スマート自治体とは?実現に向けた自治体の取り組みについて

 2021.02.16  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

高齢化や人口減少による労働力不足が進む中においても、これまでと同様に社会サービスを維持できる仕組みが必要です。こうした情勢を受けて、AIやRPAといったICT技術を駆使した「スマート自治体」の実現に向けた取り組みが始まっています。スマート自治体とは何なのか、その具体的な内容について解説していきます。

スマート自治体とは?実現に向けた自治体の取り組みについて

総務省が推進する「スマート自治体」とは?

スマート自治体とは、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)のようなソフトウェアロボットなどの技術を駆使して、定型的な業務を自動化したり、共通基盤を用いて効率的にサービスを提供したりすることを可能とした自治体のあり方を指します。AIやIoT(モノのインターネット)の広がりで「スマート化」という概念が広く普及した昨今、こうした考えが自治体における業務やサービスそのものにも適用されるようになったのです。

スマート自治体が打ち出された背景〜2040年に起こる問題とは?〜

スマート自治体への取り組みを推し進める背景には、2040年問題があります。具体的には、2040年に65歳以上の高齢者の人口がピークになり、約4,000万人に達するとされる問題です。高齢者人口が増えることで、現役世代(生産年齢人口)1.5人が1人の高齢者と支えるという構図になり、労働力不足による生産性の低下や社会保障費の負担増が深刻化するとみられているのです。

さらに、都市部と地方の人口差も深刻な状況となりつつあります。一極集中に伴う人口流出から、全国の自治体の4分の1は人口が半減すると予測されています。また、2010年から2040年のあいだに20~39歳の女性が現在の5割を下回る消滅可能性自治体は、2040年までに896にも及ぶという試算も発表されています。

高齢化と人口流出によって、地方では労働人口が大幅に減少すると考えられます。こうした中、各自治体が従来のサービスを提供し続けるためにはどうすればいいのか、自治体間の連携を深める施策としても注目されているのが、スマート自治体というあり方なのです。

スマート自治体の推進への具体的な施策

では、一体どのようにスマート化を進めていけばいいのでしょうか。現在推進している施策について、ご紹介します。

AI・RPA等のICTを効果的に活用

業務の負担軽減において、AIやRPAの効果的な活用に期待が寄せられています。AIとは「Artificial Intelligence」の略称で、人工知能を意味します。AIは言語の理解や問題解決といった知的な行動をコンピューターに機械学習させて行います。AIチャットボットのような簡単な問い合わせの対応や画像の自動認識や判定といった作業が可能です。AIを用いることで、会議録の自動作成、多言語での問い合わせ対応、気象や土壌のデータ分析による農業の効率化など、さまざまな業務を省力化できると期待されています。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)という技術も同様に注目されています。RPAとは従来人間しか処理できないとされていた定型的な事務や計算業務を行う技術で、仮想知的労働者という言葉で呼ばれることもあります。AIとの大きな違いは、自律的な判断ができるかどうかという点です。RPAが行うのはあくまで計算や転記、データ化といった決まったプロセスの作業に限り、AIのように物事を自動的に判断して最良の手段を取ることはできません。自律的な判断ができない分、複雑なタスクを任せる場合は組み込む工程が増えてしまいます。しかし、単純で決まった業務を人の手で行うよりも圧倒的に早い速度で処理できます。そのため、スマート自治体で導入すれば、職員の給料や税金関係の複雑な計算業務、FAXや申請書類などを紙媒体から電子媒体にコピーするといった作業に対する人的負担が軽減できるとされています。

こうしたAIやRPAの技術は、指定都市など大規模な自治体では活用されつつありますが、未だ導入していない自治体が多いのも事実です。こうした背景には、AI・RPA技術に対する知識や理解の不足が主な要因として挙げられており、情報通信技術に長けた人材が地方自治体などで不足していることがうかがえます。また、導入している自治体に関しても、実証実験段階の無償導入を利用しているところが大半です。本格的な実装段階においては、予算の確保も課題となります。こうしたことから、AIやRPAに対応できる人材育成の強化や低予算でも導入できる環境の整備が急がれています。

