米国の小売業の実態から学ぶ小売事業者の進むべき道とは?

 2019.10.08  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

「小売業」と聞くと、Amazonなどのインターネット通販に客を奪われ、年々市場が低迷していると考える方も多いでしょう。しかし実際のところ、小売業の市場規模は拡大しており、米国小売業では大きな変革の時を迎えています。

本稿では、2019年1月13~15日に開催された、NRF(全米小売業協会)による総合展示会イベント「NRF2019 RETAIL’S BIG SHOW」の情報から、米国の小売業でいま何が起きているのか?をご紹介し日本の小売業が生き残るためのヒントをご紹介します。

Happy shopping woman with a group of friends at the background

米国小売業のトレンド

「NRF2019 RETAIL’S BIG SHOW」は世界99か国から約3万8,000人の小売業界の関係者が集まり、今注目の企業経営者や各界の識者が登壇する200以上のセッションと、最新テクノロジーの展示が行われました。

その中で最も注目を集めたトピックが「リアル(実店舗を有する)小売業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)」です。2016~2018年にかけては、リアル小売業による連鎖的な店舗閉鎖が目立ち、小売市場の低迷を示唆していました。

日本国内においても「シャッター通り」という言葉があるように、商店や事務所が閉店・閉鎖し、シャッターを下ろした状態が目立つ衰退した商店街や街並みがよく報道されています。また、実際に、米Amazon.comが小売市場に多大な影響を与え、業績不振や株価低迷などにあえぐ企業が急増してことで、「アマゾン・エフェクト」という流行語が誕生したほどです。2018年3月15日、米国事業の清算を破綻裁判所に届けたトイザらスの事例は米国内735店舗閉鎖ということで業界関係者に大きな衝撃を与えました。

この状況に危機感を抱いてか、大手小売業を中心にリアル小売業ではDXへの投資を加速させていきます。たとえば世界中でスーパーマーケットチェーンを展開する米ウォルマートは、マイクロソフトと戦略的な提携を行い、2018年にIT投資へ120億ドル(約1兆3,200億円)を投じています。小売大手がいかにDXに対して「本気」なのかがうかがえます。ちなみに、これは世界産業でAmazon.com、Alphabet(Googleの持ち株会社)に次いで3位の規模になっています。

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小売業の在り方が大きく変化している

日本ではコープデリやイトーヨーカドーが提供する宅配ネットスーパーなど、ネットで注目した食材や商品を自宅まで届けてくれるサービスが拡大中です。少子高齢化が進み、スーパーまで足を運ぶことが難しいお年寄りや、子育てに忙しい親が中心顧客であり、送料も高くないことから人気を集めています。

では、米国小売業ではどうか?実は今、「BOPIS(Buy Online Pickup In Store)」というサービスが拡大し、注目されています。これは「オンラインで買って、店頭で受け取る」という意味で、日本で拡大している宅配ネットスーパーとは少し違った志向で展開されているサービスです。

この分野においても小売業のトップを走るのが米ウォルマートです。同社は「Online Grocery Pickup(オンライン・グロサリー・ピックアップ)」 という名称でBOPISサービスを提供しており、現在では2,000店舗以上が対応しています。ネットで注文した商品を受け渡すための専用カウンターを設け、「Pickup Tower(ピックアップ・タワー)」と呼ばれる、受取専用の自動倉庫を用意している店舗もあります。専用のスマホアプリで表示したバーコードを機械に読み取らせることで、事前に注文した商品が受け取り口まで自動で運ばれるというサービスです。

利用者は自分の好きなときに商品を受け取るために店舗へ足を運べばよいですし、広大な店舗内を歩きながら目的の商品を探す必要が無いため、子育てと仕事を両立している親などに人気が高いと考えられます。

小売業界で存在感を高めているMicrosoft

「NRF2019 RETAIL’S BIG SHOW」にて、Microsoftは最大規模のブースを出展し、「顧客理解の促進」「従業員強化」「サプライチェーンの高度化」「流通業のビジネス再創造」という4つのテーマにて、小売業への取り組み事例などを紹介しています。3日間で1万9,000人もの来場者が集まり、大きな注目を集めました。

というのも、先にご紹介したウォルマートはその他の小売業大手(クローガーやアルバート損ずなど)複数社が、Microsoftとの提携を発表したためです。その基盤になっているのが、Microsoftが提供するクラウドコンピューティングプラットフォーム「Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール)」です。

その一例が「エッジシャルフ」と呼ばれる取り組みです。これは、陳列棚に取り付ける電子札であり、商品価格だけでなく、食品の栄養価などの情報や、販売促進広告を表示することができる、小さなデジタルサイネージのようなものです。このシステムはMicrosoft Azure上で稼働し、センサーによって顧客属性を把握したり、店内での動きなどの情報を収集した上で、AIにデータを分析させた1人1人に合わせた広告を表示できます。

たとえば、サプリメント売り場に訪れたのが男性客ならトレーニング向けのサプリメントに関する広告を表示し、女性客なら美容向けのサプリメントに関する広告を表示するなど、表示する広告を変更することでカスタマイズされたリアルマーケティングが可能になります。

Digital Shelf

以下の図は、マイクロソフトが展開する次世代店舗の取り組みに関する全体像になります。

Intelligent Retail

「EC業>リアル小売業」という式はもう成り立たない

今まで小売業が抱えていた顧客のほとんどを、AmazonなどのEC業がさらっていったと考える方も多いでしょう。確かに、「アマゾン・エフェクト」が起きたようにEC業の進展はリアル小売業にとって脅威であり、現に米国の乾電池事業者はAmazonのオリジナル商品により壊滅的な状態になっています。また、最近ではオンラインからリアルへと事業の手を伸ばす姿も見かけるようになっています。

ただし、リアル小売業がEC業に力を奪われている、というわけではありません。「NRF2019 RETAIL’S BIG SHOW」のMicrosoftセッションにて、「ECサイトで欲しいものを見つけて、それが近くの店舗で売っていた場合、どちらで購入しますか?」という質問に対して、75%の消費者が「店舗で購入する」と回答したそうです。商品購入の最終決定にいたる接点として、実店舗の方がECサイトよりも有利という証拠です。

事実、米トイザらスは消失したものの、日本のトイザらスは未だ健在であり、好業績を上げています。日本トイザらスは2015年から、店内の端末からオンライン注文ができる「ストア・オーダー・システム」を全店に配備しており、アマゾン対抗策として功を奏しています。

もともとの狙いは店舗欠品による機会損失への対策でしたが、ある店舗では本来「現品限り」の値引き販売で売り切っていたベビーカーをあえて残し、店内に見本として展示することで、ベビーカーを見た顧客が同システムやECサイト上で同じ商品を購入するという現象が起きました。これを機に、トイザらスは店舗のショールーム化を図っています。

いかがでしょうか?米国小売業で起きている大きな変化は、日本にとって決して無視できないトレンドです。日本の小売業は今後、BOPISサービスの提供やDXへの取り組みを加速させていうことが、市場回復のカギになることでしょう。もし、興味があればマイクロソフトの小売業ソリューションをご確認ください。

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