小売業のM&Aによる買収・売却事例

 2019.12.09  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

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「M&A」とは企業の合併・買収を指し、企業買収だけでなく、資本の移動を伴う株式持ち合いや合弁会社設立といった行為も広く含みます。M&Aは事業拡大や経営資源獲得ができるメリットがあり、日本企業でも有効活用されています。小売業のM&Aの事例には、経営戦略で役立つヒントが眠っています。

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M&Aとは?M&Aの基礎知識

M&Aは「Mergers and Acquisitions」の略で、複数の会社が「合併(Mergers)」して一つになったり、ある会社が別の会社を「買収(Acquisitions)」したりすることです。2000年代になって大手企業によるM&Aが頻繁に行われたことで、日本でも広く知られるようになりました。

M&Aは「会社の規模を大きくしたい」というのはもちろん、「自社にはない技術やサービスを獲得したい」という目的で行われるケースも多くみられます。一方で、経営状態の悪化に伴い、資金の調達や事業の整理縮小といった、企業の生き残り策として行われる場合もあります。また近年では、特に中小企業などが後継者不足解消の切り札としてM&Aを行うケースも増えています。

M&Aの種類

実際にM&Aを行う場合、その方法はさまざまありますが、大きく分けると資本の移動を伴うものと資本の移動を伴わないものの二つです。

資本の移動を伴うM&A(広義のM&A)

これには「企業買収」「株式持ち合い」「合弁企業設立」の三つがあります。

「企業買収」とは、文字どおりある企業が別の企業の議決権や事業部門を買い取ることです。その方法も、またさまざまありますが、詳しくは後述します。

「株式持ち合い」は日本特有の慣行で、複数の企業が、お互いにそれぞれの株を所有し合うことです。

「合弁企業設立」は、合併とは異なり、複数の企業が出資して、共同で新しく会社を興すことです。海外に進出する際などによく行われています。

資本の移動を伴わないM&A

これには「OEM提携」と「業務提携」の二つがあります。

「OEM」は「Original Equipment Manufacturing」の略で、他社が企画・開発し、他社のブランド名で販売する商品の製造を受託し、生産することです。関連して、「OEM提携」とは、自社で販売する商品の製造部門を、ほかのメーカーに委託するということを指します。

「業務提携」は「アライアンス(戦略的提携)」とも呼ばれ、商品や新技術の開発、販売など具体的な事案に関して、他社と協力関係を結ぶことです。

このように、M&Aにはさまざまな方法があります。資本の移動を伴うM&Aは「広義のM&A」とも言われ、資本の移動を伴わないM&Aと合わせて、M&Aの解釈の幅を少し広げたものです。M&A本来の意味としては、やはり「企業買収」ということになるでしょう。そのため、企業買収は「狭義のM&A」と言われています。

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狭義のM&A(企業買収)

企業買収は、これも大きく分けると「買収」「合併」「分割」という三つがあります。

「買収」には「株式を取得(資本参加)する」方法と「事業を譲渡(資産買収)する」方法があります。

まず、株式の取得は「株式譲渡」「株式交換(移転)」「新株発行(第三者割当増資)」のいずれかの方法で行われます。「株式譲渡」は(M&Aの)対象会社の株式を買い取ることです。いたってシンプルなので、中小企業のM&Aでは一般的です。ただ、この場合は帳簿に記載のない簿外債務や、不要資産までも引き継いでしまうというリスクがあります。

「株式交換」は対象会社の株式を自社の株式と交換することで、自社の子会社化する方法です。「株式移転」は、新たに会社(持株会社)を設立し、その会社に対象会社の株式を移転させることで子会社化する方法で、グループ内の再編や経営統合を行う際によく用いられます。

「新株発行(第三者割当増資)」は、新たに発行した株式を特定の第三者にのみ割り当てる方法です。上場していないベンチャー企業などが資金を調達する際によく行う方法ですが、M&Aにおいては対象会社の新株を買い取る方法で、議決権を得るということになります。

