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小売業が資金調達を成功に導くポイントとその方法を解説(公的補助金)

小売業に限らず、あらゆる企業にとって資金調達は事業を安定的に運営し、発展させていくために必要不可欠です。資金調達を成功させるために知っておきたいポイントのひとつは、「公的補助金」に関する基礎知識です。申請方法や受給の条件を知ることで、返済不要の資金を得ることができるかもしれません。

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小売業の資金調達に「公的補助金」

資金調達を成功させる上で、公的補助金の存在は極めて重要です。公的補助金は融資と混同されることもありますが、このふたつは明確に異なっています。

一般的に融資とは、銀行などの金融機関から借り入れる資金を指します。これに対して公的補助金は、国や地方自治体などの公的機関から受け取る資金です。補助金とは別に「助成金」という言葉が用いられることもありますが、公的に資金を受け取ることができるという意味では、資金調達の手段としての魅力はいずれも同じといえます。厳密な違いをいえば、助成金が特定の要件を満たすことで受け取れる資金であるのに対して、補助金は事業計画書などを作成し、補助金を受け取る妥当性などが理解されてはじめて受け取ることができる資金です。

公的補助金の対象企業と対象事業

公的補助金を受けられるのは、対象となっている企業や事業に限られます。そのため、補助金を受給しようと考えている場合は自社がどのような事業を行っており、その事業が補助金の給付事業に該当するかの確認が必要です。

対象企業に関しては、組織の規模によって可否が区別されます。たとえば、大企業であるか中小企業であるかによって異なる場合があります。ここでの大企業の基準とは、一般的には中小企業基本法によって定められている中小企業よりも大きな規模の企業を指します。

中小企業基本法では、中小企業を以下のように定義しています。

1.製造業・建設業・運輸業・その他の業種(※以下の2.3.4.を除く)

  • 資本金の額または出資の総額が3億円以下
  • 常時使用する従業員の数が300人以下

2.卸売業

  • 資本金の額または出資の総額が1億円以下
  • 常時使用する従業員の数が100人以下

3.サービス業

  • 資本金の額または出資の総額が5,000万円以下
  • 常時使用する従業員の数が100人以下

4.小売業

  • 資本金の額または出資の総額が5,000万円以下
  • 常時使用する従業員の数が50人以下

上記の定義において、「資本金の額または出資の総額」もしくは「常時使用する従業員の数」のいずれかが満たされていれば、中小企業と判断されます。ただし、中小企業基本法が定める中小企業の範囲と、補助金の申請などにおける中小企業の範囲が必ずしも同一ではない点に注意が必要です。

中小企業基本法での中小企業に該当していなくても対象補助金の区分で該当するというケースもあります。また、たとえば小規模事業者持続化補助金のように、中小企業は受給できず、小規模企業者のみが受給できる補助金もあります。そのため、資金調達の手段として自社が補助金の受給の対象となるかについては個別に各自治体へ確認する必要があります。

対象事業に関しては、サービス業・卸売業・小売業・飲食業・製造業・建設業・運輸業・鉱業・ソフトウェア業・情報処理サービス業などが対象となります。対象となる活動内容には、雇用関係や研究開発に関するものなどがあります。

小売業向け公的補助金の例

これまでに実施された小売業向けの公的補助金の例としては、以下のようなものがあります。

小規模事業者持続化補助金

販路の開拓に取り組む際の費用として利用できる補助金。集客のためのチラシやホームページの作成、または店舗のバリアフリー化などに用いることができます。申請の際には事業計画書(経営計画書)の作成と提出が必要となります。補助金の上限額は50万円で、補助が対象となる経費の3分の2をまかなうことができます。受給の対象となるのは小売業の他にも、製造業やサービス業が該当します。

