製造業

BluetoothでIoTを実現する時代、その概要やメリット

スマートフォンやPCの普及によって我々にとって身近になった技術が「Bluetooth(ブルートゥース)」です。ワイヤレスヘッドフォンやオーディオ機器、ワイヤレスマウスやキーボードなど他の端末と接続してデータのやり取りをするのが主な用途となります。

そもそもBluetoothというのは無線通信規格の一種です。対応した機器同士が有線で接続されなくてもデータのやり取りが可能であり、有効範囲はおよそ10メートル前後とされています。また、Bluetoothは国際規格として世界中に普及している技術なので、Bluetoothに対応した機器ならばあらゆるデバイスで接続可能なところが利便性を高めています。

今、そんなBluetoothを使ってIoT(Internet of Things/モノのインターネット)を実現する時代が到来しています。BluetoothとIoT、我々にとっても馴染み深い技術と最新のセンサー技術が組み合わさることで、どのようなことが実現されるのでしょうか?

BluetoothでIoTを実現する時代、その概要やメリット

Factory of the Future

Bluetoothの進化とIoTとの融合で何が変わるのか

IoTといえば従来はネットワークに接続されることがなかったモノにデータ収集のためのセンサーと通信技術を搭載することで、ネットワークを介してIoT機器データを集約し、分析などのアプリケーションを通じて様々な付加価値を生み出そうとする技術や取り組みです。

例えば、英ロールス・ロイス社は同社製造の旅客機エンジンにセンサーを組み込み、出力や回転数といったデータをリアルタイムに収集・分析することで、世界で初めて旅客機エンジンのサブスクリプションビジネス化に成功しています。また、ジェット燃料の燃費などについてアドバイスするような新たなコンサルティングビジネスにも参入しています。つまり、旅客機エンジンをIoT化したことにより新しいビジネスモデルを創出しました。

では、短距離型の無線通信規格であるBluetoothをIoTに活用するとは果たしてどういうことなのでしょうか?

これは文字通りBluetoothを通じて様々なIoT機器からデータを収集することになりますが、それを実現したのが米シリコンバレーに本社を構えるベンチャー企業、Cassia Netowrksが開発したBluetoothルーターです。

同社が開発したBluetoothルーターは通信環境の条件が揃えば300メートルを超える距離での通信が可能であり、最大40台のIoT機器を同時接続できます。Bluetoothの基本は10メートル程度の短距離通信かつ1対1の接続でしたので、距離は30倍、同時接続可能数は40倍とその性能を大幅に改良しています。Cassia Netowrksの高度なアンテナ技術と信号処理技術、ノイズリダクション技術によって実現したものであり、既存のBluetooth機器を一切変更せずにネットワークに接続するとともに、双方間通信を行えるのが特徴です。

BluetoothによるIoT機器からのデータ収集が本格化すれば、医療や工場内における限定的な範囲でIoT化を今まで以上に容易にし、かつ安定的な通信環境によって迅速なデータ分析とフィードバック、戦略的アプリケーションによるサービス化が期待できます。

Bluetooth×IoTの実例

実は、Bluetoothを活用したIoT機器にはすでにいくつかの実例があります。ここでいくつか実例をご紹介しましょう。

まず、医療分野では患者や要介護者が身につけているウェアラブル機器から血圧や呼吸回数、心拍数などの数値を集めてリモートで管理し、問題を検知したりするコネクテッドヘルスシステムが構築されています。さらに、病院内に2,000台を超えるBluetoothルーターを設置することで、病棟や病床を移動する機器の所在をリモートで一元的に把握する事例もあります。

中国の私立大学が推進するスマートキャンパスプロジェクトでは、キャンパス内に数千台のBluetoothルーターが設置され、リストバンド型のIoT機器を装着した約4,000人の生徒の登下校確認や出席管理、バイオデータのモニタリングによる健康管理や行動追跡などが行われています。

さらに、スイス・チューリッヒに本拠を置くグローバルな電力メーカーのABBでは、顧客先で稼働する様々な機械にIoT機器を装着し、リモートで状態監視を行うことで故障がおこる前に兆候を察知し、対処する予兆保全的なメンテナンスシステムの実証を進めています。

日本の製造業におけるBluetoothとIoTへの期待

2017年3月にドイツで開催された情報通信見本市に安倍内閣総理大臣と世耕経済産業大臣らが出席した際に、日本の製造業が目指すべきあり方として「コネクテッド・インダストリーズ」を提唱しました。そのことは日本企業においてもIoTやAIを用いた工場のスマート化が加速することに繋がります。その中で、Bluetoothを活用したIoTへの期待が着実に大きくなっています。

日本の製造業において大きな問題の一つが夏場における作業員の熱中症対策です。日本の夏は気温・湿度ともに大きく上昇し、人体の体温調整システムを狂わせて熱中症を誘発する最悪の環境とも言えます。多くの製造業では特に危険性が高い場所でのポイントクーラーや冷水器の設置、休憩所の確保などで対策を取っているものの、熱中症に至るスピードや環境、個人差も大きいため、未然に防ぐことが難しい状況です。

そこで、前述したリストバンド型のIoT機器を各作業員に身につけさせ、心拍数や呼吸回数、体温などのデータを収集分析することで熱中症の兆候を事前に察知して、危険性が高い作業員を直ちに休憩させるなどの対処が取れるようになります。

ヘルスケア分野だけでなく製造生産性の向上にも有効です。複数の製造ラインで共有するような治工具や、製造ラインを跨いで移動する仕掛け品管理などにBluetoothとIoTの仕組みを導入することで、製造ライン全体をシステムで制御して不良率の低減や原因分析、解決策の特定などを素早く行うことが可能になります。工場内の保全チームがBluetoothとIoTを活用すれば、予兆保全システムの内製化も可能でしょう。

Bluetooth 5.1によるさらなる期待

2019年1月に発表され話題を集めたのがBluetoothの最新規格となる5.1バージョン(Bluetooth 5.1)です。Bluetooth 4からBluetooth 5では通信速度が2倍、通信距離が4倍、通信容量は8倍に増加したことで大きな話題になりましたが、Bluetooth 5からBluetooth 5.1では「方向探知機能」が搭載されたことで注目されました。

方向探知機能は、ペアリングされているBluetooth機器がどの方向にあるかを教えてくれるもので、従来はBluetooth機器が「近いか遠い」は判別できても、それがどの方向にあるかまでは確認できなかったのが大幅に改良されたというわけです。Bluetooth 5.1がリリースされたことにより、BluetoothのIoTへの活用がさらに期待されることになります。皆さんもこの機会に、Bluetoothを活用したIoT機器についてぜひご検討ください。

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