設計を加速するCAE解析とは? 最新事例で読み解くCAEのポテンシャル

 2021.05.31  デジタルトランスフォーメーションチャンネル編集部

機械設計を行うエンジニアリングにおいて、広く採り入れられつつあるのがComputer Aided Engineeringの頭文字を取った技術、「CAE解析」です。この記事では、CAE解析とはどのようなものなのかを詳しく解説するとともに、CAE解析を用いなかった従来の設計との比較をはじめ、CAE解析が機械設計においてどのようなメリットをもたらすのかをご紹介します。

また、実際にCAE解析を用いた世界的な自動車メーカーの先進的な事例や、CAE解析を取り入れたことで得られた成果も交えて見てみましょう。

設計を加速するCAE解析とは? 最新事例で読み解くCAEのポテンシャル

CAE解析とは

まず「CAE解析」とはなにかを解説します。

CAEとはComputer Aided Engineeringの頭文字を取った技術のことで、「コンピューター支援設計」や「計算機援用工学」とも呼ばれます。

CAE解析とは、製品を設計する際の良し悪しを、計算機を用いて物理的なシミュレーションを行うことです。例えば、重い荷物を乗せるとどれくらいの重さまで耐えられるかという強度や、製品の熱の伝わり方などを、実際の製品や試作品を作って試さなくてもコンピューター上で検証することが挙げられます。そのため、CAE解析を行うと試験的な工程を減らしたり、試作品を作るコストを省いたりできるメリットが得られます。

CAE解析を行うツールとして挙げられるのが、CADです。主にCADでの設計データに基づいてCAEで解析を行うのが一般的な流れになっています。

CAE解析を用いない従来の設計

CAE解析を行わない従来の設計方法では、材料力学に基づいて手計算で評価を行っていました。しかし、これでは評価できるものはかなり限られるといいます。

CAE解析を利用しない性能評価では、まず設計に基づいて実物を試作してから、実際に強度などを試すという流れでした。そのため、まず試作品を作るためにコストや時間がかかること、試作品はあくまで試作品のため設計が最小限になることもあり、そこで何らかの問題が発覚するケースもあるなど、非常に手間のかかる工程です。

改善と試作を完成するまで繰り返すため、その分コストも時間もかかり、製品開発のための期間が長引くというデメリットがありました。

こうしたプロセスを計算機(コンピューター)上で済ませられるのが、CAE解析です。いちいち試作品を作って試すのではなく、ある程度コンピューター上で性能評価ができるため、試作品を作るのは最低限で済むというメリットがあります。

CAE解析の主な分野

CAE解析ではどのようなことがわかるのかをご紹介します。まず、物理的なシミュレーションが可能であればCAE解析の対象となるため、次のような分野の解析が可能です。

1. 構造解析:力学

製品に何らかの力(負荷)をかけたときに、どのように変形するのか、振動の伝わり方や強度などを解析できます。解析例として、地震が起きたときに、耐震壁がどのように揺れを吸収するのかということや、製品にどこまで力をかけると折れたり壊れたりしてしまうのかなどが挙げられます。

2. 伝熱解析:熱力学

熱がどのように伝わるのか、熱移動について解析できます。例えば、パソコン内の電子部品にどのように熱が伝わるのか、建物内で火災が起きた際、建物の主要な柱などが温度上昇でどのような影響を受けると考えられるのかなどが挙げられます。

3. 流体解析:流体力学

液体・気体などの流体がどのような流れで動いていくのかを解析できます。例えば、ごみ焼却施設において焼却時に発生するガスがどのように流れていくのか、配管内で液体や気体がどのように動くのかをシミュレーションできます。

4. 電磁解析:電磁気学

対象物の電磁場を解析できます。IHヒーターの電磁場や温度を解析したり、部品製造時に用いる高周波焼入れについて解析したりできます。

CAE解析のもたらすメリット

CAE解析を用いることで、設計における幅広い解析ができることがわかりました。ここからはCAE解析がもたらす大きなメリットを4点、詳しい理由とともにご紹介します。CAE解析を用いない従来の設計プロセスを経る方法と、どのような違いがあるのでしょうか。

実験困難な事象の検証

まず、CAE解析の大きなメリット一つ目は「実験困難な事象の検証ができる」ことです。

試作品を用いてさまざまな性能を評価するための実験は、極端な高熱や放射性物質、真空など、そう簡単には実験できないことも多くあります。例えば、自動車を猛スピードで走らせたり、耐火性能を試すために火を扱ったり、危険な検証が必要になる場合もあるでしょう。自社では検証が難しいこと、専門機関に調査を依頼するとコストもかかることなど、デメリットが多くあります。

しかし、CAE解析ならコンピューター上で解析ができるため、さまざまな条件を設定してシミュレーションでき、実際には危険を伴うような難しい検証も安全に行えます。そのため、CAE解析を用いると開発の対象を大きく広げられるのが大きなメリットです。特異なトラブルの可能性なども検出でき、性能や品質向上につながると考えられるでしょう。

