小売業の経営指標と中小企業が取り組むべき方向性

 2019.12.11  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

企業を経営する上で重要なのは、目標を立て、その進捗や達成度を追うことです。この点、あらゆる企業経営において共通言語ともいえるのが、数値を用いた経営指標です。小売業に限らず製造業や物流業、コンサルティング業などありとあらゆる業種で不可欠です。

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分析に活用すべき小売業の経営指標

企業経営に重要な役割を果たす「経営指標」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。一口に経営指標といっても、その内容は多岐に亘ります。一般的には利益や経費、または従業員一人が1時間あたりに生み出す付加価値(生産性)などに大別できます。これらの数値目標を経営指標として、その目標を達成することが企業の成長には不可欠です。

経営指標は、大別すると上述の3つ(利益・経費・生産性)ですが、細かく分類すると非常に多くの指標(数値)があります。主に、粗利益(売上総利益)・客単価・1坪単価・来店客数・来店頻度・リピート率・原価率・廃棄率・商品回転率・商品回転期間・労働生産性・売上高成長率などが例として挙げられます。

ここからは、各指標について用語の詳細や計算方法などを詳しく解説していきます。

粗利益(売上総利益)

「粗利益(売上総利益)」は、売上高に対する利益を指します。主な計算方法は以下のようになります。

  • 粗利益(売上総利益) = 売上高 - 原価

上記の計算式に含まれる「売上高」は、最終消費者(顧客)が商品やサービスを購入した際に、その対価として得られる金額の合計額を指します。
「原価」に関しては、その定義を考える上で注意点があります。ここでの原価とは、売上を実現するため必要不可欠だった仕入れの金額のみを指し、商品を販売するための人件費や宣伝広告費などは含まれません。また、業種によって原価の定義が異なるため注意が必要です。

粗利益(売上総利益)を考える上で、小売業・卸売業と製造業では計算方法が異なる点に気をつけなければなりません。小売業・卸売業であれば、商品を一つ1,000円で仕入れ、3,000円で販売した場合の売上は3,000円、原価が1,000円のため粗利益(売上総利益)は2,000円となります。これに対して製造業の場合、原材料を1,000円で仕入れたあと、最終的に販売できる状態にするために工場や店舗で加工する必要があります。この加工で、たとえば500円の人件費をかけて3,000円で販売した場合、売上が3,000円、原価が1,500円のため粗利益(売上総利益)は1,500円となります。

なお、粗利益(売上総利益)と区別されるのが、「営業利益」です。営業利益とは、商品を販売するという営業活動を通じて得られた利益のことをいいます。主な計算方法は以下のとおりです。

  • 営業利益 = 粗利益(売上総利益)- 販売費および一般管理費

上記の計算式に含まれる「販売費および一般管理費」は、その名のとおり「販売費」と「一般管理費」に分けられます。販売費には宣伝広告費や荷造運搬費、販売員の人件費などが含まれ、一般管理費には事務員の人件費や交通費、交際費、通信費、さらには役員報酬などが含まれます。

経営指標として営業利益を参考にする場合、営業利益がプラスであるかマイナスであるかが一つの大きなポイントとなります。プラスであれば粗利益(売上総利益)で販売費・一般管理費が賄えていることを意味し、マイナスであれば賄えていない、すなわち赤字であることを意味します。赤字であれば粗利益(売上総利益)を増やす、あるいは販売費・一般管理費を減らす必要があります。

営業利益をもとに、より細かい利益を算出する際に用いられるのが、「経常利益」です。経常利益は、企業活動を行っている上で継続的に得られる利益を指します。計算方法は以下のとおりです。

  • 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用

上記の計算式に含まれる「営業外収益」は、通常の営業活動以外の活動によって得た収益を指します。たとえば、株式の配当金や社債の利息、さらには所有している土地を貸した場合の賃料や、社内で使用していた資産を売却して得た収益などが挙げられます。これに対して「営業外費用」は、通常の営業活動以外の活動における費用を指します。たとえば、銀行からの借入金の利息や、自社発行している社債の利息の支払いによって生じる費用などが挙げられます。

