医療情報システムの相互接続性を推進する国際的なプロジェクトIHEとは?

 2020.06.29  デジタルトランスフォーメーションチャンネル

人手不足の医療現場においては、各領域の関係者が効率的に連携していくことが重要です。そのうえで、医療情報システムを通して関係する分野における相互接続性の向上が求められています。本記事では、IHEという国際的なプロジェクトが行っている活動やその必要性などについてご紹介します。

医療情報システムの相互接続性を推進する国際的なプロジェクトIHEとは?

医療情報システムの相互接続性を推進する「IHE」とは?

IHEは、"Integrating the Healthcare Enterprise"の略語で、医療情報システムの相互接続性を高める国際的な取り組みです。医療機関や地域連携においては情報共有が大切ですが、IHEでは伝達フローを分析し、その結果をベースに医療情報に関する標準規格の利用について方針を決め、その運用方針の明確な策定も推し進めています。このようなシステムの画一化を通して、さまざまな医療機器やメーカーの違いによらずシームレスに連携できる医療情報システムの実現を目指しています。

IHEの誕生背景

IHEの取り組みが始まった背景として、医療情報システムの標準化の必要性が高まっていた点が挙げられます。医療においては様々な情報を管理するシステムは欠かせない一方、整備があまり進んでいない分野でした。医療システムはそもそも多岐にわたっており、病棟や放射線、循環器や会計など、それぞれがばらばらなシステムで動いているという現状があります。そのため、効率的な連携ができているとは言い難い状況でした。このような状況のもと、放射線領域の医療情報システムにおける画像データが開発メーカー独自の仕様で、他社の装置やシステムとの連携が難しかったことが起点になり、システム間での画像の送受信をスムーズにすることが望まれるようになりました。やがて「標準規格」と呼ばれる医療機器やシステム、開発元のメーカーに関わらず情報やデータの送受信が可能なデータ規格が生まれました。たとえば医療画像分野における「DICOM」(Digital Imaging and Communications in Medicine)や、電子カルテにおける「HL7」(Health Level Seven)が有名です。

しかしこういった標準規格が生まれても、医療機関によって環境やワークフローがばらばらでは効率的な連携を行うことができません。そこで、IHEでは連携する際のルール化、使い方のガイドラインを策定することにより、今までは難しいと言われてきた、異なる医療機器やシステムの円滑な連携の実現を目指す取り組みが行われています。

日本IHE協会(IHE-J)について

日本においては、日本IHE協会(IHE-J)がIHE普及の目的のもと、循環器やPCD、IT Infrastructureなど11の領域に分かれて活動しています。それぞれのドメインはさらに企画部門と技術部門からなります。企画部門は医療現場で実務に従事する医師や技師、学会のメンバーなどで構成され、技術部門は医療システムのベンダーや医療機関の管理者・担当者で構成されています。協会はこのようにユーザー側とベンダー側の両方の視点からアプローチしているのが特徴です。

医療情報システム標準化の必要性とは?

医療情報システムの標準化を行うことは、なぜ大切なのでしょうか。

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システム間でデータの送受信を行うには「標準化」が重要ですが、標準規格を利用していても業務の効率化や連携がスムーズになるとは限りません。利用方法が機関ごとに異なる場合や、現場の状況で利用シーンに差があるため、どうやって連携していくかを決めておくことが大事なポイントです。

標準規格の「使い方」が定まっていないとどうなるのでしょうか。この場合、規格が決まっていても複数のメーカーの医療機器やシステムと情報共有する際に細かいカスタマイズが必要になります。これを進めるための長時間の打ち合わせを含め、膨大な手間がかかります。これは導入時だけでなく、連携しているもののうち一部でも他メーカーへの乗り換えなど、更新が発生する場合には都度カスタマイズを行う必要があります。そもそも、細かいカスタマイズが原因となってバージョンアップそのものが困難になるケースもあります。

このように、規格が存在してもその運用方法が明確に共有されていないと、導入時や更新時などに大きな影響を及ぼします。

IHEの活動内容について

IHEは、システムの標準規格の運用方法が策定されていないことによる問題解決への取り組みを行っています。その活動内容について解説します。

技術文書(テクニカルフルレームワーク)の作成

医療現場では、メーカーに関わらず医療従事者が使いやすいシステムの構築を目指しています。そのためには標準規格の運用方法に関するガイドラインの策定が必要です。IHEはワークフローを分析した結果の業務シナリオを「統合プロファイル」としています。運用の指針である技術文書(テクニカルフレームワーク)は、この統合プロファイルに沿って作成されます。システム構築の際は、これを基にすることで、IHEに準拠した製品が作られることになり、よりスムーズなシステム連携が可能となります。

メーカーへの技術文書や接続テストの説明

標準規格だけでは不十分なのと同様に、テクニカルフレームワークも作成して終わりではなく、活用されてこそ意味があります。IHEはユーザーやメーカーへの説明会の実施や、各メーカーに対して実装していくうえで必要な接続テストに関する説明会を行っています。

接続試験のツール開発

IHEでは年1回、テクニカルフレームワークを実装した様々なシステムや医療機器で、「コネクタソン」(コネクトとマラソンを合わせた造語)と呼ばれる約1週間に渡るデータ送受信の接続試験を行っています。当日は各メーカーのさまざまな医療機器・製品が運ばれてきます。試円滑な接続検証実施のため、験参加には事前検証が必須条件となっています。IHEはその事前検証ツールの開発と配布を行うことで、より精度の高い試験の実施と迅速な問題解決を可能にしています。

IHE活動の普及

IHEの活動は、ユーザーが使いやすい医療情報システムを実装するうえで非常に重要です。しかし単体での活動には限界があるため、さまざまなメーカーや関係者を巻き込みながら普及活動を促進しています。また学会やセミナー、ワークショップなどを通じて、理念や考え方を広く知らせるという活動も実施しています。

まとめ

医療現場における生産性向上のためには、さまざまな分野でシステムを効率的に連携し、相互持続性を追求しなくてはいけません。メーカーごとに仕様が異なるシステムを標準規格化して使用するにあたり、IHEは標準規格の使い方のガイドライン策定しています。それによって効率化だけでなく、広く質の高い医療提供を推進しています。

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