日本版MaaSの実現に向けた、国土交通省の取り組みを解説

 2020.05.01  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

都市や地方が抱える交通についてのさまざまな問題の解決を目指し、全国各地で実証実験が進められている日本版MaaS(Mobirity as a Service)。先行モデル事業も選定され、事業は着々と進行しています。この記事では、日本版MaaS実現に向けた国土交通省の取り組みについて解説します。

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地域公共交通の現状

最初に、日本版MaaSへ取り組むこととなった背景である、地域公共交通の現状について見てみましょう。

人口減少や少子高齢化などが原因となり、地方における公共交通機関のシェアは年を追うごとに低下しています。鉄道やバスの事業者の多くが赤字を抱え、赤字路線などを廃止せざるを得ない状況となっています。

人口については、全国で見れば、2005年をピークとして減少に転じています。少子高齢化も進展し、2020年現在で65歳以上の割合は総人口の約3割。これが2050年には約4割に達する見込みといわれています。

ただし、人口減少と少子高齢化は、地方のほうが都市と比べてより進展しています。若年層の地方から都市への流出が続いているからです。

また、特に地方においては、マイカーの利用も進んでいます。平成12年から22年までの10年間で、通勤・通学時のマイカーの利用率は約3%上昇し、鉄道やバスなどの公共交通機関はその分低くなっています。

人口減およびマイカーの利用拡大が原因となり、地方における公共交通機関の利用率は年々低下し、鉄道やバスの事業者の経営は苦境に陥っています。

鉄道事業者の約8割が赤字を抱え、平成12年以降で33路線、総延長600km以上の地方鉄道が赤字のため廃止されました。バスについては、民間事業者の約7割、公営事業者の約9割が赤字となり、毎年2,000kmの路線が廃止に追い込まれています。

鉄道やバスの路線の廃止にともない、全国各地に公共交通の空白地域が生まれています。公共交通空白地域では現状、マイカーを利用するしか移動の手段がありません。そのため近年では、高齢者による自動車事故が増加する事態となっています。

また、自動車を運転できないために買い物にすら出かけられない「買い物難民」なる高齢者も増加しています。

以上のように、地方においては公共交通機関の空白地域が各所に生まれ、高齢者を中心とした人たちが大きな不利益を被っている状況です。

日本版MaaSは、このような不利益を解消することを課題の一つとして、各地で取り組みが始まっています。

MaaS(Mobility as a Service)とは

「MaaS(Mobility as a Service)」とは、公共交通機関などのさまざまな移動サービスをスマホアプリで結びつけ、出発地から目的地までの最適な移動手段の検索や予約、決済などができるようにするものです。

移動手段には鉄道やバスなどの公共交通機関のほか、タクシーやレンタカー、カーシェア、シェアサイクル、あるいはAIオンデマンド交通や自動運転による交通サービスなど新型の輸送サービスなども含みます。さらに、観光チケットの購入など関連サービスを含むこともできます。

たとえば、映画を観るために映画館へ行く場合、MaaSを利用すれば映画館までの移動手段を検索・予約し、利用後の料金支払いまでをスマホで行うことができます。また、映画のチケットの予約・購入もスマホからできることになります。

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MaaSの先進事例は、フィンランドの首都ヘルシンキで2016年に利用がスタートした、スマホアプリ「Whim」です。ヘルシンキとその周辺エリアでは、さまざまな移動手段が利用できるようになっています。利用料金は、利用できる移動手段の種類や時間・距離などに応じて、定額制2つを含む3つのプランが設定されています。

ヘルシンキでは、MaaSを導入したことにより公共交通の利便性が高まり、公共交通の利用シェアが増加しました。また、それにともないマイカーの利用が減ったため、都市部の渋滞も軽減しました。

そのほかにも、公共交通の運行の効率化や生産性向上、人の流れについてデータ収集し公共交通の路線を再編できるなど、MaaSには多くのメリットがあると考えられています。

日本版MaaS実現に向けた主な取り組み

それでは、日本版MaaSの実現に向けた主な取り組みを見ていきましょう。

1:事業者間のデータ連携

日本版MaaSの実現に向けた取り組みで、まず必要となるのが、事業者間のデータの連携です。

スマホアプリからさまざまな移動手段を検索し、予約・決済までできるようにするためには、鉄道やバス、タクシー、レンタカーなどのさまざまな事業者の間でデータが連携できなくてはいけないからです。具体的には、以下の作業が必要となってきます。

