産業用拡張現実(AR)とは?活用例や成功に導くソリューションを紹介!

 2021.07.26  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

近年、製造業ではデジタル技術の活用による経営改革「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の実現が重要課題となっています。そういったなかで大きな注目を集めているのが、産業分野にAR技術を応用する「産業用拡張現実」です。本記事では、製造業におけるARの活用例や技術革新をもたらすソリューションについて解説します。

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産業用拡張現実(AR)とは

ARとは「Augmented Reality」の頭文字をとった略称で、現実世界の風景にバーチャルな視覚情報を重ね、仮想的に拡張するテクノロジーです。AR技術はさまざまな分野で応用されており、特にエンターテインメント分野で広く普及しています。たとえば、2016年にリリースされたスマートフォン用ゲームの「ポケモンGO」や、写真加工アプリの「SNOW」などがARを活用したエンターテインメント製品の代表例です。

ポケモンGOは現実世界そのものを舞台とし、ARでポケモンを投影して遊べるアプリとして世界各国で爆発的にヒットしました。SNOWは自撮り写真にかわいらしい動物の耳や鼻などのCGを重ねられる写真加工アプリとして、リリースから数年経過した現在でも中高生に絶大な人気を誇っています。このように現実世界に仮想世界を重ねて拡張し、まるで本物のキャラクターや3D映像が現れたかのような体験をできるのがARの大きな特徴です。

そうしたARを、製造や設計といった産業分野に応用するソリューションが産業用拡張現実です。ドイツ政府主導のもとでインダストリー4.0が提唱され、製造業には第3次産業革命以来の大きな技術革新が訪れようとしています。インダストリー4.0とは、AIやIoTを活用し、自律的かつ自動的に稼働しうる生産体制を構築するための技術革新を指します。そして、インダストリー4.0を実現するテクノロジーのひとつとして、産業分野にARを応用する産業用拡張現実が注目を集めているのです。

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製造業におけるARの活用例

ARは、仮想現実をつくり出す「VR(Virtual Reality)」や、複合現実を実現する「MR(Mixed Reality)」とともに、産業分野での導入が進みつつあります。たとえば、製造現場におけるAR活用事例のひとつとして挙げられるのがペーパーレス化です。

ARの活用によるペーパーレス化

これまで、工作機械や電子機器といった生産設備の保守・管理業務には紙媒体のマニュアルが不可欠でした。しかし、ARを搭載したスマートグラスのようなデバイスがあれば、紙媒体のマニュアルを持ち歩く必要がなくなります。資料の紙代や印刷代の削減はもちろん、印刷機器のメンテナンス費用や文書廃棄費用、それらの保管や管理に関わる人件費など、さまざまな経費削減に貢献します。

また、紙媒体のマニュアルが不要になることで得られるメリットはそれだけはありません。ARデバイスの拡張現実にマニュアルを表示できれば、ハンズフリーで作業に取り組めるため、従業員一人あたりの労働生産性の向上につながります。労働生産性は「産出量÷労働投入量(労働者数×労働時間)」という数式で表せるため、いかに少ない労働者数と労働時間で多くの成果を創出するかが重要なポイントです。

ペーパーレス化によって作業効率が改善されることで、より少ない労働投入量でより多くの産出量を生み出せます。従業員一人あたりの労働生産性が向上するということは、生産ラインの維持に必要な労働者数が軽減されることになるため、人件費の削減につながるでしょう。そして、余った人的資源をコア業務に集中投下することで、より高い付加価値を生み出せるようになるでしょう。

ARを活用した技術者のトレーニング

近年、製造業は深刻な人材不足に陥っており、優秀な人材の確保が重要課題となっています。しかし、人口減少や少子高齢化といった社会的背景も相まって、製造業は若年者の入職者数が減少傾向にあり、就業者の高齢化が進んでいるのが実情です。次世代の技術者を育成するためには、熟練工がもつ知識と技術を継承できる環境を構築しなくてはなりません。このような製造業の現状を打破する一助となるのがARです。

ARはモニターやスマートグラスに拡張現実を反映させることで、現実の作業場のようなトレーニング環境を構築できます。たとえば、ベテランの従業員がARソリューションを装着して作業を実施することで、そのプロセスをもとに訓練用作業マニュアルを作成可能です。これにより、熟練工の知識と技術という暗黙知を形式知に変換し、属人化していた業務の標準化につながります。

そもそも、製造業は高度な技術が求められる仕事であり、技術者の育成に多くのコストが必要です。ARを活用したトレーニング環境を構築できれば、熟練工のスキルを保存するだけでなく、若手従業員の教育効率の向上という2つの恩恵を同時に得られます。初期学習時間を大幅に短縮できるため、従業員のスキル向上を図りつつ、教育コストの大幅な削減が可能です。