事業の譲渡は、対象会社が営む事業を買い取る方法で、全て買い取る場合と一部のみ買い取る場合があります。採算の取れない事業だけを譲渡したり、譲渡により潜在的な債務を切り離したりすることが可能です。企業の「生き残り策」として行われるケースが多くみられます。ただし、権利義務関係は個別に引き継がなければならないので、例えば雇用契約については、対象会社の従業員の同意も取り付けなければなりません。

続いて「合併」ですが、これは複数の会社を統合して法的に一つの会社にすることで、「吸収合併」と「新設合併」の二つのパターンがあります。

吸収合併は「一社のみを残して、残る会社は法的に消滅させる」「消滅する会社の権利義務は全て、その一社が承継する」というものです。対して、新設合併は「全ての会社を法的に消滅させる」「新たに会社を設立し、その会社が全社の権利義務を承継する」というものですが、実際に行われるケースはあまり多くありません。

最後の「分割」は対象会社が営む事業を、全てもしくは一部切り離して、それをM&Aを行う会社に移転する方法です。これには既存の会社に移転する「吸収分割」と、新たに設立する会社に移転する「新設分割」の二つの方法があります。また、これらにも、移転により発生する対価を移転元の会社が受け取る「分社型分割(物的分割)」と、移転元の会社の「株主」が受け取る「分割型分割(人的分割)」の二つの方法があります。分割は、主にグループ内の再編や経営統合、合弁企業の設立などに伴って行われることが多くみられます。

M&Aのメリット

前述のように、後継者不足に悩む企業にとって、M&Aは「最後の切り札」とも言える対策です。後継者のめどが立たないために廃業を視野に入れている場合でも、他社へ譲渡すれば、会社を存続させることが可能になります。

廃業となれば、当然従業員は解雇という形になりますが、特に中小企業のM&Aの場合は、一般に「従業員の雇用は、一定期間継続される」ことが条件として盛り込まれるケースが多くみられます。勤務地に関しても同様です。さらに、より規模の大きな会社やグループに入る場合は、活躍の場が広がり、「新たなキャリア形成」も期待できます。一方、M&Aにおいては、一般に譲渡に伴う対価は通常よりも高くなる傾向がみられるので、経営者にとっても「大きな利潤を得る」ことが可能になります。

また、ほかにも「互いの経営資源を活用できる」「生産設備やノウハウを持っていない場合でも、新規事業への参入が容易になる」「自社にはない、他社の技術や方法を学ぶことができる」といったメリットもあります。

小売業M&Aの買収・売却事例

では、実際にM&Aはどのような形で行われているのか、小売業界でM&Aによる買収・売却が行われた実例を見てみましょう。

楽天とFablicのM&A

2016年9月、楽天株式会社は株式会社Fablicの発行済み全株式を取得して、完全子会社化しました。楽天は、言わずと知れたインターネット通販の大手企業です。一方のFablicは日本初のフリマアプリ「Fril(フリル)」を提供してきた会社です。楽天もフリマアプリのサービスを提供していましたが、最大手のメルカリに対抗するため、安定した顧客を持つFablicを買収し、シェアの拡大を図りました。

ナルミヤ・インターナショナルとハートフィールのM&A

2019年3月、株式会社ナルミヤ・インターナショナルは株式会社ハートフィールの全株式を取得して、完全子会社化しました。ナルミヤ・インターナショナルは、「mezzo piano(メゾピアノ)」など主に女の子向けの子供服ブランドを展開してきた会社です。「GLAZOS(グラソス)」など、主に男の子向けの子供服ブランドを手がけるハートフィールを傘下に加えることで、男の子向けのブランドを強化し、売り上げと顧客層の拡大を目指しました。

エディオンとフォーレストのM&A

2017年8月、株式会社エディオンはフォーレスト株式会社の全株式を取得して、子会社化しました。 エディオンは全国に店舗を持つ大手家電量販店で、一方のフォーレストは自社サイトの「Forestway」「ココデカウ」を中心に通販事業を展開しています。eコマース事業の強化に取り組むエディオンは、M&Aにより、フォーレストの持つ幅広い商品分野や効率的な倉庫運営のノウハウを手にすることができました。

