医療業界におけるIOTテクノロジーの活用

 2021.06.30  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

医療業界にもIoTの波が押し寄せていますが、導入によりどのようなメリットを得られるのか、正しく理解している医療従事者は多くありません。本記事では、医療業界におけるIoTの概要や導入により得られるメリット、考えられる課題などについて解説します。

医療業界におけるIOTテクノロジーの活用

医療業界におけるIoTとは

IoTとは、Internet of Thingsの略称で、日本語ではモノのインターネットを意味します。モノとインターネットを融合させる技術で、モニタリングや予知保全、データ連携、遠隔制御などさまざまなことを実現できます。

医療業界におけるIoTは、IoMT(Intenet of Medical Things)と呼ばれています。医療の現場で使用されるさまざまな機器やシステムと、インターネットを融合させる技術です。

従来では、医師が直接患者と対面し、診察を行うことが一般的でした。しかし、IoMTを活用すれば、医師は離れた場所で患者のデータを共有でき、遠隔診療を行うことも可能です。また、患者の情報をビッグデータとして蓄積し、医学的な観点から分析も行えます。

医療機器とインターネットが融合することにより、医師だけでなく看護師やその他の医療従事者へも素早い情報共有が可能です。リアルタイムな情報共有も可能であるため、従来のようなタイムラグをなすことができ、診療全体のレベルアップにつながります。

フェーズごとに異なるIoTソリューション

医療IoTを導入するにあたっては、患者の状態を急性期、回復期、慢性期、終末期の4つのフェーズにわけて考えます。医療の世界へ浸透しつつあるIoTですが、フェーズごとに異なるソリューションが存在することを理解しておきましょう。

急性期のIoTでは、個人に合ったクリニカルパスの作成や、遠隔での手術ソリューションが挙げられます。オンライン手術を実現するには、まだまだ技術的な問題をクリアしなければなりませんが、決して夢物語ではありません。

回復期におけるIoTには、バイタル管理と投薬管理、リハビリテーション強度の管理などに技術を活用できます。たとえば、深夜や早朝など医療従事者が患者へ付き添うことが難しい時間帯であっても、IoTを活用すれば容易にバイタルチェックが可能です。

慢性期では、毎日のバイタルデータ傾向を把握し、異常値の検知に活用できます。取得した患者の個別データがあれば、個々の患者ごとにバイタルデータ傾向の把握ができるのです。

終末期は、人生の幕を下ろす時期です。IoTの活用により、毎日の生活情報を収集すれば、医療と介護の両面から患者を支えられます。自宅で最期を迎えたいと願う方も多いため、このようなケースでは、医療従事者と介護従事者双方の情報共有に役立つでしょう。

医療業界におけるIoT導入のメリット

すでにさまざまな業界で導入が始まっているIoTですが、医療業界では導入によりどのようなメリットを得られるのでしょうか。遠隔診療の実現やIT機器によるモニタリング、医療データの活用など、数々のメリットが挙げられます。詳しく見ていきます。

遠隔診療が可能になる

ITデバイスと通信技術を活用すれば、離れた場所にいる患者へも診療が可能です。スマホやタブレット端末、パソコンなどを通し医師と患者がオンラインでやり取りをし、診療を行うイメージです。

従来の医療では、患者が医療機関へ足を運び、診療を受けることが普通でした。しかし、中には医療機関へ足を運べない、運びづらい方もいます。オンラインでの診療が可能になれば、このような方たちへも診察ができるようになり、収益の向上につなげられるのです。

医療機関によっては、医師による往診を行っているところもあります。往診がある場合、医療機関はどうしても医師の数を増やさざるを得ません。オンラインでの診療が可能となれば、少ない医療従事者で業務を回すことができ、人件費の削減につながります。

IT機器によるモニタリング

IoT導入により、IT機器を用いた患者のモニタリングが実現します。ウェアラブル端末を活用し、患者の心拍数や消費カロリーといった身体データの取得ができるのです。

従来の医療では、これらの身体データを取得する際、医療従事者が自ら行うケースがほとんどでした。直接患者と接し、機器を用いてデータの取得を行っていたのです。

ウェアラブル端末を使用すれば、データ収集に時間を割く必要がなくなります。端末を通じて自動的にデータを取得してくれるため、医療従事者の手間や負担を軽減できるのです。

また、日々の身体状況を短期間で正確に把握できるのもメリットといえるでしょう。万が一異常を検知したときも、スピーディーな対応が可能です。

医療データの活用

IoTの導入により、さまざまなデータを日々取得できます。収集して蓄積した貴重な医療データは、分析により今後の医療に役立てられます。

たとえば、AIによる蓄積したデータの分析です。蓄積した膨大なデータをAIで分析し、そこから導き出した情報から最適な処方の提案が可能となります。

従来では、薬の組み合わせや処方量などを、医師の判断に任せるケースが一般的でした。しかし、多くの医師は多忙であり、ミスが起きる可能性も否めません。誤った処方をしてしまう、処方量を多くしてしまう、といった間違いが起きる可能性は十分あるでしょう。

