小売業

二次流通が一般化した今、小売事業者が考えるべきこととは?

これからの時代、小売業は「二次流通」を意識して戦略を立てないと、生存が難しい可能性があります。フリマアプリなどの二次流通には、消費者にとって多くのメリットがあります。二次流通の魅力を理解したうえで、消費者を惹きつけるための工夫を行っていきましょう。

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成長が続く二次流通市場

時代とともに、消費者の行動は変わっていきます。二次流通は現代の消費者に注目されている市場であり、規模をどんどん拡大中です。

二次流通とは

多くのビジネスでは、企業が商品を仕入れ、店舗やネットを通じて買い手を募り、販売活動を行っています。これが「一次流通」にあたります。それに対して二次流通とは、オークションやフリーマーケットで中古品を販売するビジネスです。消費者から消費者へ直接的・間接的に商品が取引されるのが特徴であり、「CtoC」といった呼び方をされることもあります。

かつて、二次流通の中心は古着や古本など、一部のジャンルに限られていました。しかし、アプリやWebサービスの発達とともに販売されるジャンルも広がりを見せています。家電から日用品にいたるまで、使用済みでも需要のある商品であれば二次流通に回される機会が多くなってきました。

二次流通のサービス例

ブックオフなどの中古ショップは典型的な二次流通だといえるでしょう。出品者は、いらなくなった品物を店頭で買い取ってもらいます。そして、店舗は買取価格に経費や利益を乗せて商品を販売します。中古ショップには大手チェーンにまで成長を遂げたものも多く、消費者の日常の一部となっています。

インターネットの浸透も、二次流通の規模拡大を後押ししました。特に、スマートフォンによって消費者がいつでもどこでもネットにアクセスできる環境が整ったことは、市場にも影響を与えたといえるでしょう。フリーマーケットのアプリが次々と開発され、気軽に中古品を出品するユーザーが増えています。「メルカリ」は衣類の取り扱いなどをはじめ、豊富な出品数とジャンルで人気を集めました。そのほか、「ヤフーオークション」などのオークションサイトも登録者を増やし続けています。

これらのWebサービスでは、購入者が出品者を評価するなどのシステムによって、「優良ユーザー」が認定される仕組みです。優良ユーザーは二次流通の世界では高い信頼度を誇っており、リピーターを獲得するほどの勢いがあります。 こうした二次流通の動きに対抗するべく、大手企業も新たな施策を発表しています。ZOZOやベクトルなどのアパレルは、リユース品の買取サービスを開始するなどして一次流通以外のビジネスを開始しました。もはや、二次流通の勢いは、有名企業であっても無視できないまでに強まっているのです。

二次流通の市場規模

経済産業省が18年4月に発表した「リユース市場の全体像」では、二次流通の市場が約2兆1,000億円を超えたと記録されています。その中でも、アパレル類の成長率は著しく、フリマアプリなどの登場が影響したと考えられるでしょう。

また、この統計では中古自動車などは含まれていません。実際の市場は、さらに大きいと予想されます。 洋服フリマアプリ「ThredUP」の「2019年版Resale repor」では、「2028年までに米国内の二次流通市場は、ファストファッションの1.5倍になる」との予測がなされています。

フリマアプリと小売業界

小売業界は二次流通の隆盛によって大きな変化を求められています。代表例が、フリマアプリとの関係性でしょう。消費者が直接的に消費者と結びつけるようになったことで、企業はビジネススタイルを考え直さなくてはならなくなりました。

消費者側から見るメリットとデメリット

フリマアプリが消費者側にとって魅力的なのは、価格交渉を行えるツールだからです。リサイクルショップなどの店では、決められた販売価格より安く購入することは簡単ではありませんでした。店舗ごとに価格決定のルールが定められているため、店員の判断でそれを覆せなかったからです。しかし、フリマでは出品者自身が商品の販売価格を決定できます。購入者とのやりとり次第では妥協をし、価格を下げる可能性もあるのです。

また、店舗よりも安く目当ての商品が手に入ることも少なくありません。フリマアプリのユーザーには、ジャンルの素人もたくさん紛れています。適正価格が分からないまま、相場よりもかなり安く値段を付けていることもあります。また、一刻も早く商品を処分したい出品者は価格を極端に安くするでしょう。消費者は、フリマで掘り出し物と出会えることもありえるのです。