イオンとダイエーのM&A

2015年1月、イオン株式会社は株式交換により株式会社ダイエーを完全子会社にしました。ダイエーは、かつて売上高で小売業日本一だった有名スーパーですが、事業多角化の失敗や本業の不振などにより経営が悪化し、2013年8月に同じ大手スーパーのイオンの連結子会社となっていました。イオンは業績が低迷するダイエーを完全子会社化することで、グループ全体の店舗網を再編し、さらなる事業の拡大や成長を目指しました。

ローソンと成城石井のM&A

2014年9月、株式会社ローソンは株式会社成城石井の全株式を取得し、翌10月に連結子会社化しました。ローソンは誰もが知る大手コンビニエンスストアですが、一方の成城石井も、関東圏を中心に独自のブランドイメージを築いてきた有名スーパーです。このM&Aは、成城石井のほうから小売各社に売却の意を示したもので、3社による争奪戦の結果、ローソンが落札しました。ローソンは、グループ全体をさらに成長させていくために、自社にはない魅力を持つ同業他社を傘下に加えました。

エイチ・ツー・オー リテイリングとイズミヤのM&A

2014年6月、エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社はイズミヤ株式会社と株式交換による経営統合を行いました。エイチ・ツー・オー リテイリングは「阪急」「阪神」の両百貨店を中心に小売事業を展開している大手企業です。一方のイズミヤも、関西を基盤とする中堅スーパーです。両社はそれぞれ、関西市場におけるシェア拡大を目指していましたが、近年のスーパー・百貨店業界を取り巻く環境の変化に対応していくため、新たなグループを構築する道を選びました。

ウエルシアホールディングスと一本堂のM&A

2018年3月、ウエルシアホールディングス株式会社は全株式を取得して、株式会社一本堂を子会社化(吸収合併)しました。ウエルシアホールディングスは、関東を中心に東北から近畿地方において店舗を展開している大手ドラッグストアですが、自身もTOB(株式公開買い付け)によりイオンの子会社となっています。一方の一本堂も、東京都内を中心に42店を運営するドラッグストアでした。ウエルシアホールディングスは主に埼玉県を地盤としており、都内を中心に店舗を展開する一本堂を傘下に加えることで、事業基盤の強化を図りました。

ビックカメラとコジマのM&A

2012年5月、株式会社ビックカメラは株式会社コジマによる第三者割当増資を引き受ける形で資本業務提携を行い、翌6月に子会社化しました。ビックカメラはもちろん、コジマも全国に店舗を展開する大手家電量販店ですが、当時は業績が低迷していました。ビックカメラは主に大都市の駅前に店舗を展開しており、都市近郊に数多く店舗を持つコジマを支援することで、グループ全体として店舗網の拡大を図りました。

三越伊勢丹ホールディングスとニッコウトラベルのM&A

2019年4月、株式会社三越伊勢丹ホールディングスは、2017年にTOBにより子会社化していた株式会社ニッコウトラベルを吸収合併しました。三越伊勢丹ホールディングスは言うまでもなく、「三越」や「伊勢丹」といった百貨店をはじめ、数多くの事業を手がける大手企業ですが、国内中心だった旅行部門の強化を図る狙いがあり、シニア層が主な顧客で海外旅行に強く、なおかつ企画力にも定評があるニッコウトラベルを傘下に加えました。

セブン&アイ・ホールディングスとバルスのM&A

2013年12月、株式会社セブン&アイ・ホールディングスは株式会社バルスの第三者割当増資を引き受け、同社と資本業務提携を結びました。セブン&アイ・ホールディングスはもちろん、「セブン‐イレブン」や「イトーヨーカ堂」「ロフト」など数多くの事業を展開する小売業界の大手企業ですが、さらなる企業価値の向上を目指して、「Francfranc」ブランドに代表されるインテリア・雑貨専門店であるバルスを傘下に加えました。

まとめ

「買収」と聞くと悪いイメージを抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。受ける側にもメリットがあるからこそ、M&Aはさまざまな場面で活用されています。特に、深刻化する中小企業の「後継者不足」問題においては、非常に有効な手段となっています。

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