蓄積したデータをAIで分析し、最適な処方を提案できれば、このような事態を回避できます。医師の判断だけに頼る必要がなくなり、負担を軽減できるのです。その結果、診療ミスをなくし、より正確な診断が可能になります。

医療業界におけるIoT導入の課題

さまざまなメリットが得られるIoTですが、医療業界への導入にあたってはいくつか課題も考えられます。分野によっては導入が難しいケースもあります。具体的にどのような課題が考えられるのか、詳しく見ていきましょう。

十分なセキュリティが必要

医療機器をネットワークでつないで活用する性質上、十分なセキュリティ対策を行う必要があります。ネットワーク接続する数が多くなるほど、外部からつけ入る隙が多くなってしまうのです。

患者から取得する医療データの多くは、秘匿性の高い個人情報です。万が一、外部へ漏れたとなれば、医療機関としての信頼は地に墜ちてしまうでしょう。

過去には、アメリカの医療機関において、第三者による不正アクセスのリスクが高いと判断されたケースがあります。日本でも、今後医療の現場へIoTの導入が進めば、不正アクセスによるさまざまなリスクの発生が懸念されます。

データの改ざんが行われる可能性もあるため、注意しなくてはなりません。外部からの攻撃によりデータの改ざんが行われた場合、医療の現場では患者の命に関わる可能性が高いです。たとえば、投薬量を本来の数値よりも多く書き換えられてしまった場合、患者の健康状態が悪化するおそれがあるでしょう。

このように、医療機関と患者側、双方にリスクが生じるため、IoTの導入には万全のセキュリティ対策が求められるのです。

導入が難しい分野もある

スムーズに導入を成功させている医療機関がある一方で、導入が難しいと頭を抱える病院も少なくありません。既存システムと融合させることが難しい、どのようにシステムを構築すればよいのかわからない、と悩むケースが多いようです。

IoTを活用すれば、離れた場所にいる患者へ手術を行うことも可能です。ただし、これはあくまで可能性の話であり、実現させるにはまだまだ時間が必要といわれています。
遠隔操作での手術に関する法整備はいまだ進んでいません。技術的には可能であっても、法的な問題があるため実現にはいたっていないのです。

つまり、患者の体にメスを入れる、縫うなどの行為が行われる外科分野においては、まだまだ導入が難しいといわざるを得ません。

導入コストが高い

新たなシステムを導入するときは、コストがかかるものです。医療機関におけるIoT導入でも同様で、高度なシステムを構築するには多額の初期投資が必要です。

具体的には、センサーやアクチュエーターなどの機器が必要になるほか、安定した通信回線の確保、クラウドやサーバーなどのコストが発生します。システム構築の依頼や運用、保守などにも当然コストが発生するのです。金銭的なコストはもちろんのこと、人材コストも憂慮すべきでしょう。医療的な知識があり、なおかつIoTに精通している技術者を探すのは非常に困難です。

これらに加え、運用に関わるコストが発生することも覚えておきましょう。システムを正しく運用するには、社員への教育が必要です。セミナーや勉強会などを通じて教育を行う必要もあり、教育コストが発生します。

日々の患者対応に追われる中で、新たな作業を覚えるのは簡単なことではありません。

このように、医療の現場へIoTを導入するにあたっては、多くのコストが発生するため、二の足を踏んでしまう経営者が少なくありません。

医療業界におけるIoTの活用事例

IoTが医療業界でどのように活用されているのか、詳しく知らない方も中にはいるでしょう。ここでは、具体的な活用事例をいくつかご紹介します。

リアルタイム体調管理

人気の美容・健康トレーニングアプリの中には、IoTを活用したものもあります。健康的な生活を送りたい方、美容に関心がある方に愛用されているアプリで、AIがトレーナーとなってアドバイスをしてくれることが特徴です。

このアプリでは、体重や歩数、睡眠、食事、生理などに関するデータの取得が可能です。健康に直結するデータを日々取得し、それをAIが分析して、個々に最適なメニューを提案してくれます。

遠隔診療

IoTを活用した、オンライン診察システムがリリースされています。医療機関はシステムの導入により、診察から会計、薬の処方までを一貫してオンラインで実現できます。

オンライン診察システムを導入すれば、ビデオチャットによる診察が可能です。医師と患者が離れた場所にいても、オンラインでつながり診察を行えます。患者はわざわざ病院へ足を運ぶ必要がなくなり、医療機関側では診察の待ち時間を短くできるメリットがあります。

会計もオンラインでスムーズに行え、処方薬は後日患者の自宅へ配送される仕組みです。まさに、医療機関と患者双方にメリットのあるシステムといえるでしょう。

まとめ

未だ課題はあるものの、医療分野へのIoT導入ではさまざまなメリットを得られます。これを機会に、前向きな検討をしてみてはいかがでしょうか。
AVNETの医療ソリューションサービスならば、高度なセキュリティを実現しているため、安心して利用できます。あわせて検討してみてください。

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