AR導入を成功に導く産業用拡張現実ソリューション

近年、ARは非常に大きな注目を集めており、多くの企業がさまざまなソリューションをリリースしています。なかでも製造業向けとしておすすめしたいのが「PTCジャパン株式会社(以下PTC)」が提供するソリューションです。PTCは米国のマサチューセッツ州に本社を置くソフトウェア企業で、主に製造業向けにITソリューションの開発や導入支援サービスを展開しています。

このPTCが提供する産業用拡張現実ソリューションが「Vuforia」シリーズです。Vuforiaは、製造業向けに開発されたARソリューションで、作業マニュアルのデジタル化や遠隔指示ツールといった拡張現実技術によって製造現場の生産性向上に寄与します。Vuforiaの詳細については公式Webサイトに譲り、ここではソリューション選定のポイントや具体的な導入ステップについて見ていきましょう。

1. ビジネスケースを特定

ビジネスケースとは、新しい設備投資や事業戦略、あるいは大規模なプロジェクトを提案する際に必要となるドキュメントを指します。ARを導入する前に、なぜそのソリューションが必要なのかを明確にしなくてはなりません。自社がどのような経営課題を抱えており、ARの導入によってどのような利益を得られるのかを定量化するのがビジネスケースの役割といえます。たとえば、人材不足が重要課題の企業であれば、ベテランの暗黙知を形式知へと変換したり、教育プロセスを効率化したりといった施策が必要です。

まずは、こうした解決すべき課題を洗い出し、ARがどのように課題解決に貢献するのかを分析することで、必要なソリューションを把握できます。この場合であれば、熟練工の暗黙知を一般スタッフ向けの学習リソースに変換できる「Vuforia Expert Capture」や、ARで作業手順書を表示可能な「Vuforia Studio」の導入が有効といえるでしょう。企業によって抱えている課題が違えば、必要なソリューションも異なります。まずは自社の課題を洗い出し、データに裏打ちされたビジネスケースを作成しましょう。

2. 意思疎通を図り成果を最大化

ARの活用によって高い成果を創出する企業の共通点は、自社に適したソリューションを導入していることです。そして、自社に適したソリューションを導入するためには、現場との意思疎通が欠かせません。ARの導入を決定するのは経営層でも、実際に使用するのは製造現場の技術者です。ARソリューションを選定する際は経営層が一方的に決めるのではなく、現場の管理者はもちろん、技術者一人ひとりの意見を拾い上げる必要があるでしょう。もちろん、大規模な設備投資になる場合は株主の賛同も必要です。

3. スモールスタート

ARソリューションの導入は大規模な設備投資をイメージするかもしれません。しかし、大切なのは小さく始めるスモールスタートです。まずは生産に携わる一部門や製造現場の一ラインなど、コストや手間をかけずに小さな設備投資から始めることでリスクを最小限に抑えられます。そして、小さなテストを繰り返し、不明確な部分を微調整しながら段階的に拡張していくことが大切です。具体的な手法としては、コラボレーション主導型ARの適用や適切なハードウェアの特定などが挙げられます。Vuforiaであれば30日間の無償試用版を利用してみるのもおすすめです。

4. ARの知識を集約

ARは導入して終わりではなく、構築後にいかにして効率的かつ効果的に運用していくのかが問われます。そのため、ARソリューションの導入後も安定的なサポートを提供してくれるベンダーの選択が重要です。PTCはソフトウェアの定期的な機能強化やテクニカルサポート、使用方法に関するヘルプなどの総合的なサポートサービスを提供しています。導入後の運用サポートを活用し、ARトレーニングやチュートリアルをチーム内で共有できれば、開発の加速や業務連携の強化につながるでしょう。また、ARの運用に関わるサポートをベンダーに任せることで、自社のリソースをコア業務に集中投下できる点も大きなメリットです。

5. ユーザーエクスペリエンスを重視

ARソリューションを選定する上で重要となるのが、ユーザーエクスペリエンス(UX)です。優れたソリューションは、サービスを通じて得られるユーザー体験を重視しています。どのようなプロダクトやサービスにもいえることですが、UXはARにおいても重視な要素です。重視すべき要素として、操作性や視認性などがユーザー目線の設計になっているか、あるいはハードウェアが及ぼす影響が考慮されているか、などが挙げられます。ARの導入を検討する際は、UIとUXの双方の観点から見て優れたソリューションを選びましょう。

6. 結果を測定

ARは導入すること自体が目的ではありません。ARの運用によって企業の利益を最大化することが本当の目的であり役割です。したがって、開発完了後は可能な限り早い段階で効果測定を行い、定量的な分析に基づいた継続的な改善が必要といえます。ARの運用効率を最大化するためには、効果測定をもとに仮説を立てて計画し、実行によって得た結果を分析して改善策を立案するPDCAサイクルが不可欠です。事前に判定基準を明確化しておくことで、長期的な視点による測定が可能になるでしょう。

まとめ

ARはインダストリー4.0を実現するソリューションのひとつとして注目を集めています。さまざまな課題を抱える製造業がDXを実現するために不可欠なソリューションとなるでしょう。

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