経常利益をさらに細かく分析する場合、「税引前当期純利益」が一つの経営指標となります。税引前当期純利益とは、法人税をはじめとする企業が支払うべき税金を差し引く前の利益をいいます。計算方法は以下のとおりです。

  • 税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失

なお、上記の「特別利益」とは、企業本来の活動ではない活動によって得られた利益を指します。たとえば、建物や土地を売却した際に生じた固定資産売却益や、株や社債などを売却して得た有価証券売却益などが挙げられます。営業外収益との違いは、継続的に得られる収益か、その期に限って得られた収益かという点にあります。株式や社債の利息による収益は、企業本来の活動による収益ではありませんが、毎年継続的に得られる収益であるため営業外収益に該当します。これに対して、企業が保有する建物や土地を売却したことによって得られる収益は、企業本来の活動による収益でなく、なおかつ毎年継続的に得られる収益ではないため特別利益に該当します。

「特別損失」は、工場の火災や有価証券の売却損などによって生じた損失などが例として挙げられます。

あらゆる企業活動によって生じる最終的な利益を算出するためには、「当期純利益(税引後当期純利益)」を計算する必要があります。当期純利益(税引後当期純利益)は、以下の計算式によって算出されます。

  • 当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等

上記の計算式に含まれる「法人税等」には、法人税と住民税および事業税、ならびに法人税等調整額が含まれます。この当期純利益がプラスである場合には黒字、マイナスである場合は赤字であることが分かります。なお、粗利益(売上総利益)や営業利益が赤字であったとしても、営業外収益や特別利益が大きい場合には、当期純利益が黒字になる場合があります。この場合、最終的な利益が黒字であることから、経営が順調であると錯覚しがちですが、企業本来の活動によって得られた利益による黒字ではないため注意が必要です。経営指標として各種の数値を設定する際には、こうした判断基準を設けておくことが大切です。

客単価

「客単価」は、顧客一人あたりの売上高を指します。顧客単価は以下の計算方法で算出されます。

  • 客単価 = 総売上÷ 顧客数

たとえば企業全体の売上が1,000万円に対して、顧客が10,000人である場合、客単価は1,000万円÷10,000人=1,000円となります。

小売業界の場合、店舗のレイアウトや商品の配置を変更することで、客単価が大きく増減することがあります。また、関連商品などをレコメンドすることでも客単価の増加が見込めます。工夫次第では費用をかけることなく売上や純利益を高めることができるため、重要な経営指標の一つといえます。

1坪売上

「1坪売上」とは、商品やサービスを販売する店舗の、1坪あたりの売上高のことをいいます。店舗の面積が100坪に対し、売上が1,000万円であれば、1坪売上は10万円となります。小売業の場合は、限られたスペースで多くの商品を効率的に並べて販売する必要があるため、いかにムダなく陳列・販売できるかが大きなポイントとなります。

来店客数

「来店客数」は、主に小売業やサービス業において、店舗に来店した顧客の数を指します。上述の客単価を算出するためには、この来店客数が必要です。総売上を来店客数で割ることで客単価が明確になります。平均的な客単価が明確になれば、来店客数の増減によって全体の売上の増減も予測できるため、来店客数は販売戦略や経営戦略の重要な指標の一つとなります。なお、来店客数を増加させるためには宣伝広告費が必要となることから、より費用のかからない客単価の増加に注力する小売業・サービス業も少なくありません。

来店頻度

「来店頻度」は、一人の顧客が一月に来店する回数を指します。来店回数が多ければ多いほど、一月あたりの顧客単価が増加します。

リピート率

「リピート率」は、一度来店した顧客が一定期間内に再び来店した割合を指します。再来店するいわゆる既存の顧客は、新規の顧客を獲得する際にかかる費用よりも安価であり、また新規の顧客よりも高い客単価をもたらします。すなわち、より少ない費用で大きな利益を期待できます。一般的に、リピート率は1ヶ月という期間内で測定されます。一月に来店する顧客が100人で、そのうち30人が1ヶ月以内に再来店した場合には、リピート率は30%となります。再来店する顧客は「固定客」とも呼ばれ、固定客が多くなるほど小売業やサービス業は安定して収益を得ることができます。リピート率を高めるためには、カスタマーエクスペリエンスの向上などが大きなポイントとなります。

