モノからコトへ、製造業におけるサービス化とは?

 2019.12.13  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

製造業のあり方が大きな転換期を迎えています。皆さんは「サービタイゼーション」という言葉をご存じでしょうか?これは、従来モノを製造/販売してきた製造業のビジネスモデルを、「コトを売る」という新たなビジネスモデルへと転換することであり、日本の製造業がこれから直面する大きな課題でもあります。

「モノではなくコトを売る」とはどういうことなのか?本稿では、製造業におけるサービス化の流れについてご紹介します。

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サービタイゼーション(サービス化)とは?

2018年5月。米アトランタにて、IFSが主催するカンファレンス「IFS World Conference 2018」が開かれました。その中で、Global Industry Directorのマーク・ブリュワー氏は次のように述べています。

「なぜサービスが大事か?それは”サービスが世界を食べている”からです。すでに世界経済の70%はサービスですし、サービス収入が20%しかない製造業でも、利益では60%になるでしょう」

このことを裏付けるかのようにデジタルトランスフォーメーションを推進するグローバルITコンサルティング企業Columbus Global社が2017年に行った調査によりますと83%の製造業者がサービスベースのビジネスモデルは売上拡大に効果があると回答していると報告しています。

スーパーマーケットの安売りコーナーで「サービス品!」などの文言を見かけることがあります。このことから、日本では「無料もしくは安く得られるモノ/コト」をサービスとして認識している傾向があります。しかし、サービタイゼーションは無料化・格安化することではありません。

すべての製造業は、製造したモノを「モノとして」販売してきました。そこにサービタイゼーションを導入することは、モノを「コトとして」販売することになります。

自動車メーカーを例に挙げてみましょう。消費者は自動車を購入するために数十万円から数百万円、時には数千万円の支払いをします。それに伴い購入した自動車を所有することになります。しかし、実際は自動車を買っている訳ではありません。

「移動手段が増える」、「行動範囲が広がる」、「毎日の通勤に使える」、「日々のお買い物が楽になる」、あるいは「お気に入りの車を所有している」、「高級車を所有している」といった、利便性や自己満足感に対してお金を払っています。自動車というモノは、あくまでそのコトを満たすための道具に過ぎないのです。

そこで、海外諸国の製造業で「モノとコトを切り離して考え、コトを売るビジネスモデル」が徐々に確立していきます。最近では「月々数万円で新車に乗れる」といったうたい文句で自動車リースサービスの看板をよく見かけますが、これも一種のサービタイゼーションと言えます。

海外におけるサービタイゼーション成功事例

今ひとつサービタイゼーションについてわからないと言う方もいらっしゃるかと思います。ここでは海外の先進企業によるサービタイゼーション成功企業をご紹介します。

この事例はマイクロソフトが支援した英国のRolls Royce(ロールスロイス)社の航空機エンジンの事例です。ロールスロイスというと高級車のイメージがありますが、私たちはあまり馴染みのない航空機エンジンの製造メーカーでもあります。

高級車や航空エンジンを製造し販売する典型的な製造業であったロールスロイス社では、顧客の要求がモノからコトへと変化する兆候を捉えていただけでなく、自身のビジネスモデルもそれに適合させるべくサービタイゼーションへの取り組みを考えるようになりました。具体的にはロールスロイス社の航空機エンジンを購入する航空会社は、同社のエンジンが欲しい訳ではなく乗客や物を安全に目的地まで運ぶコトに着目したのです。

ロールスロイス社では自社が製造する航空機エンジンにセンサーを取り付け、そのデータを元にエンジンの出力と稼働時間を販売する「Power By The Hour」という従量課金サービスを展開します。まさに航空機エンジンを製品として販売するのではなく、エンジンによって得られる「推力」を販売する「コト」へのビジネスモデルの転換と言えるでしょう。

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また、同社では、航空機エンジンにセンサーを取り付けエンジンの出力と稼働時間で課金するだけに止まりませんでした。航空会社では、航空エンジンの適切なタイミングでの整備や必要に応じた交換部品の調達を行っています。今まで、同社ではこれらの保守サービスは受け身の状態でリアクティブな保守サポートで行っていました。しかし、航空エンジンのデータにより、稼働実績に基づく適切なタイミングでの整備と、交換部品や整備士などのリソース管理を全てプロアクティブに行えるようになったのです。これにより顧客である航空会社の満足度が向上するのは言うまでもありませんし、保守サービスも高い付加価値による収益を得ることができるようになったのです。ちなみにIoT連携による遠隔でのデータ統合管理に機械学習を活用したエンジンの予防保全行っています。

さらに、これらのデータを利用することで航空会社の悩みのためである燃費についても適切な航空機の飛ばし方(エンジンの使い方)に関するコンサルティング事業にも発展しているのです。

このように海外の製造業ではITを駆使しながらビジネスモデルを大きく改革しています。例えば、ティッセンルップエレベーターでは、エレベータに設置したセンターからデータを収集し、故障を予知してMicrosoft Dynamics 365と連携することで適切な人員配置とサービスを提供しています。

