地域包括ケアシステムとは?地域医療連携の重要性について

 2020.07.27  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

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少子高齢化が急速に進行しつつある日本において高齢者が生き生きとした暮らしを続けるための仕組みとして「地域包括ケアシステム」の構築と整備がすすめられています。この記事では地域包括ケアシステムの概要と、実現のために必要な地域での医療連携について解説します。

地域包括ケアシステムとは?地域医療連携の重要性について

「地域包括ケアシステム」とは?

高齢者が重度の要介護状態になっても自宅など住み慣れた環境で自分らしい生活を続けられることを目指し、国を挙げての取り組みとして「地域包括ケアシステム」の整備が進められています。この仕組みでは「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」の支援サービス5種類を一元的に提供して、高齢者の暮らしをサポートすることを目的としています。

地域包括ケアシステムが必要とされる背景

日本は世界に例を見ないほど急速に高齢化が進んでいます。戦後1947年~1949年に生まれたいわゆる第1次ベビーブームの「団塊の世代」がすべて75歳以上となる2025年には医療や介護に関する需要や保険などの社会保障費が急増することが想定されており、いわゆる医療業界の「2025年問題」として大きな課題となっています。

老年人口が増大する一方で、15歳以上64歳未満の生産年齢人口は減少の一途にあるため、現役世代が納付する社会保障費や各種税収の大幅な増加を見込むのは難しく、現在の医療体制を維持することは極めて困難な状況にあります。

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こういった背景のもと、医療費の増加を抑制するために、国は2006年に高齢者ができるだけ在宅で過ごせるように地域環境を整備する「地域支援事業」のコンセプトを打ち出し、法整備などの制度設計に着手しました。そして、2011年の介護保険法改正で、国や地方自治体が「地域包括ケアシステム」の構築を進めることが義務化され、各自治体が中心となるケアシステムの整備と構築が本格的にスタートしています。さらに、2015年の同法改正では「介護予防・日常生活支援総合事業」を新たに設けるなど、日常の生活全体をよりきめ細かく支援するための施策が取り入れられ、各自治体を中心としたシステムの構築と整備が現在も進められています。

地域包括ケアシステムの構成要素

このシステムは高齢者の生活基盤となる「住まい」と「生活支援・福祉サービス」に、健康的な暮らしを送る上で必要になる「介護」「医療」と介護や医療を減らすための「予防」という5つの要素で成り立っています。これら5つの要素はそれぞれが連携しながら回っていくことが想定されています。厚生労働省では一般向けの情報として「鉢植え植物」に例えて概要を紹介しています。各要素の概要について詳しく見ていきましょう。

参照: 厚生労働省「地域包括ケアシステムの5つの構成要素と「自助・互助・共助・公助」」

1.「すまいとすまい方」

まず、5つの要素のうち一番基本になるものは、高齢者が暮らす住居の「すまい」と、どのように住むかという「すまい方」です。「鉢植え植物」では「鉢」に例えられる部分です。生活する上でなくてはならない自宅などの「住居」が整備され、本人の希望や経済力に沿った「暮らし方」をそれぞれが選び取った上でプライバシーと尊厳が守られた住環境が実現されていくことを目指しています。

2.「生活支援・福祉サービス」

住環境の次は「生活支援・福祉サービス」です。「鉢植え植物」の図では住居である「鉢」を満たす「土」に例えられています。 この場合の生活支援とは、食事の準備や「見守り」など事業者による基本的なサービスのほか、自治体やボランティアが主体になって運営される「交流サロン」や、地域住民の声かけなどの非公式な支援も含まれています。

3.「医療・看護」4.「介護・リハビリテーション」5.「保健・予防」

基本的な日常生活にプラスする形で加えられる要素が「医療・看護」「介護・リハビリテーション」「保健・予防」の3種類の専門サービスです。これらの3要素は「鉢植え植物」の図では鉢の中の土に植えられた植物が伸ばす3つの葉に例えられています。 病気になった時にはかかりつけ医や地域の中核病院などで医療を受け、介護が必要になった場合は訪問介護を受けたり、介護施設でサービスを受けることができます。 「保健・予防」には健康状態の聞き取りや、自治会や老人クラブ、ボランティア、非営利団体の参加などの「生きがい創出」などが含まれます。 これらの要素が、地域包括センターやケアマネジャーのコーディネートにより有機的に連携しシームレスな利用ができることを目指して、組織や施設の整備が進められています。

「本人・家族の選択と心構え」が大前提

しかし、これら5つの要素で構成されたシステムが成立するための大前提として、「本人・家族の選択と心構え」がなくてはなりません。これは「鉢植え植物」の図ではシステムとしての植木鉢を支える台の部分に例えられています。 今後はシニア世代の夫婦のみ、もしくは高齢者が単身で暮らす世帯がさらに増えることが予想されます。そうした状況において、在宅で介護を受けながら生活することを想定し、どのような暮らしを送っていきたいのかなどについて、本人と家族ともに話し合いあらかじめ心構えを持っておくことが大切です。

地域包括ケアシステムは4つの「助」の連携が重要

このシステムの継続的な運用は「自助」「互助」「共助」「公助」の4つの「助」の連携で成り立っています。4つの「助」について一つずつみていきましょう。

最も重要となる「自助」

まず、身の回りのことを自分でしたり、自発的に健康診断を受けたり、健康関連サービスを利用することが「自助(セルフヘルプ)」です。自助の意識がなければ、そもそも自立した生活が送れないことから、4つの「助」の中心になる最も重要な要素であると考えられています。

