長を含め一斉に情報を発信できるためスピーディな情報共有ができます。

研修やトレーニング

できるだけ短期間で戦力化するためには、研修やトレーニングも必要になります。どんなに優れたマニュアルを整備していたとしても、現場での業務となると予測不能なことも起こります。さまざまなシーンに対応する必要があるので、より実戦に近いトレーニングは必須といえるでしょう。

小売店だと、接客時のトレーニングが挙げられます。実際に店長やほかのスタッフがお客様の役になり、一連の接客をトレーニングします。基本的にはマニュアルに則った接客の練習をしますが、先述したようにお店では予測もできないようなことも起こります。そのため、臨機応変な対応ができるようなトレーニングメニューも加えるべきでしょう。

例えば、お客様からクレームが入ったとき、値引きしてくれと強く迫られたときなどに、どのように対応するかも決めておくべきです。その上で、実際に対人で練習することで業務に活かせるようになるでしょう。

バイトテロを防ぐための施策

バイトテロという言葉が広く知られるようになりました。小売店のオーナーにとっては決して他人事ではないでしょう。バイトテロとは、お店の信用を損なうような動画や写真などをSNSにアップする行為を指します。テレビのニュースでも取り上げられることが多いため、ご存じの方も多いと思います。

バイトテロが起きてしまうと、最悪の場合、お店を閉めなくてはならなくなることも考えられます。実際、過去にはバイトテロが原因で閉店に追い込まれたお店もあります。アルバイト従業員は軽い気持ちでやったことかもしれませんが、お店にとっては大ダメージであり、事業の継続にも関わるので、防ぐための施策は必須といえるでしょう。

例えば、従業員に守ってほしいこと、約束事などは明確にしておくことが大切です。また、バイトテロは決してイタズラでは済まず、賠償問題に発展する可能性があることなども伝えておきましょう。誓約書にサインしてもらい、提出してもらうのも一つの抑止力になるでしょう。

小売業で戦力となる人材を育成するには

優れた人材を採用するのはもちろんですが、活躍できるように育成してあげるのは店長やオーナーの役割です。マニュアルをきちんと整備した上で実践的なトレーニングを行ったり、コミュニケーションツールを活用したりすることで、短期間での戦力化も可能になるでしょう。

また、先述したようにバイトテロの脅威はどのような小売店にも潜んでいます。実際に起こってからだと手遅れになることも考えられるので、きちんと施策しましょう。バイトテロが起こるようでは、アルバイトの戦力化どころではありません。

まとめ

人手不足に悩む業界だからこそ、採用した人材はしっかりと育成して戦力にしたいものです。そのためには、きちんとポイントを押さえた上で人材の育成をしなくてはなりません。ここでは、具体的な人材育成の方法やポイントについてもご紹介しました。ぜひ今後に役立ててください。

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