日本の製造業にサービタイゼーションが求められる理由

日本は世界的な「ものづくり大国」ですし、とにかく良いモノを「作り続ければサービタイゼーションへ取り組む必要はないのでは?と考える方もいるかもしれません。確かに、ジャパンブランドは世界中で高い評価を得ていますし、日本製と明記されているだけで信頼する消費者も多数存在します。しかしながら、品質を中心に据えて勝負するだけでは、世界市場で勝ち抜いていくのは難しいのが現状です。

まず大きな要因は、「消費者(顧客企業)のニーズが変化している」ことです。従来は「性能が高いほど良いモノ」という認識から、高性能は製品ほど消費者に評価され、ヒットするという傾向がありました。しかし、情報が溢れるようになってから「自分(自社)に最適な製品こそが良いモノ」という認識が広がっていきます。消費者のニーズが多様化して、高性能だけを求めなくなっているのです。

日本の電化製品メーカーにとって4Kテレビは大きな節目になる製品だと期待が集まっていました。しかし実際は、想像よりもはるかに売れ行きは伸びず、今でも4Kテレビへの需要は低いままです。4Kテレビで視聴するには専用チューナーが必要ですし、多くの消費者はそれを面倒に感じますし、そもそもテレビにそこまでの高性能さを求めている層が少なかったことが原因です。「お手頃な価格で普通に視聴できれば満足」という層がいて、それらの方々には4Kテレビはオーバースペックであったのです。

一方、海外諸国の電化製品メーカーに目を向けてみると、品質向上へ取り組むのと同時に「高品質なサービスの提供」に注力するところが多く見受けられます。必要以上に性能を上げるのではなく、その分の資源を、消費者が製品をより快適に使えるようにするためのサービスを拡充させることに資源を投じています。

日本の製造業の中には今でも「良いモノを作れば売れる」という認識を持つところも多いですが、その固定概念こそ日本のものづくりを停滞させる大きな要因になる可能性があります。

サービタイゼーションのメリット

サービタイゼーションは「モノが生み出すコトを、サービスとして提供する」ビジネスモデルです。では、サービタイゼーションをすることによるメリットは何なのでしょうか。

1. 製品利用の敷居が低くなる

どの自動車を購入するにせよ、新車だと数百万円の予算が必要です。多くの人は頭金を収めて、自動車ローンを組みます。いきなり大金が出ていくことを嫌う人も多いですし、お気に入りの製品が予算を超えている人もいます。

そこで、自動車をモノとして購入するのではなく、コトとして利用するサービスを受ければ、それらの問題を解消できます。それが「月々数万円で新車に乗れる」サービスです。

サービタイゼーションを取り入れると、製品利用の敷居が低くなるので、より幅広い消費者層にリーチできるようになります。消費者からしても低コストで利用し始められるので、経済面を一気に圧迫されることがありません。

2. 消費者(企業)と長くかかわれる

企業が利益を最大化するために「リピーターの創出」が欠かせません。そのため、製品の品質だけでなくサービス品質の向上にも力を注ぎますが、想像以上にコストのかかる課題であり、かつリピーター創出が難しい場合もあります。

一方、サービタイゼーションは利用頻度や利用する製品に応じた従量課金制が一般的です。つまり、消費者(企業)と必然的に長くかかわることになります。そのため顧客と向き合う時間は長くなるため、企業も打ち手を的確に判断できます。つまり、自然とリピーターが創出できますので、利益最大化のための一事業として展開できるでしょう。

3. 他社との差別化により高収益企業への転換できる

製造業がサービタイゼーションを実現するためにはITの技術が必要不可欠です。そして、多くの企業がIoTやAIを活用して価値あるデータを収集し、収益化を実現しています。しかし、このような構造を有する企業は現段階で多くはありません。早く取り組むことで他社と大きく差別化を図ることができるため高収益で持続的な成長を期待できます。

4. 従業員の生産性向上やコスト削減を実現できる

顧客のニーズは製品から成果へと移行しています。そのため質の高いデータが必要であり、それをITが対応することは前述いたしました。Aberdeen Groupによる2017年の調査によると業界トップレベルの企業はIoT技術を活用して従業員の生産性を12%向上させていると報告しています。また、製造業の保守業務においては、Data Center Journal が公表しているデータによるとITを活用した予兆保全により12%以上のコスト削減が見込めると言います。このようにサービタイゼーションを実現する多くの企業が、それに付随する従業員の生産性向上であったり、コスト削減と言うメリットを享受できるのです。

サービタイゼーションを検討してみよう

サービタイゼーションを実現するには、データを収集するセンサーやそれを分析するAI基盤などが必要ですが、物事をあまり大きく考えずに、小さなサービタイゼーションから検討してみましょう。モノを販売するのではなく、コトを販売するとはどういうことなのか?自社においてその答えを見つけた時に、製造業は転換期を迎えることが可能になります。

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