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自治体DXの必要性・ポイントとは?政府の推進計画などについても解説

自治体DXがなぜ必要なのか、具体的にどのようなものかを詳しく知らないという方は少なくありません。民間企業と同じく、自治体でも職員の負荷軽減と住民の利便性向上のために、DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されています。そこで本記事では自治体DXの必要性やそれを取り巻く動き、取り組みのポイントを解説します。

自治体DXの必要性・例・ポイントとは?政府の推進計画などについても解説

自治体DXの必要性

データとデジタル技術の活用を通して、企業の価値向上につなげる取り組みを「DX」と呼ぶのが一般的です。しかし、それは企業に限ったことではありません。各自治体でも「自治体DX」と呼ばれるDXの取り組みが行われています。デジタル技術を行政サービスに取り入れることで、住民の利便性向上や、住民のニーズに沿った行政サービスの提供が可能です。また、自治体職員の負荷軽減にもつながります。

自治体DXの例

各自治体によってさまざまなDXの取り組みが進んでいます。自治体DXは、具体的にどのように取り組まれているのでしょうか。

デジタル化

DXはデータやデジタル技術を活用して新しい価値を創造することを指しますが、その前段階として、オフラインからオンラインへの移行させることで、各手続きのデジタル化が可能です。

従来は各種手続きなどの行政サービスは対面で行われることが基本でした。しかしこれからは、「システムを整備してオンラインで手続きが完結できるようにすること」が政府の目標にも掲げられています。スマートフォンやパソコンなどのデバイスで手続きができると、仕事や育児・介護、自身の病気や怪我などで来庁できない人にとって利便性の向上に大いに役立ちます。

また、ペーパーレスになることで、職員の業務負荷の軽減、書類の保管コスト、人的ミスの削減も実現されていくと期待されます。

業務改善

各種ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)ツールを導入することで、自治体業務を大幅に効率化することも可能です。深刻な人口減少に直面し、「2040年頃までに今の半数の自治体職員でも本来担うべき機能を発揮できる仕組み作りが必要」との提言も出てきています。そのため、各自治体が業務改善に取り組むことは急務となってくるでしょう。

一般に、自治体業務には手順・ルールが明確なものも多いので、ルーチンワークを自動化できるRPA(Robotic Process Automation)ツールはスムーズに導入可能です。これにより、大幅な生産性向上につながるでしょう。

AI(人工知能)も導入が進んでいます。スマートフォンのアプリを通して情報提供や質問への回答を行うチャットボットなどが活用されています。

そのほか、保育園の入所選考は保護者の勤務状況や兄弟・姉妹の有無など多岐に渡る項目を加味して進められますが、それにかかる業務負荷が膨大なものでした。そのため、この作業をAIによって自動化する自治体も増えてきています。

標準システムへの移行、システムの標準化

デジタル庁では、すべての自治体に対して2025年度までに国が定めた標準システムに移行する方針を明らかにしています。対象となるのは国民健康保険、児童手当、介護保険、個人・法人住民税などの17項目です。

書類のフォーマットやルールを統一させることで、自治体をまたいだ転居の場合でも申請がスムーズに進められるため、住民・職員の両方にメリットがあります。また、システムが統一化されていれば、制度が変わった場合でも、各自治体がそれぞれ個別にアップデートをする必要がなく、速やかに最新の状態にできるため、時間・手間・費用を削減できるのです

自治体DXのポイント

それでは、自治体DXを成功させるポイントはどこにあるのでしょうか。

人材の確保

何よりも大切なのは、リテラシーの高い人材を確保することです。

国は外部人材確保支援などを行っていますが、ICTに強い人材は世界中で不足しています。特に給与水準の低い日本では先端のICTに対応する人材を確保することは難しいと言わざるを得ません。

