小売業の現状と課題

 2019.10.25  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

インターネットの台頭により、小売業は大きな変化に直面しています。それでも、逆風に吹かれながら売上を伸ばしている企業は少なくありません。北海道から沖縄まで、ネットを通せば同じ商品が手に入る時代において、小売業は戦略を考え直すことが大切です。

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小売業界「モノが売れない時代」は本当?

現代は「モノが売れない時代」と称されることが少なくありません。しかし、実際にはモノが売れないというよりも簡単にモノが売れなくなっているというべきでしょう。小売業が苦戦している背景について理解すれば、経営戦略に生かせるはずです。

「モノが売れない」といわれる理由

まず、「品質の高い商品が増えた」のは、モノが売れなくなっている大きな原因です。時代と共に、あらゆるジャンルの商品は改良を重ねられていきます。その結果、過去の欠点を克服した新商品が次々と開発されています。一度買うと長く続けられる商品も少なくありません。つまり、消費者は頻繁にモノを買い替える必要がなく、ひとつのモノを長く使い続ける時代に突入しているのです。

「トレンドの移り変わり」も原因でしょう。インターネットの定着によって、現代では消費者が収集できる情報量が急増しました。消費者がトレンドに敏感な反応を示すようになると、流行のサイクルはどんどん短くなっていきます。かつての人気商品があっという間に廃れる現象も珍しくなくなりました。トレンドから外れた商品は、再び人気が出る可能性は低く、市場から消え去っていきます。そして、消費者はまた新しいトレンドへと移行していきます。そのサイクルはますます加速するばかりです。モノが売れないのではなく、ひとつのモノを変わらずに売り続けるのが難しくなっているといえるでしょう。

時代と共に変化する消費者のニーズ

小売業にとっては、時代と共に変わっていくニーズに応えられるかどうかも重要な課題となっています。たとえば、モノを所有することから「共有」が当たり前になってきているのは、現代社会の大きな特徴でしょう。 デフレ経済や老後不安など、消費者が高い買い物をすることへの不安を抱える要因は数多く存在します。

そこで、インターネット上で優れたサービスを比較的安価に共有する傾向が強まっていったと考えられるのです。 そういった中で、サブスプリクション型のサービスが台頭してきました。定額制によって、与えられるサービスを使い放題にできる仕組みです。これらのサービスが増えたことで、ますます消費者から「モノを買う」という発想が薄まってきました。

ソフトを購入せずに、動画やアプリケーションの配信を利用するなどの消費行動は典型的な例でしょう。必要なときに必要なだけの商品、サービスを利用できるシステムこそが、現代の主流になりつつあります。

リアル店舗のショールーム化

中国などでは、ネットショップやECサイトの成長率が高まってきています。日本の小売業界でもインターネットで顧客を集めようとする動きが起こっています。ただし、消費の中心がインターネットになったことで、リアル店舗のショールーム化にも拍車がかかりました。

これまで、スーパーマーケットなどのリアル店舗では、顧客が来店して商品を購入するのが当然の流れでした。しかし、現代の顧客は店舗で商品仕様を確認したうえで、ネットにアクセスし、より安く販売しているサイトを探すようになっているのです。 つまり、店舗まで顧客を誘導することは可能でも、そこから競合他社に奪われてしまう可能性が大きくなっています。

せっかく集客に成功したにもかかわらず、売上に影響がないまま宣伝イベントが終わってしまうことも珍しくありません。小売業が生存するには、オンラインとオフラインのどちらの発想も持ちながら、最終的にはしっかり収益に導くような構造を確立することが必須だといえるでしょう。

 

業態別 小売業界の現状と課題

経済産業省は例年小売業の動向に関する統計データを発表しています。日本における小売業の課題を業態ごとに探るために、「平成29年小売業販売を振り返る」という資料で数字を追っていきましょう。

百貨店

平成29年度の百貨店全体の販売額は6兆5529億円でした。そのうち、もっとも売上に貢献していたジャンルは「飲食料品」です。次に、「婦人服・子供服・洋品」が売上の多くを占めており、百貨店における主戦力だったことが分かります。一方で、「紳士服」は「婦人服・子供服・洋品」の3分の1以下の売上にしかなっていません。(参照元:https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/pdf/h2amini106j.pdf)

