人間中心設計(HCD)とは? 資格制度の内容と企業に求められる取り組み

 2022.02.25  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

人間中心設計(HCD)は、「モノ」ではなく、ユーザーエクスペリエンスに重点を置いたデザイン思考のことです。本記事では人間中心設計の定義と目的、歴史に加え、企業でも取得を促す傾向にある資格制度について紹介します。HCDの全体像を知り、ビジネスの可能性について把握しましょう。

人間中心設計(HCD)とは? 資格制度の内容と企業に求められる取り組み

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人間中心設計(HCD)とは

人間中心設計とは「Human Centered Design」の直訳で、「HCD」の略語がしばしば使われます。これは、従来の機能性やコスト性などよりも、「人間が得られる快適性や安全性などを重要視した製品・サービスを基本としたものづくりの考え方」のことを指します。目的はユーザーエクスペリエンスの向上だけではなく、ユーザーさえも気がついていないようなニーズを満たせる「ものづくり」を行い、新たな魅力や体験を創造することにあります。

人間中心設計の6原則は「ISO 9241-210」の国際規格で示されています。これらの意味することについて簡単に説明します。

  1. ユーザー、タスク、環境の明確な理解に基づいたデザイン
    誰がどのような理由と状況下でそれを使用するのかを明確にしてデザインすることです。
  2. デザインと開発全体へのユーザー参加
    実際に利用する人の意見やフィードバックを受けて開発・改善を続けることです。
  3. ユーザー中心の評価によるデザインの実施と洗練
    企業側の意図ではなく、どの過程においてもユーザー目線であることを忘れないことです。
  4. プロセスの繰り返し
    PDCAサイクルを回し続けることです。
  5. ユーザー体験(UX)全体に取り組むデザイン
    使いやすさや快適性、満足度などユーザー体験を満たすことを条件にすることです。
  6. 学際的なスキル・視点を含むデザインチーム
    それぞれの製品・サービス開発に必要な専門家、またユーザーの意見を吸い上げることができる人材によってチームを構成することです。

国際規格ISOでも定義

人間中心設計は、国際規格であるISOにおいても定義されています。前身は1999年に国際標準化機構によって発行された「ISO13047」で、2010年に改訂版となる「ISO9241-210」が発行されました。前項の6原則は、現行の考えに基づき設定されています。日本においては、日本工業規格のJISの「JIS Z 8530」の中で、「人間工学及びユーザビリティの知識と手法を適用することで、インタラクティブシステムをより使えるものにすること」を目的とした設計や開発へのアプローチの必要性を制定しています。

UXとの違い

同じような意味の語句として使われるのが「ユーザーエクスペリエンス(UX)」です。これは、製品・サービスを利用した顧客が「楽しい・使いやすい・効率がよい」などと感じられることです。それは製品そのものの使用感だけではなく、製品を購入するまでのプロセスやアフターフォローなど、企業と接点を持つあらゆるタイミングにおける「体験」を指しています。

そのため、顧客にユーザーエクスペリエンス(UX)を提供することを目的とするならば、人間中心設計(HCD)は、達成するための手段であるといえます。

人間中心設計の歴史

産業革命によって大量生産が可能となりました。産業革命後は、いかに競合他社と差別化できる機能が付帯できるか、また、コストや納期を調整することでいかに企業利益を上げられるかが重要視されるようになりました。

しかし1990年代後半になると、もの中心の考え方から、ユーザーをはじめとする人中心の考え方にシフトする動きが広がりました。先のISOもこの時期に定義されています。日本では2000年代に大手メーカーを中心にHCDの考え方が取り入れられ始め、ユーザビリティを追求する部門などが置かれるようになりました。

米国では、HCDの考えを取り入れたベンチャー企業の発展成功率が高いことから、次第に注目を浴びるようになりました。現在はAlphabet(Google)やGEなどの巨大企業が、HCDを経営レベルで実践し、さらにIBMやSAPなどのコンピュータ・ソフトウェア関連企業においてもHCDのデザイン思考を戦略的に採用しています。