その一方で、システムの保守・運用などに携わる従来のIT人材は2030年には余剰になるという試算もあります。そのため、このような従来のIT人材の中から、「AIに携わった経験はないもののポテンシャルがある」という者を積極的に採用することも有効です。基本的には、「外部ベンダーに高度な作業を依頼し、日常の運用は内部の人材で行う」という手段が現実的です。

また、自治体の公式SNSなどを運用する場合などは、いわゆる「炎上」のリスクを考慮し、普段からSNSに親しんでおり、ジェンダーや人種差別などの問題意識を持った人材の登用も考慮する必要があります。

体制の強化

事前準備として、DXの体制づくりを組織全体で行うことが重要です。

まずは、トップがDXに取り組む意志を全体に示しましょう。システムに関わる職員だけでなく、すべての職員がDXの当事者意識を持てるように、自治体DXの目的・方針・ゴール、メリットをそれぞれの業務に関連づけながら説明することが大切です。自治体DXの成功事例も共有すると、より具体的なイメージが持ちやすくなります。

体制づくりが中途半端なままだと、現場の職員から協力を得られず、自治体DXがスムーズに進められない恐れがあります。職員も慣れない作業が増えることで「やらされ感」が強くなり、モチベーションの低下にもつながるため、まずは、しっかりと自治体DXを推進する下地づくりを行いましょう。

計画・実行

自治体DXには入念な計画づくりも欠かせません。まずは全業務を細かく可視化し、「どこに・どのようなデジタル技術を導入できるか」を検討します。その後、アイディアに優先順位を付け、費用対効果と実現性も考慮した上で、実行に移していきます。

職員の業務効率化・高度化だけでなく、住民の利便性の向上、新しい行政サービスの創造といった側面からも長期的な計画を立てることが大切です。

自治体DXを取りまく動き

自治体DXを取りまく状況は刻々と変化しています。世の中の動きについて紹介します。

「自治体DX推進計画」の策定

2020年12月25日、総務省は「自治体DX推進計画」を発表しました。これは自治体DXを効果的に進めていくための計画で、2026年3月までを対象期間としています。

重点的に取り組む事項は、システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの普及促進、行政手続きのオンライン化、AI・RPAの利用推進 テレワークの推進 セキュリティ対策の徹底の6項目です。

中でも2021年11月段階でも交付枚数が5,000万枚にとどまるマイナンバーカードの普及促進は、高額のポイント付与など各種プロモーションが行われ、普及促進が行われています。マイナンバーカードを通して育児・介護などのオンライン手続きが可能になるよう、各自治体にシステム改修が求められています。

また、システムの標準化・共通化も重要な取り組みの1つとして掲げられています。セキュリティ対策を徹底しながら、2025年度までに構築される全国共通クラウド「Gov-Cloud(仮称)」を用いて、17の基幹業務の標準化を行うことが目標です。

この統一システムは基本的にカスタマイズが不可とされているので、「自治体ごとにフォーマットが微妙に違い、自治体同士、横の連携が取りにくい」といった問題も解決に向かうでしょう。それまで各自治体が負担していた各システムの運用・改修などの費用も抑えられると期待されています。

「自治体DX白書」の運営

政府の委託先として数々の実績がある電通をはじめとした複数の企業が、自治体DXをサポートするサイト「自治体DX白書.com」を運営しています。

自治体DXの基本・ノウハウ・現場の声・自治体DX担当者の対談などのコンテンツが充実しており、各自治体のDX推進レベルを診断することも可能です。それぞれの自治体が注力するべきポイントもレーダーチャートとして可視化されるため、「何から自治体DXを進めてよいかわからない」という自治体にもおすすめです。

まとめ

自治体DXは、デジタル技術を活用することで行政サービス提供の効率化・高度化、住民の利便性向上、職員の業務負荷の軽減などにつなげる取り組みです。今後、人口減少やさらなくデジタル化が進むと予測される日本で自治体DXを成功させるには、各業務を可視化した上で、全職員で当事者意識を持ちながら計画的に取り組むことが重要です。

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