「自助」を補助する役割の「互助」

「互助」とは、同じ立場にある地域住民同士で助け合い支え合うことを指します。地域の友人同士で交流を持ったり、町内会や自治会でのイベントやボランティア活動に参加するなどの横のつながりがこれに該当します。

「互助」で足りない分をカバーする「共助」

「共助」は、介護保険や年金など相互扶助の役割を持つ社会保険制度やサービスを指しています。高齢者が自立した暮らしを送るためはシニア層同士の互助だけでは不十分で、幅広い世代からの協力が必要になりますが、それを可能にする制度が「共助」に該当します。

他の助で困難な課題のための「公助」

これら自助、互助、共助でカバーできない部分を行政が担うのが「公助」で、生活保護や高齢者福祉事業など国や地方自治体による社会福祉制度がこれに該当します。互助や共助では対応が難しい貧困や家族による虐待などの問題に取り組むという役割があります。

地域包括ケアシステムに取り組むメリット

それでは、地域包括ケアシステムの構築によってもたらされるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。一つずつみていきましょう。

医療を受けながら自宅で生活を続けられる

従来、医療と介護は別途のサービスとして提供されており、提供者もそれぞれ別々の事業者であることが普通でした。しかし、その結果、医療ケアが必要となった場合に、医療ケアと介護サービスを並行して柔軟に提供するのが難しくなるという不都合が起きていました。 地域包括ケアシステムではこういったサービス間のギャップを解消し、医療機関と介護サービスの事業者間でスムーズに連携できる体制を構築して、誰もが住み慣れた自宅や地域での生活を全うできることを目指しています。

高齢者の社会参加を促進できる

地域活動への積極的な参加などを促す取り組みも行っています。自発的に地域活動やボランティアに加わってもらうことで、支援を受けると同時に支援を求める他の高齢者をサポートする役割を担うことにもなります。 こういった社会的役割を持つことが「生きがい」として高齢者の意欲を支え、介護予防にもつながることが期待されています。

多彩なサービスが登場する

地域ケアシステムが整って本格的に稼働すれば、高齢者が自宅で自立した生活を送るために必要で便利なサービスが新たに登場することが考えられます。生活支援や地域密着型の介護など、高齢者の暮らしを助ける多彩なサービスが充実していけば、高齢者本人はもちろん、家族の負担も軽減されていくと考えられます。

地域包括ケアシステムの課題

このようにシステムには数々のメリットがありますが、現状ではいくつか問題点も挙がっています。以下、課題について詳しく見ていきましょう。

医療・介護の人材不足

少子高齢化が進んで社会全体で労働者不足が深刻化するなか、このシステムを担う医療専門職や介護職の人材も不足しています。特に、介護は業務内容がハードな反面、賃金が高いとは言えず人材不足に拍車をかける原因になっています。

医療と介護の連携が十分でない

システムが機能するには医療と介護が適切に連携することも大切です。しかし、診療情報や介護に関する情報の提供や共有でタイムラグが発生したり、診療情報の内容が十分でないことも多く必ずしも十分な連携が取れている状態にあるとはいえないのが現状です。

地域格差がある

このシステムを実際に構築して運用するのは各市町村などの自治体に任せられています。これは地域ごとの特性に合わせたシステムを構築するために意図的に行っている施策ですが、経済力や人材の充実度は地域によって異なっており、地域格差が生まれることが懸念されています。地域によっては医師不足でそもそも地域の医療体制自体が崩壊の危機にあることも見逃せない点です。

自治体で地域包括ケアシステムを導入した事例

すでにこのシステムをつくるための取り組みが各地で始まっています。ここでは実際の事例について見ていきましょう。

東京都世田谷区の取り組み

86万人超と人口規模が東京23区最大の世田谷区は、独自の実態調査により、高齢者の一人暮らしや高齢者のみの世帯が全体の約半数を超えているという実態が明らかになったことを契機に地域包括ケアシステム構築の取り組みを本格化させました。世田谷区では定期型・随時対応型の両形式で訪問介護を区内全域で実施できるような整備の推進や、空き家などを活用した高齢者の居場所作りに取り組むなどの施策を行っています。

新潟県長岡市の取り組み

人口約28万人と中規模の地方都市である新潟県長岡市では、上越新幹線の長岡駅を中心とするエリアに、システムの拠点となるサポートセンター13か所を設置して、各種サービスの一体的な提供を目指しています。また、サービスに関わる事業所と地元町内会などが連携して行事を開催するなど信頼関係を築くための試みを継続的に行っています。 例えば、周辺地域住民の理解と賛同を得るために地域の伝統行事に場所を提供したり、気軽に立ち寄れるカフェを運営するなどしてシステム構築に尽力しています。

鳥取県南部町の取り組み

人口約1万人の山あいの地方都市である鳥取県南部町では、軽度の要介護者や低所得者向けの住まいが不足していたことを受け、空き家を活用した地域交流スペースを用意しました。このスペースでは週3回程度のサロン活動を軸に、状況に応じて医療・介護や配食・見守りなどを提供しています。これら活動により、将来にわたって一人暮らしの高齢者が自宅の延長として安心して利用したり暮らしたりできる場所を確保していくことを目指しています。

まとめ

高齢者が暮らし慣れた自宅で生活を続けるために「すまい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」5つのサービスを一括で提供する「地域包括ケアシステム」の構築と整備が進められています。効果的な運用により医療費の抑制と自分らしい暮らしの両方が実現できるとして、今後も、国を挙げての取り組みのひとつとなるでしょう。
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