人間中心設計の認定資格

人間中心設計の専門家を増やすべく、日本では資格認定制度を推し進めています。企業においても資格保持者をプロジェクトリーダーとして配置するなど、HCDの浸透に向けてさまざまな取り組みを行っているのです。ここでは、3つの認定資格について説明します。

人間中心設計スペシャリスト

実施機関:人間中心設計推進機構(HCD-Net)
応募資格として、「人間中心設計専門家としてのコンピタンスを実証するための実践事例が3つ以上あること」が挙げられます。その上で、人間中心設計・ユーザビリティ関連従事者としての実務経験が2年以上あることが求められます。なお、資格は3年に一度の更新制で、HCDに関わる活動によってポイントを獲得しておく必要があります。

人間中心設計専門家

実施機関:人間中心設計推進機構(HCD-Net)
「人間中心設計スペシャリスト」の上位資格です。人間中心設計・ユーザビリティ関連従事者としての実務経験が5年以上あることが求められます。また、実務経験に加え、マネジメントや組織開発など、統括する能力についてもみられるため、より取得のハードルが高くなります。

認定人間工学専門家

実施機関:人間工学専門家認定機構
人間工学専門家認定機構が行う認定試験には「認定人間工学専門家・認定人間工学準専門家・認定人間工学アシスタント」の3つがあり、ここで紹介するのは最上位資格です。人間工学の知識、技術、問題解決能力が一定以上あることを認定するのが目的です。受験資格は、大学で人間工学に関する専門教育を3年以上受けている場合は実務経験2年以上、該当しない場合は実務経験7年以上で得ることができます。試験は筆記や小論文に加え、面接も実施されます。

人間中心設計のプロセス

人間中心設計を実現するためには一定のプロセスがあります。ユーザーの真のニーズを満たすために必要な4つのステップについて、簡単に解説します。このステップを繰り返し行うことで精度をより高められます。

  1. 調査による利用状況の把握
    アンケート調査やインタビュー、顧客データーベース等をもとに、どのようなユーザーが、いつ・どこで製品を使用しているのかといったことから、満足している点と改善してほしい点などユーザーの声を収集します。
  2. ユーザーの要求事項を分析
    1の調査によって得られた声から、ユーザーが何を求めているのかといったことを洗い出し、そこから製品に反映できる真のニーズを導き出します。
  3. 解決策を設計
    ニーズや課題を、製品の機能性やデザインにどのように落とし込んでいくかを検討し、設計します。
  4. 評価
    専門家から学術的な視点で評価を受けたり、ユーザーにインタビューやユーザビリティテストに参加してもらい評価を受けたりすることで、HCDが実現できているのかを見極めていきます。

人間中心設計がイノベーションのカギ

日本では目指すべき未来社会として「Society 5.0」が掲げられています。これはSociety 4.0の、言わば情報が提供されるだけの社会ではなく、IoTなどの技術によってあらゆる知識や情報を共有し、社会の課題を解決していくことが目的です。この考えの中においても、人間中心の社会の実現が求められています。

加えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推し進める上でも、ユーザーエクスペリエンス(UX)を重視したサービスの提供や人材育成の必要性が叫ばれており、HCDはあらゆるイノベーションのカギとなり得る考え方です。だからこそ、各企業が人間中心設計の考え方に基づき、さまざまな分野で発展していく姿勢を持つことが望ましいと言えるでしょう。

まとめ

人間中心設計(HCD)とは、人が製品・サービスを使って感じるユーザーエクスペリエンスを重視したものづくりに対する考え方です。国際規格ISOでもその考えが定義され、国内では資格制度もあります。IoTやDXなど今後の社会と密接に関係するHCDは、どのような業界、企業においても軽視できない思考です。

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