原価率

「原価率」は、商品の売上額に対する仕入額の割合を指します。たとえば売上額が100万円で、仕入額が60万円であれば、原価率は60万÷100万=60%となります。原価率は利益と費用に直結するため、重要な経営指標の一つです。目安としては、小売業の場合は50~75%程度とされています。なお、同じ小売業であってもスーパーマーケットと百貨店とでは目安に違いが見られます。一般的に前者は75%程度、後者は50~60%が目安とされています。小売業で原価率を下げる工夫としては、店内で食品を加工する方法などが挙げられます。

廃棄率

「廃棄率」は、主にスーパーマーケットや百貨店の惣菜売場などで用いられる指標です。販売する予定だった商品のうち、何割が廃棄処分になったかを指します。たとえばスーパーマーケットで100万円分の惣菜を作り、そのうち80万円分だけが販売され、残りの20万円分が廃棄になった場合、廃棄率は20万÷100万=20%となります。惣菜や生鮮食品などは、種類によっては当日に売れない場合は廃棄するものもあり、商品の原価を大きく増減させる要因となります。廃棄率を低くするためには、日ごろの商品の販売データを綿密に分析し、販売計画を立てる必要があります。廃棄になりそうな場合は割引をするなどして、常にリアルタイムでアクションをとることが、廃棄率を下げるために重要なポイントとなります。

商品回転率、商品回転期間

「商品回転率」は、商品の在庫が売上に対して適性であるかを判断する指標です。また「商品回転期間」は、商品を仕入れてから販売されるまでにかかる期間を指し、この期間が短ければ短いほど商品が効率的に流れていることが分かります。計算方法は以下のとおりです。

  • 商品回転率 =(売上高÷ 商品)× 100(%)
  • 商品回転期間 =365 ÷ 商品回転率(%)

労働生産性

「労働生産性」は、従業員一人あたりがどれだけの付加価値を生み出しているかを指します。従業員の数が同じであれば、労働生産性が高い企業のほうが生み出す付加価値が多いことを意味します。計算方法は以下のとおりです。

  • 労働生産性 = 付加価値÷ 平均従業員数

売上高成長率

「売上高成長率」は、当期を前期と比較した場合に、どれだけ売上高が伸びているかを指します。当期と前期の2期だけを比較するのではなく、複数の期を比較してその推移を見るのが一般的です。計算方法は以下のとおりです。

  • 売上高成長率 =《(当期売上高 - 前期売上高)/ 前期売上高》× 100(%)

小売業界の中小企業が取り組むべき方向性

小売業やサービス業をはじめとする中小企業には、今後どのような取り組みが必要なのでしょうか。中小企業が抱える問題としては、少子高齢化によってもたらされる人手不足が挙げられます。また、中小企業は大企業と比べて従業員一人あたりの労働生産性も低く、生産性の向上が課題として考えられます。

中小企業を取り巻くこうした課題を解決するためには、まずは労働環境を整備していくことが先決でしょう。人材確保のためには、定年退職したシニアや子育てを終えた主婦層などを取り込み、補っていくことも大きなポイントとなります。また、IT分野に投資することで、原材料の仕入れから商品販売に至るまでのサプライチェーンマネジメントを徹底し、生産性を高めていくことが必要となります。他にも、大企業には真似できないようなニッチな戦略を打ち出し、オンリーワンとなる自社の強みを伸ばしていくことも重要です。さらには、行政や自治体などと連携し、自社に足りない部分を補っていくことも有効な経営戦略の一つといえます。

まとめ

中小企業が多い小売業において、競合他社に打ち勝つためにはさまざまな経営指標を設けることが大きなポイントとなります。一つひとつの指標に目標を定め、トライアンドエラーの繰り返しで改善・発展していくことが、企業の成長のためには不可欠です。

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