  • 連携するデータの範囲とルールの整備
  • データ形式の統一
  • API仕様の統一
  • データを有効利用するためのデータプラットフォームの実現
  • 災害時などにおけるデータの公益的利用

2:運賃・料金の柔軟化・キャッシュレス化

次に、移動手段のそれぞれの事業者が、運賃や料金を柔軟化すること、およびキャッシュレス化することも、日本版MaaSを実現するためには必要になってきます。

多くの移動手段では、運賃・料金は移動距離や利用時間に応じて設定されています。これを定額制料金や事前確定運賃に対応できるものとしなければならないでしょう。また、決済の方法をキャッシュレスに対応したものとする必要も出てきます。

3:まちづくり・インフラ整備との連携

日本版MaaSを実現するためには、まちづくりやインフラ整備との連携も必要となってきます。MaaSでは、さまざまな移動手段を乗り換えながら移動することになります。したがって、移動手段をスムーズに乗り換えるための拠点を確保しなければなりません。

また、自動運転による交通サービスなどの新型輸送サービスを導入する場合は、そのための走行路線などを路上に確保することも必要となるでしょう。これらは、地域の都市・交通政策と整合的に行われることが重要です。

4:新型輸送サービスの推進

日本版MaaSの実現にあたっては、利便性の高い新型輸送サービスを推進することも期待されています。

現在、新型輸送サービスとして開発が進められている例としては以下のものが挙げられます。

AIオンデマンド交通

あらかじめ路線や時刻を決めるのではなく、必要なときに行きたい場所まで自由に乗ることができるバスなどのこと。使用する車両やルートは利用者の状況からAIが算出します。

グリーンスローモビリティ

公道を時速20km未満でゆっくりと走る電動の乗合自動車。

超小型モビリティ

1~2人乗りの小回りがきく小型車両。

自動運転による交通サービス

運転手を必要としない自動運転の車両。

国土交通省が推進するMaaSプロジェクト

国土交通省が推進するMaaSプロジェクトには、「大都市近郊型・地方都市型」「地方郊外・過疎地型」および「観光地型」の3種類があります。

それぞれどのようなものか詳しく見ていきましょう。

大都市近郊型・地方都市型

「大都市近郊型・地方都市型MaaS」とは、MaaSを大都市の近郊や地方都市において導入するものです。

都市交通の主な問題点として、輸送効率が悪いマイカーが多く使用されることによる道路の渋滞が挙げられます。MaaSの導入によって効率的な移動が可能となり、道路渋滞の解消が期待されます。

大都市近郊型・地方都市型MaaSの先行モデル事業として、神奈川県川崎市と箱根町、茨城県つくば市と日立市、群馬県前橋市、静岡県静岡市、兵庫県神戸市などが選定されています。

地方郊外・過疎地型

「地方郊外・過疎地型MaaS」とは、鉄道・バスなどの路線が廃止となった地方の郊外や、過疎地にMaaSを導入するものです。

マイカーがなくても移動が可能となり、買い物難民などの問題を解消できること、また高齢者の自動車事故を防止できることがメリットです。

地方郊外・過疎地型MaaSの先行モデル事業として、京都府南山城村と京丹後地域、三重県菰野町、島根県大田町、広島県庄原市が選定されています。

観光地型

「観光地型MaaS」とは、観光地において観光施設と連携させてMaaSを導入するというものです。

MaaSを導入することにより、観光施設の利用料金をスマホで決済ができるようになります。また、観光施設の営業時間に合わせて移動手段の提供が可能となること、および観光の需要にあわせて移動手段の増減が容易なことなどのメリットがあるため、観光地での移動を効率化し、満足度の向上が期待されています。

観光地型MaaSの先行モデル事業として、静岡県伊豆エリアや福島県会津若松市、ひがし北海道エリア、滋賀県大津・比叡山、三重県志摩地域、瀬戸内エリア、山陰エリア、沖縄県八重山地域が選定されています。

まとめ

日本版MaaSは、公共交通機関のシェア低下とマイカーの過度な利用により、都市や地方で引き起こされている諸問題を解決に導くものと期待されています。

また、観光地の活性化にも貢献できるため、町おこしの観点からも注目を集めています。

日本版MaaSがこれからどのように進められていくのか、目が離せません。

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