小売業のためのIoT講座

 2019.11.06  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

近年になって耳にすることが多くなった「IoT」という言葉ですが、その意味を詳しく説明できる人は意外と少ないかもしれません。IoTは“Internet of Things”の略で、モノのインターネットを意味しています。小売業を始めとするさまざまな業界で導入することで、新しい可能性が切り開かれます。本稿では小売業におけるIoT活用や実現できること、メリットデメリットなどについて解説していきます。

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知っているようで知らない「IoT」の世界

インターネットが普及して以来、次々と新しい技術が生み出されています。「IoT」もそのひとつで、これからの私たちの生活を大きく変える概念として注目を集めています。IoTの何たるかを知ることで、これからの新しい時代の形がみえてきます。

IoTとは

少し前までは、パソコンやスマートフォンのみで用いられる技術というイメージが強かったインターネット。「IoT」、すなわちInternet of Thingsでは、パソコンやスマートフォンの枠組みを超えて、 “モノ”そのものにもインターネットを活用していくという技術です。IoTの目指すところは、日常生活の中で身のまわりにあるあらゆるものをインターネットにつなげるというもの。

たとえば、家の中だけでいうなら、テレビやエアコンだけでなく、冷蔵庫や洗濯機、電子レンジ、浴室、照明、玄関ドアにいたるまでインターネットの及ぶ範囲を広げて、外出先にいながらにしてこれらすべてを操作できるようになるというのが、これからのIoTの特徴でもあります。総務省が発表する『平成30年版 情報通信白書』によると、2020年までに世界のIoTデバイス数は400億台を突破するとされています。(参考元:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd111200.html

今後ますますIoT機器は増え続け、わたしたちの生活を現在とは比べものにならないほどに激変させていくでしょう。

IoT活用で実現できること

IoTで実現できることは多種多様で、人びとの日常生活だけでなく、各産業、業界、分野にも広く活用されることが期待されています。

自動車分野

多くの人の生活に不可欠となっている自動車。ここでも、IoTが活用されつつあります。たとえば、従来であればカーナビゲーションシステムを利用する際には専用の機器を購入し、車に設置する必要がありました。ところが、現在では手持ちのスマートフォンを利用して、従来のカーナビゲーションシステムと同じ、もしくはそれ以上の機能を使うことができるようになりました。

IoTの考え方はさらにその上を行きます。まだ研究開発段階ですが、自動車とインターネットを直接結び付けることにより、自動運転システムの実現が進められているのです。ITを活用して自動車のアクセルやハンドル、ブレーキを操作することが可能となり、現在地や目的地の情報もインターネットを経由して瞬時に送受信されるため、リアルタイムで確実性の高いシステムとなることが期待されています。

交通機関分野

自家用車だけでなく、バスや電車などの公共交通機関にもIoTが導入され始めています。インターネット上のサイトでバスや電車の到着情報や遅延情報を知ることができ、効率的な乗換や選択が可能になります。

物流分野

物流の分野においてもIoTが急速に普及しています。インターネットを活用することで、在庫管理や配送の手配、配送ルートの選定などの効率を著しく高めることが可能です。また、従来の人による運転・配送に留まらず、自動運転やドローンによる配達も視野に入れて研究開発がなされています。今後はいくつかの法整備が不可欠となりますが、技術的には既に実用可能な段階まで開発が進んでいます。

医療分野

医療分野でもIoTは大きな変革をもたらします。たとえば、近年では着用型の「ウェアラブルデバイス」。腕時計型のデバイスなどが、身近な例のひとつとして挙げられます。インターネットと連動したウェアラブルデバイスを着用することで、着用者の健康状態を記録・管理し、医療機関と情報を共有することが可能になります。急に健康状態が悪化した時にアラートを出すデバイスもあり、適切な健康の維持管理や緊急時の対応がより効果的に実現します。さらに最新の研究では、IoTを活用した心臓ペースメーカーの開発にも着手しています。これにより、患者のデータをリアルタイムで収集・蓄積し、予防や治療に活かせるようになります。

農業分野

インターネットと無縁のイメージが持たれがちな農業分野においても、IoTの導入が進んでいます。たとえば、ビニールハウス栽培において、水や肥料を与える作業もインターネットを活用することで自動化が可能です。農地にセンサーを設置すれば土壌の状態や日射量を細かく測定できるので、その時々の天候や土壌にあった水や肥料の量を農作物に与えられるようになります。これにより、人手不足の解消だけでなく、状況に適した効果的な栽培が実現するでしょう。

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IoT活用のメリットとデメリット

さまざまな領域で活用が期待されるIoT。そのメリットは非常に多く、世界中で享受されています。IoTの活用によるメリットには、これまでみてきたもの以外にも以下のようなものがあります。また、その反対にデメリットもあるので、活用の際には十分な注意が必要です。

