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変化に強く、回復力の高い、レジリエントなサプライチェーンの再構築

コロナ禍の例に示されるように、ビジネスにおいては予想外の困難に晒されるリスクは排除しきれません。しかし、その苦難をバネにしてビジネスをさらに展開していくには何が必要なのでしょうか。本記事では変化に強く、回復力の高いサプライチェーンを再構築するためのヒントとなる考え方について解説いたします。

変化に強く、回復力の高い、レジリエントなサプライチェーンの再構築

サプライチェーンとは?

そもそもサプライチェーンとは、製品やサービスが消費者の手に渡るまでの一連の工程を意味します。たとえばアパレル関係ならば、糸や布などの原材料がメーカー企業に移動して徐々に完成品に変わり、さらに小売店へ輸送され、エンドユーザーに販売される一連のプロセス全体がサプライチェーンです。それゆえ、サプライチェーンには、生産者、ベンダー、倉庫、運送会社、配送センター、小売店など数々の関係企業や場所が含まれます。

また、サプライチェーンを流れるのは物流だけでなく、製品開発や広報・マーケティング活動、財務活動などの「業務プロセス」や、消費者による製品の評価などの「情報」、そして消費者が小売業者に支払った代金などの「お金」も含まれます。こちらは前述した製品やサービスとは「逆流」しているというのも特徴です。

効果的なサプライチェーンを構築することで、企業はコストを削減し、ビジネス社会で自社の競争力を維持することができます。

サプライチェーンが必要な理由

現代のビジネス社会においてサプライチェーンというビジネス形態が多用されている理由はいくつか挙げられます。

リードタイムを削減し商品の投入がより早くなる

サプライチェーンが必要な第一の理由としては、リードタイムを削減し、商品をより早く投入できる効果があることが挙げられます。リードタイムとは一般に、業務の開始から終了までに要する時間を指す概念です。様々な工程や事業者を介するサプライチェーンにおいても多くのリードタイムが発生しますが、サプライチェーンにおけるリードタイム削減に成功すると、その企業は市場へいち早く商品を投入できるため、競合よりも有利な条件で事業を展開することができます。

在庫が最適化され適正に保たれる

過剰な在庫は経済的・人的・空間的リソースを圧迫するものです。さらに、もしそれが食品のように廃棄しないといけないものだとしたら、企業としてのモラルも問われることになるでしょう。かといって、反対に在庫が少なすぎれば、顧客が必要としているときに提供できず、機会損失を生んでしまいます。そのため、商品在庫は常に適正に保たれ、多過ぎても少な過ぎてもいけません。この点、質の良いサプライチェーンにおいては「在庫が最適化され、適正に保たれる」効果が見込まれます。サプライチェーンの各プロセスにおいてスピーディな意思決定を行える環境を整えれば、自然と適正在庫を実現することが期待できるのです。

売上の機会損失を防げる

「リードタイムの短縮」と「在庫管理に最適化」という上記の効果は、自然と企業に売上の増加をもたらします。ビジネスの機会損失を抑止した効果に加え、サプライチェーンの効率化によって節約できた時間・労力・コストを、より重要なコア業務に回すことによる副次的効果も期待できるでしょう。

人口の減少化の影響

日本は少子高齢化によって将来的に深刻な労働人口の低下が起こることが予想されます。こうした状況下において、従来「熟練工」などと呼ばれていた職人的な従業員はどんどん減っており、ものづくり産業も、従業員個々の経験や資質に頼るような業務運営の仕方は見直されつつあります。ここで重要になるのは、経験の浅いスタッフでも問題なく仕事ができるように作業をマニュアル化ないしは標準化することです。人手不足の波は物流業界のドライバーなどにも寄せてきていますが、こうした社会的課題に対しては一企業だけでなく、サプライチェーン全体で新たな社会体制に適応していくしかないでしょう。

ビジネスのグローバル化

現代の企業は一昔前と比べて遥かに広範囲にサプライチェーンを広げており、それは海外にまで及んでいます。グローバルサプライチェーンが拡大している原因は、土地代や人件費などのコスト削減効果を狙ってのほか、ECサイトの普及によって国境を越えて製品を届ける必要性が高まってきたことも背景として挙げられるでしょう。グローバルサプライチェーンはビジネスの展開において有意義なものではありますが、同時にその管理は複雑になりがちで、発注ミスや遅延も起こりやすくなってしまいます。そしてこうしたトラブルによってお客様からの信頼を損なう場合もありえるでしょう。それゆえ、このようなリスクを排除し、国際競争で勝ち残っていくためには適切な管理が為されたサプライチェーンが大切です。

重要な役割・サプライチェーンマネジメント(SCM)

サプライチェーンを適切に管理運用することを「サプライチェーンマネジメント(SCM)」といいます。以下では、なぜSCMが必要なのかその理由について解説していきます。

サプライチェーンマネジメント(SCM)が必要な理由

前項ではサプライチェーンの様々なメリットについて解説しましたが、それはあくまでもサプライチェーンが適切に管理運用されてこそのものです。SCMはまさにサプライチェーン全体をマネジメントすることで、無駄やトラブルを防ぐことを目的とします。もちろん、どれだけ予防したとしても、不可避にトラブルが起きてしまうことも考えられるため、もしそのような不測の事態が発生した場合でも素早く対応できる体制を作っておくことも大切です。サプライチェーンにおいては多数の事業者やプロセスが介在することが多いことから、その管理に当たってはサプライチェーン全体の情報共有やデータ共有の仕方が非常に重要です。