デメリットとしては、「必ずしも目当ての商品が見つかるわけではない」点です。フリマアプリは売れ筋商品ほど早く買い手が付きます。そのため、欲しい商品があっても、見つかるかどうかはタイミングに委ねられます。欲しいときに欲しい商品が買えるわけではないという特徴があるので、小売業者にとってはこの点が差別化のヒントになりそうです。

さらに、フリマアプリには少数ながら悪徳ユーザーも紛れ込んでいます。不良品を送ってきたり、代金だけもらって逃げたりする出品者もいるため、相手に不信感を抱かせないためには信頼性をアピールすることが求められます。

小売業者側から見るメリットとデメリット

フリマアプリには、小売業者が参入することも多くなってきました。自社の店舗でリユース品を売るよりも、いくつかの点でメリットがあるからです。 たとえば、「希望価格で売れる」のはフリマの特長でしょう。フリマでは、少数のマニアやファンが商品を発見しやすくなります。

高値になってでもレアな商品を求めている消費者と出会えれば、相場以上の値段で商品を販売することが可能です。そして、量産品であっても、フリマであれば比較的多くの買い手がつきます。希少性の高い商品などが中心に注目されやすいオークションサイトよりも、ビジネスの回転率を改善できるでしょう。

デメリットとしては、商品によってはすぐに売れるとは限らない点です。特に、レア商品とはいっても、あまりにも知名度の低い商品を出せば、消費者側もなかなか辿り着いてくれません。すぐにでも売りたい品物があるときは、中古品卸業者の方が確実に商品を売れるので便利でしょう。また、ライバルの多さも無視できません。フリマアプリはユーザー数が増えたため、同ジャンルを取り扱っているライバルも珍しくなくなったと考えるべきです。

自分よりも好条件で同ジャンルを出品し続けているユーザーがいれば、買い手を奪うのは困難です。長い年月をかけて消費者から信頼を集めなくてはいけません。それだけの時間を待てない小売業者には、フリマアプリは適切なサービスとはいえないでしょう。

「購入」から「共有」へ

二次流通のサービスでは、「購入」だけを基本に置いていません。むしろ、品物を購入した後の展開も含めてビジネスプランを構築しなければいけないでしょう。たとえば、購入後に、同じ商品を必要としている消費者に向けて「共有」するといったケースです。

この共有そのものを事業にすることを「シェアリングエコノミー」と呼びます。さまざまな分野でシェアリングエコノミーは実践されており、大きな反響を呼んでいる業界も少なくありません。 共有という概念がビジネスにもたらしたのは、「モノが売れない時代」という定説へのアンチテーゼでした。長い引いた不況や、年金問題などで将来の見通しが立てにくい時代には、「消費者の購買意欲は下がる」という意見が強く叫ばれるようになっていました。

しかし、消費者の物欲は完全に消えたわけではありません。 むしろ、インターネットで情報がいくらでも入ってくる状況下では、より効率的なものの購入や利用の方法を探している人が増えたといえるのです。シェアリングエコノミーは、「安くていいものを手にしたい」というユーザーの願望をかなえる新しいビジネススタイルです。 たとえば、「民泊」などは典型例です。もともと自分が住むつもりで購入した家屋を、観光客などに宿泊施設として貸すのが民泊です。民泊は、ホテルや旅館を一から建てなくてもすぐに実現できる商売だといえます。

また、借りる側もその他の商業施設よりも安価な宿泊費で済ませられます。外国人観光客などを対象にした民泊施設も徐々に増えつつあります。 カーシェアリングやレンタルスペースも、シェアリングエコノミーの一環でしょう。マイカーを売ってしまうのではなく、一定期間だけ人に貸すことで何回でも収入が入ってきます。1回あたりの料金は安かったとしても、回数を重ねれば転売するよりもはるかに高い金額を稼ぐことは現実的でしょう。

レンタルスペースもまた、所有している不動産物件を有効活用するために適した手段です。会議やワークショップ、セミナーなどに物件を貸し出せば、安定した収益を生み出せます。 広い意味では、労力を借りるのも「シェア」に該当します。家事代行や介護サービスなどもシェアリングエコノミーと呼んでいいでしょう。

