医療・製薬

医療現場におけるAI活用とは?活用例やメリット、課題を徹底解説

さまざまな業界でICTの活用が進む中、医療現場にもDXの波が押し寄せています。とりわけAI技術は特に活躍が見込まれる分野であり、その動向に関心を持っている人も多いことでしょう。そこで本記事では、医療現場におけるAIの活用について取り上げ、そのメリットや今後の課題について解説します。

医療現場におけるAI活用とは?活用例やメリット、課題を徹底解説

先端技術とAI倫理がもたらす「より良い医療のかたち」

医療現場での主なAI活用例

AI(人工知能)は1950年頃から研究が開始された技術ですが、ディープラーニング(深層学習)の開発を皮切りに、2010年頃から一気に進化が加速しました。その結果、今ではさまざまな分野で活用が進んでおり、一部能力はすでに人間を凌ぐまでに至っています。そしてそれは、医療現場においても例外ではありません。

例えばAIによる画像診断は、ときに人間の医師ですら見逃すわずかな病変をも特定できる場合があります。それ以外にも創薬や医療事務など、医療現場の周辺領域でもAIの活用は進んでいます。現状、AIが医師の代わりを完全に務めるのは、さまざまな観点からハードルがあるものの、AI活用が医療現場の人員不足や過重負担に対する一解答になりうるのも確かです。以下では、医療現場においてAIをどのように活かせるのか、その具体例を見ていきましょう。

画像診断

画像診断は、医療現場におけるAI活用のもっとも代表的な分野です。膨大な数の画像データを深層学習したAIは、通常の健康な画像と異常が見られる画像との違いを敏感に察知し、病気を特定できます。この画像処理機能を活用することで、MRI・CT・レントゲン・超音波・内視鏡・病理組織など各種画像データから患者の異常を発見・診断することが可能です。

現代の医療画像技術は質・量ともに非常に成長していますが、その分、放射線科医など診断医の負担も重くなっています。AIを活用することで、そうした現場の負担を軽減し、スムーズに診断や治療を進められます。

自動診察(カルテ解析)

AIは、カルテなどに記載された問診情報に基づいて、関係がありそうな病気の可能性を統計学的手法によって絞り込んでいきます。同様のことは、アプリ上での患者とのやり取りからでも実行できます。

例えば、高齢者など病歴の長い患者は、カルテ情報も非常に膨大になっていることが多いため、限られた診察時間で医師がそれをすべて精査し、罹患している可能性のある病気を特定することは、容易ではありません。

その点、AIならば瞬時に分析を完了し、医師にその情報を提示してサポートします。この技術もすでに実用化されており、問診にかかった時間を約1/3に短縮できたという事例もあります。

会話ロボット

AIの自然言語処理機能を活用した、対話能力に長け、患者と円滑なコミュニケーションを取れる会話ロボットも登場してきています。こうした会話ロボットをリハビリテーションに活用することで、癒し効果やセラピー効果も期待されます。

レセプト

定型的な作業が得意なAIは、バックオフィス業務での活用も期待されます。例えば、診察内容に基づいて診療報酬明細書(レセプト)の作成等を行うレセプト業務にAIを活用することで、誤記入などのミスを減らしつつ作業時間の短縮も図れるため、医師はより本質的な業務に専念できるようになります。

医療現場にAIを導入するメリット

上記のように、AIは医療分野におけるさまざまな業務に活用可能です。医療現場にAIを導入するメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

業務の効率化

AIを活用する主なメリットは、業務の効率化です。例えば、上述したレセプト業務での活用にも示されるように、AIは定型的な事務作業を得意としているため、事務作業の一部を自動化することが可能です。

また、AIによる画像診断やカルテ解析などを活用することで、診察時間の短縮や、病名特定および治療方針の決定にかかる医師の負担軽減も期待できます。近年は医用画像データの質・量がともに向上しており、医師がその分析に割く時間や労力も増えているので、これは無視できない効果と言えるでしょう。

