医療・製薬

PHR(パーソナルヘルスレコード)とは? 必要性やメリット、導入時の課題について解説

PHR(パーソナルヘルスレコード)とは? 必要性やメリット、導入時の課題について解説

少子高齢化の進行に伴って、個々人が自ら健康管理を行い、疾病予防や健康増進などに取り組む社会的重要性が増しています。この課題に対して効果を発揮するのが「PHR」です。本記事では、PHRの基本的知識や必要性、メリット、導入にあたっての課題に加え、TISのPHRサービス「ヘルスケアパスポート」について解説します。

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PHR (パーソナルヘルスレコード)とは?

PHRとは「Personal Health Record(パーソナルヘルスレコード)」の略称です。「生涯型電子カルテ」という別名で呼ばれることもあります。PHRは、各患者の健康・医療・介護に関する諸情報を統合的に収集・保存したデータのことです。具体的には、各患者の医療機関での診療・治療履歴や処方箋、検診データに加え、体重・血圧・食生活など日々の健康状態までもがPHRに含まれます。

これらのデータを活用し、個々人の健康増進や生活習慣の改善、より良いヘルスケアサービスの実現をすることがPHRの目的です。ちなみに、デジタル先進国であるアメリカではいち早くPHRの取り組みが実施されており、PHRを利用して医療情報を一元管理し、そのデータを特定の医療機関の間で共有・活用する仕組みが実用化されています。

PHRとEHRの違い

PHRと混同しがちな概念として「EHR」が挙げられます。EHRとは「Electronic Health Record」の略称で、日本語では「電子健康記録」と訳されるものです。その名が示す通り、健康情報をデジタルで保存・管理するという点では、EHRはPHRと共通しています。

PHRとEHRの主な違いは、「データを管理する主体は誰か」という点です。PHRには日々の健康記録なども含まれるので、患者自身が管理・記録していく面が強くなります。他方、EHRには、医療機関が検査・治療の履歴を記録し、医療機関の間でのみ共有する形です。

PHRの必要性

PHRによって個人が自分で健康情報を管理できるようにしたり、医療機関との情報共有を促進したりすることは、少子高齢化による医療・介護リソースの逼迫を軽減するために非常に重要です。PHRを活用することで、以下のような社会の形成が期待されます。

PHRが活用された社会

PHRが活用された社会では、ヘルスケアに関わる人々とさまざまなサービスがつながることで、市民一人ひとりの健康増進やQOL向上を実現できます。

たとえば、市民が自分の診療情報や日々の健康データを医療機関と共有し、医師と患者が協力して健康を管理しやすくすることが可能です。また、各医療施設や介護施設などの間で医療情報が共有されることにより、地域が一体となって市民に最適なヘルスケアを提供できます。さらに、デジタルで医療・健康データを共有できるようになることは、遠隔診療の実現においても重要です。

PHRの現状

上記のように、PHRの活用には大きな期待が寄せられていますが、現状では特にデータの整備と共有の面で課題があるのが実態です。 具体的には、現在のPHRはデータが種類ごとに分散しており、形式もバラバラであるため、データの統合や共有が困難であり、これがPHRの活用を阻害する原因になっています。 この問題を解消するには、業界全体が一体となって規格の共通化・標準化に取り組むことが必要です。

PHRを導入する3つのメリット

PHRの導入は、患者・医療機関・社会それぞれに大きなメリットをもたらします。

メリット1:セカンドオピニオンが容易になる

患者が納得してより良い治療方法を選択するためには、セカンドオピニオンが推奨されます。しかし実際には、重複する作業により医療従事者の負担が増え、患者に最適な治療を施せていないのが現状です。そのような中でもPHRがあれば、セカンドオピニオンの際に診療情報提供書がなくても、すぐに該当患者の医療情報を確認し、適切に対応できます。PHRを参照すれば薬の二重投与などの問題を防げるほか、医療機関ごとに重複する作業を減らせるため、医療従事者全体の作業負担軽減にもつながります。