時間やスキルのない個人が、これらの作業に従事しようと思えば、別の作業を犠牲にしなくてはいけません。人材レンタルは効率的かつ、安全に日々を送るための手段として社会に浸透しつつあります。 シェアリングのサービスでは、仕入れ以上にメンテナンスが肝心となります。ビジネスの中核をなす品物に不良が出れば、顧客にレンタルすることができなくなるからです。当然、人材レンタルでも同じことがあてはまります。ある程度、スタッフのスキルや経験値を上げておかないと、顧客の元でトラブルを招きかねません。リピート率を高めるためにも、顧客満足度を意識した戦略は大切です。

時代の変化に負けない経営とは

ビジネスを続ける以上、時代の流れが変わるのは避けられません。経営者に求められるのは、大きな分岐点に差し掛かっても臨機応変にマーケティング戦略を立て直していける対応力でしょう。 特に、移り変わりが激しいのはアパレル業界です。かつて、アパレルはリアル店舗に足を踏み入れるときの特別感も含めて、消費者から絶大な支持を受けてきました。

しかし、ネットショップで商品の一覧を簡単に検索し、欲しい商品をカートに入れるのが当たり前になった時代ではリアル店舗の優位性は保てなくなるでしょう。 また、高いお金をかけてブランド品を購入するのではなく、安くていいので本当に欲しいものを買いたいと考える消費者もいます。フリマアプリなどの二次流通の台頭は、こうした消費者たちの傾向に拍車をかけました。

いまや、アパレルの販売拠点は店舗からWebに変わりつつあります。そして、安く仕入れられた商品が二次流通に乗り、多くの人々の中でシェアされているのです。 企業が生存していくには、消費者のニーズを把握し、戦略に生かすことが重要です。既存の仕組みの問題点を確認すれば、本当の需要が見えてくるでしょう。課題が顕著に表れているのは百貨店業界です。これまで、百貨店は店頭で売れなくなった商品を在庫として引き揚げ、年末などのタイミングで再び割引価格で店頭に出すことが当たり前でした。

しかし、この方法でも確実に売り切れる保証はありません。仮に大量の在庫が出てしまうと、その多くは二次流通へと回されてしまいます。 百貨店ビジネスの弱点は、ブランド力を過剰に信用しすぎて、一次流通からのみ仕入れを行ってきた点にありました。そのため、安さを求める消費者のニーズと相反するにもかかわらず、高値で商品を販売するしかなくなってしまったのです。

一方で、米国の百貨店には仕入れ段階で積極的に二次流通の品物をまとめ買いするようになったところもあります。そのかわり、販売価格を下げることで消費者のニーズに応えてみせました。 ただ、これもあくまで一例に過ぎません。重要なのは闇雲に「安ければ安いほどいい」というスタンスで動くことではなく、顧客分析の徹底です。

自社についている顧客の消費傾向が把握できれば、マーケティングの立案は楽になります。顧客分析ではまず、ペルソナを設定しましょう。ペルソナとは、企業が思うメインターゲットのイメージに人格を与えたものです。年齢や性別、ライフスタイルや年収まで細かく設定し、ユーザー心理の予測に役立てます。

次に、メインターゲットがどれほどの市場規模を占めているのかを調べましょう。規模が大きければ大きいほど、企業は維持するための対策を考え出さなくてはいけません。逆に、規模が小さいようならそもそものターゲット選定が上手くいっていない証しです。どのような層を狙って商品を販売するのか、もう一度作戦を立てましょう。

そして、消費者の購入プロセスを明らかにします。消費者には、購買意欲をそそられてから店舗に足を運び、買い物をするまでいくつかの段階を踏みます。それぞれの段階で、どのような媒体を通していて、どれくらいの確率でプロセスを後押ししているのかをはっきりさせましょう。消費者の行動を具体的に予測するほど、ニーズの把握に役立ちます。

まとめ

二次流通は、これからの時代の消費活動でますます台頭してくると予想されます。一次流通だけにこだわっていると、企業の成長は止まってしまうでしょう。必要に応じて中古品を仕入れに使うなど、柔軟な対応力が企業には求められています。

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