製造業におけるサービス化のメリットとは?

 2020.09.28  デジタルトランスフォーメーションチャンネル編集部

製造業のビジネスモデルが急速に変化しています。その一つがサービス化(サービタイゼーション)です。このサービス化が急速に進んでいる背景には、顧客(消費者)の「モノを所有する」という欲求から「モノを利用する」という欲求への変遷です。例えば、旧来の団塊世代においては車を所有することが一種のステータスでしたが、20~30代の世代では「公共交通機関が充実しているから」といった理由で車を購入しない層が増加傾向にあります。これらの世代は、車が必要なときには借りれば良いという発想をする人が多数存在し、モノそのものの価値よりも「モノが生み出す体験」を重視しているのです。

これらはクラウドコンピューティングが台頭するソフトウェア/IT業界でも同じですし、住宅市場でも同様と言えますが、そうした顧客(消費者)の変遷に合わせて製造業でも大きな変化が起きており、それがサービス化(サービタイゼーション)として顕著に現れています。

本記事では、製造業におけるサービス化のメリットや取り組みへのポイントをご紹介します。

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2つのタイプのサービス化

ここまで「サービス化」と一括りに話を進めていますが、実際には2つのタイプのサービス化が存在します。大きくは既存の製品をサービスとして提供する「サブスクリプション型」と、IoTを用いてサービス化する「IoT型」です。

サブスクリプション型

「サブスクリプション」は定期購買という意味があり、製品を購入して所有する買い切り型のビジネスではなく、継続的に料金を支払うことで製品をサービスとして利用するタイプをサブスクリプション型と呼びます。

例えばトヨタが展開する愛車レンタルサービスのKINTOは、任意保険やメンテナンスなど継続的にかかる諸経費もすべて含めて月額料金で新車をレンタルできるサービスであり、サブスクリプション型の典型事例です。最も手軽なKINTO ONEは3年契約にて月額3万2,780円から契約できます。

サブスクリプションといえばクラウドサービスにおいてよく展開されているビジネスモデルです。クラウドサービスはシステムという目に見えない製品(プログラム)を扱っていますが、製造業では有形商材をサブスクリプションとして提供します。

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IoT型

一方、IoT型は「IoT(Internet of Things/物のインターネット)」技術を用いて製品にセンサーを取り付け、それをインターネットに接続することで様々なサービスを展開できます。例えば英ロールスロイスが展開する「Power by Hour」と呼ばれるサービスは、旅客機エンジンに設置されたセンサーから稼働時間と出力などのデータを収集し、時間当たりの推進力などに換算してそれに応じた料金を徴収する従量課金型のサービスです。

一見トヨタのKINTOと同じサブスクリプション型の定額サービスのように思えますが「Power by Hour」なので「使用した分だけの料金発生」というのが特徴です。このため、顧客企業における料金の適正化というメリットを生み、市場競争力を創造できます。また、「Power by Hour」は日常的なメンテナンスも含めてサービスとして提供することで製品の付加価値を高めています。

サービス化によるメリット

サブスクリプション型とIoT型、2つのタイプのサービス化によって製造業にもたらされるメリットは多数あります。その代表的なメリットをいくつかご紹介しましょう。

メリット1. 顧客(消費者)ごとのニーズに合わせられる

近年、顧客(消費者)のニーズは極めて多様化しています。インターネットの高速化とそれに接続するデバイスの普及によって情報を手軽に入手できる時代になり、それに応じて様々なニーズが発生しています。サービス化は、従来のように製品をモノとして販売するビジネスと比べて顧客(消費者)ごとのニーズに合わせやすいというのが大きなメリットです。プランを多様化し、オプションを多数用意することでサービスのカスタマイズ性を高めることでそれぞれのニーズに合致したサービスを展開し、より多くの顧客(消費者)にアプローチできます。

メリット2. 顧客(消費者)と継続的に接点が持てる

製品をモノとして販売するビジネスの場合、企業と顧客(消費者)の接点は基本的に「購入したら終わり」です。その後は企業側のアプローチに顧客(消費者)が反応してくれるかどうかで接点が左右されます。

一方、サービス化によって製品をサービスとして提供すると、企業は顧客(消費者)と継続的に接点が持てるようになります。それにより製品に対する顧客(消費者)視点での情報が入手しやすくなるのもメリットの1つです。

メリット3. フィードバックによる製品改善が期待できる

継続的に顧客(消費者)からフィードバックを得られるということは、製品改善に必要な貴重な情報を得られるということです。単純にモノを販売するビジネスではアンケート調査などが必要になりますが、サービス化されたビジネスではそれが簡易にできることから、より効率的に経営へと反映できます。

サービス化への取り組みポイント

それでは数多くのメリットがあるサービス化の課題とは何でしょうか。多くの企業にとって製品をサービスとして提供するというのは簡単な話ではありません。ビジネスモデルの変革を要するサービスモデルはしっかりと設計しないと既存の売上を維持できなくなる可能性も秘めています。ここではサービス化における課題について考えて見たいと思います。

サービス化を実践しようとする企業の多くは、既存の製品を時間貸ししようと考えます。しかし、そう単純な話ではありません。サービス化を考える上で重要なことは、サービス化にあたり「自社製品を通じて提供できる価値とは何か?」を分析し、情報を整理することです。その際に役立つのが「バリューチェーン分析」でしょう。この分析フレームワークは経営学者のマイケル・E・ポーターが提唱したもので、自社の「強み」と「弱み」を棲み分けて「より付加価値の高い製品を生み出すにはどうしたらいいのか?」を考えることでより付加価値の高い製品・サービスを展開することを目的としています。

バリューチェーン分析を通じて製品が持つ付加価値を理解し、モノそれ自体ではなく付加価値による良質な体験を生み出すにはどのようにサービスを展開すれば良いのか?を検討します。

また、IoT型のサービス化を展開するにあたってはIoTやAI(Artificial Intelligence/人工知能)に特化したクラウドプラットフォームの存在が欠かせません。IoTから生み出される膨大なデータを社内サーバーで管理し、かつリアルタイムに解析するためのAIを搭載するのは現実的ではありません。そこで、IoTによるサービス化を実現可能なAzureのようなクラウドプラットフォームを利用することで、より素早くIoT型サービス化を展開できます。

製造業がサービス化するにあたり課題は様々です。サービスを本格的にリリースする前には試験的に実行する必要がありますし、サービスが軌道に乗るまでも時間がかかります。前述したトヨタのKINTOも2019年11月のリリースから数ヶ月は数百件の契約数と苦戦を強いられていました。

しかし、時代がサービス化を求めている背景を鑑みると、リリース後に試行錯誤を繰り返しながら、PDCAを回すことで、売れるサービスが展開できます。どんな製品にもサービス化の可能性は秘められているので、この機会にぜひ自社製品のサービス化について検討してみてはいかがでしょうか?

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