製造業におけるAIを用いた傾向分析のパターンとは?

 2020.02.12  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

人員不足やコスト削減などの影響で、製造業ではあらゆる場面で効率化を求められています。製造現場は急速なデジタル化が進んでおり、AIやIoTといった技術も浸透。そこで収集・蓄積されたデータを活用し、業務の効率化を図ることが可能です。本項では製造業におけるAIを用いた傾向分析の現状とパターンをご紹介します。

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製造業におけるAI活用の現状

日本経済研究センターが発表している「日本企業のAI・IoTの導入状況」(2019年3月)の資料に掲載されている調査データによると、国内製造業のAI導入率は11.2%でした。これは全業種平均の14.1%に比べてやや低い水準です。AI導入が活発である金融・保険業(19.1%)や運輸業(18.7%)と比べると差がわかりやすいでしょう。製造業を資本規模別に見ると、AI導入の割合が高いのは資本金1000万〜3000万円の製造企業(18.2%)で、次が5000万〜1億円(13.7%)、そして50億円以上(10.4%)となっています。

AIを導入している製造業のうち、導入している分野で多いのは、製造工程(21.7%)、研究開発(18.9%)、顧客サービス・接客(13.2%)の順でした。こちらも他の業種と比較しても小さな数字です。例えば、製造工程のAI導入率は電力・ガス業が33.3%、研究開発では通信が40.0%、建設で22.7%です。そして、顧客サービス・接客は通信が50.0%で建設は27.3%、運輸・倉庫(18.8%)という結果です。製造業の中でも特に導入が進んでいない分野は、サプライチェーン(6.6%)、安全・セキュリティ(8.5%)、商品・サービス設計・企画(8.5%)などでした。

High Performance Computing with Cloud System
製造業におけるMixed Realityの活用

AIによる傾向分析によって問題解決を図る

製造業では、生産ラインの効率化や稼働時間の最適化、品質検査の精度向上などさまざまな課題があります。消費エネルギーの効率化や空調運転の最適化といった、コストや環境の観点についても考慮しなければなりません。従来は人の手に頼る部分が多かったような現場であっても、人手不足という事情もあり、社会全体に生産性向上が求められる現在では、何らかの対策が必要な状況です。

こういった製造業の問題を解決するには、AI(人工知能)やそれを活用した傾向分析が役立ちます。AIを活用すれば、従来は熟練した作業員に頼っていた職人技も代替可能になったり、ビッグデータ分析によって最適パターンを発見したりして課題解決の支えになるのです。

ステップ1:目標を設定

製造業では一般的な数値目標や製造業特有の事情にもとづく目標など、さまざまな目標があります。こうした目標設定において、AIの活用は効果的です。

製造業の事業運営においては、生産ラインや在庫、輸送、機械設備、エネルギー使用量などあらゆるデータが発生します。ただし、それらのデータの中から経営課題を発見しようとしても、情報量が多い中で要領を掴むことは簡単ではありません。的確な分析は難しい可能性が高いでしょう。

こうした場面でAIを用いれば、経営や事業の姿を把握しやすくなり、現状の問題点を発見できる可能性が高まります。AIは大量のデータについて時系列、あるいは類似ケース同士で比較・分析を行い、優れたケースや劣ったケースを抽出可能です。このような手法によって、解決すべき問題をスムーズに明確化し、選定できます。

ステップ2:データの整理

解決すべき課題の抽出・選定が済んだら、データの整理を実行します。データの整理とは、課題を解決するために必要なデータは何なのかを洗い出した上で、現状保有しているデータと、足りないデータを見える化することです。製造現場では、目標設定を行ったからといって解決策がすぐに具体化する訳ではありません。例えば「品質検査の誤判定率を0.1%に下げる」という目標を設定したとしても、その解決策を策定するためには「これまでどのような状況で誤判定が発生したのか」「どのような状況で判定が正常だったのか」といった分析をするためのデータが必要です。AIを用いて分析する前に、必要なデータを洗い出し、用意するプロセスが欠かせません。

ステップ3:データの収集・蓄積

収集すべきデータが明確になれば、実際にデータ収集および蓄積を行います。製造現場は、機械・設備の稼働状況やラインの稼働、作業人員の動きなどさまざまな情報が行き交う、いわばデータの宝の山です。しかし、実際の現場ではコンピューターと接続しているマシンやデバイスのデータは収集できても、未接続のアイテムはデータが収集できないというケースもありえます。課題解決のためにどうしてもデータを収集する必要があるものについては、IoT(モノのインターネット化)という仕組みを活用し、センサーを取り付けるなどして対処可能なことがあります。

ステップ4:データの分析

データの収集・蓄積ができたら、分析を行います。ここでは、目標を達成するためにどのような解決策がありえるのかを抽出するための分析がメインです。このような分析の場面にはAIが役立ちます。傾向分析も可能なAIであれば、ビッグデータの中から傾向を発見し、人間では気づけなかったような成功要因を提示する可能性もあるのです。例えば、AIに日々の生産ラインの稼働データを与えて機械学習させると、生産効率が高いときと低いときの傾向を分析し、効率を上げるためのパターンを学習していきます。これはあくまでもAIの活用方法の一例にすぎませんが、データから目標への取り組み方法や、達成するための課題といった要素を発見するためにはAIによる分析が効果的です。

ステップ5:次の目標を設定

分析したデータをもとに、次の目標を設定します。一度目標を設定し、解決策策定の上で実行してみると、想定よりも良かった、想定通りだった、あるいは想定よりも悪かったといった結果が出るものです。こういった結果や、それに至る実行段階で新しく収集できたデータを分析することも有効な活用方法です。

製造業にAIを取り入れて問題解決を図る際、目標設定・データ整理・データ収集・分析といった流れによって進めていくのが基本的な流れです。しかし、実際には現場によって状況が異なるため、必ずしもこの順番通りではなくても問題ありません。状況に応じて、1つ前のステップに戻ることもありえます。

傾向分析のパターン

製造業にてAIによる分析を行う際、大きく分けて2つのパターンがあります。1つ目は精度追求で、もう1つは速度重視です。パターンによって、必要なデータや求められる成果の特性が異なります。

精度中心

精度追求を中心とする分析のパターンは、コストの削減を目的として、業務の効率化や品質の向上などを主なテーマとした分析のことです。コストやパフォーマンスを改善させるための分析を行う場合、その成果を出すためには分析の精度が重要になります。精度が悪ければ、誤った解決策が導かれてしまい、改善どころか改悪にもつながりかねません。そこで、分析時間をかけてでも高い精度でパフォーマンスを向上させることを重視し、生産性の改善や品質の向上を目指します。

速度中心

速度を重視する分析のパターンは、売上増加を主な目的として、顧客満足度の向上や拡販施策の検討などをテーマとした分析です。販売やプロモーションに関する施策ではスピードが重要で、その施策の効果は顧客が求めているタイミングによって大きく影響を受けることがあります。そこで、時間をかけて精度の高い分析を行うよりも、効果のありそうな分析結果をすぐに業務に反映できるかどうかが重視されるのです。このようなケースにおいては、スピーディに顧客のニーズを把握し、行動に移せる分析手法が役立ちます。

まとめ

製造業において、傾向分析といったAIによる分析手法は大きな効果を発揮する可能性があります。AI分析を活用するには、目標設定やデータ整理、収集・分析を行っていくことが重要です。製造業では精度追求、速度重視の2パターンがあることを念頭に、状況に応じた運用が求められます。

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