さらに、AIを患者の見守りに使うことによって、必要性の低いナースコールが減り、看護師が重要な業務に集中できるといった効果も期待されます。

データの収集

医療データの収集や管理業務なども、AIが得意とするところです。AIは、カルテなどの膨大なデータから規則性や共通する部分を特定し、一定の基準にしたがって分類することが可能です。患者の病歴が長く関連データも膨大になるケースでも、AIが効率的にデータの収集や分析を行えば、医師の治療を大きくサポートできるでしょう。そして今後、社会的に高齢化が進んでいく中で、こうしたケースは自然と増加していくことが予想されます。

精度向上

AIを活用することで、医療の質や精度の向上も期待できます。例えばAIの画像診断は、ときに人間では気づけないほどの微細な異変をも感知します。また、AIは大量の構造データを読み取ることで、個々の患者に適した効果的な治療法を医師に提示することも可能です。

もちろん、AIの判断を盲目的に過信することはよくありませんが、人間の医師も過重労働による疲労や経験の違いによって、判断の精度にブレが出る場合も考えられます。AIを活用し、病気の診断や治療方針の決定において、人間とAIによる一種のダブルチェック体制を敷くことで、よりよい医療の提供や、重大な医療錯誤を防ぐ効果が期待できます。

医療現場にAIを導入する際の課題

このように、AIの活用にはさまざまなメリットがある一方で、依然として課題も残されています。以下では、医療現場へのAI導入における課題について解説します。

AIに対する医療従事者の知識不足

第一の課題として挙げられるのは、AIに対する医療従事者の知識不足です。AI技術は今なお日進月歩で進化している最新鋭の高度な専門領域であり、医療現場でそれを扱うとしたら、医療従事者にもある程度はAIに関する知識が求められます。

AIと聞くと、すべてを機械が精密に自動処理してくれるものと思い込んでいる方も少なくありませんが、それは誤った認識です。例えば、AIにも分析値が上振れたり下振れたりするなどのクセがあり、対象データに対する得手・不得手もあります。AIを活用するうえでは、AIのそうした特性も加味して最終的な判断をくださなければ、重大な見落としやミスも発生してしまうかもしれません。

このような事態を避けるべく、現在ではAIに対する医療従事者の知識を深める取り組みとして、医学生の基礎教育にAI科目を取り入れることなどが議論され始めています。

AIの真正性の担保

上述したように、AIは患者の病名特定や有効な治療法の提案などもできますが、なぜAIがそのように判断したのか、AIの判断の妥当性ないしは真正性をいかに担保するかといった問題もあります。

人命に関わる医療現場で活用する以上、根拠や判断プロセスがブラックボックス化したままでは、AIの判断を信用できません。それゆえ現在では、説明可能なAI(XAI)を開発する機運が高まっています。

またAIの分析は、サンプル数が足りていない場合や、サンプルの母集団に偏りなどがある場合、誤った判断をしてしまう可能性があります。さらにAIは、基本的に既存のデータ(教師データ)に基づき判断を下すため、実際の医療現場で取得される新規のデータに対して、同様の判断をできるかどうかが未知数という懸念もあります。

医療現場にAIを導入するならNetApp®のAIソリューション

上記のような課題点があるにせよ、医療現場にAIが導入される潮流は、今後ますます加速していくことが予想されます。そこでおすすめしたいのが、NetApp®の提供するAIソリューションです。

NetAppでは、ヘルスケア分野におけるAIと分析のクラウド型ソリューションを提供しており、「予測分析による患者データのセキュアな保護」「医療画像処理向けのAIソリューションの設計」「ゲノム解析の高速化」など、医療現場のイノベーションを強力に支援します。

例えば、ドイツのハノーファーメディカルスクールでは、第一線で活躍する医師たちがNetApp上にデータ駆動型の診断システムを構築し、患者の生活向上に役立てています。AIの導入をお考えの際は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

医療現場におけるAIの活用範囲は幅広く、画像診断やカルテ解析によって患者の病状診断などをサポートできるほか、レセプト業務などのバックオフィス業務を効率化することも可能です。AIが医師の代替を完全に果たすことはまだ難しいものの、医療従事者にかかる負担を緩和するうえで、AIによるサポートは大きな効果が期待できます。

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