自動運転で変わる物流の世界。環境改善に向けた企業の取り組みとは?

 2020.04.30  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

2020年は、自動車業界でいよいよ自動運転レベル3を搭載した車が実装されるのではとの期待が高まる年となっています。こうした自動運転技術の発達は、物流業界の在り方が大きく変わる可能性があります。そこで自動運転技術がどのように物流と関わってくるのか、具体的な例を挙げて見ていきましょう。

Logistics truck autonomous driving-1

今の物流業界は深刻な人手不足

国土交通省の発表している「平成30年度交通の動向」によると、日本の年間国内貨物輸送量の9割をトラックが輸送しており、トラックが日本の物流を支えていることがわかります。しかし、インターネットによる通信販売が日常的になるなど、以前よりも物流に頼らなくてはならない場面が増えている現状は、深刻なトラックドライバー不足に拍車をかけています。

このトラックドライバーの人手不足の要因として挙げられるのが、「長時間の拘束」や「低い賃金」といった労働環境に関する点です。厚生労働省が定めたトラックドライバーの労働時間は、原則1日13時間までで、状況に応じて16時間まで延長することが認められています。また、15時間以上の拘束は週に2回までと定められています。しかし、この条件は一般的な企業に設けられた8時間という勤務時間と比較しても圧倒的に長く、賃金の水準は他の業種と比較しても低くなる傾向があります。加えて、通信販売を行う企業が「送料無料」を謳うケースが増加していますが、そうした消費者に向けたサービス向上のしわ寄せもドライバーの賃金低下に響いていると指摘されています。

さらに、2007年の道路交通法改正によって、今まで普通免許で運転できていたサイズのトラックも中型免許が求められるようになった点も、人手不足を後押しする要因のひとつです。2018年にはさらなる改正で、中型免許と異なり初めて免許を取る若者でも取得できる「準中型免許」が設けられました。しかし、この改正は区分に応じて免許を取る必要があるため、コスト面で逆にハードルを上げてしまっています。

参照:国土交通省「平成30年度交通の動向」

国土交通省「トラック運送業の現状等について」

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自動運転の導入で期待できること

ドライバーが1人いなくなると、当然ながら本来13時間~16時間は稼働できるトラック1台が動かせないことになります。このようにドライバー1人あたりの仕事量が多い状況にありながら、常に人手不足に悩まされる物流業界の問題を解決する糸口として注目されているのが自動運転技術です。現在、国内外で採用されている自動運転技術は「運転支援」と呼ばれるもので、完全な自動操縦の域には至っていません。しかし、自動車メーカーや国土交通省は2020年には限定的に自動運転を行う「自動運転レベル3」の実装を目標としており、さらなる技術の発展に期待が高まっています。そこで、物流業界に自動運転技術を取り入れることで期待できる具体的な効果を紹介します。

自動運転トラックによるドライバー不足の解消

自動運転トラックによってドライバー不足の解消が図れます。ドライバーを必要としない完全な自動運転技術はかなり先の話だと予想されていますが、現在も物流業界を支えるシステムの開発が進んでいます。例えば、1人のドライバーが運転するトラックの後ろを何台もの無人トラックが追従する「隊列走行システム」は、2020年に新東名高速道路で実証実験が進められる予定です。仮に一人のトラックドライバーが3台のトラックを同時に輸送できれば仕事量は3分の1に圧縮でき、削減できた人件費を福利厚生や給与に反映させることも可能になるでしょう。また、完全な自動運転でなくても、高速道路など限定的なエリアの走行での自動運転が実現すれば、長距離を運転するドライバーの負担を大きく減らせます。過酷な労働環境は居眠り運転などを招く要因のひとつですが、こうした技術が労働環境を改善できれば、安全性の向上も見込めます。

ドローンによる作業効率のアップ

また、撮影現場や測量の分野ではすでに実用化されているドローンですが、物流を支える新たな輸送手段としても注目を集めています。特に宅配の現場に活用しようとする動きが加速しており、ドローンで輸送することで人手不足が解消されるのはもちろんのこと、交通状況の影響を受けません。さらに最短距離で目的地まで飛ぶことができるため、圧倒的な作業効率のアップが期待できます。国土交通省も物流業界におけるドローンの活用を本格的に検討しており、2020年には都市部などの有人地帯でもドローンを動かせるよう環境の整備を進めています。

