小売事業者が知っておきたいモノ消費からコト消費へ変化と具体的な対応策

 2019.11.27  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

現代は多種多様なモノが溢れる時代です。それに従って消費者のニーズも変化しており、従来と同じ方法ではモノが売れない時代になってきています。小売業においても、消費者のニーズをつかむ必要があります。今回は時代による消費の行動変化や、それに合わせた小売業向けの対策方法などを紹介していきます。

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モノ消費からコト消費への変化

昭和から平成、令和へと時代が変化するに従い、消費者の行動も次第に変化しています。例えば、戦後の復興過程で電気冷蔵庫、電気洗濯機、白黒テレビの家電が三種の神器としてもてはやされた昭和中盤。その時代「モノ」は新鮮であり、それらを所有することが豊かさの象徴でした。しかし、2015年に東日本ジェイアール日本企画が発表した調査結果によると「欲しいモノがパッと思い浮かばない・即答できない」という問いに対して「当てはまる」「やや当てはまる」とした回答の合計が50.1%で、「家にモノが溢れていてこれ以上持ち物を増やしたくない」という問いにも「当てはまる」「やや当てはまる」という回答が52.1%を占めています。こういった時代の変化に従って、飽和しつつある「モノ」ではなく体験に重点を置く「コト消費」を中心にしたサービスの開発が焦点となっています。

モノ消費とは

モノ消費は、消費者が商品を所有することに価値を見いだす消費傾向のことを指します。モノとして所有される商品には高機能のエアコン、洗濯機、掃除機などの家電や高級家具、衣類、宝石などの装飾品など手元に形で残るあらゆる商品があります。今までの概念は、「消費」は主にこの「モノ消費」を指した内容となっていました。

コト消費とは

それに対して「体験、時間、人間関係、思い出」など、商品を買いサービスを使うことで得られる体験に重きを置き、価値を見いだす消費傾向を「コト消費」と呼んでいます。

エステティックサロンなどリラクゼーション体験、スポーツ体験、旅行などのアクティビティー、音楽や美術作品などの芸術鑑賞、パーティー、イベント参加、レジャー体験などで得られる「一連の体験」が「コト消費」に当たります。
「モノ消費」との違いは、購入の対価として消費者の手元に残るのが「特別な体験、思い出、人間関係」といった定量化が不可能な形のないものであることです。

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「売れない時代」コト消費へ変化した理由

消費者のニーズが「モノ消費」から「コト消費」へ変化した大前提としては、日本国内の消費が成熟し、生活必需品が十分に行きわたっている時代になったことが挙げられます。また、ネットショッピング等を通して遠方の名産品を買い求めることもできるようになり、大抵の人が欲しいモノを既に手に入れている状況です。「モノ消費」への渇望が薄れつつあるとしても不思議ではありません。他にも、消費行動の変化を引き起こしているさまざまな要因が考えられます。

消費者ニーズの変化

消費者のニーズは各世代によっても大きく違います。象徴的なのはいわゆる「ミレニアル世代」が消費の中心世代に台頭したことです。

ミレニアル世代とは、米国で2000年代以降に新成人となった1980年代~2000年代初頭生まれの世代を指す言葉です。この世代はまた、物心ついたころからインターネットやデジタル機器とともに育った「デジタルネイティブ」で、ネットショッピングや欲しい情報が一瞬で手に入る環境で育った世代です。

そして、SNSなどで他者との共感を大事にするコミュニケーション方法になじんだこのミレニアル世代こそが、モノよりも「モノ消費」より経験や体験、他人の共感や評価を重視する「コト消費」に重点を置き始めた最初の世代と言われています。具体的には、得たお金でモノを買って手に入れるのではなく、コンサートに行ったり、旅行、趣味などの体験に消費したりする傾向が目立つようになっています。

ミレニアル世代は2019年現在で20歳から40歳となり、最も消費意欲が旺盛とされる年代を迎えていますので、彼らの消費動向は現在のマーケティングにおいて大きな意味を持っています。今後もミレニアル世代の動向に注目です。

「体験」で幸福感が増す理由

旅行や芸術鑑賞などの体験をする場合には、大抵の場合、事前に日程を計画しますが、この「計画を立てる」という行為自体に「期待感」をもたらすというポジティブな心理効果があります。「来週の土日に旅行に行く予定だ」「今週の土日はみんなでパーティーをする」などの予定を楽しみに待っていた経験がある方も多いのではないでしょうか。

もちろん、アウトドアキャンプやバーベキューなど「体験」を得る一連の活動を第三者と共同で行うこともあります。友人と体験を「共有」することで、人間関係が良好となった結果、個人の感じる幸福度が上がることもあります。もちろん、楽しい「体験」の記憶を、後日思い出すことで未来においても幸福度が上がり、日々の生活に張りをもたらす効果があります。

外国人客の消費行動も大きく変化

インバウンド(外国人の訪日旅行客)の消費も増加傾向にありますが、すべての観光客が買い物を目的に来日しているわけではありません。
実は、インバウンド消費でも「コト消費」が増え始めています。その背景には訪日外国人観光客のうちリピーターの占める割合が既に6割以上になっていることもあります。