IoTのメリット

インターネットにつなぐことができるモノの数だけ、IoTからもたらされるメリットがあります。個人と企業とでその恩恵は異なりますが、個人にとっては何より生活が安全で便利に送れるようになるでしょう。前述した家電についてもそうですが、財布や持ち物がIoT化されれば、現在どこにあるかといった位置情報も的確に分かるため、スリや置き引きなどの被害や落とし物も少なくなります。また、カメラ付き自動販売機などを設置し、そこにIoTを導入することで常に街の状態が把握しやすくなり、警察などと情報が共有されれば犯罪抑止に役立つことが考えられます。企業においては、業務の効率化や、コスト削減につながれば、人材を本当に必要な業務に回せるようになるので、人手不足の解消にもつながります。また、IoTにビッグデータを活用することで顧客のニーズを的確につかめるようになり、新たなビジネス機会の創出も期待できます。

IoTのデメリット

一方、IoTにはデメリットがあることも忘れてはいけません。IoTの土台になっているのはインターネットです。そのため、インターネットに関わるトラブルはどうしても避けられなくなります。まず、考えられるのは、データの流出です。絶えずインターネットと結びついているので、個人・法人にかかわらず、ハッキングやウイルスなどによって個人情報を含むあらゆるデータが流出する危険性は高まります。また、大規模な停電や通信障害が生じた場合に、生活インフラや社会インフラが停止し、大きな混乱を招く可能性があります。

小売業界のIoTの活用事例

さまざまなモノや情報をインターネットでつなぐIoTは、小売業界でも広く活用されつつあります。

スタッフの負担軽減

小売業界の中でも多くの割合を占めるのが、コンビニエンスストアです。大手のコンビニエンスストアでは、少子高齢化や労働人口の減少が喫緊の課題となっていますが、そうした中、これらの課題を解決するためにIoTが活用されています。従来であればスタッフに商品の入荷や陳列、販売、そして店内の清掃に至るまで、非常に幅広い業務の対応が求められていました。けれども、IoTを利用すれば、店舗運営を効率化し、スタッフの負担を軽減することが可能です。これにより、負荷の減ったスタッフは顧客の対応など、別の必要な業務に時間と労力を割くことができるようになります。

多様な決済手段の提供

IoTの導入によって負担が軽減されるのは、店舗スタッフだけではありません。こちらも大手のコンビニエンスストアでの事例ですが、IoTを活用することで、レジに並ばなくても店内のどこからでも自身のスマートフォンで決済が可能となる「スマホペイ」の実証実験が行われています。この実験が行われた店舗では、スマホでのツールを利用すると入店から退店までの時間が混雑時で約1分と大幅に減り、レジで決済をする場合に比べ、約4分の1に短縮されました。また、自動認識の技術を発展させて、今後は商品に貼りつけられた電子タグを読み取り、専用のゲートを通過するだけで、スマートフォンにインストールされたアプリと連動して自動的に決済を行うことまで考えられています。その企業のコンビニエンスストアで店舗スタッフの1日の業務内容を分析したところ、レジの対応は業務全体の約25%に当たることが判明。IoTの活用によってレジ対応の負担が減ることで、いっそう顧客に寄り添った接客が可能となることが期待されています。

(参照元:https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NBO/18/intel0529/vol9/

在庫管理と効率的な発注

小売業界にとって、大きな負担となるのが在庫の管理です。これまでは、棚卸し作業にはスタッフや、専門業者への依頼など、多くの人的コストが不可欠でした。また、発注作業については、店長や店舗責任者自身の経験や知識に基づくような、誰にも引き継げないやり方で行われているのが通例です。IoTを導入すれば、これらにかかる労力を大きく削減できます。たとえば商品に電子タグを設置することにより、在庫の管理だけでなく賞味期限情報の管理も容易になります。常に商品の情報がリアルタイムで把握可能になり、スタッフが目視で確認する必要もないでしょう。また、従来のように経験則に基づいていた発注作業は、今後は他店舗の情報も参考にして、ビッグデータに裏付けられることでいっそう正確に実現できます。

顧客とのつながりの高まり

小売業界のIoTの応用領域のひとつとして、「つながる顧客(コネクティッド・カスタマー)」が挙げられています。SNSなどを通じて顧客同士が口コミなどを共有できるという意味で使われますが、ここではそれに加えて、情報を通じて店舗と顧客がつながるという意味でも用いられているのがポイントです。顧客の購買履歴や来店履歴などを参考に、店舗はいっそう顧客が望むものを提供することが可能になります。これにより、従来よりも店舗と顧客がつながり、より魅力的なカスタマー・エクスペリエンスを提供できるでしょう。

効果的な広告を表示

IoTは、広告の概念を大きく変化させました。従来の紙媒体の広告では、どのような顧客・ユーザーにも一律で同じ情報を提供していましたが、IoTを広告の領域に導入することで、顧客が求めている情報を的確に伝えることが可能となります。たとえば、小売業で不可欠となっている販売用の什器にデジタルサイネージ(小型の液晶ディスプレイ)を広告媒体として設置することで、手に取った商品と連動して商品の情報や魅力を適切に伝えることができます。商品に興味を持っている顧客に最も望ましい情報を提供することで、顧客本位の広告を実現します。

まとめ

インターネットと無縁にみえる小売業界でも、近年ではIoTの導入によって店舗と顧客の両方にとって魅力的な変化を起こしつつあります。IoTを駆使して情報を収集、共有し合うことで管理の効率を高め、より顧客志向を実現し、良質なカスタマー・エクスペリエンスを提供することができるでしょう。

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