こうしたドローン技術の本格的な実装に向けて、楽天はドローンによる配送サービス「そら楽」をゴルフ場にて1ヶ月のあいだ実験的に提供しました。「そら楽」のサービスはまだ一般に向けた提供には至っていませんが、実現に向けてその後も離島への宅配など期間限定のプロジェクトを重ねています。

国内物流企業の取り組み

現在抱えている問題を解消するために、物流業界における自動運転技術の取り入れは急務であると言えるでしょう。国内の各企業も、問題解決に向けて様々な取り組みを行っています。

ヤマト運輸

ヤマト運輸はDNAの協力のもと、自動運転社会における新たな物流サービスプロジェクトとなる「ロボネコヤマト」の開発を進めています。このプロジェクトの一環として、商店街の商品をインターネット上で購入したあと自宅まで運んでもらう「ロボネコストア」や、宅配の荷物を指定した時間と場所に届けてもらう「ロボネコデリバリー」といったサービスの実証実験を行いました。この2つのサービスは、荷物の受け取りは利用者自らが車から降ろして行うという形になっています。自動運転技術だけでなく、宅配作業にかかる負担のバランスを、ドライバーと利用者の間でどうとるかのラインを見極めるテストにもなっているそうです。

日本郵政

日本郵政は、拠点間の輸送やラストワンマイルにおける輸送での自動配送ロボットの実験を行っています。ラストワンマイルとは、宅配物を送り主に届けるまでの最後の一区間を表す言葉で、物流業界では主に宅配の物流拠点から配送先までの距離を指します。日本郵政はこの距離の配送のドローン活用を目標としており、イタリアの企業が開発した陸上走行ドローン「YAPE」を用いて、公営住宅やビル内などで実証実験を行っています。

佐川急便

佐川急便は2019年に物流拠点内を走る搬送ロボット「EVE500」を導入しています。物流業界では、トラックを運転するドライバーだけでなく、物流倉庫の入荷した商品をしまう棚入れや、発注依頼のあった品物を取り出すピッキングといった作業にも人手が必要です。こうした作業をロボットに任せることで人的なコストや負担を軽減し、その分の余力を他のサービス拡充に向けることができるとしています。また、配送伝票の入力作業をAIで自動化させるシステムも2019年から本格的に稼働させており、あらゆる業務でAIやロボットを活用していくことを推進しています。

日本通運

日本通運は、業界全体で叫ばれている人手不足を解消すべく、自動運転レベル4の技術を用いたトラックの開発を進めています。自動運転レベル4とは特定のエリアをドライバーの関与なしに自動走行させるものであり、国内で初となる公道での実験を行いました。

日本通運は2017年に「ロジスティクスエンジニアリング戦略室」を立ち上げ、自動運転だけではなくAIの活用や物流センターの自動化など、多角的に最新技術を取り入れる研究を推進しています。

日立物流

日立物流は、日立製作所のロボットや人工知能といった技術を取り入れた「スマートロジティクスクス」を掲げ、物流のスマート化を目指しています。現在、すでに倉庫内作業にロボットや人工知能といった技術を活用しており、作業効率の面で成果を出しています。その他にも、自動運転技術による無人配送車やロボットの研究など、最新のテクノロジーを積極的に推進している企業のひとつと言えます。

自動運転の導入によって発生する問題

物流の未来を明るくするであろう自動運転技術ですが、必ずしもいい面ばかりとは言えません。もし自動運転が本格的に導入されるようになると、人手不足が解消する一方で、同時に職を失うドライバーが多数現れることも危惧されています。アメリカにおいては労働人口の1%が失職するとの試算もでており、日本も少なからず雇用問題が発生すると考えられるでしょう。

また、法律面に関してもトラブルが起こる可能性があります。自動運転技術が日々進歩していく一方、法整備が追いついていないという側面があります。現在の日本では自動運転技術レベル2までの走行しか認められておらず、2020年にレベル3の走行が許可されることを目標としている状況です。このように、技術に対して法整備が追いつかないと、想定外の事故が起こったときに責任の所在が分かりにくくなります。

物流業界の問題解消の大きな糸口となりうる自動運転技術ですが、その実装により新たな問題も生じてくることは十分視野に入れておく必要があります。

まとめ

慢性的に人手不足に悩まされている物流業界にとって、自動運転を始めとするスマート化はあらゆる問題を解決してくれる手段として期待を集めています。確かに、トラックの自動運転はもちろん、倉庫作業の効率化などで人的負担は大きく軽減されると予想されますが、新たな問題が生じる可能性にも目を向けておかなければなりません。

Factory of the Future製造現場が抱える課題。解決の鍵は「デジタル化」です。

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