百貨店業界の傾向として、ブランドイメージなどに後押しされ、百貨店全体の顧客数が急激に失われることは考えにくいでしょう。ただし、変化がないわけではなく、大手と中小企業の差が明確になっていくことが予想されます。

オンラインショップに対抗できるほどの知名度や宣伝力を持った大手が有利な立場にあるのは変わりません。さらに、外国人の顧客も増えている中、今は日本人にしか通用しないブランドであっても、これから国際的に高めていくことは大きな課題です。

スーパー

平成29年、スーパーマーケット業界全体では13兆497億円の販売額が記録されました。依然として、日本人の消費生活の中心にはスーパーがあります。中でも、10兆近くは飲食品の売上でした。(参照元:https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/pdf/h2amini106j.pdf)

安くて新鮮な食材が簡単に手に入るスーパーは、食生活に欠かせない存在となっています。ただし、衣服や日用品などの売上は飛び抜けたものがありませんでした。 スーパーマーケットの顧客は、調理の手間を惜しまない高齢者が中心になっている可能性があります。「料理は家でするもの」という考えが浸透している高齢者は、肉や魚、野菜を買って持ち帰ることが当たり前になっています。一方、若者世代にはそもそも「自分で料理をしなくてはいけない」という発想が必ずしもありません。

そのため、若者世代を顧客にすることはスーパーにとって今後の課題です。 「ブランド化」の促進もスーパーに求められているテーマでしょう。単純な価格競争になってしまうことが多い業界なので、商品そのもののクオリティが語られる機会がそれほどありませんでした。しかし、顧客の世代交代を進めていくには、安さだけでない魅力をどこまで訴求できるかが鍵でしょう。

コンビニエンスストア

平成29年度、コンビニエンスストア業界は11兆7451億円もの販売価格を記録しました。内訳としては、日配食品、加工食品、非食品のバランスがとれているのが特徴です。(参照元:https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/pdf/h2amini106j.pdf)

幅広い顧客が通いやすい立地にあり、多種多様な需要に応えられるだけの品ぞろえがあるのは、コンビニエンスストアの強みといえるでしょう。各メーカーがオリジナルの商品、サービスを展開して特色を押し出しているのも、業界全体の活性化につながっています。

ただし、あまりにも店舗数が増えすぎて市場が頭打ちになっているのは課題です。新規店を増やして売上を伸ばすのがコンビニエンスストア戦略の基本だったものの、同じメーカーの店舗同士が顧客を奪い合うという事態を招いてしまいました。成長率という点で、コンビニエンスストア業界は停滞しています。

今後は、「気軽さ」を押し出すだけでなく、より深いニーズに応えられる店舗となっていけるかが重要でしょう。

家電大型店

平成29年度、家電大型店は前年比3.1%増加し4兆3115億円でした。(参照元:https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/pdf/h2amini106j.pdf)

特に、生活家電は半分に近い販売額を記録しました。次いで、情報家電が売上の多くの割合を占めています。このデータは、パソコンやスマホが当たり前になった世の中を象徴するものです。それぞれ単価が高い商品であることも、売上の伸びに反映されています。

ただし、家電業界全体としては、市場が縮小傾向にあります。大きな要因として、パソコンの浸透によりテレビやラジオといった製品を買う必要がなくなったことが挙げられるでしょう。

パソコンが家庭にあれば多くの家電の機能を代用できてしまうので、他の製品を買う必要性が薄れたのです。そして、大手家電量販店が市場を独占し、中小企業は苦戦を強いられています。規模の小さい店舗ほど、オンラインを意識して宣伝戦略を立てられるかどうかが課題となっていくでしょう。

ドラッグストア

日本ではドラッグストア業界も大きな市場を持っています。外国人観光客の「爆買い」と呼ばれる消費行動では、しばしばドラッグストアの商品が人気を集めてきました。平成29年度には、6兆580億円もの販売額を記録しています。(参照元:https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/pdf/h2amini106j.pdf)

そのうち、特に食品や家庭用品、ビューティー用品などは大きな売上となってきました。ドラッグストアで取り扱われている商品が、さまざまなバリエーションを見せるようになったことを象徴しています。