食品小売業コスト縮減・機能強化構造改善事業にかかるコスト縮減モデル事業への助成金

食品小売業者を対象とした助成金です。コストの削減を実現するためのアイディアを募集し、応募されたアイディアの中で高い効果が期待できるものについて、発案した事業者の店舗でモデルケースとして実証事業を行い、その効果を検証して効果を広く普及させることを目的としています。2,000万円を上限として支給されます。

申請から支給までの流れ

公的補助金を受け取るためには、主に4つの段階があります。

1.自社の事業に合った補助金を探し、申請書を提出する。

補助金は、どのような事業に対しても申請・受給できるというわけではありません。自社の事業に該当する補助金があった場合にのみ、申請が可能です。

2.審査委員会の審査を受け、採択後に交付申請書を提出する。

申請書を提出すると、その後は審査、採択、交付の流れとなります。提出すれば必ず採択されるというものではなく、申請内容に不備があった場合や、補助金を給付するに値しないと判断された場合には採択、交付はなされません。

3.提出した事業計画に基づいて事業を行う。

審査に合格し、採択されればようやく事業を行うことができます。ここでの事業は、必ず事前に申請したものである必要があります。申請した事業内容を勝手に変更することはできないため注意が必要です。

4.補助金の交付申請を行う。

事業の実施段階になると、ここで補助金が交付されることになります。利用する制度によっては事業の実績報告書や、事業にかかる経費の証憑(領収書や請求書のようなかかった経費の証拠となる書類)の提出が必要となります。補助金が交付された後も、定められた期間であれば定期的に事業の報告を求められる場合があります。

資金調達を成功させるポイント

補助金や助成金は、国や地方自治体などから受給する資金で、金融機関からの融資とは異なり返済は不要です。そのため、事業を安定させ、発展させていく上で大きな糧となります。それだけに、補助金や助成金を受給できるかどうかが中小企業にとっては死活問題になるかもしれません。

補助金は、申請すれば必ず受給できるというものではありません。中小企業庁が発表した 統計によると、補助金の種類によっては約24,000件の申請に対して採択されたのは約7,700件となっているものもあります。つまり、採択されるのは3件に1件程度です。

以下では、資金調達を実現するために補助金を受給できるポイントについてみていきます。

1.的確に情報収集する

補助金に関する制度は、国や地方自治体から大々的に情報が開示されているわけではありません。そのため、申請者が小まめに国や地方自治体が情報発信しているインターネットサイトなどで情報を集める必要があります。また、助成団体や市民活動センターなどの掲示板や広報誌で公表されることもあるため、併せて確認することが大切です。

2.補助金の内容にあった申請をする

補助金には、支給側の意図があります。たとえば、中小企業の研究開発を支援したり、雇用の促進を支援したりといった意図です。その意図に合わない申請内容であれば、採択される可能性は低いです。

3.申請書や事業計画は担当者が読んで納得できるものにする

助成金の交付は、提出する申請書や事業計画内容を基に判断されます。そのため、申請書や事業計画に不備がある場合や矛盾、説明不足、楽観的過ぎる見込みがある場合には採択が難しくなります。担当者が読んで理解ができるよう補足用の資料や注釈をつけ、誰にでも伝わりやすい内容にする必要があります。

4.何度も申請する

申請書や事業計画書を読む担当者は、税理士や中小企業診断士です。担当者は永続的に担当となるわけではなく、定期的に交代します。特定の税理士や中小企業診断士から交付が不適切と判断されても、他の税理士や中小企業診断士に変わることで交付が適切と判断されることがあり得ます。そのため、採択されなかったからといって直ぐに諦める必要はありません。ブラッシュアップして何度も申請することで、採択される可能性は高くなります。

まとめ

小売業や製造業などの中小企業にとって、返済義務のない補助金は資金調達の手段として魅力的です。受給するためには一定の条件を満たす必要があるため、自社の事業や業種に合った補助金制度探しが大切といえます。申請は複数回できるので、受給の可能性を高めるためには試行錯誤を繰り返すことが効果的です。

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