メリット2:健康の自己管理が促進される

PHRを利用することで、患者が自分で健康管理をしやすくなるのもメリットです。運動量や食事内容なども記録し、医療機関と共有すれば、生活習慣の改善についてより効果的な助言を得ることも可能です。
体重や血圧などの測定値を含めた生活の記録を残し、それを簡単に閲覧できるようになれば、患者は健康増進へのモチベーションを高め、行動変容をしやすくなります。

メリット3:医療機関・患者間でのコミュニケーションが容易になる

PHRサービスの中には、チャットで医療機関とメッセージのやり取りができる機能が備わっているものもあります。チャットならば時間や場所を問わず応答できるため、問診などのコミュニケーションによる時間的・身体的負担を軽減できます。このようにPHRには、医療機関と患者間のコミュニケーションを容易にする効果もあります。

PHR導入時の2つの課題

多くのメリットがある一方で、PHR導入時には留意すべき課題があります。

課題1:利用者への理解促進

PHRは患者自身が主体となって管理・記録していくため、その活用に当たっては利用者への理解促進が求められます。まず、PHRを利用するには基本的にスマートフォンやタブレット端末が必要です。そのため、PHRを普及するには、高齢者などデジタル機器の操作が苦手な方にも使いやすい仕組みを考えなければなりません。

課題2:セキュリティ対策

PHRで扱う医療・健康データは重要な個人情報です。そのため、情報漏洩リスクに備えて、万一の際の事後対応も含めて十分なセキュリティ対策を講じる必要があります。セキュリティを高めるには、システム面だけでなく、利用者個人のリテラシーも重要になるので、その点でも利用者への理解促進は欠かせません。

TISが提供する双方向型PHRサービス「ヘルスケアパスポート」

TISが提供する「ヘルスケアパスポート」は、自らの健康・医療情報を管理するためのPHRサービスです。このサービスには利用者の日々の健康情報に加え、医療機関からの電子カルテ情報や企業の健診情報なども統合できます。これらのPHRは、本人の同意の下で、さまざまな相手や機関に共有可能です。

特徴

ヘルスケアパスポートを活用することで、導入企業はヘルスケアサービスを迅速かつ安全に展開することが可能です。ヘルスケアパスポートには、以下のような特徴があります。

  1. 拡張性が高い
    このプラットフォームはオープンに運用され、医療関係施設やさまざまな事業者と連携されています。将来的に新たな事業連携やデータ取得の幅の拡張を行う際にも、TISの支援を受けることが可能です。
  2. サービス運用の確保ができる
    TISが業界規制や業界標準へ適切に対応し、利用者の声に基づいたシステム改善を随時行います。サービスを跨いだヘルスケアデータの運用も支援します。
  3. クイックスタートしやすい
    ヘルスケアパスポートはすでに稼働しているサービスであり、速やかに導入できます。事前検証や運用についても支援を受けられるので、トータルコストを大幅に低減することが可能です。
  4. セキュリティガイドラインに対応している
    ヘルスケアパスポートは、厚生労働省、経済産業省、総務省によって定められた医療情報の安全管理に関するガイドライン(3省2ガイドライン)に対応しています。PHRには利用者本人が許可した相手のみがアクセスできるように設計されています。

活用事例

福島県会津若松市では、ヘルスケアパスポートをPHR/EHR統合基盤として採択しました。これは、令和3年度補正予算デジタル田園都市国家構想推進交付金事業で展開された取り組みの一環です。市民は、ライフログデータや処方履歴などの情報をいつでも確認できます。また、医療機関はこれらのデータを診療に活かすことが可能です。この取り組みを通して、会津若松市では市民と医療機関が健康・医療情報を共有し、質の高い診療や健康増進の実現を目指しています。

関連記事:会津若松+|ヘルスケアサービス 全体案内ページ

まとめ

PHRは、個々人の健康管理を容易にするとともに、医療従事者の作業負担軽減を実現します。PHRが日本で広く活用されるにはまだ課題がありますが、本記事で紹介したように、すでに一部では実用が始まっている状況です。PHRサービスの導入をする際は、ぜひTISの「ヘルスケアパスポート」の利用をご検討ください。

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