クラウドを活用したシステムの標準化

行政における業務システムのあり方についても、クラウドを活用してスマート化できると考えられています。現在利用されている業務システムは、それぞれの自治体が自らで設計したものが主流となっています。このやり方では、開発や維持の負担が大きく、制度変更のたびにコストを割いて改修を行う必要があります。その解決策として注目されているのがクラウドサービスの活用です。IT企業がクラウド上で提供する業務システムアプリケーションを利用することで、こうした開発、維持、改修といったコストや負担を大きく抑えられます。

単なるコスト削減だけでなく、クラウドを利用することで自治体同士の連携を深めることも可能となります。労働人口が大きく減少するとされており、自治体の連携が必要となる状況が出てくるでしょう。その際に、業務システムを共通化しておくことで、スムーズなやり取りが可能となると期待されているのです。また、AIは学習データが増えるほどその精度が増すとされています。各自治体ごとにクラウドを介してこうした学習データを共同利用することができれば、AIの質の飛躍的な向上も期待できます。

このように様々なメリットが期待できる業務のクラウド化ですが、その進捗は2017年の時点で全国的に見ても平均で5割程度にとどまっています。特に、人口が20万人を超える都市で約7割近くがクラウド化を行っていないというデータも出ています。一方で、クラウドを活用した業務システムを導入した自治体からは、コスト削減や人的負担軽減の面でも、一定の効果が出たという声が挙がっています。国は今後もクラウド活用を推進していき、2020年代までには各行政分野に応じた業務システムアプリケーションを全国的に提供できる形を目標に定めています。

スマート自治体の実現にむけて

スマート自治体が現実のものとなれば、現在多くの人手と時間をかけて行っている業務の負担が大幅に減少し、その分人間にしかできない作業に専念できるようになります。例えば、日本語に不慣れな外国人や最新の技術に詳しくない高齢者、そして何らかの障害を抱えている人など、本当に困っている人への人的サポートに注力できるようになります。

また、AIやRPA、そしてクラウドの技術を効率的に活用することで、労働人口が減少しても今の行政サービスの水準を保つことが可能となります。さらに、ベテラン職員の経験をAIに学習させることで、経験の浅い職員の業務をサポートできるようになります。

こうしたスマート自治体の実現に向けて、3つの原則が掲げられています。1つ目は行政手続きのペーパーレス化です。申請書など紙媒体でのやり取りは、窓口に来て記入をする住民にとっても、大量の書類をデータとして入力しなおす職員にとっても大きな負担となります。紙が必要な作業を減らし業務を少しでも効率化させるためにも、手続きのペーパーレス化は欠かせないものとなるでしょう。

2つ目は、業務システムを自前で用意するのでなく、提供されるサービスを利用する形に変えることです。前述のように、自治体独自のシステムだと、開発や維持に余計なコストがかかってしまいます。クラウドサービスを利用すれば、こうした負担を削減できるだけでなく、全国のAIの学習データを共通化することが可能となり、AIの質の向上にもつながります。

3つ目は、自治体もベンダーも守りの分野から攻めの分野へリソースを投入するという点です。守りの分野というのはシステムの構築や保守管理といったもので、こうした分野は極力効率化したうえで、AIやRPAの技術をフルに活用する攻めの分野に人材やコストを投入する姿勢が求められています。

スマート自治体の実現に向けて、未ださまざまな課題が山積しています。特にAIやRPAといった情報通信技術に長けた人材の育成や、低コストでも導入できるサービスの整備は、各自治体のスマート化が実現できるか否かに直結すると言えるでしょう。来たる2040年に備え、クラウドやICTの技術への理解はいっそう欠かせないものとなるでしょう。

まとめ

日本における高齢化や人口減少などの影響は、もはや避けては通れません。いずれ訪れる労働力不足に備えて、可能な限り早急にスマート自治体を実現させる必要があります。社会サービスの根幹となる自治体はもちろんのこと、今後はあらゆる業界においても同じようなことが求められるようになるでしょう。

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