サプライチェーンマネジメントの重要な役割

上記で述べたこととも重複しますが、サプライチェーンマネジメントの役割は、サプライチェーン全体を最適化することで無駄を省き、効率化を図ることにこそあります。現代のサプライチェーンはグローバル化が進むと同時に多品種少量生産の注文が多くなっています。このような状況下でサプライチェーン間の分断が起きると、商品の供給はストップし、顧客に直接的に対面する小売業はもちろん、問屋や原材料の供給元までが連鎖的に損害を被ってしまいます。このようなリスクに備えるためにも、しっかりガバナンスを利かせたSCMを行うことがサプライチェーン企業には求められているのです。

変化に強いサプライチェーンを作り上げるためにできること

サプライチェーンの運用に当たっては、強固なSCMによってサプライチェーン間での分断を起こさず、安定的な流れを持続させることが理想です。とはいえ、自然災害や疫病、国際情勢の緊張などによって、サプライチェーンが寸断されるリスクは決して排除できません。つまり、サプライチェーン企業は、BCP対策としての意味も含め、こうした変化に強いサプライチェーン体制を構築せねばならないのです。そこで以下では、変化に強いサプライチェーンを作るためのポイントについて解説していきます。

景気に大きな爪痕を残したコロナ禍。チャンスに変えるには

サプライチェーンに限らず、近年社会に多大な影響を与えた出来事として新型コロナウイルスのパンデミックを避けては通れません。新型コロナウイルスは国同士の行き来どころか、自宅と職場間の往来さえ抑制し、社会全体が多大な負担を背負うことになりました。しかし、このコロナ禍は、ビジネス社会において必ずしも悪影響だけを与えたわけではありません。良くも悪くも社会が大きく変革するタイミングというのは、新たなビジネスチャンスをも内包しているものだからです。

たとえば、応急処置的に多くの企業が導入したテレワークは、場所に縛られない新たな働き方の可能性を示しました。コロナ禍が示したこうした変化は、「ニュー・ノーマル」と言われるように一時的なもので終わるとは言い切れません。むしろ企業としては、コロナ化をきっかけにデジタル変革をさらに推し進めることを目指すべきでしょう。サプライチェーンに関して言えば、キャッシュフローの改善やリモートでの支援、サプライチェーンの可視化などをITツールの活用などによって推し進めることが挙げられるでしょう。

変化に強くリカバリーの効くサプライチェーンのポイント

サプライチェーンの変化や混乱時にも、回復への対処が素早くできるサプライチェーンを構築するには、どのようなポイントが重要になるのでしょうか。

まず、真っ先に重要なものとして挙げられるのは、危機状態や断絶状態からの回復力に注目したシナリオ検討やリスク軽減戦略を事前に行っておくことです。とりわけその際に重要となるのは、混乱時でもサプライチェーンの状況を正確に把握できるようにするサプライチェーンの可視化への取り組みです。サプライチェーンの可視化は、正確な需要予測や在庫計画の最適化、あるいは統合経営計画などの策定も容易にします。こうした可視化の効果は在庫水準の低減、利益率の改善にも波及することが期待できるでしょう。さらに、原産国や原材料などの情報も可視化することによって、事故やインシデントの発生なども抑止することが可能になります。とはいえ、これらの作業を手作業でやると非常にリードタイムが長くなり、情報の劣化や時間的ロスも生じえるので、AIなどを用いたITソリューションの活用がここでは重要となるでしょう。

循環型サプライチェーンの実現

持続可能なサプライチェーン基盤を構築していくためには、「循環型サプライチェーンの実現」も重要になってきます。従来型のサプライチェーンは、「原材料の供給者→運送会社→メーカー企業」というように、いわゆるバケツリレー型の連携がメインでした。しかし、こうした単線型のサプライチェーンは、サプライチェーン全体での情報の連携なども不十分になりがちであるため、リスクヘッジのために余計に在庫確保をしなくてはならなかったりと、無題の多いものです。

対して、循環型サプライチェーンは、いわばネットワーク型に互いに有機的に繋がったサプライチェーンモデルであり、いわば「循環型社会」の構想をサプライチェーンに応用したものです。循環型サプライチェーンにおいては、統合的なITプラットフォームによりサプライチェーン間のリアルタイムな情報共有を実現し、市場の変化や実需に沿ったよりインテリジェントな意思決定を可能にするものです。また、こうしたデータの統合管理は、より正確な需要予測や輸送計画の策定などを可能にし、あらゆる無駄や廃棄の削減、あるいは資源の活用や再利用を促進します。こうした責任ある資源の活用法は、経済的なコストの削減効果はもちろんのこと、「環境に優しい企業」としての社会貢献ともなるものです。つまり、循環型サプライチェーンは企業と自然環境、双方のサスティナビリティを促進する新たなサプライチェーンモデルと言えるでしょう。

まとめ

変化に強いサプライチェーンを構築するためには、事前にリスクを考慮したBCP戦略の検討と情報の可視化が不可欠です。サプライチェーンにおけるデータの可視化や連携に課題を抱えている企業の方は、ぜひBlue Yonderが提供するITプラットフォームの導入をご検討ください。

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