ドラッグストア業界の成長には、インバウンドマーケティングが貢献しています。国内のみならず国外の消費者にも目を向けたことが功を奏して安定した市場を手にすることができました。しかしながら、同業界では低価格競争がし烈を極めてきています。決して利益率は高くないだけに、今後はどのようにして売上と利益を両立させていくかが課題でしょう。

ホームセンター

家庭用品やDIY用品を購入する場所として、ホームセンターは重宝されてきました。そのほか、園芸用品やペット用品なども人気です。平成29年度のホームセンター市場の販売額は3兆2942億円にものぼりました。(参照元:https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikeizai/pdf/h2amini106j.pdf) (参照元:http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/sosei_jouhouka_tk4_000002.html)

日本におけるホームセンター業界は、郊外を中心として店舗を展開していき、地方の顧客を掴むことで成り立ってきました。しかし、近年では少しずつ市場規模が縮小してきています。 ホームセンター業界にとって向かい風となったのは、店舗数が増えすぎたことによる競争の激化でした。また、戸建て住宅の着工件数が徐々に減少してきたこともあり、家庭用品やDIY用品の需要そのものが少なくなっています。

どの企業も飲食品を増やすなどの工夫をして対応しているものの、決定的な効果には結びついていません。一方で、他社を吸収合併しながらさまざまな事業展開を図る企業も出てきました。郊外以外のエリアで、どれだけ顧客を集められるかがホームセンター業界に課されている試練です。

その他(自動車小売店や専門販売店)

衣服など、そのほかの専門販売店は、年々苦境に追い込まれています。全体の売上が急落こそしていないものの、部分的にはゆるやかな下降の傾向が表れているとはいえるでしょう。消費者のライフスタイルの移り変わりは市場に影響を与えました。かつて、衣服といえば「紳士服」「婦人服」というように、明確なジャンル分けがなされていました。だからこそ、ブランドの商品が愛され、固定ファンを生み出していたのです。

しかし、現代では低価格の「ファミリー服」で満足する消費者も少なくありません。 全体的に価格重視の消費活動が目立つ中、リアル店舗での売上が伸びているといえるのが自動車販売です。自動車は信頼できるディーラーから直接話を聞いて購入したいという層も根強く存在するので、オンラインショップの台頭も店舗を脅かすまでにはなっていません。

そのかわり、車の周辺機器などはネットで購入する顧客が増えています。 ただし、車を買う消費者自体は減っていなくても、日本メーカーも安心は禁物です。海外メーカーの情報を集めやすくなった時代では、「安くて耐久力がある」日本車の魅力が絶対的なアドバンテージにならなくなりました。

そして、デザインやブランド力で車を選ぶ傾向が強くなることも考えられます。アパレルや自動車では純粋なものづくりの視点に立ち返ることが、今後も存続していく条件になりえるでしょう。

海外編 小売業界の今

海外の例としてアメリカに目を向けると、2017年、食品スーパーのクローガーが全米での小売業売上ランキングで2位となりました。年間売上高は約1159億ドルと驚異的なデータとなっています。クローガーの魅力は、プライベートブランド「simple truth」をはじめとする安全性への取り組みでしょう。

顧客からの意見に耳を傾け、健康的かつ安全な食生活をサポートするための商品を開発し続けています。また、オンラインとオフラインの境界線をなくし、いずれの店舗でも便利にショッピングを楽しめるようにしたのも効果的でした。クローガーというブランドそのもののファンを増やすことで、ネットとリアルに関係なくリピーターを生み出せるようになったのです。

一方、全米では米ウォルマートが売上ランキングのトップを走り続けています。ウォルマートは230万人を超える従業員を抱える大企業です。そして、徹底した社員教育によって、1人あたりの売上高を上げることに注力してきました。人的資源を最大限に活用する手法により、ウォルマートはリアル店舗の世界で並ぶもののない企業の座を維持しています。人であろうとモノであろうと、企業が有している資源をどれだけ有効活用できるかは小売業の生存戦略の基礎にある考え方です。 (参照元:https://stores.org/stores-top-retailers-2018/)

まとめ

成長を止めない小売業の特徴として、「オンラインとオフラインにこだわらない」点が挙げられます。あらゆる販売経路に対応しながらライバルと差別化している企業こそ、小売業が厳しい時代を生き抜けます。成功事例を参考にしながら、自社の戦略を立てていきましょう。

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