MaaSの海外事例や定義、日本企業の開発状況について

 2020.05.05  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

日本でも人気の「Uber」をはじめ、世界各国で実用化が進んでいる「MaaS(Mobility as a Service)」とはどのようなものなのでしょうか。また、海外だけでなく、日本国内でも開発が進みつつあります。今回は国内外の導入事例をご紹介しながら、MaaSについて詳しく解説します。

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MaaS(Mobility as a Service)とは

近年、MaaS(Mobility as a Service:モビリティ・アズ・ア・サービス)に注目が集まっています。

直訳すると「サービスとしての移動」となるこの言葉の意味をご存知でしょうか。

MaaSを短く説明すると「バス・電車・タクシーやライドシェア・シェアサイクルなどのあらゆる交通機関を、ITを活用してシームレスに結び、利用者が便利に使えるようにする仕組み」となります。

すでに欧米では本格的な導入が始まっており、日本でも公共交通機関や自動車会社などが中心となって開発が進んでいます。

出発地点から目的地まで、住んでいる地域や移動手段によって、一人ひとり最適なルートや手段は異なります。

公共性の高い「移動」に対し、個人レベルでの最適化を目指すのがMaaSです。

例えば、自宅から目的地までの移動に利用できる手段がバス・電車・タクシー・レンタカー・レンタサイクルだった場合、従来は、移動手段ごとに予約したり運賃や料金を支払ったりする必要がありました。

MaaSでは、目的の場所までの最適なルートを提案し、パッケージ化してスマホひとつで一括決済したり、頻繁に行く場所であれば月極の定額で決済したりすることができるようになるのです。

MaaSの定義とは?

MaaSの定義は、発展途上のサービスであることから、開発が先行している海外においても定まったものがないのが現状です。

また、国や研究者によっても定義やMaaSに含まれる範囲に違いが生じています。

一例として、ヨーロッパを中心にMaaSへの共通のアプローチの基盤を構築する官民パートナーシップの「MaaS Alliance」による定義を挙げると、MaaSは「さまざまな種類の交通サービスを、必要に応じて利用できる単一のサービスに統合したもの」としています。

また、スウェーデンのチャルマース工科大学による研究では、サービスの統合の範囲ごとにレベル0からレベル4まで5段階のレベル分けを提唱しています。

  • レベル0:統合なし(単一の分離したサービス)
  • レベル1:情報の統合(複数ルートの交通提案・料金の提示)
  • レベル2:予約・決済の統合(検索・予約・決済手段の一括化)
  • レベル3:サービス提供の統合(契約・支払いなどの統合)
  • レベル4:政策の統合(官民の連携)

国内外問わず、現状はレベル4には届かず、公的機関・企業などの組織ごとに開発・研究が進められている状況です。

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海外で広がりをみせるMaaSの導入事例

MaaSに関しては、日本よりも海外諸国で先行して導入が進んでいます。欧米諸国を中心に海外のMaaS導入事例をご紹介します。

「Whim」フィンランド

フィンランドでは「MaaSグローバル」社が開発したアプリ「Whim」が浸透しています。

ヘルシンキ市内の公共交通機関をはじめ、タクシーやレンタカー、カーシェアリングなどが統合したサービスです。

「Whim」は、出発地から目的地まで複数の経路を提案し、ユーザーが経路を選ぶと、その経路に含まれる移動手段をすべて予約することができます。

決済方法は、月額制と一部月額制に加え、ポイント購入による利用ごとの決済から選択できます。

サービス開始後、ヘルシンキでは公共交通の利用が増加やマイカーの利用率の減少の効果が見られました。

フィンランドの「Whim」は、MaaSとしては、行政主導で実現したサービスとしても世界中から注目されています。

「moovel」ドイツ

ドイツの大手自動車メーカー「ダイムラー」社の子会社「moovel Group GmbH」社が提供しているのが、アプリ「moovel」です。

公共交通機関・タクシー・カーシェア・レンタサイクルなどを統合し、都市交通をシームレスに繋ぐサービスです。

出発地から目的地までのルートを検索・提案し、選んだ移動手段の予約・決済までアプリで一括して行うことができます。

支払い方法はApple PayやGoogle Payといったオプションの選択肢も揃っています。また、NFC・Bluetooth・QRコード・バーコードなど、主な非接触技術にも対応しています。

