技術伝承で製造業の未来を守る|人材確保・育成方法

 2020.02.10  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

人材不足が深刻化する製造業において、技術伝承は今後ますます必要となります。しかし、実際にはうまくいっていない企業が多いのが現状です。製造業界で安定的に事業を継続するためには、技術伝承に関する課題を認識し、どのように進めていけばよいのかを知ることが重要です。

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技術伝承とは

技術伝承とは、特定の従業員が会得している熟練技術やノウハウを後継者に伝えて引き継ぐことです。これだけ聞けばシンプルな行為のようにも解釈できますが、技術といった複雑なものを誰かに継承するには、技術の形式知化や暗黙知の共有などさまざまな課題があります。スムーズな技術伝承を行うには、特有の課題を把握しつつ、成功のポイントを知らなければなりません。

技術伝承で共有される情報には、目に見える形式知と、言語化するのが難しい暗黙知があります。形式知は作業の手順やノウハウといった情報であり、マニュアル化して体系的に伝えることが可能です。一方、技術には言葉だけでは伝えられない暗黙知の要素も数多く含まれています。こういった情報を着実に次世代に伝承していくためには、経営の問題として組織全体でコミットしなければなりません。

技術伝承の現状

製造業界において、技術伝承はそれほど進んでいないのが現状です。技術伝承が進まない原因としては、その難しさが挙げられます。高度な技術を伝承する場合、受け継ぐ技術者の側にも一定の技量が必要ですが、そのような立場にあるべき中堅技術者が不足しているという事情があるのです。また、作業標準はあるものの、マニュアルや安全手順書といった表面的な内容に過ぎず、暗黙知の部分まで伝えられるような仕組みが整備されていないケースもあるでしょう。

もうひとつの原因として挙げられるのが、環境の変化です。働き方改革の流れの中、業務効率化の取り組みのもとに労働時間の削減が重視されるようになっています。目の前の業務をこなすことで手一杯になってしまい、業務時間中に技術伝承や、そのための勉強に時間を割くのが難しくなっているのです。

技術伝承の流れは、団塊の世代が60歳を迎え始めた2007年頃から本格化し、多くの会社が伝承に取り組み始めました。しかし、実際にはさまざまな事情によってスムーズにいかず、状況が変わっていないケースも数多くあるようです。

技術伝承が抱える課題

技術伝承について考える際、まずは技術伝承がうまくいかない理由を知る必要があります。そのうえで、技術伝承に取り組む際に対処しなければならない課題も把握しなければなりません。ここでは、一般的に挙げられる技術伝承の課題を解説します。

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目先の業務で手一杯

目先の業務が忙しく、技術伝承に時間を割くことができないという課題があります。

技術伝承において、若手や中堅の職人がベテランの仕事ぶりを見て、技術を目で盗むのは簡単ではありません。技術を共有するためには、時につきっきりとなって丁寧に指導する場面も必要です。しかし、先述したように業務効率化や人材不足によって仕事に余裕がなくなり、教育に対して十分な時間を確保するのが難しいという現実があります。

効率化や分業化の流れでセクションが細分化されてしまい、熟練技術者と若手・中堅が共に仕事をする機会が減ったことも要因のひとつです。こうして若手に周囲の技術を吸収するチャンスが与えられず、ベテランとの技術の共有が円滑に進まなくなったという事情もあるでしょう。

若手と熟練者のコミュニケーションが取れない

若手・中堅技術者と熟練者とのコミュニケーションの問題も挙げられます。

ベテラン技術者の中には、丁寧に仕事を教わって技術を習得した人もいれば、先輩の見よう見まねをしながら自力で試行錯誤した結果として技術が身についた人もいるでしょう。後者の場合は、若手や中堅に対して、「自分でもできたのだから後輩もできるだろう」と考えて指導が疎かになってしまうケースもありえます。

しかし、技術は必ずしも慣れれば覚えられるというものではありません。技術の習得には、その時の環境や運の要素もあるため、後輩に同じ方法を押し付けても一概にうまくいくとは限らないのです。そこで、コミュニケーションを活性化したり、マニュアルを作成したりといった教育システムの策定が必要になります。

マニュアルの作成方法がわからない

マニュアルの作成方法がわからないという課題もあります。技術は言葉として伝えることが難しい要素も多いため、これまでは経験者の勘や感覚といった技能が、同じ職場で働くうちに無意識的に共有されてきたという組織も珍しくないでしょう。

これまでマニュアル化するという発想がなければ、いざ技術伝承のためにマニュアルを作成しようとしても、その方法がわからないものです。そのため、作成に思いのほか時間がかかってしまったり、満足のできる内容にならなかったりといった問題が生じてしまいます。

マニュアルが活用されていない

マニュアルの活用にも課題があります。苦労して作成したマニュアルや動画があっても、それさえあれば技術の継承がスムーズに進むとは限りません。マニュアルや動画によって技術を残そうと思っても、それを活用して次世代に定着させるための取り組みも実施しなければ、思うような効果は得られないでしょう。技術伝承の際は、教材や資料の作成だけでなく、教育システムや活用方針も定めることが大切です。

技術伝承のポイント

技術伝承をスムーズに進めるには、いくつかのポイントを理解する必要があります。ここでは、技術伝承を効果的に進めるポイントを紹介します。

暗黙知を表出して形式知化する

まずは、暗黙知を形式知化することが大切です。現状、多くの組織では熟練者のノウハウが個人に帰属しており、OJTによってマンツーマンで伝承しているケースもあります。そこで、勘や感覚といった目に見えづらい作業のコツについても、他の技術者にも展開できるように、できる限り可視化して形として残すことがポイントです。技術を残す際は、文書の他にも写真、動画、数値データといったあらゆる手段を用いながら、熟練者の行動をノウハウとして落とし込んでいきます。そうすることで、より精度の高い技術伝承が可能になります。

集めたノウハウを細分化し、技術と技能に分解

集めたノウハウを技術と技能に分類して、それぞれ別個のものとして扱います。一般的に、技術とは形式化することが可能なもので、技能とは属人的な暗黙知に近いものとして区別されます。特に、頭の中で過去の経験パターンに当てはめながら作業を行うものは形式知化しやすく、技術に分類できます。技術は形として残しやすいためマニュアルや動画といった資料で保存し、それが難しい技能についてはOJTなど別の方法によって伝承する仕組みを作ることが大切です。

熟練者と若手がコミュニケーションを取り合い、技術を伝える

技術伝承の際は、熟練者と若手が積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。技術を次世代に引き継ぐためにマニュアルや動画といった資料は必要ですが、それだけで十分というわけではありません。熟練者の技術やノウハウにはどうしても感性でしか伝えられない部分もあります。そういった暗黙知を着実に継承させるには、密なコミュニケーションが欠かせないのです。技術伝承の際は、マニュアルがあるからといって安心せず、あえて時間を取らせて若手と熟練者が一緒に作業する機会を増やすなど、計画的に教育プランを設定する必要があります。

まとめ

製造業において技術伝承は重要な経営課題です。これまで熟練者が培ってきた技術やノウハウはその企業の強みであり、事業運営において必要不可欠というケースもあるでしょう。こういった技術を着実に次世代に継承するためには、他社の事例も参考にしつつ、経営課題として技術伝承に積極的に取り組む姿勢が求められます。

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