設計コストの軽減

CAE解析を用いる二つ目のメリットは「設計コストが軽減できる」ことです。

性能評価などの検証には、実際の製品を模した試作品を用いた実験が不可欠です。しかし、工程ごとに試作品を作って実験を繰り返すと、時間もコストも非常に高くなってしまいます。

CAE解析を用いると、ある程度試作品を作らずともコンピューター上で検証ができるため、試作品が不要になりコストがかからなくなるメリットがあります。

危険な検証も専門機関に依頼する必要がなく、多彩なシミュレーションを可能にするのがCAE解析の大きな魅力と言えるでしょう。

設計時間の短縮

三つ目は「設計時間が短縮できる」ことです。CAE解析を用いると、性能評価を行う実験を行うための試作品を作る時間も不要になり、実験を行うための時間もカットできるようになります。

従来の解析方法では、試作品を用いた実験で何らかの問題が発覚すれば設計がやり直しになり、そのたびにまた新たな試作品を作って実験をするという繰り返しでした。しかし、CAE解析を用いればその手間が省けるため、設計時間の短縮につながります。

実物の試作品を作る時間が最低限になること、そしてCAE解析のシミュレーション自体にかかる時間は極めて短いことが大きな魅力です。 つまりCAE解析を用いると、コストと時間のカットにより、機動的な設計・開発が実現すると言えるでしょう。

環境負荷の軽減

四つ目は「環境負荷が軽減できる」ことです。

CAE解析を用いると試作品を実作しないため、コストや時間短縮につながるだけでなく、資源を消費しないため環境に優しいと言えます。試作品を作りながら試行錯誤を繰り返す従来の方法は、問題が起こるたびに新たな試作品を作る必要があるため、その分多くの資材を用いる必要がありました。

そのため、CAE解析を用いれば実験に伴う環境負荷を大きく軽減できるというメリットが得られます。CAEのための電力はかかるものの、実際の資材を使う必要がないため、産業廃棄物や無駄なエネルギー消費を抑えられます。

また製品の環境負荷についてもCAE解析でシミュレーションできることから、より環境に優しい製品を作れるのもポイントです。

CAE解析の最新事例:フォルクスワーゲン

ここからは、実際にCAE解析を用いた自動車メーカー「フォルクスワーゲン」について、初の電動レースカー開発の事例を紹介します。CAE解析によって短期開発を実現したフォルクスワーゲンですが、どのような成果が得られたのでしょうか。

レースカー水準のバッテリー設計

フォルクスワーゲンでは、CAE解析による電動レースカー水準のバッテリー設計が行われました。このプロジェクトでは開発日数が1年にも満たないことから、早い段階でCAE解析を用いたシミュレーションを行ったといいます。

電動レースカーには極限まで高性能かつ軽量なバッテリーが必要であったため、一口に設計でCAE解析を用いると言っても、あらゆる視点からの解析を行う必要がありました。 例えば、電流制御や衝突時に起こり得る衝撃、熱解析などが挙げられます。

フォルクスワーゲンはCAE解析に「Ansys」を採用し、高圧ブラケットの軽量化やスピーディな開発に成功しました。また、CAE解析でバッテリーの等価回路を作成し、縮約モデル(ROM)化してシミュレーションを行うなどし、実走テストを迎えました。実走テストでは、シミュレーションとの差異はわずか1.1%だったということです。

このように、フォルクスワーゲンでは開発日数が少ない中でCAE解析を用いて、非常に効率的な電動レースカーのバッテリー設計を可能にしました。

わずか8ヶ月でレコード破りのEVを完成

CAE解析を用いて開発されたフォルクスワーゲンのEV(電気自動車)が完成したのはなんとわずか8ヶ月、しかも参加したレースでレコード破りという実績を打ち立てました。

バッテリーのみならず、ボディや高圧ブラケットをはじめすべてのパーツに対してCAE解析を適用しており、さまざまな工程でCAE解析を用いたことで開発期間を一気に縮めることができたと言えるでしょう。

フォルクスワーゲンのレース部門の子会社は小規模であることでありながら、完成したEVはPikes Peakヒルクライムレースカーというアメリカの山登りレースにおいて、これまでの記録を16秒以上縮めた結果をたたき出し、コースレコードで優勝するという実績をおさめました。

フォルクスワーゲンのEV開発で用いられたAnsysは、解析専門のエンジニアに頼らずに設計者が直接解析結果を得られたことから、時間がない中での開発もスムーズに進められたと言えます。このように、CAE解析を用いた開発は大企業でも大きな実績・メリットを持ち、積極的に導入したい技術と言えるでしょう。

まとめ

設計開発までに時間がかかり、生産性が低下していたという企業はぜひCAE解析の導入を検討してみてはいかがでしょうか。CAE解析は、フォルクスワーゲンのように時間的な制約がある中でも、設計開発の競争力を飛躍的に高められることが実証されています。

そして、同社が用いた「Ansys」製品は、設計から仮想的な検証ができるのはもちろん、潤滑な開発のためにソフトとハードの並行開発も可能にします。そしてコスト削減や製品化までの時間を短縮するなど、あらゆる工程でメリットを与えてくれるでしょう。

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