リアルタイムでの交通状況を把握できる点も「moovel」の特徴です。

このため、ルート検索で、渋滞や運行遅延が発生している時間や総コストが安くなるルートを事前に把握しておくという使い方もできます。

「UBIGO」スウェーデン

スウェーデン第2の都市・ヨーテボリで生まれた「UBIGO」は、首都ストックホルムを中心に利用者数を伸ばしているサービスです。

ストックホルムでは、「ストックホルムス・ロカールトラフィーク(SL)」社が公共交通機関を一括で運営しています。

「UBIGO」は、SL社の地下鉄・バス・鉄道などの機関に加え、レンタカーやカーシェアサービスの予約・決済までをアプリひとつで完結します。

好評なのが、公共機関の乗り放題とレンタカー・カーシェアをセットにしたプランです。

SL社が運営する公共機関の10日間乗り放題と、レンタカー・カーシェアを合わせて利用できるようになっています。

「Uber」アメリカ

「Uber」は米国企業の「ウーバー・テクノロジーズ」社が運営する自動車配車アプリです。

アプリ「Uber」は、空いた時間・車を利用してタクシーのようなサービスを提供したいユーザーと、配車サービスを利用したいユーザーを繋ぎます。

副業としてタクシーのサービスを提供するビジネスパーソンの利用者も多くいます。

配車が簡単なことと、自動クレジットカード決済で支払いもスムーズなため人気が高まっています。

「Uber」は、知名度の割に日本では法律の関係であまり浸透していないサービスですが、世界中の多くの都市で普及しています。

「滴滴出行(ディディチューシン)」中国

中国の大手ライドシェア企業「滴滴出行(ディディチューシン)」社が提供するアプリ「滴滴出行-DiDi(ディディ)」は、ライドシェアをはじめ複数の形態による配車サービスを展開しています。サービスの種類や車種のグレードによってランク分けされています。

「Uber」と同様に副業などによる一般ユーザーの車両を配車するサービスの「順風車」、一般のタクシーをアプリ経由で呼び出せる「出租車」のほか、専属のタクシーを配車するサービスも用意されています。

専属タクシーは車種やサービスごとに「快車」「礼燈専車」「豪華車」とランク分けされています。「豪華車」を選択した場合、料金は「通常快車」の約10倍となるものの、ベンツなどの高級車が配車され、車内では水や菓子などが提供されます。

それぞれの配車サービスでは、支払いをアプリ経由で行うため、ドライバーとの現金のやりとりが発生しません。また、事前に距離による予想料金が表示されるため、トラブルが起きにくくなっています。

MaaS系サービスに取り組む日本企業

日本においてもMaaSの開発や導入が進んでいます。企業は交通機関やその関連企業のみではなく、意外な企業同士がパートナーとして組んでいるサービスもあり、多種多彩となっています。

トヨタ自動車×ソフトバンクの共同開発「MONET」

トヨタ自動車とソフトバンクが合弁で「MONET(モネ)テクノロジーズ」を設立し、共同開発でMaaS事業を進めています。

新たなモビリティサービスの構築を目指す「MONET」の事業には、大きく分けて、「オンデマンドモビリティサービス」「データ解析サービス」「Autono-MaaS」の3つがあります。

第一弾として着手している「オンデマンドモビリティサービス」では、自治体などと連携して、地域連携型オンデマンド交通や企業向けシャトルサービスを展開しています。

石川県加賀市と連携した事業では、市内で運行中の乗り合いタクシーに通信機器を設置してデータを収集、モビリティサービスや道路整備計画へ活用しようとしています。

「MONET」には、ホンダや日野自動車、マツダなどの自動車メーカーが出資するほか、多様な業種の企業もコンソーシアムに参加しています。

JR東日本

JR東日本が開発を進めているのが、移動に必要な情報の収集・乗車券の購入・決済をオールインワンで提供する「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」です。

この計画では、アプリ・配車サービス・交通ICカード「Suica」などを連携し、多様なサービスをワンストップで提供できることを目指しています。

2020年1月には、アプリ「Ringo Pass」を一般公開し、実証実験を開始しました。このアプリは、SuicaのID番号とクレジットカードを紐付けてシェアサイクルやタクシーなどに利用が拡大できるものです。

タクシーのドライバーと運賃のやり取りをすることなく降車したり、ポートに駐輪したシェアサイクルに「Suica」をタッチしてレンタルしたりといったことができます。

小田急電鉄

小田急電鉄は、経路検索システムの「駅すぱあと」などを展開するヴァル研究所と連携して、鉄道やバスなどの交通データをはじめ電子チケットを広く提供するオープンな共通データ基盤の開発を進めています。2019年には、さまざまな交通・生活サービスなどを統合したMaaSアプリ「EMot(エモット)」を公開し、実証実験を始めました。

まず、ヴァル研究所の検索エンジンとアプリを連携。その上で、小田急グループの持つ鉄道・バスなどの交通データのほか、カーシェアリングやサイクルシェアリングのデータを取り込んでいます。

そのほかにも、対象エリア内の交通機関が利用できる「デジタルフリーパス」や、飲食店をキャッシュレスで利用できる「飲食サブスク」、ショッピングすると移動手段が無料になる「特典チケット」のサービスも提供しています。

まとめ

MaaSの開発は一企業や単独の組織にとどまらず、法整備や社会基盤も含めた大変革が必要です。

交通機関や自動車産業などの交通関連企業だけでなく、幅広い職種の企業においてもMaaSの新しい実用事例などをリサーチしつづける必要があるでしょう。

Factory of the Future製造現場が抱える課題。解決の鍵は「デジタル化」です。

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