繰り返し来日するリピーターには、京都など古式ゆかしい街で、和服を着てお茶をたしなむなど日本の伝統文化が味わえる体験を楽しむ人もいます。または、アニメのコスプレや、カラオケ、ボウリングといった日本独特の文化やサービスを楽しむ人もいます。訪日外国人の総数は未だに増加傾向にあるので、こういった新しい形での観光客の消費行動に目を向けることが大きなビジネスチャンスのきっかけとなります。

コト消費への小売事業者の対応策

ここまでコト消費の内容や、その根拠となる消費者のニーズについて解説しました。実際の売り上げに結びつけるためには、コト消費に関する適切な理解と認識が必要です。コト消費はいくつかのパターンに分けることができます。それぞれの特徴に合わせて適した対策をとりましょう。

観光や文化体験への集客

旅行という伝統的な「コト消費」の場である観光業界は、インバウンド増加の恩恵も大きく受けて業績を伸ばしているジャンルです。

まずは大きく分けて訪日外国人観光客と国内観光客のどちらにアプローチすべきかを見極め、それに従って対策を立てることが重要です。

外国人観光客については、国土交通省・観光庁が発表した「訪日外国人消費動向調査2018年年間値」によると、彼らが訪日に当たって期待していた内容のトップに挙がったのが「日本食を食べること」の70.5%です。このことからも、グルメの充実は一つの欠かせない要素と考えられます。

また、現代のマーケティングではインスタグラムやツイッター、フェイスブックなどSNSを活用してPRすることもSNSを使う手法は外国人観光客、国内客の両方に対して有効な手段となります。特に画像が中心のインスタグラムやYouTube等は言語が異なる観光客にもメッセージが伝わりやすく有効な宣伝手段と考えられます。

イベントを開催する

デパートやショッピングモールなどが無料でイベントを開催して集客に繋げる方法です。イベント参加料を無料にした上で、参加した消費者から「モノ消費」の意欲を引き出すのが目的となります。

このタイプのコト消費は基本的には一過性のものになりますが、大きな売り上げに繋がる可能性もあります。「クリスマス」や「バレンタインデー」のプレゼント購入、「ハロウィン」の衣装購入などは比較的習慣として定着としており、例年の関連イベントでも一定の売り上げを見込めます。

店舗などの場合は来客数を増やすために、独自色を打ち出したイベントを定期的に行う場合もあるでしょう。その場合はイベントの内容をよく検討して効果的な内容にした上で、チラシやSNSなどでしっかりと宣伝することが必要です。

居心地の良さを提供

消費者に居心地の良い空間を提供するタイプの「コト消費」もあります。
このサービス形態の代表的なものの一つはカフェを併設した書店です。ここでは飲み物や食べ物を注文することで、まだ購入していない本を読むことができるサービスを展開しています。また、東京ディズニーランドやハウステンボスなどのアミューズメントパークや、温泉施設や健康ランドもこのタイプの「居心地の良さ」を売る「コト消費」です。

このサービスを行う場合に注意したいのは「コト消費」をいかに効率よく「モノ消費」に繋げられるかという点です。居心地の良さで客が長時間滞在したとしても、設備コストに見合うだけの売り上げが得られなければビジネスが成り立ちません。

成功している事例としては、入場料や年会費で収益を上げるアミューズメントパークのように、「コト消費」の時点で収益を確保した上で、さらに「モノ消費」に繋げるというビジネスモデルです。こういった施設の滞在時間は長めになりやすいので、飲食の提供機会を増やすことができ、さらにお土産の購入など「モノ消費」にも繋げやすい仕組みになっています。

コミュニティーの形成

コミュニティーを提供する手法もまた「コト消費」の一つです。定期的に開催される「ワークショップ」や「セミナー」も、このタイプのコト消費です。この手法ではカフェやコワーキングスペース、シェアリングオフィスなどの「コミュニティー形成の場」を提供して、飲食物や設備を提供する形で「モノ消費」に繋げています。

または、おもちゃ売り場に子どもが集まりカードゲームなどに興じる姿を見たことがあるかもしれません。これもコミュニティー空間が形成された「コト消費」で、カード購入などの「モノ消費」に繋がっています。

この方法ではコミュニティーの醸成を促し、コミュニティーでの体験を「モノ消費」に繋げる手法が重要になります。成果を上げている既存のノウハウを踏襲してみるのも良いでしょう。

「楽しい購買体験」となる工夫

通常の店舗にワクワクする体験を組み合わせることで、「コト消費」から「モノ消費」に繋げる手法です。具体的なお店の例ではライフスタイルごと提案する「ヴィレッジヴァンガード」「LOFT」「ドン・キホーテ」「東急ハンズ」などが挙げられますが、これらの場合、見ているだけで楽しくなるような独特の魅力を創り上げることが重要となります。もちろん、見て楽しんでもらうだけでは売り上げに結びつきませんので、購買意欲を高めるような工夫も必要です。「お店に行くとつい買ってしまう」「気づいたらこんなに買っていた」などの行動をいかにして消費者に促せるかが成否の鍵となるでしょう。

まとめ

消費者の嗜好は「モノ」を消費するこれまでの動向から「コト」を消費する方向へと移りつつあります。小売業においてもターゲットの適切な選定、サービスの認知、購買意欲をそそる工夫などの研究が必要でしょう。「コト消費」を上手に取り入れて、効果的な「モノ消費」に繋げるマーケティングの必要性が高まっています。

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